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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 J0 |
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管理番号 | 1348784 |
審判番号 | 不服2018-8801 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-27 |
確定日 | 2019-02-12 |
意匠に係る物品 | ロボット |
事件の表示 | 意願2017- 5459「ロボット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成29年3月17日の意匠登録出願であって,平成29年12月22日付けの拒絶理由の通知に対し,平成30年2月2日に意見書が提出されたが,平成30年3月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成30年6月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「ロボット」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様又は色彩の結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。 1 原査定における拒絶の理由 「本願に係る意匠は『ロボット』であり,ロボットには案内用ロボットや単に移動するロボットや,監視用ロボット,産業用ロボット等,様々な種類のロボットが存在するところ,当該物品についてはその機能や目的についての特段の説明がないこと,願書に添付された図面には球形ローラー状部が底面に設けられていますがその他の機能があるとは図面からは読み取れない点から総合的に判断すると,本願意匠は主に移動機能を有するロボットであると認められます。 主に移動機能を有するロボットは,例えば産業用ロボットとは違って,その使用状況や使用者によっては玩具としての使用も想定できることから,両物品分野は互いに近しい関係性を有する分野と考えられ,これらの物品分野の通常の知識を有する者にとって,それぞれの物品分野に以前から見られる意匠を基に,意匠を創作することは容易であると認められます。そうすると,玩具の分野では本願意匠出願前から「目」に該当する部分の態様として,楕円形状に太まつげを模したように斜め上に凸となっている態様が見られるところ(意匠1?4),これらの意匠をもとに,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分である「目」に該当する部分を創作することは,当業者にとって容易であったと言わざるを得ません。 意匠1(別紙第2参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2004年12月14日に受け入れたGoods Press〔グッズプレス〕 2005年 1月10日1号 第188頁所載 ロボットおもちゃの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HA16030794号) 意匠2(別紙第3参照) 独立行政法人工業所有権総合情報館が2002年 8月 1日に受け入れた アミュ-ズメント産業 2002年 7月26日8号 第8頁所載 クマおもちゃの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HA14014487号) 意匠3(別紙第4参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1483813号の意匠 意匠4(別紙第5参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1424621号の意匠」 第4 請求人の主張 これに対し,請求人は,審判を請求し,本願意匠の創作容易性について要旨以下のとおり主張した。 原査定は,楕円形状に太まつげを模したように斜め上に凸となっている態様の意匠を基に本願意匠を構成することは,意匠1ないし4に示すように,本願出願前から知られているところ,本願意匠はこれらの態様をもとに,本願意匠が属する物品分野の通常の知識を有する者が容易に創作出来たものと認められる,と判断した。 たしかに,意匠1ないし4に示される意匠などにあるように,本物品分野においては,目にまつげ又は目尻を設けることが通常であるが,本願物品全体の形態は,顔部・胴体部及び脚部で構成された「二足歩行の人型ロボット」や「動物おもちゃ」ではなく,顔部と胴体部が明確に分断されていない構成の仮想ロボットであり,顔部分には「目」しか配置していない。つまり,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は,ロボットを購入しようとする者が,ロボットの使用時を想像する際に注目を集める部分であり,顔部分には目しか配置されていないだけに,一層目を引き,看者をして他のロボットとは異なる意匠であることを一瞬にして印象付けるほどの相違があるものと考えられる。 さらに,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分の構成は,左右対称でそれぞれ略円弧状の「目」略全体を示す主要部分と,その主要部分の外側上部に斜め上方に突出する先端が丸みを帯びている略円弧状の目尻部分が分断されずに1つの線で繋がって構成され,顔部分には「目」しか配置していないことも相俟って,極めて斬新な態様であり,ありふれた手法によって実現されるものではない。換言すれば,「目」部分に強い印象が残るように創作され,配置されている。 したがって,本願部分を当業者が容易に創作することができたものであると判断するためには,楕円形状に太まつげを模したように斜め上に凸となっている態様に加えて,左右対称でそれぞれ略円弧状の「目」略全体を示す主要部分と,その主要部分の外側上部に斜め上方に突出する先端が丸みを帯びている略円弧状の目尻部分が分断されずに1つの線で繋がって配置されていることについても当業者が容易に着想することができた手法であることを要するが,本願出願前には見られない手法であり,その具体的態様は,本願部分固有の視覚的特徴であるということができる。 よって,本願部分は,その形態を創作するにあたり,意匠1ないし4の形態に依拠するものではなく,独自の新たな創作が加わっているものであると認められ,当業者が容易に創作することができたものであるということはできない。 第5 当審の判断 以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し,判断する。 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「ロボット」である。 (2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分は,略球体状の頭部と略円錐台状の胴体部がボーリングピンの上半部のように一体的に形成され,頭部に相当する部位に位置しており,ロボットの両目と認識される大きさ及び範囲に形成され,看者にロボットの「目」を想起させる用途及び機能を有するものである。 (3)本願部分の形態 本願部分は,正面視して,左右一対の略円形の外側斜め上方に舌片状の突出部を有する単線で囲まれた区画からなり,具体的には,舌片は幅と長さが約1対1で,円形に対して斜め上方約35度の角度をなし,その基端部の幅は円形部の径の約4分の1である。 2 原査定の拒絶の理由における引用意匠 (1)意匠1 意匠に係る物品は「ロボットおもちゃ」であって,本願部分に相当する左右一対の「目」の部分は,頭部に位置し,ロボットの両目と認識される大きさ及び範囲に形成され,その形態は,正面視して,略円形の上部を斜めに切り欠き,外方上端を略三角形の突起部を形成するように延伸した形状で,瞳にあたる円形部分は縁部を僅かに残した二重円状である。 (2)意匠2 意匠に係る物品は「クマおもちゃ」であって,本願部分に相当する左右一対の「目」の部分は,頭部に位置し,動物の両目と認識される大きさ及び範囲に形成され,その形態は,正面視して,略円形の外方の上下略中央に略三角形の小突起を有するものである。 (3)意匠3 意匠に係る物品は「動物おもちゃ」であって,本願部分に相当する左右一対の「目」の部分は,頭部に位置し,動物の両目と認識される大きさ及び範囲に形成され,その形態は,正面視して,略円形で眼球状に表面が曲面で形成され,瞳部分が二重円で,その左側に白目部分が表れている。また,外方斜め上方に,まつげを模した略三角形の突出片が付されている。 (4)意匠4 意匠に係る物品は「動物おもちゃ」であって,本願部分に相当する左右一対の「目」の部分は,頭部に位置し,動物の両目と認識される大きさ及び範囲に形成され,その形態は,正面視して,略円形と当概略円形の外方斜め上方に配された2つの小さな紡錘形を枠線で囲み外方下隅を角状に僅かに突出させたものである。 3 本願意匠の創作容易性の判断 本願意匠は,意匠に係る物品を「ロボット」とするものであり,その両目に相当する部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であるが,本願意匠の破線で表された全体形状は,ボーリングピンの上半部のような形状であるから,意匠1ないし4とは,意匠登録を受けようとする部分の具体的な位置,大きさ及び範囲が相違するといえるが,この種物品分野において,頭部に両目を形成することは極普通であるから,頭部に相当する部位に左右一対の目を形成した点については,創作が容易でなかったということはできない。 しかしながら,本願部分の形態については,略円形状の目にまつげを模した突出を形成したものは,数多く認められるものの,その形態は様々であって,意匠1ないし4の形態についても,上記2の認定のとおり異なるものである。 ところで,本願意匠に係る物品の属する分野における通常の知識を有する者が「目」を創作する際には,目を想起させるための効果やキャラクターを印象付ける形態を考慮するものと考えられ,具体的な目の表情についても重視して検討するものであると考えられるところ,本願部分は,従来のものには見られない単純化された形態であって,円と舌片状突起を前記1(3)で認定した比率と角度で構成し単線で囲んだ区画とした形態は,引用している意匠1ないし4には見当たらない。 そうすると,略円形状の目にまつげを模した突出を有する形態は,おもちゃの物品分野における「目」の形態を概括的に捉えたものであって,その具体的な形態は様々であるから,略円形状の目にまつげを模した突出を有する形態であることが,直ちに本願部分の形態の創作非容易性を否定するものではなく,意匠1ないし4の形態に基づいて,本願部分の形態を容易に創作することができたことを示す証拠は見られないから,本願部分の形態は,この種物品分野において独自の着想によって創出したというほかなく,当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第6 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから,この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-01-28 |
出願番号 | 意願2017-5459(D2017-5459) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(J0)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石坂 陽子 |
特許庁審判長 |
木本 直美 |
特許庁審判官 |
温品 博康 木村 智加 |
登録日 | 2019-02-22 |
登録番号 | 意匠登録第1626964号(D1626964) |
代理人 | 佐野 弘 |