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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B3
管理番号 1339239 
審判番号 不服2017-15864
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-26 
確定日 2018-04-10 
意匠に係る物品 ブレスレット 
事件の表示 意願2016- 10716「ブレスレット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,アメリカ合衆国への2015年11月24日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成28年(2016年)5月19日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「ブレスレット」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのもので,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとし,その拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁普及支援課が2008年(平成20年)5月22日に受け入れた2008年4月30日発行の国際事務局意匠公報(CD-ROM番号:No03/2008)に記載された国際意匠登録第DM/069 854号(意匠番号7)のブレスレットの意匠(本願意匠の意匠登録を受けようとする部分の相当部分)(特許庁意匠課公知資料番号第HH20501584号)(以下「引用意匠」という。)であって,その形態は,同頁に掲載された写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の対比
(1)意匠に係る物品
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,いずれも「ブレスレット」であり,両意匠の意匠に係る物品は一致する。
(2)本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
まず,本願部分は,略倒C字形状のブレスレットの周側面の凹状溝(以下「凹状溝」という。)の部分であって,引用部分は,本願部分に相当する同様の部分であるから,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。
(3)両部分の形態
また,両部分の形態については,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両意匠を対比するため,引用意匠の図の向きを本願意匠の図の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定し,対比する。
(3-1)共通点
(A)部分全体を,略倒C字形状のブレスレットの凹状溝の部分とした点,
(B)凹状溝を斜めから見ると上方中央の縦幅をやや幅広とし,下方側に向かうにつれて徐々に細幅とした点,
(C)側面視した実線部分を上下に凹部のある略H字状とした点,
において共通する。
(3-2)差異点
(ア)側面視した全体の厚みに対する凹状溝の幅の比について,本願部分は,約1:0.56で凹状溝の幅が狭いのに対して,引用部分は,約1:0.71で,本願部分より凹状溝の幅が広い点,
(イ)A-A線で断面視した態様について,本願部分は,両端部が角張っているのに対して,引用部分は,断面視が不明である点,
(ウ)凹状溝と板状体の関係について,本願部分は,凹状溝の上方寄りが深めで下方寄りが浅めであるのに対して,引用部分は,上方寄りと下方寄りがほぼ同様の深さであり,上方寄りの深さが本願部分の方が引用部分よりも深めである点,
において差異が認められる。

4.類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,一致している。
(2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通している。
(3)両部分の形態
以下,両部分の形態について検討する。
なお,両部分を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ両部分の形態を認定し,対比する。
(3-1)共通点
まず,共通点(A)については,部分全体を,略倒C字形状のブレスレットの周側面の凹状溝の部分とした態様が共通するものではあるが,この種の物品分野においては略倒C字形状のブレスレットの周側面の凹状溝は,両意匠以外にも既に見られるありふれた態様といえるもので,両部分のみに認められる格別の特徴とはいえず,部分全体の基本構成が共通している点のみでは両部分を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)について,凹状溝を斜めから見ると上方中央の縦幅をやや幅広とし,下方側に向かうにつれて徐々に細幅とした態様は,この種の物品分野においては,他にも既に見られる態様といえるものであり,格別目立つ態様とはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにすぎない。
また,共通点(C)の側面視した実線部分を上下に凹部のある略H字状とした態様についても,他にも見られる格別の特徴とはいえないものであって,目立つものとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにすぎない。
そうして,共通点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(3-2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,差異点(ア)の側面視した全体の厚みに対する凹状溝の幅の比については,この種のブレスレットの物品分野においては,使用時に手にとって着用するものであり,その幅の違いについても需要者が注意を払う点であり,着用した場合の使用感も異なるもので,凹状溝の幅が狭い本願部分の態様は,シャープな印象を与えるもので,本願部分より凹状溝の幅が広い引用部分は,やや平坦な印象を与えるもので,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(イ)のA-A線で断面視した態様について,両端部が角張っている本願部分の態様は,断面視が不明である引用部分の態様とは,明らかに異なるもので,その差異は無視することができず,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
そして,差異点(ウ)の凹状溝と板状体の関係について,凹状溝の上方寄りが深めで下方寄りが浅めである本願部分の態様は,変化のある印象を需要者に与えるもので,上方寄りと下方寄りがほぼ同様の深さである引用部分は,シンプルな印象を与えるものであるから,その差異を無視することができず,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。

(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通するものであるが,両部分の形態における差異点が看者に与える意匠的効果が共通点のそれを凌駕し,両部分全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-03-23 
出願番号 意願2016-10716(D2016-10716) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山永 滋田村 佳孝 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
斉藤 孝恵
登録日 2018-04-20 
登録番号 意匠登録第1604242号(D1604242) 
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所 
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所 

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