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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 M2 |
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管理番号 | 1356886 |
審判番号 | 不服2019-8219 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-20 |
確定日 | 2019-11-19 |
意匠に係る物品 | 配線・配管材支持具 |
事件の表示 | 意願2018- 5061「配線・配管材支持具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年(2018年)3月12日の意匠登録出願であって、同年12月10日付けの拒絶理由の通知に対し、何ら応答がなく、平成31年3月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和元年(2019年)同年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「配線・配管材支持具」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で示した部分が部分意匠として登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当する、としたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「この種の配線・配管材支持具の分野において、以下の意匠が本願出願前より公然知られています。 ・全体を略J字形とした配線・配管材支持具において、支持部の端部に短い略矩形薄板状の舌片を、内側に向けて略直角に突出させたもの(下記意匠1) ・配線・配管材の開口部からの抜け落ちを防ぐための抜止片を有し、当該抜止片の形状が、先端部は略円弧状で両側辺は後方に向け略拡開状とした略薄板状の舌片部と、舌片部の付け根を略S字状に屈曲させた弾性部を一体に形成することで構成したもの(下記意匠2) そうすると、本願意匠は、単に本願出願前より公然知られた下記意匠1における本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する支持部の端部部分から突出する舌片について、その延長上に下記意匠2において公然知られた抜止片を一体に形成することで構成したに過ぎず、当業者であれば容易に創作することができたものといえます。 意匠1 (当審注:別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1483185号の意匠 意匠に係る物品:配線・配管材支持具 意匠2 (当審注:別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1347389号の意匠 意匠に係る物品:配線・配管材保持具」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作をすることができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、「配線・配管材支持具」であり、願書の意匠に係る物品の説明欄には、「本物品は、建物壁や柱等に固定されて、配線・配管材を保持する配線・配管材支持具に関するものである。参考斜視図により説明すると、本物品は、開口を通して支持部に配線・配管材を支持させる。さらに、開口からの前記配線・配管材の抜け出しを防止する抜け止め片が設けられ、この抜け止め片は開口の幅を広げるように前記支持部側に撓み変形して前記配線・配管材を前記支持部へ配置しやすくしている。」と記載されており、正面視において全体を略J字状とし、建物壁や柱等に固定具を介して固定される「固定部」、配線・配管材を保持する略U字状の「保持部」及び保持部において固定部と逆側先端部に形成された抜け止め片部(以下「舌片部」という。)からなるものである。 2 本願部分 (1)部分意匠としての用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲 本願部分は、配線・配管材支持具のうち、保持部先端に形成された舌片部に係る部分であって、用途及び機能は、開口部から配線・配管材を保持部への配設・保持容易にし、配設後には、配線・配管材の抜け出しを防止するものである。 (2)形態 ア 本願部分は、保持部先端に設けられた長板状の舌片部であって、正面視において、保持部内径の略5/8を占める長さを有するものであり、 イ 正面視において、本願部分の保持部寄り略2/5を占める範囲に、3箇所の屈曲部を形成し、それらの態様は、中心角を、保持部側より順に、内側に略1/4円、外側に略半円、内側に略1/3円とする、小円弧状の屈曲部を内外交互に組み合わせて、略「ひ」字状の態様を形成し、 ウ 本願部分の厚みは、保持部寄りに漸次厚みを有し、中央屈曲部から先端まではほぼ等厚とするものであり、本願部分の幅は、先端寄り屈曲部から先端までの部分を、漸次テーパーをもって略1/2幅まで縮幅して形成するものであり、 エ 本願部分のうち、先端部約1/7部は、平面視において、固定部上部と重なって形成されている。 3 原審の拒絶の理由における引用意匠 (1)意匠1 意匠1は、「配線・配管材支持具」に係る物品であり、願書の意匠に係る物品の説明欄には、「本物品は、壁、柱、梁等に固定されケーブル等の配線・配管材を支持する配線・配管材支持具に関するものである。使用状態参考図1及び2により説明すると、本物品は、固定具で固定部を梁に固定し、支持部にケーブルを載置して支持することができる。なお、使用状態参考図2に示すように、前記固定部は、前記固定具を保持したまま、当該固定具を90度移動させることができ、前記固定部の異なる面で前記梁に固定することもできる。」と記載されており、意匠1において、本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」という。)の用途及び機能は、配線・配管材の載置、支持を目的として、配線・配管材が離脱、落下する可能性を避けるものである。 意匠1において、引用部分の形態は、 ア 引用部分は、保持部先端に設けられた短板状体を内側に向けて略直角のカギ状に屈曲した部分であって、正面視において、保持部内径の略1/8を占める長さを有するものであり、 イ 引用部分の厚みは、保持部寄りに漸次厚みを有し、引用部分の幅は、等幅であり、 ウ 爪状舌片部先端と固定部上部との間には、保持部内径の略1/2程度の開放部が形成されている。 (2)意匠2 意匠2は、「配線・配管材支持具」に係る物品であり、願書の意匠に係る物品の説明欄には、「本物品は、吊りボルト等に取り付けられ配線・配管材を保持するための配線・配管材保持具に関するものである。使用状態参考図1に示すように、本物品を固定部で吊りボルトに固定し保持部内に配線・配管材を配設する。その際、前記配線・配管材は弾性を有す抜止片の部分から前記保持部内に押し込むことができる。また、二つの本物品を前記吊りボルト外周の互いに対向する位置に固定すれば、一本の前記吊りボルトの同一高さであっても二つの本物品を取り付けることができる。なお、前記固定部で前記吊りボルトに固定する際は使用状態参考図2に示すように、前記吊りボルトに対し前記固定部を互いの軸が直交する様に当接させた後に回転させることで前記吊りボルトに容易に固定することができる。」と記載されており、意匠2において、引用部分の用途及び機能は、配線・配管材を保持部内に配設する際に、舌片部から保持部内に押し込んで使用することができるものであり、配設後、配線・配管材を取り外す際には、舌片部を保持部内に押し込んで取り外すことができるものである。 意匠2において、引用部分の形態は、 ア 引用部分は、正面視において、固定部、保持部、固定部上端から水平方向に保持部の略半幅分を延設した上枠部(以下、「上枠部」という。)、及び、上枠部先端部から左斜下方向に延設された舌片部によって囲まれた配線・配管材支持部(以下、「支持部」という。)のうち、舌片部に係る部分であって、その長さは、正面視において、保持部内径とほぼ同長であり、 イ 正面視において、引用部分における、上枠部寄り略1/3を占める範囲に、上枠部から1箇所の緩やかな湾曲部及び2箇所の屈曲部を形成し、それらの態様は、中心角を、上枠部側から順に、内側に略7/8円、内側に略1/3円、外側に略1/4円とする、円弧状の湾・屈曲部を組み合わせて、略「S」字状の態様を形成し、 ウ 引用部分の厚みは、上枠部寄りに漸次厚みを有するものであり、中央屈曲部から先端までをほぼ等厚とし、引用部分の幅は、上枠部及び舌片部全体を、先端に向けて漸次縮幅して略1/2幅として形成するものであり、 エ 引用部分のうち、先端部と保持部上端との間には、左側面視において、僅かに重なって形成されている。 4 本願意匠の創作容易性の判断 この種物品分野において、当業者は、本願意匠を創作する際に、被支持材である配線・配管材を短時間で確実に保持可能に形成するだけでなく、取り外しの容易性や、抜け止め可能とするための舌片の可動域についても考慮してその創作を行うものであるといえるところ、本願部分における、3つの屈曲点を内外交互に設けたことに起因する回動・復元範囲は、意匠2とは異なるものとなるため、単に意匠1の引用部分の先端に、意匠2の保持部内径と同長の引用部分を延設しても、本願部分とは同等の効果は生じない。 さらに、引用部分の形態についても、意匠1の引用部分の延長上に意匠2の引用部分を一体に形成した場合、当該形状は、意匠1で見られる、保持部寄りに中心角を内側に向けて略直角のカギ状屈曲部の先端に、意匠2で見られる、中心角を、内側に略7/8円、内側に略1/3円、外側に略1/4円とする円弧状の屈曲部、すなわち、略「S」字状舌片部を組み合わせて形成してみても、本願部分を形成する、内側に略1/4円、外側に略半円、内側に略1/3円の小円弧状の屈曲部の態様、すなわち、略「ひ」字状態様にはならない。 そうすると、本願意匠における舌片部の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといえるものであり、意匠1及び意匠2の引用部分の形態に基づいて、本願部分の形態を容易に創作することができたことを示す証拠は見られないから、本願部分の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したというほかなく、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-10-28 |
出願番号 | 意願2018-5061(D2018-5061) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(M2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 純典 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
佐々木 朝康 木村 恭子 |
登録日 | 2019-11-29 |
登録番号 | 意匠登録第1648435号(D1648435) |
代理人 | 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 |