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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1364076 
審判番号 不服2020-43
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-06 
確定日 2020-07-13 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2018-26747「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
第1 手続の経緯
本願は,平成30年(2018年)12月7日の意匠登録出願であって,令和1年(2019年)7月23日付けの拒絶理由の通知に対し,同年9月11日に意見書が提出されたが,同月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,令和2年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「薄赤色で塗りつぶした部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。
「包装用容器の分野では,容器本体と容器本体からはみ出さない程度の大きさとした蓋体との組み合わせからなる様々な形状の容器が本願出願前から広く知られているところであり(例えば公知意匠1及び同2参照),また容器本体を縦長のやや偏平な角柱状としたものや蓋体を下縁に細幅の周回部を設けた円柱状としたものの何れも,本願出願前から公然知られています(容器本体については前掲の公知意匠1,蓋体については前掲の公知意匠2参照)。
本願意匠は,この公然知られた形状の容器本体と蓋体を単に組み合わせて,そのまま包装用容器の意匠としたに過ぎないものであり,この種の物品分野に関する通常の知識を有する者であれば,容易に創作できたものと認められます。

公知意匠1(当審注:別紙第2参照)
特許庁普及支援課が2007年 8月 9日に受け入れた
大韓民国意匠商標公報 2007年 4月16日07-15号
化粧品容器(登録番号30-0446504)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH19415003号)

公知意匠2(当審注:別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1235054号の意匠
意匠に係る物品:包装用容器」

第4 当審の判断
以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。

1.本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,包装用容器である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,容器本体と蓋から成る包装用容器における容器本体の上端に設けた口部を除いた部分であって,その位置,大きさ及び範囲は,容器本体から口部を除いた位置,大きさ及び範囲であって,包装用容器の用途及び機能から口部の用途及び機能を除いた用途及び機能を有している。

(3)本願部分の形状
本願部分の内,容器本体の形状は,
ア.縦:横:奥行きの比率が,約9:3:2の略角柱状であって,
イ.略角柱状の容器本体の上面中央に口部を設けたものであって,
ウ.正面,背面及び左右両側面が外側に僅かに膨出した湾曲面としているところ,詳細には,面中央部における膨出量が4面とも同じであり,その結果,幅の広い正面と背面がごく緩い湾曲面となっており,幅の狭い右側面と左側面が緩い湾曲面となっており,
エ.上面が水平面であって,
オ.正面,背面,左右両側面,上面及び底面の6つの面がそれぞれ交わる全ての角(稜(りょう))に面取り(角面)を施しているものである。
そして,蓋の形状は,
カ.下端に少し突出した周回部を設けた略円柱状であって,
キ.周回部の直径は,容器本体の膨出した正面と背面の中央の奥行き長さに合わせた直径としたもので,
ク.縦の長さは,直径の長さよりもやや小さいものであって,
ケ.蓋の上面は,細い縁部を残してごく僅かに陥没している。

2.本願意匠の創作の容易性について
(1)出願前に公然知られた形状
本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる形状は,以下のとおりである。
ア.意匠1より,容器本体の形状について,(ア)縦:横:奥行きの比率が,約8:3:2の略角柱状であって,(イ)略角柱状の容器本体の上面中央に口部を設けたものであって,(ウ)正面及び背面が外側に僅かに膨出した湾曲面とした形状。
イ.意匠2より,蓋の形状について,(ア)下端に少し突出した周回部を設けた略円柱状であって,(イ)周回部の直径は,容器本体の膨出した正面と背面の中央の奥行き長さに合わせた直径としたものであって,(ウ)縦の長さは,直径の長さよりもやや小さいものとした形状。

(2)本願部分の創作の容易性
ア.本願意匠の出願前に公然知られた形状
(ア)上記(1)のア.(ア)により,本願部分である容器本体の横:奥行きの比率を約3:2の略角柱とすることは,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる。
(イ)上記(1)のア.(イ)により,口部を略角柱状の容器本体の上面中央に設けることは,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる。
(ウ)上記(1)のア.(ウ)により,容器本体の正面及び背面が外側に僅かに膨出した湾曲面とすることは,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる。
(エ)上記(1)のイ.(ア)により,蓋の形状を,下端に少し突出した周回部を設けた略円柱状とすることは,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる。
(オ)上記(1)のイ.(イ)により,蓋の周回部の直径を,容器本体の膨出した正面と背面の中央の奥行き長さに合わせた直径とした形状は,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる。
(カ)上記(1)のイ.(ウ)により,蓋の縦の長さを,直径の長さよりもやや小さいものとすることは,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる。

イ.公然知られた形状に基づいて容易に創作できる形状
上記ア.より,本願意匠の形状の内,容器本体について,
(ア)横:奥行きの比率を,約3:2の略角柱状とし,
(イ)略角柱状の容器本体の上面中央に口部を設け,
(ウ)正面及び背面を外側に僅かに膨出した湾曲面とし,
蓋について,
(エ)下端に少し突出した周回部を設けた略円柱状とし,
(オ)縦の長さは,直径の長さよりもやや小さいものであって,
(カ)周回部の直径は,容器本体の膨出した正面と背面の中央の奥行き長さに合わせた直径とした形状は,意匠1及び意匠2により本願の出願前に公然知られた形状に基づいて容易に創作をすることができたものと認められる。

ウ.意匠1及び意匠2によっては,公然知られたとは認められない形状
上記ア.より,本願意匠の形状の内,容器本体について,
(ア)横幅と奥行きの比率を約3:2とした場合に,容器の高さを約9とした形状。
(イ)正面と背面だけではなく,左右の両側面も外側に僅かに膨出した湾曲面としており,詳細には,面中央部における膨出量が4面とも同じであり,その結果,幅の広い正面と背面がごく緩い湾曲面となっており,幅の狭い右側面と左側面が緩い湾曲面となっている形状。
(ウ)上面が水平面である形状。
(エ)正面,背面,左右両側面,上面及び底面の6つの面がそれぞれ交わる全ての角を角面としている形状。
蓋について,
(オ)上面を,細い縁部を残してごく僅かに陥没している形状。

3.本願意匠について
上記2.の(2)により,本願部分の形状に係る構成要素の,イ.の(ア)ないし(カ)の6つの要素,ウ.の(ア)ないし(オ)の5つの要素,合わせて11もの形状的構成要素を,この種物品分野において無数にある形状的構成要素の中からモチーフとして選択し,合成して,最終的には視覚を通じて美感を起こさせる形状に昇華させた創作行為については,容易であったと認めるに足る証拠はない。
よって,本願部分の形状は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。

4.結び
したがって,本願意匠は,原審で示した各意匠を基にしては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2020-06-18 
出願番号 意願2018-26747(D2018-26747) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2020-07-20 
登録番号 意匠登録第1665377号(D1665377) 
代理人 笹野 拓馬 

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