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審決分類 審判 査定不服  工業上利用 取り消して登録 M0
管理番号 1347715 
審判番号 不服2018-11385
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-22 
確定日 2018-12-11 
意匠に係る物品 ポリエチレンテレフタラートリサイクル材 
事件の表示 意願2016- 25790「ポリエチレンテレフタラートリサイクル材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成28年11月28日の意匠登録出願であって,その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 9月29日付け:拒絶理由の通知
平成29年11月10日 :意見書の提出
平成29年11月10日 :手続補正書の提出
平成30年 5月28日付け:拒絶査定
平成30年 8月22日 :審判請求書の提出
平成30年 9月25日付け:審尋
平成30年10月17日 :回答書の提出
平成30年10月17日 :手続補正書の提出


第2 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「ポリエチレンテレフタラートリサイクル材」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線であらわされた部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。
なお,本願意匠の意匠に係る物品は,出願当初,「ポリエチレンテレフタラートリサイクル材」であったが,原審の拒絶理由の通知に対して,平成29年11月10日に,意見書と同時に提出した手続補正書によって「リサイクル用圧縮包装用容器」と補正し,その後,当審において,平成30年10月17日に審尋に対する回答書と同時に提出した手続補正書によって「ポリエチレンテレフタラートリサイクル材」に補正した。


第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないというものであり,具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は,ポリエチレンテレフタラートリサイクル材にかかる創作とのことですが,願書及び添付図面の記載によっては,『意匠に係る物品の説明』に,任意の『押しつぶされた使用済みペットボトルの胴部にスリット状の切断部を形成することで切断部分が噛合状態となり,減容後の容積が小さい減容状態を維持し続けることができる。』と記載があり,また添付図面においては,スリット状の噛合状態の切断部のみについて意匠登録を受けようとする部分としていることから,使用済み容器の減容後の容積を小さくし,維持するための『技術』そのものについて意匠登録を受けようとしており,本願の意匠に係る物品である『リサイクル材』という『製品』として独立して取引されないものと認定でき,『リサイクル材』自体の形状を表したものではありませんので,この出願の意匠は,意匠法第2条に定義する意匠を構成しないものと認められ,意匠法第3条1項柱書に規定する意匠に該当せず,意匠登録の要件を具備しません。」


第4 請求人の主張と審尋への回答

1.審判請求書の主張
請求人は,審判請求書において,おおむね,以下のとおり主張した。
本願意匠は,自動回収機内部で紡錘形状孔部が形成される機構を設けることによって製造される「リサイクル用圧縮包装用容器」の形状自体を表しており,「一次加工」,若しくは「一次処理」そのものではなく,願書および添付図面に記載されているとおり,物品の形状に関する出願であるから,「一次加工」,若しくは「一次処理」を施した結果である製品としての意匠を創作したものであることは明らかであって,「リサイクル用圧縮包装用容器」として多数の形状を取り得る中から,形状的にも美感的にも,そして経済的にも最も効果のある特定の形状を創作したのである。
また,本願意匠は工業的に多数製造できるものであり,すなわち量産することができるものであるから,工業上利用することができるものである。
本願意匠は,リサイクルされた所謂「丸ボトル」を原料としているものの,二次加工をすることが容易となるように一次加工を施した「リサイクル用圧縮包装用容器」であって,単なるリサイクル用の容器ではなく,加工前の任意の「使用済みペットボトル」でもなく,ましてや所謂「丸ボトル」であるはずもなく,願書の意匠に係る物品の欄に記載のとおり「リサイクル用圧縮包装用容器」である。
以上のとおり,本願意匠は,一見技術的な要素が強いものと思われるものの,技術に裏打ちされた形状,すなわち,技術を具現化した形状を有するものであり,これは付加価値の高い「製品」としてリサイクル業者に販売されるものであるから,独立して取引されるものであるということができる。また,本願意匠の意匠に係る物品である「リサイクル用圧縮包装用容器」は,リサイクル用に包装用容器を加工したものであり,添付図面のとおり「リサイクル用圧縮包装用容器」自体の形状を表したものであることは明らかであるということができる。

2.審尋と回答
合議体は,上記1.の請求人の主張に関して審尋を行い,本願意匠に係る物品は,包装用容器ではなく,使用済みの包装用容器を加工したリサイクル材と考えられるが,意匠に係る物品の記載を「リサイクル用圧縮包装用容器」とする理由,及び,使用済みの包装用容器を加工したリサイクル材である本願意匠に係る物品が,独立して取引の対象となるものであることについて,請求人に説明を求めた。
これに対して,請求人は,回答書を提出して,意匠に係る物品については,「リサイクル用圧縮包装用容器」を,同日付けの手続補正書によって「ポリエチレンテレフタラートリサイクル材」に補正したことをもって回答とし,また,使用済みペットボトルの流通実態については,環境省による調査「平成25年度廃ペットボトルの効率的な回収モデル構築検討支援業務報告書」第140頁に記載されており,このことは,使用済みペットボトルを減容加工したリサイクル材が存在していることの証左ということができるとし,本願意匠についても,使用済みペットボトルがリサイクル材として加工されたものであることから,独立して取引の対象になっているということができると主張して,使用済みペットボトルを回収し加工した小売店からリサイクラー会社に対して発行した請求書の写しを証拠として提出した。


第5 当審の判断

原審の拒絶の理由は,上記第3に示すとおりであって,意匠登録を受けようとする部分は,使用済み容器の減容後の容積を小さくし,維持するための「技術」そのものであって,独立して取引されないものであり,物品自体の形状を表したものではないから,意匠法第2条に定義する意匠を構成しないものと認められ,意匠法第3条第1項柱書に規定する意匠に該当しないというものである。
そこで,当審において,本願部分が,意匠法第2条に定義する意匠を構成し,意匠法第3条第1項柱書に規定する意匠に該当するものであるか否かについて検討する。

1.本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,願書の記載によれば,使用済みのペットボトルをリサイクルするために空容器を減容する容器減容装置により加工したポリエチレンテレフタラートリサイクル材である。そうすると,本願意匠に係る物品は,使用済みペットボトルから工業的方法により量産されるものであり,また,使用済みペットボトルの流通実態については,環境省による調査「平成25年度廃ペットボトルの効率的な回収モデル構築検討支援業務報告書」第140頁に記載があり,審尋の回答書の記載及び添付された領収書から,このような使用済みペットボトルが取引の対象となる事実も認められることから,本願意匠の意匠に係る物品についても,取引の対象となるものと認められる。
なお,請求人は,本願意匠の意匠に係る物品の記載を,平成30年10月17日に提出した手続補正書によって,「ポリエチレンテレフタラートリサイクル材」に補正したが,この補正は,出願当初の記載と同一のものであるから,出願当初の要旨を変更するものではない。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分の用途及び機能は,押しつぶされた使用済みのペットボトルの胴部にスリット状の切断部(以下,単に「スリット」という。)を形成することで切断部分が噛合状態となり,減容後の容積が小さい状態を維持するものである。

(3)本願部分の位置,大きさ及び範囲
本願部分の位置,大きさ及び範囲は,本願の平面図において,押しつぶされた使用済みペットボトルに,上下の部材を貫通するスリットが,垂直な破線状に形成され,略等間隔に9列配設された中で,ペットボトル胴部の中央からやや飲み口寄りの2列の各列に形成された,胴部の幅の約9分の1の長さからなる5つの同形同大のスリットのうち,上下中央の3か所からなる6か所のスリットの範囲であって,各スリットの上面側部材の内周面部分である。

(4)本願部分の形態
本願部分の形態は,各スリットが,平面視して,縦横比を約14対1の縦長紡錘形とし,スリットは波打った部材に形成され,相対する弧状の内周面が部材の厚みの約3分の1上下にずれており,意匠登録を受けようとする部分の2列では左側の面が高い位置に形成されている。また,平面視した2つの列は右側が左側より縦長の約4分の1下方にずれている。

2.本願意匠が工業上利用できる意匠に該当するか否かについて
意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠とは,まず,意匠法第2条第1項において定義されている意匠,すなわち,物品の形態であって,視覚を通じて美感を起こさせるものであり,願書及び添付図面において,権利客体の内容である意匠の形態が,具体的な一の意匠として表されていなければならず,部分意匠の場合には,本願部分の形態に加え,物品全体における本願部分の占める位置,大きさ及び範囲が認定できるように,物品全体の形態も破線等によって記載されていなければならない。
さらに,本願意匠の意匠に係る物品は,工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産し得るものでなければならない。
まず,本願意匠の意匠に係る物品については,ペットボトルのリサイクルの過程において,市場で流通するリサイクル材であることは上記1.(1)のとおりであり,本願部分は,肉眼によって認識することができる大きさのスリットであって,視覚を通じて美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,意匠法第2条第1項において定義されている意匠に該当するものといえる。
また,本願部分の形態については,本願意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断した場合に,上記1.(4)に記載のとおりであって,本願意匠が具体的でないということはできない。
なお,6つのスリットは物理的に分離したものであるが,減容された使用済みペットボトルを噛合状態とするために形成された同一形態のものであることから,形態的一体性及び機能的一体性を備えたものと認められる。
そして,物品全体における本願部分の占める位置,大きさ及び範囲についても,上記1.(3)に記載のとおり願書及び添付図面に認定可能に記載されているものといえる。
さらに,本願意匠の意匠に係る物品は,工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産し得る物品であるから,本願意匠は,工業上利用することができるものである。
以上の理由により,部分意匠として意匠登録出願された本願意匠は,意匠法第2条第1項において定義されている意匠を構成し,具体的な一の意匠の内容と,物品全体における本願部分の占める位置,大きさ及び範囲が認定できるようにして表したものであり,その本願意匠の意匠に係る物品が,工業上利用することができるものであるから,本願意匠は,意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するものである。


第6 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によっては,意匠法第3条第1項柱書きに規定する工業上利用することができる意匠に該当しないものであるということはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-11-28 
出願番号 意願2016-25790(D2016-25790) 
審決分類 D 1 8・ 14- WY (M0)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 木本 直美
特許庁審判官 温品 博康
内藤 弘樹
登録日 2019-01-11 
登録番号 意匠登録第1623835号(D1623835) 
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所 

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