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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1349724 |
審判番号 | 不服2018-5044 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-12 |
確定日 | 2019-03-01 |
意匠に係る物品 | 包装用容器の縁枠 |
事件の表示 | 意願2017-3064「包装用容器の縁枠」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成29年(2017年)2月17日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 平成29年 8月28日付け:拒絶理由の通知 平成29年10月12日 :意見書の提出 平成29年10月12日 :手続補足書の提出 平成30年 1月 9日付け:拒絶査定 平成30年 4月12日 :審判請求書の提出 平成30年 8月29日付け:拒絶理由の通知 平成30年10月 2日 :意見書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用容器の縁枠」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。 第3 当審の拒絶の理由 当審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。 「本願の意匠は,意匠に係る物品が『包装用容器の縁枠』で,その形状は,薄い帯状の板材(以下「縁材」という。)を平面図において略横長長方形状の環状にしたものであって,物品の部分について意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,左側約7分の1の部分です。 本願部分の形状は,内周面上側に,コ字状の溝を水平に設けてあり,左上側の角部(請求書に言う「第一のコーナー部」のこと。以下,単に「上角部」という。)の内面には,冠形状の縦溝が全高にわたって設けてあり,左下側の角部(請求書に言う「第二のコーナー部」のこと。以下,単に「下角部」という。)の内面には,3本の切り込み線が全高にわたって設けてあるものです。 願書に添付した図面及び意見書の主張内容からすると,詳細には,『F-F部分拡大図』より,上角部内面に設けた冠形状の縦溝は,丸みを持たせた頂角(下側の角)が60度の下向き正三角形の凹条が3本設けてあるもので,その深さは,縁材の厚みの約85%(15%程度厚みを残す。)です。また,『G-G部分拡大図』より,下角部内面に設けた3本の切り込み線は,丸みを持たせた頂角(下側の角)が30度の下向き二等辺三角形の凹条が3本設けてあるもので,その深さは,縁材の厚みの約85%(15%程度厚みを残す。)です。 そして,その結果,角部の面取り部分に3つの折れ角と2辺が表れる,全体では12角形になる形状で,それぞれの角部に表れる3つの折れ角は丸みを持っています(別紙第1参照)。 本願部分の形状は,上記の認定のとおりであるところ,薄い帯状の縁材を長方形の環状にした『包装用容器の縁枠』であって,縁枠の内周面上側にある水平方向のコ字状の溝は,当該縁枠に組み合わせて使用する『包装用容器』をずれることなく嵌合させるために設けられたものであり,この種の物品の機能を維持するために必要な,ごくありふれた形状と推認されます(※1)。 角部内面に設ける凹条を二等辺三角形(正三角形を含む)とした形状(※2)が,本願の出願前から公知の形状として推認されます。 また,凹条の先端を,丸みを持たせた形状(※3)とすることは,本願の出願前から公知の形状として推認されます。 そして,縁枠を折り畳めるように,一方の角部の凹条の二等辺三角形の頂角の角度を,180度を凹条の本数で割ったものとすること(※4)と,縁枠を長方形に形成できるように,他方の角部の凹条の二等辺三角形の頂角の角度を,90度を凹条の本数で割ったものとすること(※5)は,本願の出願前から公知として推認されます。 角部の凹条を2本とすること(※6)や,4本とすること(※7)が,本願の出願前から公知の形状として推認できることからすると,2本と4本の間の3本とすることに何ら困難性が認められませんし,3本としたもの(※8)も出願前公知の形状と推認されます。 そして,凹条を3本とすれば,二等辺三角形の頂角は,180度÷3=60度,90度÷3=30度となることは明らかです。 角部の凹条の深さを,縁材の厚みとほぼ同じ深さにしたもの(※9)や,縁材の厚みの約60%としたもの(※10)が,本願の出願前から公知の形状として表れていますから,縁枠材の厚みとほぼ同じ深さと,60%の深さの間の85%の深さとすることに何ら困難性が認められません。 ※1:意匠1ないし3に表れています。 ※2:意匠1,意匠2の底面図右上及び左下の角,意匠3の図5及び同7,意匠4,意匠5の図1及び図2の(a)と(c)に表れています。 ※3:意匠3の図8 ※4:意匠1の参考図3の「a部分」の図,意匠3の図5及び意匠4に,2本の凹条の頂角を90度としたものが表れています。 ※5:意匠1,意匠2の底面図右上及び左下の角に,2本の凹条の頂角を45度としたものが表れています。 ※6:意匠1,意匠2の底面図右上及び左下の角,意匠3の図5及び図6,及び意匠4に表れています。 ※7:意匠3の図7ないし9及び意匠5の図2に表れています。 ※8:意匠3の図10に表れています。 ※9:意匠1,意匠4に表れています。 ※10:意匠5の図2の(b)と(c),及び意匠6(明細書の第4頁下から3?2行目「枠材の厚み5mmに対して,約3mmの深さ」の記述)に表れています。 そうすると,薄い帯状の縁材を長方形の環状にした縁枠であって,『包装用容器』を嵌合させるために,縁枠の内周面上側に水平方向のコ字状の溝を設けたものであって,上角部の内面に,丸みを持たせた頂角を60度とした下向き正三角形の,縁材の厚みの約85%の深さにした,縦凹条を3本設け,下角部の内面に,丸みを持たせた頂角を30度とした下向き二等辺三角形の,縁材の厚みの約85%の深さにした,縦凹条を3本設けたまでに過ぎない,本願部分の創作内容は,本願の出願前に公然知られた形状に基づいて容易に創作をすることができたものと認められます。 意匠1(別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1205780号 (意匠に係る物品,食品包装用容器の縁枠)の意匠 意匠2(別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1546817号 (意匠に係る物品,食品包装用容器)の意匠 意匠3(別紙第4参照) 特許庁発行の登録実用新案公報記載 登録実用新案第3082336号 意匠4(別紙第5参照) 特許庁発行の公開特許公報記載 特許出願公開番号:特開2013-203439 意匠5(別紙第6参照) 特許庁発行の公開特許公報記載 特許出願公開番号:特開2001-146232 意匠6(別紙第7参照) 実用新案出願公開番号:平2-144528の明細書」 第4 当審の判断 以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。 1 本願部分の形状 (1)本願意匠は,食品工場等で,包装用容器本体である食品容器と組み合わさって,包装用容器となる帯状の板材を環状にした縁枠であって,本願意匠を生産する者から食品工場等へ流通する際は,「折り畳んだ状態の参考斜視図」にあるように,対角線上の2つの角を180度折り曲げて,棒状に折り畳んだ状態で箱詰めされて流通する物である。 (2)本願意匠の形状は,食品容器と組み合わせるために,長方形となるように開いた状態では,1つの角部が,150度の3つの角と2つの短辺から成る面取り状の角となるように構成している。 また,食品容器をずれることなく嵌合させるために内周面上側に水平方向のコ字状の溝を設けている。 (3)本願部分は,平面図において左側約7分の1の部分である。 (4)そして,その部分の形状は,棒状に折り畳めるよう180度折り曲げられるようにしつつ,食品容器と組み合わすのに長方形にした場合,角部が150度の3つの角と2つの短辺から成る面取り状となるようにするために,本願部分のうち上角部の内周面には,縁材の厚みの約85%の深さの,丸みを持たせた頂角が60度の下向き正三角形の凹条を3本設けている(F-F部分拡大図参照)。 また,食品容器と組み合わすのに長方形にした場合,角部が150度の3つの角と2つの短辺から成る面取り状となるようにするために,本願部分のうち下角部の内周面には,縁材の厚みの約85%の深さの,丸みを持たせた頂角が30度の下向き正三角形の凹条を3本設けている(G-G部分拡大図参照)。 2 本願部分の創作の容易性について 包装用容器本体である食品容器と組み合わさって,包装用容器となる帯状の板材を長方形の環状にした縁枠であって,食品容器を嵌合した際にずれることがないように内周面上側に水平方向のコ字状の溝を設けた形状は,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められ,これに係る創作内容については,当業者が容易に創作することができたものと認められる。 厚みのある縁枠を,平面視で長方形に成るよう折り曲げられるように,4つの角の内周面に凹条を設けること,その凹条の二等辺三角形の頂角の角度を,90度を凹条の本数で割った角度とすること(または,それ以上の角度とすること),なおかつ,縁枠を棒状に折り畳めるように,4つの角のうち,対角線上になる2つの角の内周面に凹条を設けること,その凹条の二等辺三角形の頂角の角度を,180度を凹条の本数で割った角度とすること(または,それ以上の角度とすること)は,本願意匠の出願前に公然知られた形状と認められ,これに係る創作内容については,当業者が容易に創作することができたものと認められる。 しかし,従来の包装用容器の縁枠は,角部の内周面に1本又は複数本の凹条を設けて,縁枠を長方形に折り曲げた際には,その角部を,直角(面取りしていない状態)または角面,若しくは多数の凹条を設けて丸面に成るように構成されていたものしか存在しない。 これに対して,本願意匠は,棒状に折り曲げることもできつつ,縁枠を長方形に折り曲げた際に4つの角部が,3つの角と2つの短辺から成る独特の面取り状の角部と成るように,角部の内周面を形作っており(前記1(4)),この点については,本願の出願前の公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとまではいえない。 3 結び したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,当審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-02-13 |
出願番号 | 意願2017-3064(D2017-3064) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 下村 圭子 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2019-03-15 |
登録番号 | 意匠登録第1628558号(D1628558) |
代理人 | 岩田 徳哉 |