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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1361516 
審判番号 不服2019-12454
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-19 
確定日 2020-03-24 
意匠に係る物品 手押し車 
事件の表示 意願2018- 24893「手押し車」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
本願は,平成30年(2018年)11月14日の意匠登録出願であって,平成31年4月4日付けの拒絶理由の通知に対し,同年4月15日に意見書が提出されたが,令和1年6月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年9月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願の意匠は,意匠に係る物品を「手押し車」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。)(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。
拒絶理由通知において引用された意匠は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2018年10月19日に受け入れた,須恵廣工業株式会社発行の内国カタログ「[シルバーカー&ショッピングカート.総合カタログ] vol.4 価格改訂版 2017年10月?」第9頁所載の「手押し車」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC30016201号)であって,その形態を,同カタログに記載されたとおりとしたものである(以下「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。

第2 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「手押し車」であって,一致する。

(2)形態の対比
両意匠の形態を対比する(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
ア 形態の共通点
(共通点1)両意匠は,全体の形態を,円形パイプからなる正面視略倒コの字状の枠体の左右フレーム上端部の間に,上方に向かって左右が拡がるように形成した略倒コの字状のハンドルバーを横架し,このハンドルバーに,上方に向かって左右が拡がるように形成した略倒コの字状のブレーキバーを取付け,枠体の左右フレーム上方部に,背もたれともなる左右フレームを連結する水平な連結バーを設け,枠体の左右フレーム中央部に,座部と脚部を折畳むための機構部分(以下「折畳み機構部」という。)を取付ける部材(以下「折畳み機構取付部」という。)を挿着し,この左右折畳み機構取付部の間に,袋部(以下「収納部」という。)を取付けるための平面視略隅丸矩形状の水平なフレーム(以下「収納部用フレーム」という。)を配設し,この収納部用フレームの上方に座面部分(以下「座部」という。)を設け,折畳み機構取付部の外側前方部分に略肉厚円板状の脚部取付け部材(以下「脚部取付部」という。)を配設し,この脚部取付部に脚部の前輪用フレーム及び後輪用フレームを回転可能に枢着した構成とした点で共通する。
(共通点2)両意匠は,ハンドルバーの形態が,ハンドルバーの左右下端部内側部分に略肉厚円板状のブレーキレバー取付け部材を設け,この部材にブレーキレバーを回転可能に枢着し,ハンドルバーの上辺及びブレーキレバー上辺の中央部分を前方側に湾曲したものであって,ハンドルバー上辺中央部分にブレーキレバーを固定する部材を設け,ハンドルバーにブレーキレバーを固定可能とした構成である点で共通する。
(共通点3)両意匠は,折畳み機構部の形態が,その背面部分に背面視略倒横長U字状の折り畳み用レバーを横架し,この折り畳み用レバーの内側には背面視略ハット状の連結バーを取付け,折り畳み用レバーを押下することで収納部用フレームが上方に跳ね上がり,前輪用フレーム及び後輪用フレームと連結した板状部材が可動することにより脚部を閉じることができる構成とした点で共通する。
(共通点4)両意匠は,脚部の形態が,左右の脚部取付部から前方に向かって下向きに傾斜する円形状パイプからなる前輪用フレームの下端部付近に,この左右フレームを連結する水平な直線状の連結バーを1本固着し,この連結バーより下側のフレーム部分を垂直になるように折曲し,その下端部に2輪からなるキャスターを回転自在に取付けた前輪構成部分と,左右の脚部取付部から後方に向かって外側に拡がりつつ下向きに傾斜する円形状パイプからなる後輪用フレームの下端部付近に,この左右フレームを連結する水平な背面視略倒横長U字状の連結バーを1本固着し,左右フレームの下端部に1輪からなるブレーキシュー付きの車輪を回転自在に取付けた後輪構成部分からなるものである点で共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)本願意匠の収納部自体の形態及びその取付け部分の態様が,全体をかぶせタイプの蓋部としたデイパック状としたものであって,収納用フレームに帯状の取付け具を捲着して取付けた態様のものであるのに対し,引用意匠の収納部の形態が,上面部が開口した箱状としたものであって,収納用フレームに収納部上端部を被着して取付けた態様のものである点で,両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の座部の形態が,前方に向かって幅広の平面視略隅丸等脚台形状の板体であるのに対し,引用意匠の座部の形態が,前方側角部のみを隅丸とした平面視略正方形状の板体である点で,両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠の収納部用フレーム内側部分には籠受け枠が揺動可能に取付けられているのに対し,引用意匠にはそのような籠受け枠が設けられていない点で,両意匠は相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品についての判断
両意匠の意匠に係る物品は,同一である。

(2)形態の類否についての判断
本願意匠の意匠に係る物品である収納部及び座部の付いた「手押し車」は,徒歩による買い物等の際に使用するものであって,その収納部に品物を入れて運ぶことや,その座部に着座して休むことができるものであるから,当該意匠の類否判断の主体である需要者とは,主として足腰が弱った高齢者であるといえる。
このような需要者は,本物品を購入する際には,その使用方法,使用状態を考えれば,手押し車の走行性能を左右する車体部分,品物を収納する収納部分,及び着座する座部部分の形態について,特に注視するということができる。
したがって,本願意匠と引用意匠の類否判断に際しては,需要者は,車体のハンドル,ブレーキ及び車輪に係る部分,収納部及び座部の具体的な形態について強い関心を持って観察するとの前提に基づいて,両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について評価することとする。

ア 共通点の評価
(共通点1)は全体の形態に係るものであるが,高齢者が使用する折畳み機構をもつ手押し車の形態として既に見られるものであって,両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)のハンドルバーの左右下端部内側部分にブレーキレバー取付け部材を設け,この部材にブレーキレバーを回転可能に枢着し,ハンドルバー上辺中央部分にブレーキレバーを固定可能な部材を設けて,ハンドルバーにブレーキレバーを固定可能とした構成のハンドルバーの形態は,この種物品において普通に見られるものであるが,ハンドルバーの上辺及びブレーキレバーの上辺の中央部分を前方側に湾曲した形態は両意匠のみに認められるものであるから,この(共通点2)が意匠全体の美感に一定の影響を与えるものである。
(共通点3)の折り畳み機構部の形態,及び(共通点4)の脚部の形態については,この手押し車の分野においてはこのような形態は既に見られるものであって,両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点3)及び(共通点4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)は,需要者が強い関心を持って観察する収納部自体の具体的な形態及びその取付け部分の態様に係る相違であるが,本願意匠が,取付けた状態で収納部用フレームが表れる,着脱可能なかぶせ蓋のデイパック状のものであり,引用意匠は,収納部用フレームが隠された固定された箱状のものであるから,収納部自体の形態のみならずその取付け部分の態様が与える印象は全く異なるものであって,両意匠は収納部及びその取付け部分の美感に大きな相違がある。
(相違点2)は,需要者が強い関心を持って観察する座部の具体的な形態に係る相違であるが,本願意匠が,前方に向かって幅広となる形態で,座りやすいものであるとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,横幅が一定であってゆったりと座ることができないものであるとの印象を与えるものであるから,両意匠は座部の美感に大きな相違がある。
(相違点3)は,籠受け枠の有無についての相違であるが,本願意匠が,座部に買物籠を載せる際にしっかり固定できるものであるとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,買物籠の固定ができないものであるといった全く異なる印象を与えるから,この(相違点3)が意匠全体の美感に及ぼす影響は大きい。

ウ 形態の類否判断
両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両意匠は,需要者が強い関心を持って観察するといえる収納部及びその取付け部分並びに座部の美感に大きな差異があり,籠受け枠の有無についても大きく異なるものであるから,両意匠の全体の形態,並びにハンドルバー及びブレーキレバーの上辺が前方側に湾曲した形態を除くブレーキレバーの形態,折畳み機構部及び脚部の形態が共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえるから,両意匠の形態は類似しないものである。

3 小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,その形態において類似しないから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。

第3 むすび
上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲


審決日 2020-03-11 
出願番号 意願2018-24893(D2018-24893) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2020-04-17 
登録番号 意匠登録第1659350号(D1659350) 
代理人 中谷 武嗣 

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