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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6 |
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管理番号 | 1349723 |
審判番号 | 不服2018-9801 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-18 |
確定日 | 2019-02-18 |
意匠に係る物品 | 笠木材 |
事件の表示 | 意願2017- 8693「笠木材」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年(2017年)4月24日の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 5月17日 :新規性の喪失の例外証明書の提出 平成29年11月22日付け:原審の拒絶理由の通知 平成30年 1月 9日 :原審理由に対する意見書の提出 平成30年 4月12日付け:拒絶査定 平成30年 7月18日 :審判請求書の提出 平成30年 9月19日付け:当審の拒絶理由の通知 平成30年11月 6日 :当審理由に対する意見書の提出 第2 本願意匠 本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠登録出願であって、その意匠は、意匠に係る物品を「笠木材」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 当審の拒絶の理由及び引用意匠 当審の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、特許庁発行の公開実用新案公報(公開日:昭和59年(1984年)1月5日)の実用新案出願公開昭59-27号(考案の名称 笠木取付装置)に記載の第1図ないし第3図における符号7を付して表された「笠木」の意匠であって、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第4 当審の判断 1 対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「笠木材」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「笠木」であるが、いずれも建築物のパラペット等に取り付けられる金属板等からなる笠木材といえるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致する。 (2)形態の対比 本願意匠と引用意匠を対比すると、両意匠の形態については、以下のとおり、主な共通点及び相違点がある。 なお、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめ、引用意匠の各図面を「左側面図」が表れているものとして対比する。 ア 形態の共通点 (共通点1)両意匠は、全体の基本的な構成態様が、右側面視において、僅かに左下がりに傾斜した横幅のある天板(以下「傾斜部」という。)の右端部から垂下した垂直板(以下「第1垂下部」という。)を設け、傾斜部の左端部から垂下した垂直板(以下「第2垂下部」という。)を設けてなる略倒コの字状の折曲した板体からなる点で共通する。 (共通点2)両意匠は、第1垂下部の下端部分に約30度の角度で内側に折曲した折曲部(以下「第1折曲部」という。)を形成している点で共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願意匠の平行に配置された第1及び第2垂下部間の幅(以下「笠木幅」という。)と第1垂下部の長さの比率が、約3.5:1であるのに対し、引用意匠の同比率が、約2.7:1である点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠の笠木幅と第2垂下部の長さの比率が、約4.1:1であるのに対し、引用意匠の同比率が、約2.2:1である点で、両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠の第1垂下部の長さと第2垂下部の長さの比率が、約1:0.9であるのに対し、引用意匠の同比率が、約1:1.2である点で、両意匠は相違する。 (相違点4)本願意匠の第2折曲部が約50度の角度で内側に折曲しているのに対し、引用意匠の第2折曲部が約30度の角度で内側に折曲している点で、両意匠は相違する。 (相違点5)本願意匠の傾斜部の傾斜角度が、約2.5度で傾斜しているのに対し、引用意匠の傾斜部の傾斜角度が、約4度で傾斜している点で、両意匠は相違する。 2 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するから同一である。 (2)形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品である笠木材は、パラペット構造体の上端部に被せるようにして配設されるものであって、雨水の浸入を防ぐため垂下部をできるだけ長くし、パラペット構造体に密着又はできるだけ近接して配設されるものであるといえるから、本物品に係る需要者は、そのような使用時の設置状況を想定しつつ両意匠に係る物品を観察するということができる。 したがって、使用時の設置状況に係る笠木幅と第1垂下部の長さ又は第2垂下部の長さの比率等の具体的な構成態様が需要者の注意を強く惹く部分であるといえる。 ア 形態の共通点 (共通点1)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)における第1折曲部の形態は、この種物品分野において約30度の角度の折曲部は既に見られる形態(例えば、実用新案出願公開昭58-143923参照)であるから、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点2)が意匠全体の美感に与える影響は小さいといえる。 イ 形態の相違点 (相違点1)ないし(相違点3)は、笠木幅と第1垂下部の長さ又は第2垂下部の長さの比率といった需要者の注意を惹く具体的な構成態様に係るものであって、笠木幅が大きければそれにつれて垂下部も長くなるように構成される笠木材にあって、笠木幅が大きいのにもかかわらず、換気を阻害しないために第1垂下部及び第2垂下部を短い態様とした本願意匠の形態は、従来見られないものであるとの印象を与えるのに対して、笠木幅をできるだけ小さくし、第1垂下部及び第2垂下部を長くとった引用意匠の形態は、従来型の態様であるとの印象を与えることから、両意匠は、笠木幅と第1垂下部の長さ又は第2垂下部の長さの比率といった具体的な構成態様が与える美感に大きな差異がある。 (相違点4)は、第2折曲部の折曲角度に係るものであって、本願意匠が、第1折曲部の折曲角度よりひろげた角度とし、施工時に取付けが容易なものとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、第1折曲部の折曲角度と同様に形成し、加工時の作業が容易なものとの印象を与えるから、両意匠は第2折曲部の形態の美感にも一定の差異がある。 (相違点5)は、傾斜部の傾斜角度に係るものであるが、この種物品においては、様々な傾斜角度の傾斜部が見られるから、この(相違点5)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (3)両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記(2)の前文のとおり、使用時の設置状況に係る具体的な構成態様が需要者の注意を強く惹く部分であるところ、両意匠には上記イのとおり、笠木幅と第1垂下部の長さ又は第2垂下部の長さの比率といった需要者の注意を惹く具体的な構成態様が与える美感に大きな差異があり、また、第2折曲部の形態の美感にも一定の差異がある。 そうすると、両意匠は、全体の態様や第1折曲部の形態が共通することを考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、当審の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-01-23 |
出願番号 | 意願2017-8693(D2017-8693) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 上島 靖範 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2019-03-08 |
登録番号 | 意匠登録第1627903号(D1627903) |
代理人 | 山本 直樹 |
代理人 | 山本 英明 |
代理人 | 葛西 泰二 |
代理人 | 葛西 さやか |