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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M1
管理番号 1362391 
審判番号 不服2019-12819
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-26 
確定日 2020-05-07 
意匠に係る物品 化粧シート 
事件の表示 意願2018-18231「化粧シート」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は,意願2018-18226号(不服2019-12814号)の意匠を本意匠とする関連意匠に係る,平成30年(2018年)8月22日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成31年 2月 1日付け:拒絶理由の通知
平成31年 3月15日 :意見書の提出
令和 1年 6月25日付け:拒絶査定
令和 1年 9月26日 :審判請求書の提出
令和 2年 2月13日 :面接

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「化粧シート」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩の結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
大韓民国意匠商標公報 2017年 9月12日17-27号
壁紙(登録番号30-0922245)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29432404号)

第4 当審の判断
1 本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「化粧シート」である。
そして,本願意匠の意匠に係る物品は,適切な大きさや形状に切断されて,建築物や構築物の壁材や床材,又は家具等に貼付して装飾することを目的として用いられるものである。

(2)本願意匠の形態
ア.本願は,願書に添付の図面において,表面図及び裏面図(ただし【意匠の説明】の欄には「裏面図は無模様のため省略する。」と記載されている。)をもって一組としていることから,本願意匠は平面的なものと認められる(意匠法施行規則第3条関係(様式第6 備考10))。
イ.また,【意匠の説明】の欄の記載より,本願意匠は,表面図において上下に連続する長尺ものである。
そして,その具体的な形態は,
ウ.表面全体が,連続する木目調のヘリンボーン(杉綾織)状の模様(以下「ヘリンボーン模様」という。)である。
模様の詳細は,
エ.輪郭線が描かれていない長方形の範囲内に天然木風の木目模様を施して,長方形の木片模様を表現し,4つの木片模様がW字状に配置されており,当該W字状が上下左右に連続して,ヘリンボーン模様を構成しており,
オ.木片模様の長辺の長さは同一であるが,短辺の長さは5種類(以下,太いものから順に「太片」,「中太片」,「中片」,「中細片」,「細片」という。)あって,
カ.それら短辺の長さが異なる木片模様の並び方は,(表面図上から)一段目が,(左から(以下同じ順。))細片・中片・細片・中片の順で,二段目が,太片・太片・太片・太片の順で,三段目が,中片・中太片・中片・中太片の順で,四段目が,太片・細片・太片・細片の順で,五段目が,中片・太片・中片・太片の順で,六段目が,中細片・中片・中細片・中片の順で,七段目が,太片・太片・太片・太片の順で,八段目が,中太片・中細片・中太片・中細片の順でW字状に配置されており,一段目から八段目までで一単位を構成しており,
キ.当該一単位が上下左右に連続している。
ク.おおむね明度が中程度の茶色が何色かあり,所々に,やや明るい茶色と,やや暗い茶色があり,各色が不規則に並んでいる。

2 引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「壁紙」である。

(2)引用意匠の形態
ア.引用意匠は,壁紙であるから平面的なものと認められる。
イ.また,柄模様は,上下左右に連続して繰り返されるものである。
そして,その具体的な形態は,
ウ.表面全体が,連続する木目調のヘリンボーン模様である。
模様の詳細は,
エ.輪郭線として長方形を描き,その長方形の中に天然木風の木目模様を施して,長方形の木片模様を表現し,4つの木片模様がW字状に配置されており,当該W字状が上下左右に連続して,ヘリンボーン模様を構成しており,
オ.木片模様の長辺の長さ及び短辺の長さは同一(全ての木片模様は同形同大)であって,
カ.おおむね明度が中程度よりやや明るい茶色が何色かあり,所々に,相当明るい茶色と,中程度の茶色があり,
キ.それら色彩の異なる木片模様の並び方は,五段のW字状で一単位を構成しており,
ク.当該一単位が上下左右に連続している。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「化粧シート」であり,引用意匠に係る物品は「壁紙」である。

(2)両意匠の形態の対比
両意匠の形態を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)両意匠は共に,平面的なものであって,
(イ)表面全体が,連続する木目調のヘリンボーン模様である。
(ウ)長方形の範囲内に天然木風の木目模様を施して,長方形の木片模様を表現し,4つの木片模様がW字状に配置されており,当該W字状が上下左右に連続して,ヘリンボーン模様を構成しており,
(エ)木片模様の長辺の長さは同一である点。

イ.相違点について
(ア)1つの木片模様につき,本願意匠は,輪郭線が描かれていない長方形の範囲内に木目模様を施しているのに対して,引用意匠は,輪郭線として長方形を描き,その長方形の中に木目模様を施している点。
(イ)木片模様の短辺の長さ(幅)につき,本願意匠は,異なる長さのものが5種類あり,各種の組合せの結果,八段のW字状で一単位を構成しているのに対して,引用意匠は,全て同一である点。
(ウ)色彩につき,本願意匠は,おおむね明度が中程度の茶色が何色かあり,所々に,やや明るい茶色と,やや暗い茶色があり,各色が不規則に並んでいるのに対して,引用意匠は,色彩の異なる木片模様の並び方は,五段のW字状で一単位を構成している点。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠の意匠に係る物品は「化粧シート」であって,建築物や構築物の壁材等に貼付して装飾することを目的として用いられる化粧シートである。
対して,引用意匠の意匠に係る物品は「壁紙」は,壁面の補強や装飾のため壁に貼る紙である。
そうすると,共に建築物の壁を装飾するための模様が施されているシート状のものと認められるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)両意匠における形態の評価
ア.共通点について
共通点は,両意匠の全体の形態に関わる根幹的な形態であって,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度認められる。

イ.相違点について
(ア)両意匠には,相違点(ア)及び相違点(イ)があるところ,本願意匠は,木片模様に輪郭がなく,かつ,天然木風の木目模様であるから,木片模様の幅が5種類あること及び木片模様同士の境界は一見しただけでは分からないものの,全体的にはヘリンボーン模様と認識するものであるのに対して,引用意匠は,木片の輪郭を描いていることから,木片模様の境界が明確であるうえ,木片模様が同形同大であり,W字状の木片模様の角部の位置が,上下方向に見てそろっていることから,形態的に規則正しく,単調な印象を与えている。
(イ)両意匠には,相違点(イ)及び相違点(ウ)によって,本願意匠は,明度の異なる茶色が不規則に並んでいることが目立ち,形態的に複雑で見飽きない印象を与えているのに対して,引用意匠は,五段のW字状が成す一単位の繰り返しが,容易に認識でき,全体のヘリンボーン模様が規則正しく,単調な印象を与えている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)により,本願意匠は,やや暗く,色彩が不規則でぼんやりとしたヘリンボーン模様と認識するのに対して,引用意匠は,明るく,規則正しく,単調なヘリンボーン模様と認識すると考えられるから,需要者に対して異なる印象を与えるものといえ,この形態の相違は大きく,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

(3)両意匠における形態の類否判断
以上のとおり,相違点の類否判断に与える影響は大きく,両意匠の類否判断を決するものといえるのに対して,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響が一定程度認められるとはいえ,相違点の類否判断に与える影響をしのぐものではないから,本願意匠の形態と引用意匠の形態は,類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形態は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5 結び
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2020-04-14 
出願番号 意願2018-18231(D2018-18231) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2020-05-18 
登録番号 意匠登録第1661147号(D1661147) 
代理人 松井 宏記 
代理人 宗助 智左子 

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