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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B1
管理番号 1345940 
審判番号 不服2018-8401
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-19 
確定日 2018-10-29 
意匠に係る物品 タンクトップ 
事件の表示 意願2017- 18046「タンクトップ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年8月23日の意匠登録出願であって,平成29年12月4日付けの拒絶理由の通知に対し,平成30年1月19日に意見書を提出されたが,平成30年3月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成30年6月19日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「タンクトップ」とし,その形状,模様若しくは色彩またはこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩またはこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることができない意匠)に該当する,というものであり,具体的には以下のとおりである。

「本願意匠と引例意匠は,肩紐の幅等相違する点はあるが,基本形状及びネックラインが共通していて,見る者に共通する美感を与えるものと認められる。

引例意匠(別紙第2参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年7月7日
受入日 特許庁意匠課受入2016年8月5日
掲載者 株式会社ミック
表題 カットセットアップトップ / EDDY GRACE(エディグレース)のTシャツ・カットソー
掲載ページのアドレス
http://roomys-webstore.jp/ap/item/i/A0RW00006A 28#
に掲載された「タンクトップ」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28021798号) 」

第4 当審の判断
1 意匠の認定
(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「タンクトップ」であり,意匠に係る物品の説明には,「前身頃の生地と後身頃の生地を,重ねて接着することにより接合してなるタンクトップである。」と記載されている。

イ 形態
全体について,前身頃と後身頃で構成され,前身頃に襟刳りを設け,袖をつけず袖刳りのままとし,裾は水平に形成されている。また,前身頃と後身頃(以下「両身頃」という。)は無地によって構成されている。
前身頃の襟刳りについては,肩部から胸上部にかけては袖刳り側にむけて僅かに湾曲しながら下降し,胸上部から中央部にかけては,内側に緩やかに下降したあと,中央部に浅い凹部を設けるものとなっており,襟刳りの深さは着丈の約3/11としている。
後身頃の襟刳りについては,その深さを着丈の約2/11とする略U字状としている。
前身頃の袖刳りについて,両肩部が脇上端よりも内側となるように形成されており,肩部から略垂直に降下させたのち緩やかな弧状をなして脇上端につながっている。
後身頃の袖刳りについては,両肩部が脇上端よりも内側となるように形成され,肩部より身頃中央側に向けて降下させたのち凹弧状に刳って脇上端につながっており,前身頃の袖刳りより大きな刳りとなっている。
肩部の幅は,裾幅の約1/8となっており,両脇については,脇上端から脇の略中央部にかけては僅かに身幅を窄め,そこから脇下端の裾にむけては僅かに身幅を拡げるものとしている。
後身頃の両肩部及び両脇部の内側には,それぞれの端部と平行をなす前身頃との接合線が表れている。

(2)引用意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「タンクトップ」である。

イ 形態
全体について,前身頃に襟刳りを設け,袖をつけずに袖刳りのままとし,裾は水平に形成されている。また,前身頃は上下方向の縦縞が連続する畦状の編み目によって構成されている。後身頃については確認できない。
前身頃の襟刳りについては,肩部から胸上部にかけては内側にむけて僅かに湾曲しながら下降し,中央部にむかって一端,緩やかな凸弧状を成したあと,中央部に浅いV字状の凹部を設けるものとなっており,襟刳りの深さは着丈の約2/11としている。
後身頃の襟刳りについては確認できない。
前身頃の袖刳りについて,肩部から略直線状に斜め内側に降下させ,両肩部が脇上端よりも外側にでるように形成している。
後身頃の袖刳りについては確認できない。
肩部の幅は,裾幅の約1/5となっており,両脇については,脇上端から脇の略中央部にかけては垂下し,そこから脇下端の裾にむけては僅かに身幅を拡げるものとしている。
両身頃の接合線は,前身頃に表れていない。また,後身頃については確認できない。

2 対比

(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は「タンクトップ」であり,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)形態の対比
ア 形態の共通点
(共通点1)全体について,前身頃に襟刳りを設け,袖をつけずに袖刳りのままとし,裾は水平に形成されている点。

イ 形態の相違点
(相違点1)本願意匠は,両身頃が無地によって構成されているのに対して,引用意匠は,前身頃は上下方向の縦縞が連続する畦状の編み目によって構成され,後身頃は確認できない点,
(相違点2)前身頃の襟刳りについて,本願意匠は,肩部から胸上部にかけては袖刳り側にむけて僅かに湾曲しながら下降し,胸上部から中央部にかけては,内側に緩やかに下降したあと,中央部に浅い凹部を設けるものとなっており,襟刳りの深さは着丈の約3/11としているのに対して,引用意匠は,肩部から胸上部にかけては内側にむけて僅かに湾曲しながら下降し,中央部にむかって一端,緩やかな凸弧状を成したあと,中央部に浅いV字状の凹部を設けるものとなっており,襟刳りの深さは着丈の約2/11となっている点,
(相違点3)後身頃の襟刳りについて,本願意匠は,その深さを着丈の約2/11とする略U字状としているのに対して,引用意匠は,確認できない点,
(相違点4)前身頃の袖刳りについて,本願意匠は,両肩部が脇上端よりも内側となるように形成されており,肩部から略垂直に降下させたのち緩やかな弧状をなして脇上端につながっているのに対して,引用意匠は,肩部から略直線状に斜め内側に降下させ,両肩部が脇上端よりも外側にでるように形成されている点,
(相違点5)後身頃の袖刳りについては,本願意匠は,両肩部が脇上端よりも内側となるように形成され,肩部より身頃中央側に向けて降下させたのち凹弧状に刳って脇上端につながっており,前身頃の袖刳りより大きな刳りとなっているのに対して,引用意匠は,後身頃の袖刳りは確認できない点,
(相違点6)肩部の幅について,本願意匠は,裾幅の約1/8としているのに対して,引用意匠は,約1/5としている点,
(相違点7)両脇について,本願意匠は,脇上端から脇の略中央部にかけては僅かに身幅を窄め,そこから脇下端の裾にむけては僅かに身幅を拡げるものとしているのに対して,引用意匠は,脇上端から脇の略中央部にかけては脇線を垂下させ,そこから脇下端の裾にむけては僅かに身幅を拡げるものとしている点,
(相違点8)本願意匠は,後身頃の両肩部及び両脇部の内側には,それぞれの端部と平行をなす前身頃との接合線が表れているのに対して,引用意匠は確認できない点。

3 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は同一である。

(2)形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は,下着として使用したり,袖無しの上着として着用したりするタンクトップであることから,需要者は着用した状態で身体を動かしたり,他の衣料と重ね着をする状況を考慮して,着用時の身体の露出のされ方や身体への密着感という観点から,両意匠に係る物品を観察するものということができる。
したがって,身体の露出のされ方という観点からは,襟刳りや袖刳り,及びそれらの間で形成される肩部の態様,身体への密着感という観点からは脇及び生地の態様が需要者の注意を強く惹くところであるということができる。

ア 形態の共通点の評価
共通点1は,全体の形状に係るものではあるが,この種物品によく見られる態様を概括的に捉えたものであって,意匠全体の美感に与える影響は小さい。

イ 形態の相違点の評価
相違点2である前身頃の襟刳りについては,本願意匠は,肩部から胸上部にかけては袖刳り側にむけて僅かに湾曲しながら下降し,胸上部から中央部にかけては,内側に緩やかに下降したあと,中央部に浅い凹部を設け,その深さを着丈の約3/11としていることから,深く開口している印象を与えるのに対して,引用意匠は,肩部から胸上部にかけては内側にむけて僅かに湾曲しながら下降し,中央部にむかって一端,緩やかな凸弧状を成したあと,中央部に浅いV字状の凹部を設け,その深さを着丈の約2/11としていることから,全体としては浅く開口して,中央のV字状の凹部が強調される印象を与えるものとなっており,需要者が注目をする襟刳りに関する相違点であることから,意匠全体の美感に与える影響は大きい。
相違点3である後身頃の襟刳りについては,本願意匠はその深さを着丈の約2/11とする略U字状としており,首だけでなく背中部分も看取できることから,広く開口されているという視覚的印象を与えるのに対して,引用意匠は確認できないものとなっており,後身頃に係る態様ではあるが,身体の露出の状態に注目をする需要者にとっては注意を惹く点であることから,意匠全体の美感に一定の影響を与える。
相違点4である前身頃の袖刳りについて,本願意匠は,両肩部が脇上端よりも内側となるように形成され,肩部から略垂直に降下させたのち緩やかな弧状をなして脇上端につながり,着用時には肩や上腕の付け根が露出するものとなっているのに対して,引用意匠は,肩部から略直線状に斜め内側に降下させ,両肩部が脇上端よりも外側にでるように形成され,肩部や上腕の付け根が覆われる状態となっており,相違点6における,本願意匠は肩部の幅を裾幅の約1/8として肩紐状としているのに対して,引用意匠は約1/5として幅広の肩を覆う態様となっている相違と相まって,着用する際の身体の露出の状態に注目をする需要者の注意を強く惹く相違点であることから,意匠全体の美感に与える影響は大きい。
相違点5である後身頃の袖刳りについては,本願意匠が肩部より身頃中央側に向けて降下させたのち凹弧状に刳って脇上端につながり,上腕や背中部分が露出するものとなっているのに対して,引用意匠は確認できず,意匠全体の美感に一定の影響を与える。
相違点7である両脇については,本願意匠は脇上端から脇の略中央部にかけては僅かに身幅を窄め,そこから脇下端の裾にむけては僅かに身幅を拡げるものとし,身体にそってウエスト部を絞った態様としているのに対して,引用意匠は脇上端から脇の略中央部にかけては脇線を垂下させ,そこから脇下端の裾にむけては僅かに身幅を拡げるものとしていることから,身体に対して余裕を設けた態様となっており,相違点1である両身頃が無地であるのか,畦状の編み目によって構成されているのかの相違,及び,相違点8である両身頃の接合線の有無の違いも相まって,身体への密着感という観点から脇や生地の態様に注目する需要者にとっては,強く注意を惹かれる相違点であることから,意匠全体の美感に与える影響は大きい。

(3)両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,両意匠は,全体の概括的な形状が共通することを考慮したとしても,それはこの種物品によく見られる態様であり,需要者が特に注目をする両身頃の襟刳り,袖刳り,肩部及び脇部の具体的な態様に関して大きな相違があり,異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は同一ではあるが,その形態においては,相違点が全体において支配的なものとなっており,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであって,両意匠は類似しないものである。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。従って,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-10-12 
出願番号 意願2017-18046(D2017-18046) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 下村 圭子 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
木本 直美
登録日 2018-11-09 
登録番号 意匠登録第1619537号(D1619537) 
代理人 布施 哲也 
代理人 野間 悠 
代理人 長谷川 芳樹 

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