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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L1 |
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管理番号 | 1341135 |
審判番号 | 不服2017-18997 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-21 |
確定日 | 2018-05-25 |
意匠に係る物品 | 足場支柱用敷板 |
事件の表示 | 意願2016- 28578「足場支柱用敷板」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年12月28日の意匠登録出願であって、平成29年6月9日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年7月14日に意見書が提出されたが、平成29年9月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年12月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「足場支柱用敷板」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである(別紙第2参照)。 引用意匠 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2015年 6月 1日 受入日 特許庁意匠課受入2015年 7月 3日 掲載者 アスクル株式会社 表題 【ASKUL】アラオ (エコ)ワイドベースk角兼用 120角 AR122 1枚 489-8214 (取寄品)通販 - アスクル(法人向け) 掲載ページのアドレス http://www.askul.co.jp/p/K975267/ に掲載された「足場ジャッキベース」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ27010189号) 第4 当審の判断 1.意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「足場支柱用敷板」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「足場ジャッキベース」であって、表記は異なるが、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも、住宅等の建築現場において使用される足場用支柱の下端部に、主に足場の沈下防止の目的で取り付けられる敷板であるから、共通するものである。 2.形態の対比(以下、対比のため、本願意匠の図面における向きを、引用意匠にもあてはめることとする。) (1)共通点 基本的構成態様として、 ア.全体を、略矩形状薄板とし、その正面部、すなわち、設置時の上面部において、中央に円形孔を形成し、上辺中央やや左寄りから左辺全体に、略鈎形に屈曲した等幅太帯状の突出部を密着して段差状に設け(以下「左辺突出部」という。)、右下隅部に、左辺突出部の帯幅と同幅で縦の長さが全長の半分よりやや短い略縦長矩形状の突出部を右辺に密着して段差状に設け(以下、「右辺突出部」といい、「左辺突出部」と「右辺突出部」を合わせて「両辺突出部」という。)、さらに右辺突出部の上端右隅から右辺端部に沿って上辺まで、細幅の突条を一体状に設けたものである点。 具体的な態様として、 イ.両辺突出部の段差部において、略長方形状の係止片を、左辺突出部の上端部近傍、屈曲部直下、上下中央やや下側と、右辺突出部の上端部と左端部上方寄りに、それぞれ1つずつ、合計5個設けている点、 ウ.略矩形状薄板の、上記イ.の5個の係止片と重なる位置に、それぞれ係止片と相似形の略長方形状の孔を形成している点、 (2)相違点 具体的な態様として、 あ.平面視外形状について 本願意匠は、ごく小さな隅丸の正方形であるのに対し、引用意匠は、上端右隅の角部は直角で、それ以外の3つの角部は、大きな隅丸の略正方形である点、 い.両辺突出部の帯幅の長さと全幅(1辺)の長さの比率について 本願意匠は、約1:5であるのに対し、引用意匠は、約1:4である点、 う.突条の横幅の長さと全幅の長さの比率について 本願意匠は、約1:27であるのに対し、引用意匠は、約1:77である点、 え.係止片の態様について (え.-1)本願意匠は、5個の係止片を、いずれも両辺突出部の段差部において、突出部上面より若干低い位置に段落ちして設けているのに対し、引用意匠は、5個の係止片を、いずれも両辺突出部の段差部において、突出部上面より高い位置に段上がりに設けている点、 (え.-2)本願意匠は、各係止片の左右の角部をそれぞれ斜めに切り欠き、その上面に、縦長矩形状の浅溝を3本、短手方向に等間隔に形成しているのに対し、引用意匠は、各係止片の左右の角部を隅丸状とし、上面は平坦面で、浅溝は形成していない点、 お.背面部の態様について 本願意匠は、外周に沿ってリブ部を設け、中央寄りにこれより一回り小さい正方形状のリブ部を設けて、外周リブ部と正方形状リブ部を複数の直線状リブ部で繋いで外周寄りに複数の矩形状リブ部を形成し、正方形状リブ部の内側には、円形孔と3個の略長方形状の孔に沿ってそれぞれリブ部を形成し、さらに円形リブ部からは8本の直線状リブ部を放射状に形成したものであるのに対し、引用意匠は、背面図がないため背面部の態様が不明である点、 か.上面部の突起の態様について 本願意匠は、左辺突出部の屈曲部近くと右辺突出部の左端部脇にそれぞれ円形の小突起を1つずつ設けているのに対し、引用意匠は、左辺突出部の上下端部寄りにそれぞれ略鈎状の小突起を1つずつ設けている点、 き.色彩の有無について 本願意匠は、線図(形状)のみであるのに対し、引用意匠は、黄土色に着色し、略右側半分に略半円状模様が同心円状に複数現されている点。 3.類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 両意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態については、以下のとおりである。 (1)共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点ア.は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから、これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また、具体的な態様としてあげた共通点イ.及びウ.もこの種物品の先行意匠に照らすと、いずれもありふれた態様であって、両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 (2)相違点の評価 相違点あ.の平面視外形状における相違について、本願意匠は、四隅の角をごく小さく隅丸とした正方形であるのに対し、引用意匠は、上端右隅のみ角の立った直角で、それ以外の3つの角は、大きな隅丸としたものであり、変形した略正方形であるから、需要者に一見して異なる印象をもたらすものであって、両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 次に、相違点い.について、本願意匠の両辺突出部の帯幅は、引用意匠の両辺突出部の帯幅に比べて細幅であることに加え、左辺突出部の上辺側の横の長さは両意匠ともに帯幅の約2倍で同じであるのに、両者の帯幅が異なるため、本願意匠の左辺突出部は、上端が少し横に突出した程度の長さで、左辺突出部全体としてみると、引用意匠に比べて縦が強調されて、細身のすらりとした印象を与えており、両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 また、相違点う.について、本願意匠の突条は、引用意匠の突条に比べて太く、頑丈な印象を与えているのに対し、引用意匠の突条は、幅狭で、華奢な印象を与えるもので、見た目の印象が明確に異なるものであり,その相違は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 そして、相違点え.の係止片の態様における相違について、まず、(え.-1)の取り付けられる位置の相違についてであるが、個々の係止片自体は小さいものの、その取り付けられる位置を、突出部上面より若干低い位置としたものか、突出部上面より高い位置としたものかの違いは、立体的な高低差の相違として感得できることから、非常に目立つものであり、また、当該係止片は、足場支柱を挟み込む重要な役割を担うものであるところ、本願意匠のように、係止片を突出部上面より低い位置に取り付けることによって、係止片の破損や作業時の事故等を軽減できるものであるから、取り付けられる位置の相違は、需要者にとって関心の高い事項であるといえ、また、(え.-2)の係止片の形態の相違も相俟って、需要者に与える印象が異なるもので,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 さらに、相違点お.の背面部の態様について、すなわち、本願意匠は、リブ部が、背面部全体を小さな区画に区分けするように形成されているものであるが、当該箇所は、使用時には背面側に隠れてしまう比較的目立ちにくい箇所であるとはいえ、足場の加重が掛かるこの種敷板にとって、強度を左右する背面部のリブ部の構成は、需要者の関心をひくものであり、無視できるものではないから、背面部の開示のない引用意匠との比較において、その相違は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 一方、相違点か.の上面部の突起の態様について、本願意匠は、左辺突出部の屈曲部近くと右辺突出部の左端部脇にそれぞれ円形の小突起を1つずつ設けているのに対し、引用意匠は、左辺突出部の上下端部寄りにそれぞれ略鈎状の小突起を1つずつ設けたものであるが、それぞれの小突起は、いずれもごく小さなものであって、さほど目立つものではないことから、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものといえる。 また、相違点き.についても、本願意匠は、形状について意匠登録を受けようとするものであるから、色彩等の有無における相違が、両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといえる。 (3)小括 そうすると、両意匠は、意匠に係る物品は、共通し、形態においては、共通点が、未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が、両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、相違点の印象は、共通点の印象を凌駕し、両意匠は、意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-05-09 |
出願番号 | 意願2016-28578(D2016-28578) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 住 康平 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 宮田 莊平 |
登録日 | 2018-06-29 |
登録番号 | 意匠登録第1609511号(D1609511) |
代理人 | 福島 三雄 |