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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1344902 
審判番号 不服2018-7785
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-06 
確定日 2018-10-02 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2017-18806「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成29年(2017年)8月31日の意匠登録出願であって,同年12月21日付けの拒絶理由の通知に対し,平成30年2月19日に意見書が提出されたが,同年3月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年6月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。破線部分は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分以外の部分である。なお,『参考平面図』において,赤色で着色した部分が意匠登録を受けようとする部分に相当する。」(以下,本願意匠において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,日本国特許庁発行の意匠公報に記載された,意匠登録第1538603号(意匠に係る物品,包装用容器)の意匠における鍔部の形状であり,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1.意匠に係る物品の対比
意匠に係る物品は,両意匠共に「包装用容器」である。

2.両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比
本願部分は,全体を肉薄に一体成形し,上面が開口した,平面視で略正方形の皿形容器における,開口部の外周縁から水平方向外方に張り出した鍔部と,鍔部から斜め下方へ延出するスカート部と,スカート部下周端から水平に張り出した耳端部の部分であって,皿形容器の鍔部,スカート部及び耳端部から成る部分に対応する位置,大きさ及び範囲を有し,包装用容器の鍔部,スカート部及び耳端部の用途及び機能を有している。これに対して,引用意匠における本願部分に対応する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」という。)は,全体を肉薄に一体成形し,上面が開口した,平面視で略角丸正方形の皿形容器における,開口部の外周縁から水平方向外方に張り出した鍔部と,鍔部から斜め下方へ延出するスカート部と,スカート部下周端から水平に張り出した耳端部の部分であって,皿形容器の鍔部,スカート部及び耳端部から成る部分に対応する位置,大きさ及び範囲を有し,包装用容器の鍔部,スカート部及び耳端部の用途及び機能を有している。

3.両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
(1)共通点について
ア.容器の開口部の外周縁から水平方向外方に張り出した鍔部がある点,
イ.鍔部から斜め下方へ延出するスカート部がある点,
ウ.スカート部下周端から水平に張り出した耳端部がある点,
エ.鍔部の平面視形状につき,エ-1.外縁は,辺部分が一番大きな円弧で,角部分が一番小さな円弧で構成しており,エ-2.内縁は,辺部分が2番目に大きな円弧で,角部分が3番目に大きな円弧で構成している点,
オ.鍔部の平面視における各部の幅につき,辺部分の中央幅が一番狭く,角部分の斜め方向(対角線方向)の幅が,一番広い点,
が認められる。

(2)相違点について
ア.辺部分の外縁と内縁の曲率につき,本願部分は,辺部分の中央から角部分に向かって幅が徐々に広くなる曲率であるのに対して,引用部分は,辺部分の中央から角部分に向けて同幅に表れる曲率である点,
イ.外縁の形状につき,本願部分は,ほぼ直線状の辺部分と,ごく小さな円弧の角部分から成っているのに対して,引用部分は,やや膨出した辺部分と,中ぐらいの円弧の角部分から,三味線胴形状に成っている点,
ウ.内縁の形状につき,本願部分は,やや膨出した辺部分と,中ぐらいの円弧の角部分から,三味線胴形状に成っているのに対して,引用部分は,短い辺部分と,辺の長さほどを占める大きな円弧から成っている点,
エ.スカート部の長さにつき,本願部分は,鍔部の辺部分の中央における幅の約3分の1であるのに対して,引用部分は,約6分の1である点,
オ.鍔部の各角部分のポチ(ごく小さな円形凸部)につき,本願部分は,ポチを設けているのに対して,引用部分は,設けていない点,
が認められる。

第5 判断
1.意匠に係る物品に対する判断
意匠に係る物品は,両意匠共に「包装用容器」であるから,一致している。

2.両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の判断
両部分共に,皿形容器の鍔部,スカート部及び耳端部に対応する位置,大きさ及び範囲で,包装用容器の鍔部,スカート部及び耳端部の用途及び機能を有しているから,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は一致している。

3.両部分における形状の評価
(1)共通点
共通点ア.ないしウ.については,この種物品分野においてはごくありふれた形状であるから,類否判断に与える影響はない。
共通点エ.及び同オ.については,概括的な形状であり,この概括的な形状は,この種物品分野においてはありふれた形状と認められるから,類否判断に与える影響は限定的である。

(2)相違点
相違点ア.ないしウ.については,部分全体を構成する基本的かつ具体的形状であり,これらの点によって,本願部分は,直線的でシャープな視覚的印象を与えているのに対して,引用部分は,全体的に丸みを帯びた軟らかい印象を与えているものであるから,両部分の類否判断に与える影響は,非常に大きい。
相違点エ.については,ごく小さな部位ではあるが,外側という目に付きやすい部分の相違であり,両部分の類否判断に与える影響は,一定程度認められる。
相違点オ.については,ごく限られた部位におけるごく小さなポチの有無という小さな相違であり,かつ,容器の角部分にポチを配することは従来から見られる形状であり,新規な特徴とは認められないことから,両部分の類否判断に与える影響は,限定的である。

4.両部分における形状の類否判断
以上のとおり,共通点ア.ないしオ.によっては,両部分の類否判断を決するものとまではいえないのに対して,相違点ア.ないしウ.による形状の相違は,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,相違点エ.を加えるまでもなく,両部分の類否判断を決するものといえる。
よって,本願部分の形状と引用部分の形状は,部分における全体観察においては類似しないと認められる。

5.両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が一致しているが,両部分の形状が,上記のとおり類似しないから,本願意匠と引用意匠とは類似しないものといえる。

第6 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当することはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-18 
出願番号 意願2017-18806(D2017-18806) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 成田 陽一 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2018-10-12 
登録番号 意匠登録第1617274号(D1617274) 
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 

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