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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C5
管理番号 1334435 
審判番号 不服2017-7328
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-22 
確定日 2017-11-10 
意匠に係る物品 ビールピッチャー用蓋 
事件の表示 意願2016- 2356「ビールピッチャー用蓋」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成28年(2016年)2月4日付けで意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「ビールピッチャー用蓋」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

この種ビールピッチャー用蓋において,上面を一部開口部を有する閉塞面とした略円錐台形状を基調とし,正面側を大きくカットした態様とし,上面には半円形状に分割した略円形状の区画を形成し,正面側の半円形状の区画は上方に膨出させた態様とし,背面側の半円形状の区画は下方に膨出させた態様とし,正面側切り欠き部に台形状の舌片部を形成し,該舌片部先端寄りに小円孔を2個形成したものが,本願意匠の出願前に公然知られている【意匠1】。
また,同様に蓋部の上面の正面側の半円形状の区画を,正面視,略台形状に膨出させ,背面側の区画の外周に沿って弧状の立ち上がり部を形成し,舌片部を正面側に前下がり状に屈曲形成したものが,本願意匠の出願前に公然知られている【意匠2】。
本願意匠は,その出願前公然知られた【意匠1】の意匠に基づき,当業者にとってありふれた手法を用いて,【意匠2】の意匠の様に正面側の膨出部を台形状とし,背面側に立ち上がり部を形成し,舌片部を屈曲形成したまでのものにすぎないから,容易に意匠の創作をすることができたものと認められる。

【意匠1】(当審注:別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1310625号の意匠
(意匠に係る物品:ビールピッチャー用蓋)

【意匠2】(当審注:別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1187522号の意匠
(意匠に係る物品:ビール用ピッチャー)の蓋の意匠

第3 請求人の主張の要点
原審の拒絶理由で,「意匠2」によって示されているのは,この種ビールピッチャー用蓋において,各種造形手法が本願意匠の出願前に見られることに止まり,各部の具体的な形状は,本願意匠と明らかに相違するものしか示されていない。「意匠1」に基づいて,「意匠2」の構成要素を置き換えあるいは寄せ集めるなどしても,本願意匠を創作することができない。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が容易に創作することができたものであるか否か,について検討する。

1.本願意匠の認定
本願意匠は,その意匠に係る物品を「ビールピッチャー用蓋」とし,その形態を,(A)全体は,上面とやや裾拡がりの周側面からなる扁平な略円筒形状のものであって,その直径と高さの比率を約5対2とし,正面側を直径の約8分の1の長さを切り落として開口させたものであり,(B)上面は,略中央に上面の直径で約7割の略円形区画を設け,その前半の略半円形を凸状部(以下「上面凸状部」という。),開口した隙間を挟んで後半の略半円形を凹状部(以下「上面凹状部」という。)とし, 略円形区画の背面側の外周の上面凹状部の円弧に沿って,突起部(以下「弧状突起部」という。)を形成し,更に,略円形区画部の外周には円環帯状の低い段部(以下「円環段部」という。)を設けたものであり,(C)上面の正面側端部の中央には,斜め(約40度)下方に向けて略台形状に先細った突出片を設け,突出片の略中央に小さな孔を左右に2つ設けたものであり,(D)上面凸状部の具体的な態様は,略円形区画の前半の略半円形の円弧部の端部から弧状の立ち上がり部を設けて隆起させ,頂部を平坦状とし,後端は開放させた状態としたものであり,(E)上面凹状部の具体的な態様は,前方の直線状端面においては,左右両端から中央に向けて漸次緩やかな弧状となり,中央付近がほぼ平坦状となる湾曲態様とし,側方から見た中央断面(B-C-D-E線組合せ断面図)においては,後方から前方に向けて漸次緩やかな弧状となる湾曲態様とし,前端は開放させた状態としたものであり,(F)弧状突起部の具体的な態様は,その長さを略円形区画の外周の約10分の4とし,高さを上面凸状部の開口部下側面と同水準の高さとし,厚みを比較的に厚くしたものである。

2.意匠1及び意匠2の認定
(1)意匠1
意匠1は,その意匠に係る物品を「ビールピッチャー用蓋」とし,その形態を,(1A)全体は,上面とやや裾拡がりの周側面からなる扁平な略円筒形状のものであって,その直径と高さの比率を約5対1とし,正面側を直径の約8分の1切り落として開口させたものであり,(1B)上面は,略中央に上面の直径で約7割の略円形区画を設け,その前半の略半円形を上面凸状部,開口した隙間を挟んで後半の略半円形を上面凹状部としたものであり,(1C)上面の正面側端部の中央には,略台形状に先細った突出片を水平に設け,その突出片の略中央に小さな孔を左右に2つ設けたものであり,(1D)上面凸状部の具体的な態様は,略円形区画の前半の略半円形の円弧部の端部から内方へ緩やかな弧状とした湾曲面とし,後端は開放させた状態としたものであり,(1E)上面凹状部の具体的な態様は,前方の直線状端面においては,後方の円弧部の端部から内方へ緩やかな弧状とした湾曲面とし,前端は開放させた状態としたものである。

(2)意匠2
意匠2は,その意匠に係る物品を「ビールピッチャー」の蓋とし,その形態を,(2A)全体は,上面とやや裾拡がりの周側面からなる扁平な略円筒形状のものであって,その直径と高さの比率を約5対1とし,正面側を直径の約8分の1の長さを切り落として開口させたものであり,(2B)上面は,略中央に上面の直径で約7割の略円形区画を設け,その前半の略半円形を上面凸状部,後半の略半円形を上面開口部(平面図,底面図及びB-B端面図から認定。)としたものであり,略円形区画の背面側の外周の上面開口部の円弧に沿って,弧状突起部を形成したものであり,(2C)上面の正面側端部の中央には,斜め(約20度)下方に向けて略三角形状に先細った突出片を設け,その突出片の全面にわたり5つの孔をスリット状に設けたものであり,(2D)上面凸状部の具体的な態様は,略円形区画の前半の略半円形の円弧部の端部から内方へ直線状に傾斜した立ち上がり部を設けて隆起させ,頂部を平坦状とし,後端は開放させた状態としたものであり,(2E)上面開口部の具体的な態様は,平面視形状を,横長長方形の一方の長辺を弓形とした略半円形状としたものであり,(2F)弧状突起部の具体的な態様は,その長さを略円形区画の外周の約10分の3とし,高さを比較的に低く,厚みを比較的に薄くしたものである。

3 創作容易性の判断
本願意匠のように,「ビールピッチャー用蓋」の形態として,(a)全体は,上面とやや裾拡がりの周側面からなる,扁平な略円筒形状の,正面側を直径の約8分の1の長さを切り落として開口させたものとし,(b)上面は,略中央に上面の直径で約7割の略円形区画を設け,その前半の略半円形を凸状部,開口した隙間を挟んで後半の略半円形を凹状部とし,凸状部の後端及び凹状部の前端を開放させ,(c)上面の正面側端部の中央には,略台形状に先細った突出片を設け,突出片の略中央に小さな孔を左右に2つ設けたものは,意匠1に見られるとおり,本願出願前から公然知られたものといえる。
また,上面凸状部の頂部を平坦としたもの,弧状突起部を略円形区画の背面側の外周に沿って設けたもの,突出片を下方へ傾斜させたものは,いずれも意匠2に見られるとおり,本願出願前から公然知られたものといえる。
しかしながら,まず,本願意匠の上面凹状部の形態と意匠1のそれとは,曲面の態様が相違し,本願意匠に設けてある円環段部は,意匠1及び2に存在せず,次に,意匠1の上面凸状部の形態を意匠2のそれと置き換えたとしても,立ち上がり部の態様が本願意匠とは相違し,加えて,意匠1の弧状突起部の形態を意匠2のそれと置き換えたとしても,その長さ等が相違する。そして,これらの相違は,ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものともいえる証拠もない。
そうすると,本願意匠は,意匠1を基礎とし,その一部を意匠2の公然知られた形態に置き換えたとしても,容易に導き出せるものではないから,当業者が容易に創作することができたものということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠に該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-10-31 
出願番号 意願2016-2356(D2016-2356) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 油科 壮一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2017-11-24 
登録番号 意匠登録第1593288号(D1593288) 
代理人 永芳 太郎 
代理人 永芳 太郎 
代理人 永芳 太郎 

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