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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1345945 |
審判番号 | 不服2018-5264 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-17 |
確定日 | 2018-10-31 |
意匠に係る物品 | 自動車用フロントバンパー |
事件の表示 | 意願2017- 4343「自動車用フロントバンパー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、平成29年(2017年)3月3日の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 3月29日付け:新規性の喪失の例外証明書提出書の提出 平成29年 8月31日付け:拒絶理由の通知 平成29年10月10日 :意見書の提出 平成30年 2月 8日付け:拒絶査定 平成30年 4月17日 :審判請求書の提出 平成30年 4月17日 :早期審理に関する事情説明書の提出 平成30年 5月21日付け:早期審理選定結果の通知 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「自動車用フロントバンパー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「6面図において赤で塗り潰した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成26年4月21日)に記載された、意匠登録第1495753号(意匠に係る物品、自動車用フロントバンパー)の意匠であり、その形態は、同公報に記載されたとおりのものであって、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分を、本願部分に相当する引用部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれもフロントグリルフレーム、フロントバンパー、フロントスポイラー、及び車両側面部の前方側端部を一体的に形成した「自動車用フロントバンパー」であるから、両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致する。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも自動車のフロントフェイスを構成する自動車用パーツとして用いられるものであり、フロントグリルを取り付けるためのフレームとしての機能、及び車両前面を構成する外装部品としての機能を有するものであるから、その用途及び機能が一致する。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、いずれもボンネット、左右前照灯、左右フロントクォーターパネル及び左右フロントフェンダーと接する車両前面の位置に、フロントグリルフレーム及びフロントバンパースポイラーのほぼ上半分の大きさ及び範囲を占めているものであるから、その位置、大きさ及び範囲が一致する。 4 両部分の形態の対比 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)両部分は、部分全体の態様が、フロントグリルフレームを構成する縦フレームの屈曲部から上方の部分(以下「上部縦フレーム」という。)、上部縦フレームと前照灯内側の縦辺部分との間の隙間を塞ぐフロントバンパースポイラーの一部をなす細幅な帯状の部分(以下「略細幅帯状部」という。)、フロントグリルフレームを構成する縦フレームの屈曲部から下方の部分(以下「下部縦フレーム」という。)、及び下部縦フレームと一体的に形成された、平面視が左右端部に向かって背面側に湾曲し、正面視が左右端部に向かって斜め上向きで、左右端部付近で上下幅が狭くなる幅広な帯状の部分(以下「略幅広帯状部」という。)からなり、これらを一体的に形成している点で共通する。 (共通点2)両部分は、フロントグリルフレームの形態が、右側の縦フレームを正面視略くの字状とし、左側の縦フレームを正面視略逆くの字状とし、この左右縦フレームの上端同士を、正面視略直線状の水平な横フレーム(以下「上端横フレーム」という。)で連結して一体的に形成した略糸巻状である点で共通する。 (共通点3)両部分は、略細幅帯状部の形態が、その横幅が上方に向かって漸次狭まる略細長三角形状のものであって、その下端部が縦フレームの屈曲部の形状に合わせて湾曲している点で共通する。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)本願部分の略幅広帯状部の形態が、フロントバンパースポイラーの上面部分に形成された、前後の方向が略水平で左右端部に向かって斜め上向きに傾斜した平面視略細長三角形状の上面部分、上面部分の前面側に形成された、上方に向かって僅かに後方に傾斜した略幅広帯状の傾斜面部分、及び傾斜面部分の下側に形成された、細幅帯状の略垂直面部分からなるのに対し、引用部分の略幅広帯状部の形態が、フロントバンパースポイラーの上面部分に形成された、前後の方向が前下がりの傾斜で左右端部に向かって斜め上向きに傾斜した平面視略細長三角形状の上面部分、上面部分の前面側に形成された、上方に向かって大きく後方に傾斜した、内側が頂点の正面視略横三角形状の傾斜面部分、及び傾斜面部分の下側に形成された、細幅帯状の垂直面部分からなる点で、両部分は相違する。 (相違点2)本願部分の上端横フレームの平面視の形態が、その中央部分で最大幅となり左右端部に向かって漸次狭くなる略円弧状であるのに対し、引用部分の上端横フレームの平面視の形態が、同じ幅からなる略細幅円弧状である点で、両部分は相違する。 (相違点3)本願部分の縦フレームの前面部分の形態が、縦フレームの上端部から屈曲部までの中間部分にかけて略逆三角形状の突起部分を1つ形成しているのに対し、引用部分の縦フレームの前面部分の形態が、凸状の突起部分を縦フレームの形状に沿って1条形成している点で、両部分は相違する。 (相違点4)本願部分の左右縦フレームのそれぞれの内側には、3つの略円孔部及び略長円形状の開口部を形成し、左右略幅広帯状部のそれぞれの垂直面部分には、略円孔部及び略横長長方形状の開口部を1つずつ形成しているのに対し、引用部分には、そのような略円孔部及び開口部を形成してない点で、両部分は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するから、同一である。 2 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、主たる用途及び機能が一致するから、同一である。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。 4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)は、部分全体の態様に係るものではあるが、両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから、この共通点が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)におけるフロントグリルフレームの形態については、フレームの形態を略糸巻状としたものは、この自動車用フロントバンパーの物品分野において本願意匠出願前に既に見られるものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないものであるから、この(共通点2)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点3)に係る略細幅帯状部の形態は、部分全体の大きさに照らすと、上部縦フレームと前照灯の間の隙間を塞ぐ、ごく小さい部分に係るものであるから、特に需要者の注意を引く部分であるとはいえず、この(共通点3)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)の略幅広帯状部の形態については、本願意匠は、前後の方向が水平な上面部分と、その前面に形成された上方に向かって僅かに後方に傾斜した略幅広帯状の傾斜面部分、及び傾斜面部分の下側に形成された細幅帯状の垂直面部分からなるものであり、水平面から傾斜面を経て垂直面がなだらかに連続して形成されたシンプルな形態であるとの印象を与えるのに対して、引用意匠は、傾斜角度の異なる略三角形状の2つの面が向きを変えつつ構成され、その下側に細幅帯状の垂直面部分が形成されたものであり、複雑な形態であるとの印象を与えるから、両部分は略幅広帯状部の美感に大きな差異がある。 (相違点2)における上端横フレームの形態については、通常ボンネットとフロントグリルは段差なく一体的に見えるように形成するところ、本願意匠の上端横フレームは、願書添付図面の「使用状態を示す参考図」において見られるように、ボンネット先端に取り付けられる前方に突出したガーニッシュの形態にあわせて前後の幅を敢えて増やして形成したものであって、この分野の先行意匠には見られないものであるから、この上端横フレームの形状は需要者に異なる美感を与えるものである。 (相違点3)の縦フレームの前面部分の形態については、部分全体の大きさに照らすと細部における差異ではあるが、目につきやすい位置に形成されているものであるから、両部分は縦フレームの前面部分の美感に一定の差異があるといえる。 (相違点4)の左右縦フレーム及び左右略幅広帯状部における略円孔部及び開口部の有無については、いわれて気付く程度の細部における差異ではあるから、この(相違点4)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 5 両意匠の類否判断 両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両部分は、略幅広帯状部の美感に大きな差異があり、上端横フレームの形態は需要者に異なる美感を与え、縦フレームの前面部分の美感にも一定の差異があるから、これらを総合すると、両部分は全体として美感に大きな差異があるといえる。そうすると、部分全体の態様、フロントグリルフレームの形態状、及び略細幅帯状部の形態が共通することを考慮しても、両部分は意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものである。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、両部分の形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであって類似しないから、本願意匠と引用意匠とは類似しないものである。 第6 むすび 以上のとおりであって、原審が引例した引用意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから、本願については、原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-10-19 |
出願番号 | 意願2017-4343(D2017-4343) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大峰 勝士 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2018-11-09 |
登録番号 | 意匠登録第1619455号(D1619455) |
代理人 | 伴 昌樹 |