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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 D4
管理番号 1335191 
審判番号 不服2015-13517
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-16 
確定日 2015-12-15 
意匠に係る物品 空気清浄機 
事件の表示 意願2014- 7525「空気清浄機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,意匠法第14条第1項の規定により2年間秘密にすることを請求した,平成26年(2014年)4月4日にされた,部分意匠として意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「空気清浄機」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定の拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,本願の出願人が平成27年2月23日付けの協議指令の趣旨に添う届出をしなかったので,意匠法第9条第5項の規定により協議が成立しなかったものとみなされて,本願の出願人が本願意匠について意匠法第9条第2項後段の規定により,意匠登録を受けることができない,としたものであって,上記協議指令書の趣旨は,本願意匠は願書の本意匠の表示の欄に記載された意願2013-22624の意匠(別紙第2参照)とは類似せず,また,本願出願の日と同日に出願された意願2014-007524の意匠(別紙第3参照)と類似すると認められるから,意匠法第9条第2項前段の規定に該当する,というものであり,具体的には以下のとおりである。

本願意匠と協議対象の意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は,共に,略立方体の本体の各辺に設けられた帯状に表れた面取りの部分であって,形態について,帯状に表れた面取りを一体的なものとした点,及び,本体の8箇所の角部を同じ程度に丸く形成した点で共通しており,当該共通する態様は,意匠の基調を成すものであって,看者に共通した印象を強く与えている。
他方,両意匠の間には,全体のプロポーション比率に関する差異(ア)や,帯状に表れた面取りの全体に対する幅の比率に関する差異(イ)があるが,当該空気清浄機が属する物品分野において,全体のプロポーション比率を変更することは,例を挙げるまでもなくありふれた造形手法であるから,差異点(ア)が類否判断に及ぼす影響は微弱である。また,両意匠の帯状に表れた面取りの幅の態様は,格別印象を異にする程のものにはなっていないから,差異点(イ)が類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そうすると,当該差異点は,全体観察した場合,何れも前記共通点に吸収されてしまう程度の微弱なものであるから,本願意匠と協議対象の意匠は,互いに類似すると認められる。


第3 手続きの経緯

上記原査定の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠は意願2013-22624に類似する意匠であって,意匠法第10条第1項の規定に該当すると主張したが,平成27年(2015年)4月20日付けの拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として同年7月16日に審判を請求し,原査定を取り消して本願意匠を登録すべきものとするとの審決を求め,同年10月19日に手続補正書を提出して,本願の本意匠を意願2014-007524に変更する補正を行った。

また,請求人は,意願2014-007524の意匠登録出願についても,同年7月16日に拒絶査定不服審判を請求するとともに,同年10月19日に手続補正書を提出して,本意匠を削除する補正を行った。


第4 当審の判断

以下,本願意匠が意願2013-22624の意匠(以下,「願書記載本意匠」という。)とは類似せず,また,本願出願の日と同日に出願された意願2014-007524の意匠(以下,「協議対象意匠」という。)と類似すると認められ,意匠法第9条第2項後段の規定に該当するか否かについて検討する。

1 本願意匠と願書記載本意匠の対比,及び類否判断
ア 意匠に係る物品
本願意匠と願書記載本意匠の意匠に係る物品は,ともに「空気清浄機」であるから一致する。

部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,空気清浄機本体(以下,「本体」という。)と脚部によって構成された空気清浄機の,本体の各辺を構成する部分(以下,「フレーム部」という。)であるのに対して,願書記載本意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下,「願書記載本意匠部分」という。)は,本体のフレーム部と脚部が一体成形された空気清浄機の,本体のフレーム部と脚部を合わせた部分であるから,本願部分と願書記載本意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は相違する。

ウ 本願部分と願書記載本意匠部分の形態の共通点
本願部分と願書記載本意匠部分は,
(A)略縦長直方体状箱体の本体の各辺を構成するフレーム部を,すべて均一の幅とし,フレーム部を本体各面と約45度の角度となるテーパー状として,上面側フレーム部4本及び側面側フレーム部4本がそれぞれ接続する本体上面の四隅部分を丸く形成している点,
が共通する。

エ 本願意匠と願書記載本意匠の形態の相違点
本願部分と願書記載本意匠部分は,
(a)本願部分は,全体を,12本のフレーム部によって略直方体状枠体のような形態としているのに対して,願書記載本意匠部分は,全体を,四隅が対角線方向に張り出した底面視略正方形状の脚部を底面とし,8本のフレーム部によって上面側及び側面側の辺を構成した有底の略直方体状枠体のような形態としている点,
(b)本願部分は,平面視略横長長方形状,正面視やや縦長の長方形状となる縦,横,奥行きの長さとしているのに対して,願書記載本意匠部分は,平面視略正方形状,正面視略縦長長方形状となる縦,横,奥行きの長さとしている点,
(c)本願部分は,すべてのフレーム部の端縁部(底面側を除く)に細幅の面取り加工を施しているのに対して,願書記載本意匠部分は,上面側のフレーム部の上面内側の端縁部のみに細幅の面取り加工を施している点,
が相違する。

オ 本願意匠と願書記載本意匠の類否判断
(ア)意匠に係る物品と部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願意匠と願書記載本意匠は,意匠に係る物品が共通しているが,本願意匠と願書記載本意匠には,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に脚部を含むか否かの相違があり,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が相違していると認められ,この相違は,意匠の要旨を全く異にするものであって,本願部分と願書記載本意匠部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。

(イ)形態の共通点の評価
共通点(A)の,略縦長直方体状箱体の本体の各辺を構成するフレーム部を,すべて均一の幅とし,フレーム部を本体各面と約45度の角度となるテーパー状として,上面側フレーム部4本及び側面側フレーム部4本がそれぞれ接続する本体上面の四隅部分を丸く形成している形態は,本願意匠と願書記載本意匠の輪郭を構成する目立つ部分の形態ではあるが,この形態は,直方体状箱体の各辺を面取り加工したような形態であり,立体物の造形として極めて特徴的な形態であるとはいえないから,この共通点(A)は,本願部分と願書記載本意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものではあるが,この共通点のみをもって本願部分と願書記載本意匠部分が類似するものであると決定づけるには至らないものである。

(ウ)形態の相違点の評価
しかし,相違点(a)の,本願部分は,全体を,12本のフレーム部によって略直方体状枠体のような形態としているのに対して,願書記載本意匠部分は,全体を,四隅が対角線方向に張り出した略正方形状の脚部を底面とし,8本のフレーム部によって上面側及び側面側の辺を構成した有底の略直方体状枠体のような形態としている点については,形態が相違する部分は主として空気清浄機下端寄りの部分ではあるが,これらの形態は,本願部分及び願書記載本意匠部分全体の骨格を成す形態であり,この相違点(a)は,看者に与える視覚的印象を異ならしめるに十分な相違であるといえ,本願部分と願書記載本意匠部分の類否判断に与える影響は大きい。

他方,相違点(b)の,本願部分は,平面視略横長長方形状,正面視やや縦長の長方形状となる縦,横,奥行きの長さとしているのに対して,願書記載本意匠部分は,平面視略正方形状,正面視略縦長長方形状となる縦,横,奥行きの長さとしている点については,本願部分の構成比も願書記載本意匠部分の構成比も従来から多様に存在する空気清浄機の縦,横,奥行きの範囲内のものであって,看者の注意を惹くような特徴的な構成比であるとはいえず,どちらも縦長の空気清浄機のフレーム部であるとの共通の印象を覆すほどのものとはいえないから,この相違点(a)が本願部分と協議対象部分の類否判断に与える影響は小さい。
また,相違点(c)の,本願部分は,すべてのフレーム部の端縁部(底面側を除く)に細幅の面取り加工を施しているのに対して,願書記載本意匠部分は,上面側のフレーム部の上面内側の端縁部のみに細幅の面取り加工を施している点は,面取り加工の幅が狭く,とりたてて目立っておらず,また,本願部分と願書記載本意匠部分全体を見たときには,平面視略正方形状であって略縦長直方体状箱体の本体の各辺を構成するフレーム部を,すべて均一の幅とし,フレーム部を本体各面と約45度の角度となるテーパー状とした,本願部分と願書記載本意匠部分の形態の共通点に埋没する程度の相違であるといえ,この相違点(b)が本願部分と願書記載本意匠部分の類否判断に与える影響は微弱である。

(エ)総合判断
そうすると,上記のとおり,本願意匠と願書記載本意匠は,意匠に係る物品が共通し,形態の具体的態様に共通点が認められるものの,その共通点が類否判断に与える影響は一定程度にとどまるのに対し,本願意匠と願書記載本意匠は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が相違しており,意匠の要旨を異にするものであるとともに,形態の具体的態様についても類否判断に大きな影響を与える相違点が認められるから,本願部分と願書記載本意匠部分は類似せず,本願意匠と願書記載本意匠は類似しない。

2 本願意匠と協議対象意匠の対比,及び類否判断
ア 意匠に係る物品
本願意匠と協議対象意匠の意匠に係る物品は,ともに「空気清浄機」であるから一致する。

部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分と協議対象意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下,「協議対象意匠部分」という。)は,ともに本体と脚部によって構成された空気清浄機の,本体のフレーム部分であるから,本願部分と協議対象意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。

ウ 本願部分と協議対象意匠部分の形態の共通点
本願部分と協議対象意匠部分は,
(A)全体を,12本のフレーム部によって略直方体状枠体のような形態としている点,
(B)フレーム部をすべて均一の幅とし,フレーム部を本体各面と約45度の角度となるテーパー状として,全フレーム部12本がそれぞれ接続する本体上面及び下面の四隅部分を丸く形成している点,
(C)すべてのフレーム部の端縁部(底面側を除く)に細幅の面取り加工を施している点,
が共通する。

エ 本願意匠と協議対象意匠の形態の相違点
本願部分と協議対象意匠部分は,
(a)本願部分は,平面視略横長長方形状,正面視やや縦長の長方形状となる縦,横,奥行きの長さとしているのに対して,協議対象意匠部分は,平面視略正方形状,正面視略縦長長方形状となる縦,横,奥行きの長さとしている点,
(b)フレーム部の幅が,本願部分は広幅であるのに対して,協議対象意匠部分は細幅である点,
が相違する。

オ 本願意匠と協議対象意匠の類否判断
本願意匠と協議対象意匠は,意匠に係る物品が共通し,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通しているから,以下,本願部分と協議対象意匠部分の形態の共通点,及び相違点が類否判断に及ぼす影響を評価し,判断する。

(ア)形態の共通点の評価
共通点(A)の,全体を,12本のフレーム部によって略直方体状枠体のような形態としている点については,これらの形態は,本願部分及び協議対象意匠部分全体の骨格を成す形態であり,看者に共通する視覚的印象を看者に強く与えているものであるといえ,この共通点(A)は,本願部分と協議対象意匠部分の類否判断に与える影響は大きい。
そして,共通点(B)の,フレーム部をすべて均一の幅とし,フレーム部を本体各面と約45度の角度となるテーパー状として,全フレーム部12本がそれぞれ接続する本体上面及び下面の四隅部分を丸く形成している点については,この形態は,直方体状箱体の各辺を面取り加工したような形態であり,立体物の造形として極めて特徴的な形態であるとはいえないが,フレーム部の具体的形態であるから,看者は前記共通点(A)の形態とこの共通点(B)の形態を総合してひとつのまとまったフレーム部の具体的形態として認識するのであり,この共通点(B)の形態は,前記共通点(A)が両意匠の類否判断に与える影響をさらに増大させているものといえる。
しかし,共通点(C)の,すべてのフレーム部の端縁部(底面側を除く)に細幅の面取り加工を施している点については,面取り加工の幅が狭く,とりたてて目立っておらず,本願部分と協議対象意匠部分全体を見たときには,僅かな部分の共通点であるといえるから,この共通点(C)が本願部分と協議対象意匠部分の類否判断に与える影響は微弱である。

(イ)形態の相違点の評価
相違点(a)の,本願部分は,平面視略横長長方形状,正面視やや縦長の長方形状となる縦,横,奥行きの長さとしているのに対して,協議対象意匠部分は,平面視略正方形状,正面視略縦長長方形状となる縦,横,奥行きの長さとしている点については,本願部分の構成比も協議対象意匠部分の構成比も従来から多様に存在する空気清浄機の縦,横,奥行きの範囲内のものであって,看者の注意を惹くような特徴的な構成比であるとはいえず,どちらも縦長の空気清浄機のフレーム部であるとの共通の印象を覆すほどのものとはいえないから,この相違点(a)が本願部分と協議対象部分の類否判断に与える影響は小さい。
また,相違点(b)の,フレーム部の幅が,本願部分は広幅であるのに対して,協議対象意匠部分は細幅である点については,本願部分のフレーム部の幅は協議対象意匠部分よりも広いものではあるが,その幅の相違の程度は僅かなものであり,本願部分と協議対象意匠部分全体を見たときには,共通点(A)及び共通点(B)が看者に与える視覚的印象に埋没する程度の相違であるといえ,この相違点(b)も,本願部分と協議対象部分の類否判断に与える影響は小さい。

(ウ)総合判断
そうすると,上記のとおり,本願意匠と協議対象意匠は,意匠に係る物品が共通し,また,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通しており,さらに,形態の具体的態様に相違点がいくつか認められるものの,それらの相違点はいずれも本願部分と協議対象意匠部分の類否判断に与える影響が小さいのに対して,形態の共通点(A)及び共通点(B)が本願部分と協議対象意匠部分の類否判断に与える影響は大きく,形態の共通点及び相違点を総合的に評価すると,形態の各共通点,特に共通点(A)及び共通点(B)があいまって生じる視覚的効果が,相違点のそれを凌駕しており,意匠全体として需要者に共通する美感を起こさせていることから,本願部分と協議対象意匠部分は類似し,本願意匠と協議対象意匠は類似する。

3 本願意匠が意匠法第9条第2項後段の規定に該当するか否かについて

本願意匠と協議対象意匠は,前記2のとおり,類似するものであり,本願と協議対象意匠の意匠登録出願は同日に出願されたものであるから,意匠法第9条第2項の規定のとおり,意匠出願人の協議により定めた一の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。しかし,本願と協議対象意匠の意匠登録出願は,同人による意匠登録出願であるから,どちらか一方を本意匠とし,もう一方を同法第10条第1項に規定されている関連意匠とすることで,同法第9条第2項の規定にかかわらず両出願とも意匠登録をすることができる。
そうすると,平成27年10月19日に提出した本願に対する手続補正書によって,本願の本意匠を協議対象意匠に変更する補正を行うとともに,同日に提出された協議対象意匠の意匠登録出願に対する手続補正書によって,協議対象意匠の意匠登録出願の本意匠の表示を削除する補正を行ったから,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠として意匠登録を受けることができ,意匠法第9条第2項後段の規定に該当しないものとなった。


第5 むすび

したがって,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審においてさらに審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

上記のとおりであるから,本願は登録すべきものである。
別掲
審決日 2015-11-25 
出願番号 意願2014-7525(D2014-7525) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越河 香苗 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 久保田 大輔
小林 裕和
登録日 2016-01-08 
登録番号 意匠登録第1543508号(D1543508) 

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