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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K3 |
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管理番号 | 1358681 |
審判番号 | 不服2019-7797 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-12 |
確定日 | 2019-12-24 |
意匠に係る物品 | マルチフィルム |
事件の表示 | 意願2018-13310「マルチフィルム」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の主な経緯 1 本願は,平成27年(2015年)6月15日に出願された特許出願(特願2015-120654号。以下「最初の特許出願」という。)の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成30年4月6日に新たに特願2018-74238号(以下「分割特許出願」という。)として特許出願したものを,意匠法第13条第1項の規定により,同年6月14日に意願2018-13124号(以下「原意匠出願」という。)として意匠登録出願に変更し,その後,同年6月15日に意匠法第10条の2第1項の規定により,分割出願したものである。 2 そして,本願の出願後は,平成30年10月24日付けの拒絶理由の通知に対し,同年11月16日に電話応対がされ,同年12月25日に意見書が提出されたが,平成31年3月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,令和元年(2019年)6月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「マルチフィルム」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願が適法な分割出願でないため,出願日の遡及が認められないことを前提に,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 特許庁発行の公開特許公報記載 特開2017-122 【図8】(c)及び関連する記載に表された イチゴ栽培用マルチフィルムの意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠 (1)本願意匠の認定 ア 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「マルチフィルム」であり,イチゴの苗を定植した畝に展延し,苗の葉及びクラウンを引き出し孔から引き出して用いるものである。 イ 本願意匠の形状 (ア)本願は,願書に添付の図面において,表面図及び裏面図(ただし【意匠の説明】の欄には「裏面図は,表面図と対称に表れるので省略する。」と記載されている。)をもって一組としていることから,本願意匠は平面的なものと認められる(意匠法施行規則第3条関係(様式第6 備考10))。 (イ)また,【意匠の説明】の欄の記載より,本願意匠は,表面図において上下に連続する長尺ものである。 (ウ)そして,その具体的な形状は,全体の横幅の約3分の1の幅の中央部分に,倒コマ形状(トラック形状(長方形の左右端に半円形を付けて成る,陸上競技場のトラックのような形状のこと)の中心に僅かに大きい正円形を重ねた形状。以下同様。)の孔を千鳥状に2列設けたものである。 (2)分割出願の適否について 本願は,意匠法第10条の2第1項の規定により,原意匠出願(意願2018-13124号)から分割出願されたものであるが,本願が原意匠出願のときに出願したものであるとみなされるためには,原意匠出願の願書及び願書に添付の図面中に,本願意匠が明確に認識されるように具体的に記載されていることを要件とするから,以下当該要件について検討する。 ア 本願意匠 本願意匠は,上記「(1)」で認定したとおりである。 イ 原意匠出願における意匠 (ア)原意匠出願における意匠に係る物品は「マルチフィルム」である。 (イ)a 原意匠出願における意匠の形状は,出願当初の願書に添付した図面において,図の表示を【参考表面図3】として,本願の上記「(1)イ(ウ)」の形状が記載されている。 b 原意匠出願の出願当初の願書中,意匠に係る物品の説明の欄に「原出願である特許出願には,使用状態を示す参考図に示すような長径と短径を有する非円形の引き出し孔に代えて,参考表面図1?4のような角部を丸めた矩形状,繭形状,中央部が幅広状となる長孔(当審注:当審決でいうところの「倒コマ形状」のこと。)及び楕円孔を有するマルチフィルムの意匠が示されている」という主旨の記載がある。 c 本来,参考図とは,意匠に係る物品の理解を助けるための図(意匠法施行規則第3条様式第6備考14)であるが,上記「a及びb」の2つの記載内容からすると,原意匠出願の出願当初の図面に記載されている各参考表面図(【参考表面図1】?【参考表面図4】のこと。)は,何ら物品の理解を助けるものではないから,本来の意味での参考図として認めるべきではなく,【表面図】で表した意匠以外の他の実施形態を表しているものと解するのが相当である。 d そうすると,原意匠出願の出願当初の各参考表面図は,デザインバリエーションとして,【表面図】で表した意匠以外の他の実施形態を表しており,原意匠出願の出願当初から(表面図で表した意匠を含めて)5つの意匠が創作されていたと認められる。 e この認定を踏まえて,改めて原意匠出願の出願当初の願書及び添付図面の記載内容を検討すると,本願意匠を表している図面は,【参考表面図3】のみであり,上記cに説示するとおり,「参考表面図」という表示は,実質的には,「表面図」であることを示しており,願書の【意匠の説明】の欄には,「裏面図は,表面図と対称に表れるので省略する。」と記載されていることから,意匠法施行規則第3条様式第6備考10の規定より,原意匠出願の意匠は平面的なものと認められ,なおかつ,平面的なものとして意匠が十分表現されていると認められる。 f 加えて,原意匠出願の願書の【意匠の説明】の欄には,「本意匠は表面図において上下に連続するものである。」と記載されている。 g 以上から,原意匠出願の出願当初の願書の記載内容及び願書に添付された図面の記載内容を総合的に判断すると,本願の上記「(1)イ(ア)ないし(ウ)」の形状が十分に表現されていると認められる。 (ウ)小括 よって,原意匠出願の出願当初に提出の書類の記載内容から,本願の上記「(1)」に示す意匠に係る物品及び意匠の形状が表されている。 ウ まとめ この分割出願については,そのほかの形式的要件は満たされている。 よって,本願に係る分割出願は適法であり,出願日の遡及は認められる。 (3)変更出願の適否について 原意匠出願は,意匠法第13条第1項の規定により,分割特許出願(特願2018-74238号)を意匠登録出願に変更したものであるが,原意匠出願が分割特許出願のときに出願したものであるとみなされるためには,分割特許出願の明細書及び図面中に,原意匠出願の意匠が明確に認識されるように具体的に記載されていることを要件とするから,以下当該要件について検討する。 ア 原意匠出願の意匠 原意匠出願の意匠は,上記「(2)イ」で認定したとおりである。 イ 分割特許出願における意匠 (ア)分割特許出願に係る発明の名称は「イチゴ栽培用マルチフィルム」であって,フィルムであるから薄膜であり,また,畑の畝に展延するこの種物品は,長尺ものと認められる。 (イ)原意匠出願の意匠における上記「(2)イ(イ)a」の形状は,分割特許出願の図5(c)に具体的に記載されている。 (ウ)以上,上記「(ア)及び(イ)」より,分割特許出願の,出願時に提出された「特許願」「特許請求の範囲」「明細書」「図面」及び「要約書」の記載内容を総合的に判断すると,原意匠出願の意匠に係る物品及び意匠の形状が十分に表現されていると認められる。 ウ まとめ この変更出願については,そのほかの形式的要件は満たされている。 よって,原意匠出願に係る変更出願は適法であり,出願日の遡及は認められる。 (4)特許の分割出願の適否について 分割特許出願は,特許法第44条第1項の規定により,最初の特許出願(特願2015-120654号)を分割したものであるが,両特許出願の明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,この分割が適法であることは明らかである。 よって,出願日の遡及は認められる。 (5)結語 以上のとおり,本願に関わる,原意匠出願からの分割出願,分割特許出願から原意匠出願への変更出願,及び,最初の特許出願から分割特許出願への分割出願は,適法であり,本願は,最初の特許出願の日である平成27年6月15日にしたものとみなされる。 2 引用意匠 原査定における引用意匠は,上記「第3」のとおりであって,その特開2017-122号の公開日は,平成29年1月5日であるから,引用意匠は,本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠とはいえない。 3 判断 そうすると,引用意匠と類否の判断をするまでもなく,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって,本願出願前に日本国内又は外国において,公然知られた意匠又は頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,若しくはこれらの意匠に類似する意匠とは認めることができない。 4 結び 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-12-09 |
出願番号 | 意願2018-13310(D2018-13310) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長谷川 翔平 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2020-01-22 |
登録番号 | 意匠登録第1652566号(D1652566) |
代理人 | 丸山 重輝 |
代理人 | 丸山 智貴 |
代理人 | 丸山 英一 |