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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 M2
管理番号 1345937 
審判番号 不服2018-6195
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-07 
確定日 2018-10-26 
意匠に係る物品 消火配管用分岐管 
事件の表示 意願2016- 21553「消火配管用分岐管」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成28年10月 4日 意匠登録出願
平成29年 4月21日付け 拒絶理由通知書
平成29年 6月 2日 意見書提出
平成30年 2月 2日付け 拒絶査定
平成30年 5月 7日 審判請求書提出

第2 本願意匠
本願の意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「消火配管用分岐管」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(以下、「本願意匠」という。)(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、意匠法第9条第1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたものであって、本願意匠が類似するとして、拒絶の理由に引用した意匠は、平成28年(2016年)2月5日に出願され、特許庁が平成29(2017)年1月10日に発行した意匠公報に掲載された意匠登録第1566645(意願2016-002548)の「配管分岐継手」の意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠と合わせて、両意匠という。)であって、その形態は、同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第4 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「消火配管用分岐管」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「配管分岐継手」であって、共に、消火設備の配管に用いられ、主たる管から分岐させて複数の管を配管するために用いるものであるから、両意匠の意匠に係る物品は、共通する。
(2)形態
両意匠の形態を対比すると、主として、以下の共通点と差異点が認められる。
(2-1)共通点
基本的構成態様として、
(A)両意匠は、全体が略倒円筒形状の主管部、長手方向に連なる分配管部、その下方に設けられた4つの分岐管部及び主管部に嵌まったフランジ部から成り、主管部の正面視左側縁部は、鍔状で、分配管部の右側端部は凸球面状に閉じられている。
具体的構成態様として、
(B)正面視で縦横比率は約1:2である点
(C)鍔状の縁部及びドーナツ盤状フランジ部の径の比は約2:3であり、ドーナツ盤状のフランジ部は主管部の鍔状の縁部寄りに摺動可能に設けられ、フランジ部の径と厚みの比は、約17:2であって、周縁寄りに等間隔に4つの小円孔を設けている点、
(D)分配管部は、正面視で全長の左から約3分の1の位置に主管部の径より一回り径の大きい幅広段状部を設けて、主管部から右方に連なっており、下方側に間隔を空けて4つの分岐管が並んで配され、下端側の分岐管の径は、分配管部の径の約5分の2であり、フランジ部寄りの正面視左から1本目から3本目までの分岐管の間隔はほぼ等間隔に設けられたものである点、
が共通している。
(2-2)相違点
具体的構成態様として、
(ア)フランジ部の配置位置について、本願意匠は、主管部の鍔状縁部と接しない、正面視で全長の左から約10分の1の位置にフランジ部が配されているのに対し、引用意匠は主管部の鍔状縁部に接した、全長の左から約25分の1の位置に配されている点、
(イ)分配管部の径は、本願意匠は全長に対し、6.5分の1であるのに対し、引用意匠は約7分の1である点、
(ウ)主管部の態様について、本願意匠は、正面視で、その管体は、鍔状縁部からフランジ部までが次第に右方へ縮径したごくなだらかなラッパ状のものであって、フランジ部を経て、分配管部との接続箇所(幅広段状部)までが分配管部より僅かに縮径した略直管状であるのに対し、引用意匠は、鍔状縁部に接したフランジ部から幅広段状部手前の僅かに右方に縮径する細幅の斜面部までが分配管部と同径の略直管状であって、細幅の斜面部を経た、幅広段状部までが分配管部より僅かに縮径した略直管状のものである点、
(エ)分配管部の態様について、本願意匠は分配管部の下側からほぼ垂直状に設けられた円環状基部に一回り小径の円筒状の分岐管を差し込んで形成されているのに対し、引用意匠は分配管部からほぼ垂直状に設けられた円環状基部から内側に向かってやや凹曲面状の斜状部を経て一回り小径の円筒状の分岐管が一体に形成されている点、
(オ)分岐管の配置について、本願意匠は、4つの分岐管の径と分岐管の間隔の比率が、正面視で左から順に約6:7:6:7:6:11:6で、最も右の分岐管の間隔が他の分岐管の間隔の約1.5倍であるのに対し、引用意匠は、左から順に約6:8:6:8:6:8:6で、分岐管の径に対する分岐管の間隔が、本願意匠より僅かに広く、全てほぼ等間隔に配したものである点、
(カ)色彩について、本願意匠はフランジ部が濃灰色、主管部及び分配管部が青色、分岐管部が黄緑色の色彩が施されているのに対し、引用意匠は、何らの色彩も施されていない点、
で相違している。

2 両意匠の類否
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の意匠全体としての類否を検討し、判断する。
両意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態については、以下のとおりである。
(1)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから、この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また、具体的構成態様としてあげた共通点(B)も、正面視で縦横比率は約1:2であるものは、消火配管用分岐管の物品分野において、よく見られる縦横比率であるから、この点が両意匠にのみ共通する特徴であるとはいえず、共通点(C)は、鍔状の縁部及びドーナツ盤状フランジ部の径の比は約2:3であり、フランジ部の径と厚みの比は、約17:2であって、周縁寄りに等間隔に4つの小円孔を設けている点であるが、消火配管用分岐管を含む管継手の物品分野において、ドーナツ盤状のフランジ部の周縁寄りに等間隔に4つの小円孔を設け、フランジ部の径と厚みの比が約17:2であるものはよく見られる形状であって、鍔状の縁部及びドーナツ盤状フランジ部の径の比は約2:3もよく見られるものである。そして、管の取り付けに際して使用されるフランジ部が開口側縁部寄りに配されるのは、ごく普通の態様であって、主管に通したフランジ部が動かせるもの(ルーズフランジ)であることも、消火配管用分岐管の物品分野に限らず、管継手の物品分野においては、よく見受けられる態様であって、特段、需要者の注意を惹くまでの態様であるとはいえないから、この共通点が類否判断に与える影響は小さい。
共通点(D)は分配管部の態様についてであって、正面視で右から約3分の1の位置に、主管部の径より一回り径の大きい幅広段状部を設けた点は、分配管部の主管部との接続側で見受けられる段状部であって、消火配管用分岐管を含む管継手の物品分野においてはよく見られる態様であり、正面視で主管部右下方側に1列に間隔を空けて4つの分岐管が配されているものも、分岐管の下端側の径が分配管部の径の約5分の2であるものも、また、左方寄りの1本目から3本目の間隔はほぼ等間隔に設けられたものであるものも両意匠のみに共通する態様とはいえず、共通点(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
よって、共通点(A)ないし(D)の両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さく、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(2)相違点の評価
これに対して、両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は、相違点(ア)については、フランジ部の正面視で横方向の位置の相違であって、上記のように両意匠共に摺動可能と認められるから、この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
次に、相違点(イ)は、分配管部の径が、本願意匠は全長に対し、6.5分の1であるのに対し、引用意匠は約7分の1である点であり、(ウ)ともあいまって全体のプロポーションに係る相違であって、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度あるものである。
そして、相違点(エ)分配管部の態様について、本願意匠は分配管部からほぼ垂直状に設けられた円環状基部に一回り小径の円筒状の分岐管を差し込んで形成されているのに対し、引用意匠は分配管部からほぼ垂直状に設けられた円環状基部から内側に向かって僅かに凹曲面状の斜状部を経て一回り小径の円筒状の分岐管が一体に形成されている点であって、部分的ではあるが、分配管部下側に4つ並列して表された態様であって、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
さらに、相違点(オ)は具体的な分岐管の配置態様の相違点であり、本願意匠は、4つの分岐管の径と分岐管の間隔の比率が、正面視で左から順に約6:7:6:7:6:11:6で、最も右の分岐管の間隔が他の分岐管の間隔の約1.5倍であるのに対し、引用意匠は、左から順に約6:8:6:8:6:8:6で、分岐管の径に対する分岐管の間隔が、本願意匠より僅かに広く、全てほぼ等間隔に配したものである点であって、分岐管の配置態様は、消火設備の設置に関係し、需要者も一定の注意を払うところ、本願意匠のように3本目と4本目の間隔が他の分岐管の間隔の約1.5倍である点は、需要者の目を惹く他に見られない独自の態様と認められるから、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
最後に、相違点(カ)は、色彩に係る相違であって、「消火配管用分岐管」の物品分野において、色彩が施されたか否かについては、両意匠の類否判断に与える影響は大きいとはいえないが、本願意匠は、フランジ部が濃灰色、主管部及び分配管部が青色、分岐管部が黄緑色とそれぞれ異なる色彩を施しており、各部材、特にパイプ等を接続する分岐管について、その識別に寄与する色彩について需要者も一定の注意を向けるものと認められるから、各部位ごとに色分けのされた本願意匠と表面態様において各部位ごとにそのような色分けのない引用意匠との相違は、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
そうすると、相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいとしても、相違点(イ)、(ウ)、(エ)及び(カ)は、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものであって、相違点(オ)は両意匠の類否判断に極めて大きな影響を与えるものであるから、それら相違点(ア)ないし(カ)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、相違点は、共通点を凌駕して、両意匠を別異のものと印象づけるものであるから本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。
(3)小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は、共通するが、形態においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく共通点のそれを凌駕しており、両意匠は、意匠全体として別異のものと印象付けられるものであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似しないから、意匠法第9条第1号に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないものということはできず、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
別掲
審決日 2018-10-10 
出願番号 意願2016-21553(D2016-21553) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 外山 雅暁 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 竹下 寛
渡邉 久美
登録日 2018-11-16 
登録番号 意匠登録第1620097号(D1620097) 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 

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