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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1361540 |
審判番号 | 不服2019-15817 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-25 |
確定日 | 2020-04-14 |
意匠に係る物品 | 試合経過入力機能付き電子計算機 |
事件の表示 | 意願2018- 24311「試合経過入力機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年(2018年)11月5日の意匠登録出願であって、令和元年(2019年)5月16日付けの拒絶理由の通知に対し、同年6月17日に意見書が提出されたが、同年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「試合経過入力機能付き電子計算機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、本願意匠の正面側に配された表示画面に表された画像(以下「表示画像」という。)のうち、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下、表示画像のうち、実線で表された部分を「本願画像部分」という。別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠は、『試合経過入力機能付き電子計算機』の表示部に表された画像の一部について部分意匠として意匠登録を受けようとするものであって、『正面図の表示部拡大図1』にあらわされた画像から『正面図の表示部拡大図2』および『正面図の表示部拡大図3』に変化する画像に係る意匠であると認められます。 この意匠登録出願の意匠に係る『試合経過入力機能付き電子計算機』を含め、広く操作画像を含む物品において、角丸長方形状枠を表示画面左右両端に縦に複数並べる画像は、引用例1に見られるように本願出願前より公然知られています。 また、縦に複数並べた長方形状枠の最上部の枠の横に一つ同形状の枠を並べる画像も、引用例2に見られるように、本願出願前より公然知られています。 本願意匠は、本願出願前より公知の、角丸長方形状枠を表示画面左右両端に縦に複数並べた画像を『試合経過入力機能付き電子計算機』に係る画像の意匠としてあらわし、さらに、これもまた本願出願前より公知の態様で、上記画像にあらわされた最上部の枠の横に一つ同形状の枠を並べた画像を、変化後の画像の意匠としてあらわした程度に過ぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。 引用例1 (当審注:別紙第2参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2014年 3月24日に受け入れた マイトビー C15Eye 第2頁所載 障害者用会話補助装置の画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HC25040316号) 引用例2 (当審注:別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1461408号の意匠 『携帯情報端末』に係る画像」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、「試合経過入力機能付き電子計算機」であり、願書の意匠に係る物品の説明欄によれば、本願意匠は、「複数の表示部拡大図に表された画像は、本願意匠に係る物品「試合経過入力機能付き電子計算機」が有する、試合経過入力機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される。本願における部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願物品を操作するためのグラフィックユーザーインターフェース部分である(以下、同部分を「GUI部分」と称する)。GUI部分は、テニスにおける試合状況またはプレー内容を示したアイコンを含む。「参考部分拡大図1」における領域AおよびBに配置されたアイコンは、それぞれ、二人または二組のプレーヤーの内の一方に係るプレー内容の入力の用に供される。「参考部分拡大図2」における領域CおよびDに配置されたアイコンは、それぞれ、二人又は二組のプレーヤーの内の一方に係る試合状況の表示の用と、入力内容の取消の用に供される。領域AおよびBに配置された特定のアイコンの指定を転機として、本願意匠に係る画像内のアイコンの配置は変化する。操作者の操作によって、領域AおよびBにおける特定のアイコンが指定されることを転機として、入力確定アイコンが、領域AおよびBの何れかに配置される。「正面図の表示部拡大図1」は、領域AおよびBにおける特定のアイコンが指定されていない場合の画像である。「正面図の表示部拡大図2」および「正面図の表示部拡大図3」は、領域AおよびBにおける特定のアイコンが指定された場合の画像である。」とするものである。 (2)本願画像部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲 本願画像部分の用途及び機能は、試合経過入力機能を発揮できる状態にするための操作の用に供されるものであって、本願画像部分の位置、大きさ及び範囲は、略横長長方形の表示画面の左右端におけるアイコン一列分の幅を占める大きさ及び範囲に位置するものである。 (3)本願画像部分の形態 ア 本願画像部分の形状は、表示画面の左右端にそれぞれアイコンを縦一列に配したものであって、 イ 表示画面左端列においては、縦横比を約3:5とする同形同大の略隅丸横長長方形状のアイコン(以下「矩形アイコン」という。)を5つ配し、 ウ 表示画面右端列においては、左端列と同形の矩形アイコンを3つと、当該矩形アイコンと横幅を同一として縦方向に約2倍としたアイコン(以下「縦長アイコン」という。)1つとを、上から矩形アイコン、縦長アイコン、矩形アイコン、矩形アイコンの順に配し、 エ 正面図の表示部拡大図2によれば、表示画面左端列最上段の矩形アイコンの右隣に矩形アイコンを並置し、 オ 正面図の表示部拡大図3によれば、表示画面右端側最上段の矩形アイコンの左隣に矩形アイコンを並置し、 カ 願書の意匠に係る物品の説明欄の記載によれば、上記エ及びオにおいて並置した矩形アイコンが、表示画面の特定のアイコンの指定を転機として、エの態様及びオの態様に変化して表れるものである。 2 引用意匠の認定 原査定において拒絶の理由で引用された引用例1及び引用例2に表れた画像を含む意匠の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。 (1)引用例1 引用例1は、「障害者用会話補助装置」の画像であり、引用例1のうち、本願画像部分の創作非容易性の判断の根拠となる部分は、略横長長方形の表示画面の左右端におけるアイコン一列分の幅を占める範囲に、略隅丸正方形状とする同形同大のアイコンを、表示画面の左右端にそれぞれ4つ縦一列に配してなる態様である。 (2)引用例2 引用例2は、「携帯情報端末」の画像であり、引用例2のうち、本願画像部分の創作非容易性の判断の根拠となる部分は、正面図において表示画面の略中央列に、縦横比約1:2とする略横長長方形状のアイコンを縦に4つ並べたものの最上段に、同形同大のアイコンを右隣に並置してなる態様である。 3 本願意匠の創作非容易性の判断 意匠法第3条第2項の規定の適用についての判断は、画像を含む意匠の構成態様において、それらの基礎となる構成要素や具体的態様が本願出願前に公然知られ、又は広く知られており、それらの構成要素を、ほとんどそのまま、又は当該分野においてよく見られる改変を加えた程度で、当該分野においてありふれた手法である単なる組合せ、若しくは、構成要素の全部又は一部の単なる置換えなどがされたにすぎないものであるか否かを判断するだけでなく、画像が変化する場合には、変化の態様が当業者にとってありふれた手法に基づく変化であるか否かを判断して行うものである。 そして、本願意匠の形態及び変化の態様は、上記第4 1(3)アないしカに示すとおりであるところ、本願意匠の「試合経過入力機能付き電子計算機」を含む、画像の分野において、上記1(3)アの、表示画面左右端にそれぞれアイコンを一列に配することは、引用例1に表れたとおりであって、本願意匠独自の着想や独創性が表れているものとはいえず、上記1(3)イの、アイコンの縦横比を約3:5とすることや、縦に5つ並べること、及び上記1(3)ウの、矩形アイコンと縦長アイコンとを混在させて一列を形成する態様も、画像の分野においては、例示するまでもなく公然知られた構成要素を、当該分野においてよく見られる改変を加えた程度の態様といえ、本願意匠の独自の創意工夫に基づく態様とはいえず、更に、上記1(3)エのうち、表示画面最上段のアイコンの右隣に同形同大のアイコンを並置することも、引用例2に表れたとおりであって、これも本願意匠独自の着想や独創性が表れているとはいえない。 しかしながら、上記1(3)エないしカで表れた、表示画面左端列最上段の矩形アイコンの右隣に並列して表れる矩形アイコンと、表示画面右端側最上段の矩形アイコンの左隣に並列して表れる矩形アイコンとが、表示画面の特定のアイコンの指定を転機として変化して表れる態様については、引用例1及び2からは導き出せず、また、この変化の態様が当業者にとってありふれた手法に基づく変化とはいえないだけでなく、この変化の態様は、本願意匠の視覚的な特徴として表れるものであるから、独自の創意工夫に基づく意匠の着想や独創性が認められるものといえる。 そうすると、画像を含む意匠の構成態様において、それらの基礎となる構成要素や具体的態様が本願出願前に公然知られ、又は広く知られており、それらの構成要素を、殆どそのまま、又は当該分野においてよく見られる改変を加えた程度で、当該分野においてありふれた手法である単なる組合せ、若しくは、構成要素の全部又は一部の単なる置換えなどがされたにすぎないものであったとしても、それらの構成要素の変化の態様は、当業者にとってありふれた手法に基づく変化とも認められないから、本願意匠は、当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができたものということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-03-30 |
出願番号 | 意願2018-24311(D2018-24311) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂田 麻智 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
木村 恭子 江塚 尚弘 |
登録日 | 2020-05-12 |
登録番号 | 意匠登録第1660709号(D1660709) |
代理人 | 辻田 朋子 |