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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4
管理番号 1357732 
審判番号 不服2019-6985
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-29 
確定日 2019-11-25 
意匠に係る物品 マスク 
事件の表示 意願2018- 11764「マスク」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成30年 5月29日 意匠登録出願
平成30年11月13日付け 拒絶理由通知書
平成30年12月25日 意見書
平成31年 2月27日付け 拒絶査定
令和 1年 5月29日 審判請求書
令和 1年 5月31日受付 手続補足書

第2 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「マスク」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。
特許庁が平成20年6月9日に発行した意匠公報に記載された、
意匠登録第1332939号(意匠に係る物品、マスク)の意匠
(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)

第4 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれもパッドを収容することができるマスクであるから、一致する。

2 両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。なお、形態の各部の名称については、令和1年 5月31日受付の手続補足書第3号証(別紙第3参照)にしたがう。
(1)形態の共通点
(共通点1)全体は、左右対称であって、正面視略六角形状で薄いシート状のマスク本体と、その左右に取り付けられた紐状の耳掛け部から成り、マスク本体左右の中央やや下寄りにパッドを固定するための溶着部が形成されている。
(共通点2)マスク本体の構成態様
マスク本体正面中央には、左右を貼り合わせるための垂直状接合部が形成されており、側面から見ると、同接合部は細幅の縦長帯状に表されて、略弓状に膨出しており、同接合部内には、接合部前端からごく僅かな余地部を介して略弓状の縦筋状部が形成されている。
側面から見たマスク本体の耳側外形状は、2つの略山状凸部とそれに挟まれた谷状凹部であって、凸部と凹部は弧状に表されており、マスク本体の上側外形状は略凹弧状、下側外形状は略直線状に形成されている。凸部、凹部及び下側直線状部の端部に沿って、微小な角ドットから成る列が2列平行して配されている。
(共通点3)溶着部の構成態様
溶着部は、折り畳んだ状態を示す左側面図において、略小矩形状凹部の列で構成され、水平列状の前方溶着部の内側端部が上方に屈曲し、それと鈍角を成して後方に列状に伸びる後方溶着部に連続している(以下、前方溶着部と後方溶着部の間を「屈曲部」という。)。後方溶着部の後端部は水平状に表されている。
前方溶着部は、マスク本体最大縦幅を縦方向で約3:1に内分する位置にある。背面から見て、左右の前方溶着部はひとつながり状に表され、正面から見ると、左右の前方溶着部は垂直状接合部を介して近接して表されている。
(共通点4)耳掛け部の態様
耳掛け部は、側面視略倒U字状であり、本体部の耳寄り端部付近に接合されている。
(2)形態の相違点
(相違点1)本体部の態様
垂直状接合部は、正面から見て、本願意匠の方が引用意匠よりも幅が細い。また、側面から見ると、本願意匠の略弓状縦筋状部と垂直状接合部後端との間にはごく僅かな隙間が形成されているが、引用意匠ではそのような隙間は形成されていない。
(相違点2)溶着部の形状
折り畳んだ状態を示す左側面図において、以下の相違が認められる。
(相違点2-1)前方溶着部と後方溶着部の成す角度
前方溶着部と後方溶着部の成す角度が約144°であるか(本願意匠)、約117°であるか(引用意匠)で相違する。
(相違点2-2)屈曲部の形状
本願意匠では、まず前方溶着部の内側端部が垂直に立ち上がって(角度は90°)、次に後方に略1/4円弧状に曲がって、更に谷状に折れ曲がっている。これに対して、引用意匠では、前方溶着部の内側端部が弧状に折れ曲がって(角度は112°)、更に山状に折れ曲がっている。
(相違点2-3)長さの比
本願意匠の前方溶着部:後方溶着部(直線部分のみ)の比が約10:11であるのに対して、引用意匠のその比は約2:3である。
また、後方溶着部(直線部分のみ)と、後方溶着部の下端から前方溶着部の左端までの距離の比は、本願意匠では約3:1であり、引用意匠では約5:1である。
(相違点3)溶着部の位置、縦横比
後方溶着部の後端部の位置が、マスク本体最大縦幅を縦方向で約4:5に内分する位置であるか(本願意匠)、マスク本体の縦方向ほぼ中央にあるか(引用意匠)で相違する。
折り畳んだ側面から見て、後端部からマスク本体谷状凹部までの余白部の幅は、本願意匠の方が引用意匠よりも約2倍広い。
折り畳んだ側面から見て、溶着部全体の最大縦幅と最大横幅の比(縦横比)が、約3:4であるか(本願意匠)、約4:9であるか(引用意匠)で相違する。
(相違点4)耳掛け部の接合位置
本願意匠の耳掛け部がマスク本体正面側に接合されているのに対し、引用意匠の耳掛け部はマスク本体側面部に接合されている。

第5 類否判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 マスクの物品分野の意匠の類否判断
マスクの通常の使用において、需要者がマスクを観察するに当たっては、そのマスクを全方向から眺めることとなり、また、パッドを収容することができるマスクに対しては、需要者はパッドを固定するための溶着部の形状や位置などについても注意を払うこととなる。したがって、パッドを収容することができるマスクの意匠の類否判断においては、マスク本体に表されているパッドを固定するための溶着部の構成態様を特に評価しつつ、かつそれ以外の項目も併せて、各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 両意匠の形態の共通点の評価
全体が左右対称の正面視略六角形状であって略倒U字状の耳掛け部とパッドを固定するための溶着部を形成し、マスク本体正面中央に左右を貼り合わせるための垂直状接合部を形成して、側面から見て、同接合部を細幅の縦長帯状に表して略弓状に鼻方向に膨出させ、同接合部内に接合部前端からごく僅かな余地部を介して略弓状の縦筋状部を形成するとともに、マスク本体の耳側外形状に2つの略山状凸部と谷状凹部を弧状に表し、マスク本体の上側外形状を略凹弧状に、下側外形状を略直線状に形成した意匠は、「マスク」の物品分野において本願の出願前に見受けられるから(例えば、意匠登録第1319807号の意匠。別紙第4参照。)、需要者はこれらの共通点に特に注目するとはいい難いので、マスク本体の耳側外形状、上側外形状及び下側外形状の共通点が両意匠のマスク本体の外形状全体に係る共通点であることを考慮したとしても、共通点1、共通点2及び共通点4が両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすということはできない。
そして、溶着部の構成態様に係る共通点3についても、溶着部を略小矩形状凹部の列で構成することはありふれており、前方溶着部を水平列状に配して後方溶着部をそれと鈍角を成すように配すること、及び前方溶着部をマスク本体最大縦幅を縦方向で約3:1に内分する位置に設けることが「マスク」の物品分野において本願の出願前に見受けられるから(例えば、意匠登録第1319807号の意匠。別紙第4参照。)、共通点3が需要者の注意を惹くということはできず、共通点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると、共通点1ないし共通点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さいということができる。

4 両意匠の形態の相違点の評価
これに対して、前記認定した相違点1ないし相違点4が両部分の類否判断に及ぼす影響は、以下のとおりである。
まず、溶着部の形状に係る相違点2については、両意匠がパッドを収容するマスクであるから、需要者はパッドをマスクに挿入し、パッドを固定させるために後方溶着部に沿ってパッドを押し込むこととなり、その際に、需要者は溶着部の傾斜、形状、位置などに特に注意を払うということができる。そうすると、前方溶着部と後方溶着部の成す角度が約144°であるか(本願意匠)、約117°であるか(引用意匠)の相違点2-1は、パッドをマスクに挿入する需要者が一見して気が付く相違であるというべきである。
次に、屈曲部の形状に係る相違点2-2についても、前方溶着部の内側端部が垂直に立ち上がってから後方に略1/4円弧状に曲がる本願意匠の屈曲部の形状は、引用意匠のそれと明らかに異なっており、長さの比に係る相違点2-3や、溶着部の位置、縦横比に係る相違点3とあいまって、溶着部を注意深く観察する需要者に対して、視覚を通じて異なる美感を起こさせるといえる。特に、後端部からマスク本体谷状凹部までの余白部の幅が引用意匠よりも約2倍広く、溶着部全体の縦横比が約3:4であって引用意匠よりも縦長である本願意匠の溶着部は、引用意匠の溶着部とは異なる視覚的印象を需要者に与えている。
したがって、相違点2及び相違点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。
他方、本体部の態様に係る相違点1については、本願意匠の垂直状接合部の幅が引用意匠よりも単に細いという相違であり、本願意匠に見られる略弓状縦筋状部と垂直状接合部後端との間の隙間もごく僅かなものであるから、垂直状接合部の幅の相違や当該隙間の有無の相違に対して需要者が注目するとはいい難いので、相違点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また、耳掛け部の接合位置に係る相違点4についても、耳掛け部がマスク本体正面側に接合されたものとマスク本体側面部に接合されたものの両方が本願の出願前からありふれていることから、そのどちらかに溶着されているかについて需要者は特に注視するということはできず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると、相違点1及び相違点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものの、相違点2及び相違点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいから、相違点を総合すると、相違点は両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというほかない。

5 両意匠の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形態については、共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さいのに対して、相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて大きいから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、当審における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-11-08 
出願番号 意願2018-11764(D2018-11764) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日比野 杏香桐野 あい並木 文子 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 小林 裕和
渡邉 久美
登録日 2019-12-20 
登録番号 意匠登録第1650069号(D1650069) 
代理人 小谷 悦司 
代理人 上田 知恵 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 並川 鉄也 

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