ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 F4 |
---|---|
管理番号 | 1335203 |
審判番号 | 不服2017-12847 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-30 |
確定日 | 2017-12-05 |
意匠に係る物品 | 包装用箱 |
事件の表示 | 意願2016- 17920「包装用箱」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,本意匠を意願2016-17914号(意匠登録第1578277号)(以下,「本意匠」という。)とする関連意匠の意匠登録出願として,平成28年(2016年)8月23日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「包装用箱」とし,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠 本願の願書に記載した本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)8月23日に出願されたものであって,平成29年(2017年)5月12日に意匠権の設定の登録がなされた,意願2016-17914号(意匠登録第1578277号)の意匠であって,その意匠は,意匠に係る物品を「包装用箱」とし,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本意匠において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本意匠実線部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,としたものである。 その具体的な理由として,両意匠共に包装用箱として物品が共通しているが,本意匠実線部分と本願実線部分とを比較した場合,本願実線部分は正面視下方に容器模様が配されており,また,その他文字が正面視全体に配され,さらに右上方向に矩形模様も配されていること等から,本願意匠と本意匠は,意匠としての特徴が異なっているものと判断される,としたものである。 第3 当審の判断 以下,本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)を対比することにより,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行い,本願意匠が,本意匠に類似するか否かについて検討する。 1.両意匠の対比 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「包装用箱」であるから,一致する。 (2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願実線部分と本意匠実線部分(以下,「両部分」という。)は,いずれも製品を収納した状態で店頭で陳列販売される場合等において,需要者の目を惹くように視覚的な工夫がなされる模様を主たる要素とした部分に係るものであるから,部分意匠としての用途及び機能は一致する。 また,両部分は,いずれも全体が扁平な直方体形状の箱体の正面側表面部全体である,縦横比が約1.4:1の縦長長方形状の領域について,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分としたものであるから,部分意匠としての位置,大きさ及び範囲は共通する。 (3)形態 両部分の形態については,主として,以下の共通点及び相違点が認められる。 (3-1)共通点 部分全体の縦長長方形状の領域(以下,「全体領域」という。)内において,全体領域の横幅の約60%を占める,縦横比が約2.3:1の縦長長方形状の領域(以下,「長方形領域」という。)と,全体領域の横幅の約33%を占める,上辺を水平とし,右辺及び左辺を垂直とし,下辺を右上がりの傾斜直線とする,縦長台形状の領域(以下,「台形領域」という。)とを,左右横並びに配置し,長方形領域については,全体領域の上端,下端,左端及び台形領域の左辺との間に,狭く等幅の帯状余地部を設けて配置し,台形領域については,右辺は全体領域の右端と接し,縦幅は全体領域の半分程度として,全体領域の上下方向中央よりやや上方に配置し,長方形領域と台形領域は,いずれも周囲の余地部よりも暗調子である点において,両部分の形態は共通する。 (3-2)相違点 (A)本願実線部分は,全体領域内の右上,すなわち,台形領域の上方に,台形領域よりもやや横幅の狭い,縦横比が約1:2.3の横長長方形状の白色領域(以下,「白色領域」という。)と,縦横比が約1:4.3の横長長方形状の区画線(以下,「右上長方形区画線」という。)とを,上下縦並びに配置し,全体領域内の右下,すなわち,台形領域の下方に,台形領域の約1/3の横幅とする,縦横比が約1:2.6の横長長方形状の区画線(以下,「右下長方形区画線」という。)を配置しているのに対し,本意匠実線部分は,白色領域,右上長方形区画線及び右下長方形区画線を,いずれも配置していない点において,両部分の形態は相違する。 (B)本願実線部分は,長方形領域内,台形領域内,白色領域内,右上長方形区画線内,右下長方形区画線内,台形領域下方及び右下長方形区画線下方において,文字及び数字を配置しているのに対し,本意匠実線部分は,これらの文字及び数字を,いずれも配置していない点において,両部分の形態は相違する。 (C)本願実線部分は,全体領域下方の左右方向中央よりやや右側,すなわち,長方形領域の右下部分と台形領域下方の余地部とにまたがる部分に,面積比率が全体領域の約6%の大きさの点眼薬の容器模様(以下,「容器模様」という。)を配置しているのに対し,本意匠実線部分は,容器模様を配置していない点において,両部分の形態は相違する。また,本願実線部分は,長方形領域の右下部分が,容器模様により隠された態様となっているため,当該部分において,長方形領域の形状としても,両部分の形態は相違する。 2.両意匠の共通点及び相違点の評価 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。 (3)形態 (3-1)両部分の共通点の評価 両部分の共通点である,長方形領域と台形領域とを左右横並びに配置した態様は,両意匠の出願日前の公知意匠には見られない,両意匠にのみ特有の態様であり,また,長方形領域と台形領域とは,併せて,面積比率が全体領域の約80%にも及ぶ広い範囲を占め,両部分全体の模様の骨格を構成しており,両部分の共通性を強く印象づけるものであるから,共通点が両部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響は大きい。 (3-2)両部分の相違点の評価 相違点(A)は,白色領域,右上長方形区画線及び右下長方形区画線の有無に関する相違点であるが,これらは,面積比率が全体領域の0.5%から2%程度の大きさであり,視覚的に目立つものではなく,長方形領域及び台形領域と比較しても,非常に小さなものであることから,上記の共通点がもたらす強い印象に埋没する程度のものであり,相違点(A)が両部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響は極めて小さい。 相違点(B)は,長方形領域内,台形領域内,白色領域内,右上長方形区画線内,右下長方形区画線内,台形領域下方及び右下長方形区画線下方における文字及び数字の有無に関する相違点であるが,これらの文字及び数字は,本願の包装用箱の内部に収納される点眼薬について,その名称,成分及び効能等の情報を表示したものであり,いずれも専ら情報伝達のために使用されるものであるから,これらの文字及び数字そのものは,意匠の構成要素として評価することはできず,相違点(B)が両部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響は微弱である。 相違点(C)は,容器模様の有無に関する相違点であるが,容器模様の有無により,長方形領域の右下部分の形状が相違するものの,本願実線部分の長方形領域が容器模様により隠された輪郭形状は,右辺上方から連続する直線状の部分であり,特徴的な輪郭形状が容器模様により隠されているわけではないから,容器模様が,本願実線部分全体に及ぼす影響は微弱であって,両部分の長方形領域の形状が共通する印象を大きく損なう程のものとはいえない。したがって,相違点(C)が両部分の形態に関する類否判断に及ぼす影響は小さい。 3.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠を対比した場合,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が共通するとともに,両部分の形態においても,共通点の類否判断に及ぼす影響が相違点のそれを凌駕し,看者に共通の美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似するものと認められる。 第4 むすび 以上のとおり,本願意匠は,本意匠に類似するものであり,かつ,本願は,その本意匠に係る出願と同日に同一人が出願したものであり,また,本意匠の意匠権について専用実施権が設定されていないから,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する関連意匠として意匠登録を受けることができるものである。 したがって,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2017-11-22 |
出願番号 | 意願2016-17920(D2016-17920) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(F4)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 成田 陽一 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
竹下 寛 江塚 尚弘 |
登録日 | 2017-12-22 |
登録番号 | 意匠登録第1595692号(D1595692) |
代理人 | 特許業務法人R&C |