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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K0
管理番号 1345915 
審判番号 不服2018-2382
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-20 
確定日 2018-10-02 
意匠に係る物品 塗装用スプレーガン 
事件の表示 意願2017- 2795「塗装用スプレーガン」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年(2017年)2月14日(パリ条約による優先権主張2016年8月19日、域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠))の意匠登録出願であって、平成29年5月29日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年9月6日に意見書が提出されたが、平成29年11月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年2月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「塗装用スプレーガン」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
引用意匠は、中華人民共和国意匠公報(公報発行日:2016年7月27日)に記載された、「スプレーガン(公開番号CN303753376S)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH28004656号)であって、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「塗装用スプレーガン」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「スプレーガン」であるが、いずれも塗料を空気で吹き付ける塗装用のスプレーガンであるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するものである。

2 形態の対比
本願意匠と引用意匠の形態を対比すると、両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、引用意匠の図面について図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし、本願意匠の左側面図の側をスプレーガンの前方側、本願意匠の右側面図の側をスプレーガンの後方側、本願意匠の正面図の側をスプレーガンの左側面側、本願意匠の背面図の側をスプレーガンの右側面側として、以下記載する。
(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体を、スプレーガンの前方側に塗料吐出口部分(以下「空気キャップ」という。)を形成した本体(以下「本体部」という。)の後方側底面部分に、空気量調節部分(以下「空気量調節部」という。)を設け、さらに空気量調節部の底面側に握り手部分(以下「グリップ」という。)を設け、本体部の右側面側上端部分に回転可能に取り付けられた板体(以下「サイドプレート」という。)と一体的に形成されたトリガーを配設し、そのトリガーを握ることで塗料が吐出するハンドガンのような構成態様とした点で共通する。
(共通点2)両意匠は、本体部の形態を、略平行四辺形状の板体(以下「略平行四辺形板状体」という。)の後方側下端部に、略横L字状の小さな板体(以下「後方小板状体」という。)を一体的に形成した形態とし、略平行四辺形板状体の前方側上端部に後方側に傾斜した略L字状の切り欠き部を形成して略円筒状の塗料カップ取付け部を設け、略平行四辺形板状体の後方側上端部に略横L字状の板体からなるフックを形成し、略平行四辺形板状体の前方側の空気キャップとの連結部分を、略短円柱の左右側面部分に円弧状に表れる切り欠きを形成した形態とし、略平行四辺形板状体の後方側に塗料吐出量調節部分(以下「塗料吐出量調節部」という。)を設け、後方小板状体の左側面側に略短円柱状のパターン調節用のネジ(以下「パターン調節ネジ」という。)を1つ配設した点で共通する。
(共通点3)両意匠は、空気キャップ部の形態を、周側面に凹状筋模様を多数形成した略円柱部分の前方側端部に、前面側中央部分に塗料を吐出する空気孔を形成した扁平な略円錐状の蓋部を設け、この蓋部に空気孔を挟んで一対の略直角台形柱状の角状部を対向して突設した点で共通する。
(共通点4)両意匠は、塗料吐出量調節部を、略円柱状とし、後方小板状体の上面部分と接して配設し、その後方側端部に、周側面に凹状筋模様を多数形成し、この凹状筋模様を施した周側面の中央やや前方寄りの部分に周方向の凹条溝を1条形成した態様からなる略円柱状の塗料吐出量調節用ネジ部分(以下「塗料吐出量調節ネジ」という。)を1つ配設した点で共通する。
(共通点5)両意匠は、パターン調節ネジの形態を、周側面に凹状筋模様を多数形成した略短円柱形状とした点で共通する。
(共通点6)両意匠は、空気量調節部の形態を、略円柱状とし、その前方側端部にトリガーと接するニードルを配し、その後方側端部に周側面に凹状筋模様を多数形成した略円柱状の空気量調節用ネジ部分(以下「空気量調節ネジ」という。)を1つ配設した点で共通する。
(共通点7)両意匠は、グリップの態様を、右側面側から見て略倒立J字状とし、後方側左右角部を円弧状に面取りし、後方側下方部分を後方に膨出して形成し、下端部に空気接続口を設けた態様からなる後方グリップと、左側面側から見て略倒立J字状とし、前方側左右角部を円弧状に面取りし、上端部が前方に突出した、後方グリップの約1/2の高さからなる前方グリップを、連結した態様である点で共通する。
(共通点8)両意匠は、トリガーの形態を、左側面側からみて略J字状に形成し、前方側からみて左右辺の角部を後方側に湾曲した態様とした点で共通する。

(2)形態の相違点
(相違点1)本願意匠の前方及び後方グリップの連結部分の形態が、両グリップの下端部で連結した形態であるのに対し、引用意匠の前方及び後方グリップの間の形態が、前方及び後方グリップを前方グリップと同じ高さの部材を介して連結した形態である点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠のサイドプレートの形態及びその配置態様が、サイドプレートの上端部にのみピンを1つ配設した略五角形状の板体を、スプレーガンの右側面側にのみ取り付けているのに対し、引用意匠のサイドプレートの形態及びその配置態様が、サイドプレートの上端部及び中央部にピンを1つずつ配設した、略五角形状の板体の後方側下方部分を大きく切り欠いたものを、スプレーガンの左右両側面に取り付けている点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠は、物品の形状のみに係る出願であって無模様であるのに対し、引用意匠は、そのグリップの表面に市松模様、本体部から空気量調節部の表面にかけて植物をモチーフにしたような模様が施されている点で、両意匠は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するから、同一である。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、手に持って使用される塗装用スプレーガンであるから、需要者は、その操作性の良し悪しという観点から、両意匠に係る物品を観察するものであり、また、スプレーガンの本体内に塗料が残留しないように使用後には内部の清掃を頻繁に行うものであるから、手入れのし易さといった観点でも両意匠に係る物品を観察するということができる。
したがって、操作性の観点からは、各調節ネジやサイドプレートと一体的に形成されたトリガー等の操作に係る部位が需要者の注意を強く惹く部分であるとともに、手入れのし易さの観点からは、スプレーガンを掛けるためのフック等が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。
(1)形態の共通点
(共通点1)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)ないし(共通点8)における各部の形態は、この種物品分野において既に見られる形態(参考意匠:米国非営利法人インターネットアーカイブが運営するWayBackにより2015年6月29日付けで保存・公開されている、株式会社カナイのホ-ムページ「PRO HONPO」に掲載された「スプレーガン(SATAjet 5000B)」の意匠、インターネットアーカイブのURL:https://web.archive.org/web/*/http://www.protoolshop.net/spraygun/sata/5000rp.htm、別紙第3参照)であるから、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、これらの(共通点2)ないし(共通点8)が意匠全体の美感に与える影響は小さいといえる。

(2)形態の相違点
(相違点1)は、前方及び後方グリップの連結部分の形態に係るものであって、本願意匠が、スプレーガンを逆様に掛けることのできる略U字状の大きなフックとして使用できる形態であるのに対して、引用意匠は、前方及び後方グリップが1つの塊となっており、フックとして使用できない形態であるから、需要者の注意を強く惹く部分となるフックとして使用可能なものか否かの相違は大きく、両意匠は前方及び後方グリップの連結部分の形態の美感に大きな差異がある。
(相違点2)は、サイドプレートの形態及びその配置態様に係る部位に係るものであって、本願意匠が、左側面側に設けられたパターン調節ネジの使用時に、その操作の邪魔にならないように、サイドプレートを右側面側のみに設けたものであり、サイドプレート自体の形態も切り欠きの無い大きな略五角形状としたものであって、しっかりとしたものとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、サイドプレートをパターン調節ネジのある左側面側にも設けたものであり、サイドプレート自体の形態もその後方側下方部分をパターン調節ネジの操作を妨げないように大きく切り欠いたものであって、線の細い華奢なものとの印象を与えるから、両意匠は需要者の注意を引く操作性に影響する部位であるサイドプレートの形態及びその配置態様の美感にも大きな差異がある。
(相違点3)は、表面に施された模様の有無についての相違点であるが、無模様である本願意匠の形態と、表面全体に目に付く模様が施された引用意匠の形態では、それを観察する需要者に異なる印象を与えるから、両意匠は表面全体の美感に一定の差異がある。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記2の前文のとおり、スプレーガンの操作性に係る部位や手入れのし易さに係る部位が需要者の注意を強く惹く部分であるところ、上記2(2)のとおり、需要者の注目する部位である、前方及び後方グリップの連結部分の形態やサイドプレートの形態及びその配置態様の美感には大きな差異がある。また、表面に施された模様の有無においても美感に一定の差異がある。そうすると、両意匠は、全体の態様や各部の形態が共通することを考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-20 
出願番号 意願2017-2795(D2017-2795) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K0)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小柳 崇 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2018-11-02 
登録番号 意匠登録第1618963号(D1618963) 
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所 

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