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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L2
管理番号 1338192 
審判番号 不服2017-9661
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-30 
確定日 2018-01-05 
意匠に係る物品 消波ブロック 
事件の表示 意願2015- 25063「消波ブロック」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,2015年10月22日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴って,平成27年(2015年)11月9日の意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「消波ブロック」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定おける拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

「本願意匠は、消波ブロックに係るものであり、形態については、2つの略円柱状の部材を正面視垂直と水平に奥行き方向に若干距離を置いて配置して、各々の軸方向の中央部でその2つを略円柱状の部材で連結したものです。
この種物品分野では、2つの略紡錘形状の部材を正面視垂直と水平に奥行き方向に若干距離を置いて配置して各々の軸方向の中央部で、その2つを略柱状の部材で連結したものが本願出願前より公然知られています(意匠1)。
また、消波ブロックを構成する部材のうち、上記垂直材、水平材及び連結材に様々な形状のものを採用することは、本願出願前よりすでに行われている手法です(意匠2及び意匠3)。さらに、消波ブロックを略円柱状を組み合わせて構成したものが本願出願前より公然知られています(意匠4)。
そうすると、本願意匠は、意匠1の消波ブロックの垂直材、水平材及び連結材に意匠2及び意匠3の手法に基づいて、意匠4に見られる略円柱状を採用したものに過ぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。

意匠1: (別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
昭和50特許出願公開第078134号
第1図に表された消波ブロックの意匠

意匠2:(別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1421547号の意匠

意匠3:(別紙第4参照)
特許庁発行の公開特許公報発行記載
特開2004-270348
図1ないし図7に表されたコンクリートブロックの意匠

意匠4:(別紙第5参照)
特許庁発行の登録実用新案公報記載
実用新案登録第3011790号
図1ないし図3に表されたテトラポッドの意匠」

第3 当審の判断

以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。
(1)本願意匠の認定
本願意匠の意匠に係る物品は,「消波ブロック」であって,その形態は,同形同大の2つの円柱部材を,やや径の小さい円柱部材によって,軸方向の中央で90度の角度をなすように連結したものである。
そして,詳細には,端部をなす同形同大の2つの部材(以下「端部材」という。)を直径と長さの比が1:3の円柱とし,端部材を連結する部材(以下「連結部材」という。)を,端部材より極僅かに縮径した円柱としたもので,その直径と長さの比は1:1.4であって,連結部材によって形成される端部材同士の間隔は,端部材の直径と同程度である。また,意匠に係る物品の説明の記載及び断面図によれば,2つの端部材及び連結部材からなる消波ブロック全体の表面を被覆した外殻を有するものである。
(2)意匠1ないし4の認定
(ア)意匠1
発明の名称を「消波ブロックによる堤体」とする公開特許公報に第1図として掲載された,「消波ブロック」であって,その形態は,同形同大の2つの端部材を,連結部材によって90度の角度をなすように連結したものであって,端部材は長手方向の中央が細幅の正8角柱で,両先端が8角錐台状にすぼまっており,連結部は,端部材中央の正8角柱と断面形状を同じくする正8角柱である。そして詳細には,端部材の最大幅と長さの比は約1:4で,最大幅に対して端部の幅は約3分の2であって,連結部材によって形成される端部材同士の間隔は,端部材の最大幅の約2倍である。また,連結部材と端部材は同幅で両側面が面一に連続している。
(イ)意匠2
意匠に係る物品を「乱積用根固めブロック」とする意匠であって,その形態は,両端がすぼまった2つの同形同大の端部材を,連結部材によって90度の角度をなすように連結したものであって,端部材は長手方向中央から両端にかけてすぼまった断面形状が略ホームベース形の5角錐台で,連結部材は,両端部材中央の最大幅部分を角部とする四角柱である。そして詳細には,端部材の最大幅と長さの比は約1:2で,最大幅に対して端部の幅は約10分の7であって,連結部材によって形成される端部材同士の間隔は,端部材の最大幅の約0.17倍である。また,稜部には細幅の面取りが施されており,連結部材の角部は端部材の中央の角部と直線状に連続している。
(ウ)意匠3
発明の名称を「コンクリートブロック」とする公開特許公報に第1図ないし第7図として掲載された,消波工,被覆工,根固工等に用いられるコンクリートブロックであって,その形態は,約120度の角度で二股をなして先端がすぼまった2つの同形同大の端部材を,連結部材によって90度の角度をなすように連結したものであって,端部材は長手方向中央から両端にかけてすぼまった断面形状が略8角形の変形8角錐台で,連結部は,端部材中央の正8角柱と断面形状を同じくする正8角柱である。そして詳細には,端部材の最大幅と長さの比は約1:2.1で,最大幅に対して端部の幅は約5分の3であって,連結部材と端部材は側面視して三角形のくさび状の傾斜面を介して対応する面同士が連続しており,連結部材によって形成される端部材同士の間隔は,端部材の最大幅の約0.3倍である。また,稜線には細幅の面取りが施されている。
(エ)意匠4
考案の名称を「テトラポット(登録商標)」とする登録実用新案公報に第1図ないし第3図として掲載された,砂地に固定するテトラポットであって,その形態は,上面が略半球をなす中央部から,平面視して約120度の角度で斜め下方に3本の円柱状部材を延設したものである。そして詳細には,円柱部材の直径と上面を除く円柱部分の長さの比は約1:3である。また,円柱部材の末端には面取りは施されていない。
(3)本願意匠の創作容易性について
この種物品分野において,同形同大の端部材を連結部材によって90度の角度をなすように連結した態様は,意匠1ないし3に示すように本願の出願前に公然知られていることから,本願意匠の2つの端部材と連結部材の基本的な配置構成については,容易に想到することができたといえる。
しかしながら,具体的な態様について検討すると,端部材については,衝撃によって角部が破損することを考慮すれば,傾斜面や曲面によって端部に向かってすぼまった態様とすることが一般的な手法と考えられるところ,意匠1ないし3については,いずれも長手方向の両端がすぼんだ態様をなしており,2つの端部材が90度の角度をなす用に連結した消波ブロックにおいて,本願意匠のように,端部材が直柱体をなす態様は見られない。なお,意匠4に円柱を構成部材とするテトラポットが見られるが,当該テトラポットは3本の円柱を外形が三角錐をなすように連結したもので,3本の円柱が集まって半球状の頂部を形成しており,複雑な構成であって,単なる円柱の組合せではないから,当該テトラポットの円柱部分のみを抽出して本願意匠の端部材に置き換えたということはできない。そして,連結部材については,端部材と同様の直柱体からなる態様のものは見られず,また,連結部材が端部材よりも小径で,端部材中央の切断面において,端部材が連結部材より膨出する態様もほかには見られないものであり,2つの端部材の間隔も本願意匠と同様のものは見られない。さらに,端部材と連結部材からなる消波ブロック全体の表面を被覆した外殻を有する態様もほかには見られない。
してみると,本願意匠は,端部材と連結部材の配置構成については,意匠1ないし3に基づいて創作が容易であると認められるものの,各部の具体的な構成については,円柱を構成部材とする態様や消波ブロック全体の表面を被覆した外殻を有する態様はこの種物品分野においては特殊なものであり,本願意匠に特有のものであって,意匠1ないし4からは,当業者であれば容易に想到することができたとする根拠を見いだすことができない。
したがって,原査定における拒絶の理由での意匠1ないし4に基づいて,当業者が容易に本願意匠を創作することができたということはできない。

第4 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規程に該当しないものであり,原査定の理由によっては,本願を拒絶するべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-12-14 
出願番号 意願2015-25063(D2015-25063) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 住 康平 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 温品 博康
渡邉 久美
登録日 2018-03-09 
登録番号 意匠登録第1600709号(D1600709) 
代理人 山口 修之 

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