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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K6 |
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管理番号 | 1344891 |
審判番号 | 不服2018-6567 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-14 |
確定日 | 2018-09-25 |
意匠に係る物品 | 実験器具用ピペットチップ |
事件の表示 | 意願2017- 9426「実験器具用ピペットチップ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年4月28日(パリ条約による優先権主張2016年10月28日、アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、平成29年8月29日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年11月29日に意見書が提出されたが、平成30年3月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年5月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「実験器具用ピペットチップ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、特許庁意匠課が平成24年(2012年)3月9日に受け入れた、電気通信回線の種類:インターネット、掲載確認日(公知日):平成24年(2012年)3月5日、掲載者:VWR Scientific Produsts(当審注:Productsの誤記と認められる。)、掲載ページのアドレス:https://media.vwr.com/stibo/low_res/4672085.jpgに掲載された「ピペットチップ」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23077729号)であり、その形態を、同掲載ページに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「実験器具用ピペットチップ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「ピペットチップ」であるが、いずれも測定機等のピペット先端に取り付けられ、ピペッティング作業に用いられる管状のチップであり、試料等の溶液を正確に注ぎ分けることを主たる機能とするものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通する。 2 形態の対比 (1)形態の共通点 (共通点1)両意匠は、ピペットチップ本体(以下「本体部」という。)の形態において、本体部上端側部分を、その外形を大径の略逆円錐状とし、下に向かって漸次僅かに窄まる筒状(以下「上方円筒部」という。)に形成し、一段の段差を設けて、その下方部分を、その外形を上方円筒部より小径の略逆円錐状とし、下に向かって漸次窄まる筒状(以下「下方円筒部」という。)に形成した点で共通する。 (共通点2)両意匠は、本体部の上端開口部の形態において、略中空円板状の鍔部を形成している点で共通する。 (共通点3)両意匠は、上方円筒部の形態において、その約下半分部分の周側面に、縦方向の上端部が尖った凸状筋模様を等間隔に6条形成している点で共通する。 (2)形態の相違点 (相違点1)本願意匠の下方円筒部の形態が、上方円筒部の約4倍の長さとし、下方円筒部の上端部から約2/7の位置に一段目の段差部を設け、下端部から約1/14の位置に二段目の段差部を設けて、段差部を経るに従い下方部分が上方部分よりわずかに小径になるように形成しているのに対し、引用意匠の下方円筒部の形態は、上方円筒部の約2倍の長さとし、下に向かって段差なく漸次窄まるように形成している点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠では、筋模様が、上方円筒部表面部の凸状筋模様上端部の位置、下方円筒部表面部の上端部から約1/7の位置、及び下方円筒部内周面部の一段目の段差部からやや下方の位置に、周方向に1条形成されているのに対し、引用意匠では、筋模様が、上方円筒部内周面部の凸状筋模様上端部の位置に、周方向に1条形成されている点で、両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠の凸状筋模様の断面形状が、略半円形状であるのに対し、引用意匠の凸状筋模様の断面形状が、明確でない点で、両意匠は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するので同一である。 2 形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、いずれもピペッティング作業に用いられる管状のチップであり、その内部に取り入れた試薬等の溶液を正確に注ぎ分けるという機能を有し、その使用方法は、測定機等のピペット先端に取り付けられるものであるから、需要者は、ピペットへの取り付け部分や、ピペットチップ内にどの程度まで試薬等を入れるか等のピペッティング作業の状況を踏まえた上で、両意匠に係る物品を観察するものであるといえる。 したがって、ピペットへの取り付け部分やピペットチップ本体部の具体的な構成態様が、需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。 (1)形態の共通点 (共通点1)は、両意匠の本体部の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)における鍔部の形態及び(共通点3)における凸状筋模様を等間隔に6条形成した態様は、この種物品分野におけるピペットチップ上端部の形態として本願意匠出願前には既に多数見られるものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないものであるから、これら(共通点2)及び(共通点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (2)形態の相違点 (相違点1)は、本体部の具体的な構成態様に係るものであって、本願意匠が、段差部分で区切って見れば、上方円筒部、下方円筒部上方部分、下方円筒部下方部分、下方円筒部下端部分の4つの部分からなるものであって、縦に細長い筒状のものであるとの印象であるのに対して、引用意匠は、上方円筒部及び下方円筒部の2つの部分からなる単調な形態のものであって、本願意匠に比べればやや短い筒状のものであるとの印象であるから、両意匠は本体部の具体的な構成態様の美感に大きな差異がある。 (相違点2)における周方向の筋模様の有無は、ピペッティング作業の際の試薬量の目安等に用いられることも鑑みれば、両意匠は本体部に施された筋模様の有無によって生じる美感に一定の差異がある。 (相違点3)は、凸状筋模様の形態についての断面形状に係る相違点であるが、意匠全体の大きさに照らすと、細部における相違にすぎず、この(相違点3)が、両意匠の美感に与える影響は小さいといえる。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、上記2の前文のとおり、ピペットチップ本体部の具体的な構成態様が需要者の注意を強く惹く部分であるところ、両意匠は、上記2(2)のとおり、本体部の具体的な構成態様の美感には大きな差異があり、周方向の筋模様の有無によって生じる美感にも一定の差異があるといえる。そうすると、全体の概括的な態様、鍔部の形態及び凸状筋模様を等間隔に6条形成した態様が共通することを考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。 第6 むすび 以上のとおりであって、原審が引例した引用意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから、本願については、原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-09-12 |
出願番号 | 意願2017-9426(D2017-9426) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小柳 崇 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2018-10-05 |
登録番号 | 意匠登録第1616625号(D1616625) |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 秀策 |