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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1 |
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管理番号 | 1345933 |
審判番号 | 不服2018-6595 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-14 |
確定日 | 2018-10-24 |
意匠に係る物品 | ハンマー |
事件の表示 | 意願2017- 6713「ハンマー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年(2017年)3月30日の意匠登録出願であって、平成29年9月20日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年10月27日に意見書が提出されたが、平成30年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年5月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、その意匠は、意匠に係る物品を「ハンマー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「正面図、左側面図、平面図、正面図中央横断面図および正面図A-A’線断面図における実線で表した部分が意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることができない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、特許庁が発行した意匠公報(公報発行日:平成28年(2016年)11月21日)に記載された、意匠登録第1563601号(意匠に係る物品、ハンマー)の意匠であって、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものであり、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分を、本願部分に相当する引用意匠の部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「ハンマー」であって、その用途及び機能が一致する。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも腰ベルトに付けたカラビナ等に、落下防止の目的でハンマーを係合するために用いられる、ハンマーヘッドの上面部分に設けられた軸状の係合用部材(以下「軸状部材」という。)の部分であり、この軸状部材を最も重いハンマーヘッドの上面部分に配設することで、腰ベルト装着時には安定して懸吊することができ、ハンマー使用時には係合したカラビナ等から容易に着脱することができるという機能を有する部分であるから、両部分の主な用途及び機能が一致する。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、いずれも、ハンマーヘッドにおける柄が設けられた側とは反対の上面部分に位置し、その軸状部材の大きさ及び範囲もほぼ同様のものであるから、両部分の物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致する。 4 両部分の形態の対比 両部分の形態を対比する(なお、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめることとする。)と、両部分の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 (1)両部分の形態の共通点 (共通点)ハンマーヘッドにおける柄が設けられた側とは反対の上面部分(以下「ハンマーヘッド上面部」という。)に、略「(」(始め丸括弧)」状の軸状部材を、ハンマーヘッド上面部に表れる柄の上端部分を挟むような配置態様で1つ配設している点、 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)本願部分は、軸状部材の具体的な形態が、正面視において、略半円弧状とし、その根元部分が垂直に切断したように表れているのに対して、引用部分は、軸状部材の具体的な形態が、正面視において、略倒放物線状とし、その根元部分がハンマーヘッドの切り欠き形状に合わせて斜めに切断したように表れている点、 (相違点2)本願部分は、ハンマーヘッド上面部に表れる貫通孔の円形部分と軸状部材の間に隙間が表れているのに対して、引用部分には、そのような隙間が表れていない点、 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するから、同一である。 2 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、主な用途及び機能が一致するから、同一である。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。 4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、腰ベルトに付けたカラビナ等に係合し、使用時には容易に着脱することのできる軸状部材付きのハンマーであり、また、高所作業時において重量物であるハンマーの落下を防止する必要から、使用時に誤ってこの軸状部材を破損することがあれば、該部位の修理を行わなければならないものである。 よって、需要者は、使用時における着脱容易性の観点から両意匠に係る物品を観察するものであり、また、修理の容易性の観点から両意匠に係る物品を観察するということができる。 したがって、着脱容易性の観点からは、軸状部材の具体的な形態が需要者の注意を強く惹く部分であるとともに、修理の容易性の観点からは、軸状部材の取付け方法の態様が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。 (1)両部分の形態の共通点の評価 (共通点)である概括的な軸状部材の形態及びその配置態様は、軸状部材付きのハンマーにおいて通常よく見られるものにすぎないから、この共通点が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (2)両部分の形態の相違点の評価 (相違点1)における軸状部材の具体的な形態に係る相違は、作業時におけるハンマーの着脱の容易さを重視する需要者にとって、注意を惹く部位であって、本願意匠がなだらかに湾曲した半円弧の印象であるのに対して、引用意匠は略倒放物線状であり、角丸の略逆Vの字形の印象であるから、両意匠は軸状部材の美感に大きな差異がある。 (相違点2)における貫通孔の円形部分と軸状部材の間に隙間の有無の相違は、破損した軸状部材の交換において、軸状部材の抜き差しが容易にできるものとの印象を与える本願部分のものと、接着若しくは溶接され、破損した軸状部材を簡易に交換できない印象を与える引用部分のものとは、メンテナンスの観点も重視する需要者に異なる美感を与えるものである。 5 両意匠の類否判断 両部分の形態における共通点及び相違点についての評価に基づき、意匠全体として両意匠を総合的に観察した場合、両部分は、需要者の注目する軸状部材の具体的な形態及び貫通孔の円形部分と軸状部材の間に隙間の有無における美感に大きな相違があり、軸状部材の概括的な形態及び配置態様における共通点を考慮したとしても、部分意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一ではあるが、両部分の形態においては、相違点が全体において支配的なものとなっており、部分意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。 第6 むすび 以上のとおりであって、原審が引例した引用意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから、本願については、原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-10-10 |
出願番号 | 意願2017-6713(D2017-6713) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大峰 勝士 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2018-11-02 |
登録番号 | 意匠登録第1619092号(D1619092) |
代理人 | 北上 日出登 |