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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20189405 | 審決 | 意匠 |
不服20186200 | 審決 | 意匠 |
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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7 |
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管理番号 | 1345918 |
審判番号 | 不服2018-1816 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-08 |
確定日 | 2018-10-11 |
意匠に係る物品 | いす |
事件の表示 | 意願2015- 25362「いす」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年11月12日の意匠登録出願であって,その後の手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 7月26日付け:拒絶理由の通知 平成28年 9月 5日 :意見書の提出 平成29年10月31日付け:拒絶査定 平成30年 2月 8日 :審判請求書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「いす」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 そして,本願意匠の形状は,基本的な構成として, (1)背もたれ部と座部を一体的に形成した湾曲板状の本体と,座部下面に接続された丸パイプの脚により構成したものであって, (2)本体は,背もたれ部から座部にかけて凹湾曲状に窪み,背もたれ部と座部が左側面視で略L字状を呈し, (3)4本の脚部が,座部の四方端部近傍から,外方にやや広がりながら下方に延び, (4)本体と脚の高さの比率を,1:1強としている。 さらに,具体的な形状として, (5)背もたれ部は,正面視でやや角張った靴べらの先端部形状を呈し,左右方向に湾曲しつつ略上半部が後方に湾曲し,さらに上端部が細幅で大きく後方に反り返り,略下半部の左右の縦辺部も後方に僅かに反り返り,平面視で略倒三日月形,左側面視で緩やかな略逆S字状を呈し, (6)座部は,平面視で略馬蹄形を呈し,座部の中央部分は後部から中央付近にかけて緩やかに浅く凹湾曲しつつ前部及び側部が下方に反り返り,正面視及び左側面視で略水平直線状を呈し,座部表面には4つのネジ頭状の小円形が現れており, (7)脚は,右脚部と左脚部から成り,当該左右の脚部は側面視で略倒コ字状で前脚と後脚を形成しており,左右の脚部の上側の水平部にて2本の横桟によって接続し,左右の水平部の内側に本体と連結する断面倒コ字状の棒材を設け,それらの棒材の前後両端部付近に小円孔を設けている。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する,というものである。 拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成23年10月11日)に記載された,意匠登録第1424696号(意匠に係る物品,椅子)の意匠であり,その形状は,同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 そして,引用意匠の形状は,基本的な構成として, (1)背もたれ部と座部を一体的に形成した湾曲板状の本体と,座部下面に接続された丸パイプの脚により構成したものであって, (2)本体は,背もたれ部から座部にかけてが凹湾曲状に窪み,背もたれ部と座部が左側面視で略L字状を呈し, (3)4本の脚部が,座部の四方端部近傍から,外方にやや広がりながら下方に延び, (4)本体と脚の高さの比率を,1:1強としている。 さらに,具体的な形状として, (5)背もたれ部は,正面視でやや角張った靴べらの先端部形状を呈し,左右方向に湾曲しつつ略上半部が後方に湾曲し,平面視で略倒三日月形,左側面視で緩やかな略逆S字状を呈し, (6)座部は,平面視でやや角張った靴べらの先端部形状を呈し,左右方向に湾曲しつつ略前半部が下方に湾曲し,正面視で略倒三日月形,左側面視で緩やかな略倒S字状を呈し, (7)本体の表面全体に,起伏のごく小さな多数の横筋状凹凸を形成し, (8)座部下面の中央に,略扁平円柱形の係止部のカバーを設け,そこから4本のパイプが放射状に延び,座部の端部近傍で屈曲して脚部になり,屈曲するやや手前に,本体にパイプを固定する略小円柱形の係止具を設けている。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「いす」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「椅子」であって,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。 2 形状の対比 (1)形状の共通点 (共通点1)背もたれ部と座部を一体的に形成した湾曲板状の本体と,座部下面に接続された丸パイプの脚により構成している点において,両意匠は共通する。 (共通点2)本体は,背もたれ部から座部にかけてが凹湾曲状に窪み,左側面視で略L字状を呈している点において,両意匠は共通する。 (共通点3)4本の脚部が,座部の四方端部近傍から,外方にやや広がりながら下方に延びている点において,両意匠は共通する。 (共通点4)本体の高さより,脚の高さの方がやや高い点において,両意匠は共通する。 (共通点5)背もたれ部は,正面視でやや角張った靴べらの先端部形状を呈し,左右方向に湾曲しつつ略上半部が後方に湾曲し,平面視で略倒三日月形,左側面視で緩やかな略逆S字状を呈している点において,両意匠は共通する。 (2)形状の相違点 (相違点1)背もたれ部の形状について,本願意匠は,上端部が細幅で大きく後方に反り返り,略下半部の左右の縦辺部も全体湾曲と逆方向に僅かに反り返っているのに対し,引用意匠は,当該2つの反り返りがない点において,両意匠は相違する。 (相違点2)座部の形状について,本願意匠は,平面視で略馬蹄形を呈し,座部の中央部分は後部から中央付近にかけて緩やかに浅く凹湾曲しつつ前部及び側部が下方に反り返り,正面視及び左側面視で略水平直線状を呈しているのに対し,引用意匠は,平面視でやや角張った靴べらの先端部形状を呈し,左右方向に湾曲しつつ略前半部が下方に湾曲し,正面視で略倒三日月形,左側面視で緩やかな略倒S字状を呈している点において,両意匠は相違する。 (相違点3)座部表面について,本願意匠は,座部表面に4つのネジ頭状の小円形が現れているのに対し,引用意匠は,当該小円形が現れていない点において,両意匠は相違する。 (相違点4)本体表面の凹凸について,引用意匠は,背もたれ部及び座部の本体表面全体に起伏のごく小さな多数の横筋状凹凸を形成しているのに対し,本願意匠は,当該凹凸がない点において,両意匠は相違する。 (相違点5)脚の上部と本体への係止部について,本願意匠の脚は,右脚部と左脚部から成り,当該左右の脚部は側面視で略倒コ字状で前脚と後脚を形成しており,左右の脚部の上側の水平部にて2本の横桟によって接続し,左右の水平部の内側に本体と連結する断面倒コ字状の棒材を設け,それらの棒材の両端部付近に小円孔を設けているのに対し,引用意匠は,座部下面の中央に,略扁平円柱形の係止部のカバーを設け,そこから4本のパイプが放射状に延び,座部の端部近傍で屈曲して脚部になり,屈曲するやや手前に,本体にパイプを固定する略小円柱形の係止具を設けている点において,両意匠は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 2 形状の共通点及び相違点の評価 (1)基本的な構成につき 共通点1は,両意匠の基本的な構成態様であるが,この構成は,この種物品分野においては,従来見られるありふれた構成であって,両意匠のみの特徴には成り得ず,両意匠の類否判断に及ぼす影響はほとんどない。 共通点2は,背もたれ部と座部が一体化したいすの形状としてごく一般的なありふれたものであって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 共通点3は,丸パイプの脚を持ついすにおける類型化した一態様としてありふれたものにすぎず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 共通点4の本体と脚の高さの比率は,従来から用途によって様々な比率のいすが見られる中で,両意匠の比率はほぼ同じであることから,両意匠には共通感が生じ,類否判断に一定程度の影響を及ぼすといえる。 (2)本体の具体的形状につき いすにおいて,背もたれ部及び座部は身体に接し,その使用感に大きく関わるから,本体は需要者の注意を引く部分であり,また,前記(1)のとおり,両意匠の本体の基本的な構成はごく一般的なものであるから,需要者は本体のより具体的な形状に注目するといえる。 まず,背もたれ部については,共通点5によって,一見共通感が生じるが,相違点1によって,別異な立体と認識し得るものであって,また,相違点4のとおり,表面全体の横筋状凹凸の有無にも違いがあることを考慮すると,共通点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまる。 次に,座部については,相違点2のとおり,両意匠において大きく形状が異なり,両意匠は座部の美感に大きな差異があり,相違点3の4つのネジ頭状の小円形が座部表面に現れているか否かは部分的なものとしても,相違点4の横筋状凹凸は引用意匠の表面全体に現れる目立つものであるから,相違点2は,相違点4と相まって,両意匠の類否判断に及ぼす影響が非常に大きい。 そして,引用意匠の本体部は背もたれ部と座部の形状がおおむね共通しているため,背もたれ部と座部とが線対称形に近い印象を受けるものと認められるのに対し,本願意匠の本体部は背もたれ部と座部の形状が大きく異なり,線対称形の印象を生じさせることはないものであって,上記の座部の美感の差異に加え,本体全体のまとまりとしても,両意匠は異なる印象が強く生じているといえる。 (3)脚の上部と本体への係止部の形状につき 相違点5のとおり,両意匠は,脚の上部と本体への係止部の形状が異なるが,通常の使用状態では見えにくい部分であって,相違点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形状の共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,両意匠は,前記2の(1)のとおり,基本的な構成の共通点及び相違点が,両意匠の形状の類否判断に及ぼす影響は小さいか,一定程度のものであり,前記2の(3)のとおり,脚の上部と本体への係止部の形状の相違点も,両意匠の形状の類否判断に及ぼす影響は小さいものの,前記2の(2)のとおり,需要者が注目する本体の具体的形状について,両意匠は,座部の美感に大きな差異があることを含め,本体全体のまとまりとしても異なる印象が強く,これらの相違点が意匠全体として異なる美感を起こさせ,両意匠の形状の類否判断を決定付けるものといえる。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,その形状において,需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,類似しない。 第6 むすび 以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-09-27 |
出願番号 | 意願2015-25362(D2015-25362) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 竹下 寛 |
登録日 | 2018-11-09 |
登録番号 | 意匠登録第1619380号(D1619380) |
代理人 | 永芳 太郎 |