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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C3
管理番号 1342066 
審判番号 不服2017-15380
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-17 
確定日 2018-07-11 
意匠に係る物品 ごみ容器 
事件の表示 意願2016- 24045「ごみ容器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月4日の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年3月27日付け:拒絶理由の通知
平成29年5月22日 :意見書の提出
平成29年7月27日付け:拒絶査定
平成29年10月17日 :審判請求書の提出
平成29年12月18日 :手続補正書の提出(審判請求書の【請求の理由】の変更)

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「ごみ容器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
引用意匠は、以下のとおりである。
電気通信回線の種類 :インターネット
掲載確認日(公知日) :2010年9月27日
受入日 :特許庁意匠課受入2010年10月1日
掲載者 :アスクル株式会社
表題 :リス 連結ワンハンドペール 45J ニーナグリーン 通販 - アスクル
掲載ページのアドレス :http://www.askul.co.jp/webapp/shops-club/servlet/YProductImgSpreadDisplayView?partNumber=2705194&screenID=GF00601010&pictureType=2
に掲載された「ごみ箱」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ22039704号)(別紙第2参照)

第4 対比
1 意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、意匠に係る物品の記載によれば、本願は「ごみ容器」であり、引用は「ごみ箱」であって、表記は異なるものの、いずれも開閉できる蓋部を容器部の上に設けたごみ箱であるから、共通する。

2 形態
両意匠を対比する(以下、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にあてはめることとする。)と、両意匠の形態については、以下のとおり、共通点及び相違点がある。
(1)形態の共通点
(共通点1) 両意匠は、全体が、縦長で有底中空の逆四角錐台状の容器部と、平面が平滑面状の伏せた矩形浅盆状の蓋部から構成されたものである点。
(共通点2) 容器部は、上端全周に折り返し面を細幅で形成し、正背面部の中央よりやや左端部寄りと右端部寄りにそれぞれ折り返し面のほぼ倍の幅の縦長の係合部を設け、正面と背面で合計4本設けている点。
(共通点3) 蓋部は、平面視で、左側を、外側に短辺の幅よりやや短い角状に突き出し、そこに縦長矩形状の孔を設けて把持部としている点。

(2)形態の相違点
(相違点1) 容器部の開口部長辺側の正背面部の2本の係合部の間の折り返し面の幅について、本願意匠は、当該折り返し面の幅を左右の上端全周の幅と同じにしているのに対し、引用意匠は、係合部と同じ幅にして、結果、正面視で係合部と折り返し面は一体となって横長矩形状となっている点。
(相違点2) 蓋部の全体の構成態様について、本願意匠は、平面視で左側に突き出た態様を倒立台形状とし、正面視及び側面視で蓋部の周囲に段差を一段設けて蓋部に厚みをもたせ、正面視で蓋部の平滑面をその中央よりやや右寄りの付近が頂点となる緩やかな凸弧状としているのに対し、引用意匠は,平面視で左側に突き出た態様を縦長矩形状とし、正面視及び側面視で蓋部の周囲に段差は設けずに蓋部に厚みはさほどもたせず、正面視で蓋体の平滑面を左下がりの直線状としている点。
(相違点3) 蓋部の平面のうち矩形状の孔の周囲の表面の態様について、本願意匠は、蓋部から突き出た部分を倒立台形状の凹陥状とし、その左半分に矩形状の孔を設けているのに対して、引用意匠は、凹部を形成せず、平面視で蓋本体部分の左側に突き出た部分から蓋本体部分の左側およそ3分の1の位置まで、蓋部の表面を薄く凸面状とした平滑な矩形状部とし、その左端に矩形状の孔を設けている点。

第5 判断
1 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、共通する。

2 形態の共通点及び相違点の評価
(1)形態の共通点
(共通点1)の、全体を、縦長で有底中空の逆四角錐台状の容器部と、平面が平滑面状の伏せた矩形浅盆状の蓋部から構成している点は、いずれも、このごみ容器の物品分野において既に極普通に見られるに過ぎないものであるから、両意匠のみに見られる格別の特徴とはいえず、また、(共通点2)の、容器部の構成のうち、上端全周に折り返し面を細幅で形成し、正背面部の中央よりやや左端部寄りと右端部寄りにそれぞれ折り返し面のほぼ倍の幅の縦長の係合部を設け、正面と背面で合計4本設けている点も、(共通点3)の、蓋部の構成のうち、平面視で、左側を、外側に短辺の幅よりやや短い角状に突き出し、そこに縦長矩形状の孔を設けて把持部としている点も、いずれも普通に見られる態様であって看者の注意を惹くものとはいえない。よって、(共通点1)ないし(共通点3)は、いずれも類否判断の要素としては評価が小さいものであり、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(2)形態の相違点
(相違点1)の容器部の開口部長辺側の正背面部の2本の縦長の係合部の間の折り返し面の幅の差異については、本願意匠は、当該折り返し面の幅を左右の上端全周の幅と同じにして、当該係合部が折り返し面から独立して形成されている印象を与えるのに対して、引用意匠は、係合部の幅と同じにして、正面視で係合部と折り返し面とを一体として横長矩形状とすることで、係合部を伴う横長矩形状の持ち手にもなり得るような印象を与えている。他のごみ容器と連結するための係合部は通常看者の注意を惹くところであることも考慮すると、この相違点における態様は印象を異にするものであり、(相違点1)は、類否判断に一定程度の影響を及ぼすものである。
(相違点2)の蓋部の全体の構成態様の相違については、本願意匠が蓋部の周囲に段差を一段設けて蓋部に厚みをもたせ、正面視で蓋部の平滑面をその中央よりやや右寄りの付近が頂点となる緩やかな凸弧状としていることから、あたかもハンチング帽のような印象を与える構成態様とするのに対して、引用意匠は蓋部の周囲に段差は設けずに蓋部に厚みはさほどもたせず、正面視で蓋体の平滑面を左下がりの直線状としていることから、あたかもくさびのような印象を与える構成態様とするものとしており、この種のごみ容器は通常斜め上から眺めるものであって蓋部の全体の構成態様がまず視界に入ることを考慮すると、この相違点における構成態様は両意匠の印象を異にするものであり、また、(相違点3)の蓋部の平面のうち矩形状の孔の周囲の表面の態様の相違については、この種のごみ容器が把持部分を握って蓋の開閉を行うものであり、当該把持部を握る際に矩形状の孔の周囲の表面の態様もおのずと目にするから、(相違点2)における態様の相違とあいまって、(相違点3)における態様も両意匠の印象を異にするものであり、(相違点2)及び(相違点3)は、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
よって、(相違点1)が類否判断に一定程度の影響を及ぼすものとしても、(相違点2)及び(相違点3)は、類否判断に及ぼす影響が大きく、これら相違点があいまった視覚的効果を考慮して総合すると、相違点は両意匠を別異のものと印象づけるものである。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に判断した場合、両意匠は、容器部の開口部長辺側の正背面部の2本の結合部の間の折り返し面の幅の相違、蓋部の全体の構成態様の相違、及び蓋部の平面のうち矩形状の孔の周囲の表面の態様の相違があり、縦長で有底中空の四角錐台状の容器部及び平面が平滑面状の伏せた矩形浅盆状の蓋部から成る構成と、容器部の上端全周に折り返し面を細幅で形成し、正背面部の中央よりやや左端部寄りと右端部寄りにそれぞれ折り返し面のほぼ倍の幅の縦長の係合部を設け、正面と背面で合計4本設けて、平面視で、蓋部の左側を、外側に短辺の幅よりやや短い角状に突き出し、そこに縦長矩形状の孔を設けて把持部とした各部の態様が共通するとしても、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定づけるに至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを大きく凌駕するものであるから、両意匠の形態は類似しないものである。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通するが、その形態においては類似しないものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、本願については、原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-06-05 
出願番号 意願2016-24045(D2016-24045) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桐野 あい 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
宮田 莊平
登録日 2018-07-27 
登録番号 意匠登録第1611507号(D1611507) 

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