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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1364990 |
審判番号 | 不服2020-693 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-17 |
確定日 | 2020-08-05 |
意匠に係る物品 | インダクタ |
事件の表示 | 意願2019- 7247「インダクタ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年4月3日の意匠登録出願であって、令和1年9月13日付けの拒絶の理由の通知に対し、令和1年10月18日に意見書が提出されたが、令和1年12月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和2年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、その意匠は、意匠に係る物品を「インダクタ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。『内部機構の概略を示すA-A’断面図』を含めて部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、特許庁が発行した意匠公報(公報発行日:平成23年(2011年)6月20日)に記載された、意匠登録第1416908号(意匠に係る物品、コイル部品)の意匠であって、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものであり、拒絶理由通知書によれば、引用意匠において本願と対比、判断する部分を「本願意匠の実線部に相当するコイル本体部分」(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。 第4 当審の判断 1 意匠の認定 (1)本願意匠 ア 意匠に係る物品 本願の意匠に係る物品は、磁芯と、導電体からなるコイルと、端子とを備える、「インダクタ」である。 イ 本願部分の用途及び機能 本願部分は、意匠に係る物品「インダクタ」において、巻線部を磁芯に埋め込んだ部分であることから、電流、電圧、周波数を整える機能を有する部分であり、電子機器の電子回路の一部を構成するために用いられるものである。 ウ 本願部分の位置、大きさ及び範囲 本願部分は、意匠に係る物品「インダクタ」における端子部以外の部分である、巻線部を磁芯に埋め込んだ部分である。 エ 本願部分の形態 本願部分は、平面視形状を略倒「D」字状とする扁平柱形状であり、平面視形状の略倒「D」字状の弧部分は略半円形である。 (2)引用意匠 ア 意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は、コイル巻線を磁性粉末からなる圧粉磁芯中に封入した、「コイル部品」である。 イ 引用部分の用途及び機能 引用部分は、意匠に係る物品「コイル部品」において、コイル巻線を磁性粉末からなる圧粉磁芯中に封入した部分であることから、電流、電圧、周波数を整える機能を有する部分であり、電子機器の電子回路の一部を構成するために用いられるものである。 ウ 引用部分の位置、大きさ及び範囲 引用部分は、意匠に係る物品「コイル部品」の、端子部以外の部分である、コイル巻線が封入された磁芯部である。 エ 引用部分の形態 引用部分は、平面視形状を略倒「D」字状とする扁平柱形状であり、平面視形状の略倒「D」字状の弧の部分は略半円形である。 2 対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「インダクタ」であり、引用意匠は「コイル部品」であるが、いずれも巻線部を磁芯に埋め込んだ、電源、電圧、周波数を整える機能を有する電子部品であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の用途及び機能が共通するものである。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下、「両部分」という。)は、どちらも電流、電圧、周波数を整える機能を有する点で一致し、電子機器の電子回路の一部を構成するために用いられるという用途も一致する。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 本願部分は、意匠に係る物品「インダクタ」における端子部以外の部分である、巻線部を磁芯に埋め込んだ部分であり、引用部分は意匠に係る物品「コイル部品」の、端子部以外の部分である、コイル巻線が封入された磁芯部であることから、両部分の位置、大きさ、範囲は一致する。 (4)両部分の形態の対比 両部分の形態を対比すると、その形態には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。 なお、両部分の形態の対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめることとする。 ア 両部分の形態の共通点 (共通点1)両部分は、平面視形状を略倒「D」字状とする扁平柱形状であって、本願部分は、平面視における横幅を「1」とした場合に、平面視の縦方向の最大値が約1.05、扁平柱形状の高さが約0.44であり、引用部分は、平面視における横幅を「1」とした場合に、平面視の縦方向の最大値が約1.05、扁平柱形状の高さが約0.44であるため、両部分の構成比率が共通し、略倒「D」字状の弧の部分は略半円形である点で共通する。 (共通点2)両部分は、上面が平滑な面である点で共通する。 イ 両部分の形態の相違点 (相違点1)本願部分は、平面と周側面の稜線部がわずかに丸みを帯びるのに対し、引用部分は、平面と周側面の稜線部が角張る点で相違する。 (相違点2)本願部分は、底面側に略円柱形状の凹部を有するのに対し、引用部分は、底面が平滑な面である点で相違する。 3 判断 本願意匠が意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するか否かについて、以下のように検討し、判断する。 なお、本願意匠に係る「インダクタ」は、電子回路を構成するために使用するものであるから、両意匠の需要者は、電子回路を設計する技術者である。 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するため、類似するものである。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分は、電流、電圧、周波数を整える機能を有する部分であり、電子機器の電子回路の一部を構成するために用いられるものであるから、両部分の用途及び機能は一致する。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 本願部分は、意匠に係る物品「インダクタ」における端子部以外の部分である、巻線部を磁芯に埋め込んだ部分であり、引用部分は意匠に係る物品「コイル部品」の、端子以外の部分である、コイル巻線が封入された磁芯部であることから、両部分の位置、大きさ及び範囲は一致する。 (4)両部分の形態の類否判断 ア 両部分の形態の共通点の評価 (共通点1)は、両部分の形態に係るものであるが、本体部の平面形状を略倒「D」字状とする扁平柱形状であり、略倒「D」字状の弧の部分を略半円形とすることは、インダクタの分野において従来から見られる態様であるため、この(共通点1)が両部分の類否判断に与える影響は限定的なものである。 (共通点2)は、両部分の上面の形態に係るものであるが、この種物品においては、上面が平滑なものは本願意匠出願前より存在していることから、この(共通点2)が両部分全体の美感に与える影響は限定的なものである。 イ 両部分の形態の相違点の評価 (相違点1)は、両部分の上面と周側面の稜線に係るものであるが、この種物品分野におけるインダクタの一般的な大きさを考慮すれば、稜線部分を特に注視してようやく気づく程度の僅かな違いであることから、この(相違点1)が両部分全体の美感に与える影響は限定的なものである。 (相違点2)は、両部分の底面側の略円柱形状の凹部の有無に関するものであるが、この種物品の需要者は底面を他の面と同様に観察するものであり、また、インダクタの分野において、底面側に、インダクタの厚みの半分弱の深さの、略円柱形状の凹部を形成したものは、本願出願前には一般的には見られない態様であることから、この(相違点2)は両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。 ウ 形態の類否判断 両部分の形態における共通点と相違点の評価に基づき、両部分を総合的に観察すると、両部分は、平面視形状を略倒「D」字状とする扁平柱形状部の美感は共通する一方で、底面側の美感に相違がある。そして、この種物品においては、巻線部を磁芯に埋め込んだ部分が、電流、電圧、周波数を整えるという機能を発揮するため、需要者は各面を等しく観察するものであるといえ、底面側の美感の相違は、需要者に異なる美感を起こさせるものといえる。 そうすると、両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき意匠全体として総合的に観察した場合、両部分の形態は、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、類似しない。 (5)小括 上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が類似し、両部分の用途及び機能が一致し、両部分の位置、大きさ及び範囲も一致するが、その形態において類似しないから、両意匠は類似しないものである。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-07-15 |
出願番号 | 意願2019-7247(D2019-7247) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 宏幸 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
濱本 文子 江塚 尚弘 |
登録日 | 2020-08-12 |
登録番号 | 意匠登録第1667161号(D1667161) |
代理人 | 渡邉 久典 |
代理人 | 松本 健志 |
代理人 | 山崎 拓哉 |