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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1349722 |
審判番号 | 不服2018-12672 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-09-21 |
確定日 | 2019-02-22 |
意匠に係る物品 | エレベータ用操作盤 |
事件の表示 | 意願2017- 22426「エレベータ用操作盤」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成29年10月11日 意匠登録出願 平成30年 3月23日付け 拒絶理由通知書 平成30年 5月 7日 意見書提出 平成30年 6月14日付け 拒絶査定 平成30年 9月21日 審判請求書提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「エレベータ用操作盤」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を、願書及び願書に添付した図面に記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第3 原審における拒絶の理由及び引用意匠 原審における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は、 大韓民国意匠商標公報 2015年 7月23日15-30号 エレベーター用操作盤(登録番号30-0807139)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号HH27429156)であって、その形態は、同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、ビル等のエレベータ乗り場の壁面に取り付けられる「エレベータ用操作盤」であって、引用意匠の意匠に係る物品も、同じくエレベータ乗り場用の「エレベーター用操作盤」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致するものである。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 なお、引用意匠には、実施態様を示す一例を現した参考図と推認できる図(参考1.1、「参考」の語は当審において日本語に訳した。)が掲載されているが、引用意匠の基本6図とは模様等において一致しないため、以下、参考1.1を除外して引用意匠を特定する。 ア 共通点 (ア)全体を、正面視、略縦長長方形の板状とし、上端部を傾斜状とした点、 (イ)正面部左右中央の上下中央寄りに、周縁に透光性を有する縁部を形成した正面視、円形の押しボタンスイッチ部を上下に2個やや近接して配置したものである点。 イ 相違点 具体的な態様として、 (ア)全体の構成について、本願意匠は、正面視、略縦長長方形の薄板状の化粧パネル部の背面部に、これより一回り小さい背面視、略縦長長方形の板状の本体部を、化粧パネル部の左右中央で上端部の傾斜部よりよりやや下がった位置に貼り合わせたものであって、さらに、本体部の左右端部で化粧パネルのやや内側に、細幅薄板状の側板部を本体部と密着状かつ高さを合わせて縦に取り付けて上端部から本体部の下端部まで左右側面を覆ったものであり、全体としてみると、左右側面部及び底面部の正面側端部が細幅の鍔状に突出しているものであるのに対し、引用意匠は、正面視、略縦長長方形薄板状の化粧パネル部の背面部に、縦横の長さを合わせた正面視、略縦長長方形の板状の本体部を、周側面に突出なく貼り合わせたものである点、 (イ)化粧パネル部について、本願意匠は、上端部を背面側に斜めに屈曲し、下端部は屈曲のない平坦な面で上下非対称とし、左右の角部を隅丸としたものであるのに対し、引用意匠は、上下端部を背面側に上下対称形に湾曲し、四隅の角は丸まっていないものである点、 (ウ)押しボタンスイッチ部について、本願意匠は、押しボタンスイッチ部を化粧パネル部の面からやや突出して取付け、その中央に正三角形薄板状の突起部(下側は逆正三角形薄板の突起部)を設け、当該突起部は透光性を有するものであるのに対し、引用意匠は、化粧パネル部の面から突出しておらず、押しボタンスイッチ部の表面には何も設けておらず、透光部を特定できない点、 (エ)化粧パネル部の押しボタンスイッチ部が取り付けられる円形孔部の態様について、本願意匠は、円形孔部の周縁に円環状の小さな突条を形成しているのに対し、引用意匠は、突条は形成していない点。 2 類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、エレベータ用の操作盤であるから、需要者は、押しボタンスイッチ部の配される正面部の形態に着目するものといえ、正面部の形態が、需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。 A 両意匠の形態の共通点 共通点(ア)の全体を、正面視、略縦長長方形の板状とし、上端部を傾斜状とした点、及び共通点(イ)の正面部左右中央の上下中央寄りに、周縁に透光性を有する縁部を形成した正面視、円形の押しボタンスイッチ部を上下に2個やや近接して配置したものである点は、いずれも両意匠の形態を概括的に捉えた場合における共通点であって、この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるから、意匠全体の美感に与える影響は小さいものである。 B 両意匠の形態の相違点 相違点(ア)の全体の構成について、本願意匠は、化粧パネル部が本体部より一回り大きく、左右側面部及び底面部の正面側端部が細幅の鍔状に突出したものとなっており、特に、左右側面部は、側板部を一段奥まった位置に設けたことによって垂直に表れる上記の鍔状部が斜め前方からはっきりと視認でき、非常に目立つものとなっているのに対し、引用意匠の左右側面部は突出のない平坦面であるから、需要者に与える視覚的印象は明確に異なるものであり、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 相違点(イ)の化粧パネル部について、本願意匠は、上下非対称で、上端部のみ背面側に斜めに屈曲したものであるから、需要者が最も着目する正面部において、この態様は特に目につきやすいものであるうえ、上端部の左右の角部は角が立っており屈曲部と相まって直線的で硬い印象を与えているのとは対照的に、下端部は、屈曲等のない平坦面で左右の角部が隅丸であるため柔和な印象を与えており、この上下のコントラストが本願意匠の特徴を際立たせているのに対し、引用意匠は、上下端部を背面側に上下対称形に湾曲し、四隅の角は丸まっていないものであるから、全体的に変化に乏しい反面、安定感のある印象を醸し出しており、両意匠のこの態様は、需要者に異なる美感を与えるものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものである。 相違点(ウ)の押しボタンスイッチ部について、まず、押しボタンスイッチ部が化粧パネル部の面から突出したものであるか否かの点であるが、突出の程度は僅かであるから、この差異は、全体としてみると部分的な差異に止まるものであって、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであり、次に、正三角形薄板状の突起部の有無についてであるが、確かに、正面部の最も目立つ箇所における相違ではあるが、本願意匠の突起部は、当該物品の分野においてごく普通に見受けられるものであって、本願意匠独自の態様とはいえないものであるから、意匠上さほど評価できるものではなく、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度に止まるものである。そして、本願意匠は、突起部が透光性を有するものであるのに対し、引用意匠は透光部を特定できない点については、通常この種物品において、利用者に、押下されたことを伝えるため押下した押しボタンスイッチ部を発光させる構造のものはごく一般的にみられるところ、本願意匠のように、突起部が発光するものもごく普通にみられるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。 相違点(エ)の化粧パネル部の押しボタンスイッチ部が取り付けられる円形孔部の有無について、この突条は、ほとんど目立たないごく小さな突条であるから、この差異は、全体としてみると部分的な差異に止まるものであって、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。 (3)両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記(2)の前文のとおり、正面部の形態が需要者の注意を強く惹く部分であるところ、(2)Aの共通点が両意匠の類否判断に与える影響が小さいことに加え、(2)Bの相違点のうち、相違点(ウ)及び相違点(エ)が両意匠の類否判断に与える影響が小さい又は一定程度に止まることを考慮しても、相違点(ア)及び相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであるから、両意匠を、意匠全体として観察した際には異なる美感を起こさせるものといわざるを得ない。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第5 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、当審の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-02-06 |
出願番号 | 意願2017-22426(D2017-22426) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 智加 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 宮田 莊平 |
登録日 | 2019-03-08 |
登録番号 | 意匠登録第1627956号(D1627956) |
代理人 | 特許業務法人藤本パートナーズ |