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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1364993 |
審判番号 | 不服2019-15911 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-26 |
確定日 | 2020-08-04 |
意匠に係る物品 | スマートフォン用ディスプレイモジュール |
事件の表示 | 意願2018- 20615「スマートフォン用ディスプレイモジュール」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,平成30年(2018年)9月21日(パリ条約による優先権主張2018年3月22日,大韓民国)の意匠登録出願であって,平成31年2月25日付けの拒絶理由の通知に対し,令和1年6月5日に意見書が提出されたが,同年8月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年11月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,令和2年3月13日付けの当審からの審尋に対し,同年6月17日に審尋に対する回答書の提出がなされたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願の意匠は,意匠に係る物品を「スマートフォン用ディスプレイモジュール」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。)(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は,大韓民国意匠商標公報(公報発行日:2018年2月23日)に記載された,「スマートフォン用ディスプレイモジュール(登録番号30-0945398)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH30405692号)であって,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(以下「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「スマートフォン用ディスプレイモジュール」であるから一致する。 (2)形態の対比 両意匠の形態を対比する(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形態の共通点 (共通点1)両意匠は,全体の形態を,略隅丸縦長長方形薄板状のディスプレイ部分(以下「ディスプレイ部」という。)の下端部に,スマートフォンの本体回路部分にディスプレイ部を接合する配線部分(以下「配線部」という。)を配設した構成とした点が共通する。 (共通点2)両意匠は,ディスプレイ部の形態を,正面視の縦横比を約2.1:1とし,その上端部左右中央部分に横向きの小さな略長円形状に表れる部分(以下「長円形状部」という。)を形成している点で共通する。 (共通点3)両意匠は,配線部の形態を,ディスプレイ部の下辺部に横長長方形薄板状の接合部分を設け,その前面側中央部分に下端部が僅かに拡がる,接合部分より幅の狭い略横長長方形薄板状の配線部分を配設し,この先端部分に下端部角部が隅丸で,下辺左側端部付近に縦長長方形状の薄板凸状部分を1つ形成した略横長長方形薄板状の配線先端部分を設けた点が共通する。 イ 形態の相違点 (相違点)本願意匠の長円形状部の形態が,透明なディスプレイの部分であって,透明ではない他のディスプレイの部分と一体的になるように形成したものであるのに対し,引用意匠の長円形状部の形態が,略長円形状の貫通孔である点で,両意匠は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品についての判断 両意匠の意匠に係る物品は,同一である。 (2)形態の類否についての判断 本願意匠の意匠に係る物品である「スマートフォン用ディスプレイモジュール」の需要者は,スマートフォン製造業者の専門的知識を有する技術者であると認められ,その需要者は,スマートフォンにとって重要な部分であるディスプレイ部の具体的な形態が,需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。 したがって,本願意匠と引用意匠の類否判断に際しては,需要者は,ディスプレイ部の具体的な形態について強い関心を持って観察するとの前提に基づいて,両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について評価することとする。 ア 共通点の評価 (共通点1)の全体の形態については,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであって,両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,これらの(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)のディスプレイ部の形態については,正面視を縦横比約2.1:1としたものも,その上端部左右中央部分に長円形状部が表れる形態としたものも,本願出願前よりごく普通に見られるものであるから,この(共通点2)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点3)の配線部の形態については,主に技術的な要因で決定するような部分的な部位に係るものにすぎず,意匠全体の印象を変えるほどのものではないから,この(共通点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 (相違点)は,この物品の需要者が購入時等に強い関心を持って観察するディスプレイ部の具体的な形態に係る相違であって,本願意匠が,ディスプレイ背面側にカメラを設置し,そのカメラを使用しない際にはディスプレイの全面に画像が表示できる従来にないディスプレイであるとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,ディスプレイ背面側に配置したカメラのために,ディスプレイ部の一部を略長円形状に切り欠いた従来からみられるディスプレイであるとの印象を与えるから,両意匠は長円形状部の美感に大きな相違がある。 ウ 形態の類否判断 両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両意匠は,需要者が使用時に強い関心を持って観察する長円形状部の美感が異なるものであり,両意匠の全体の構成態様や長円形状部を除くディスプレイ部及び配線部の各部分の形態が共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際に需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠の形態は類似しないものである。 3 小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,その形態において類似しないから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-07-20 |
出願番号 | 意願2018-20615(D2018-20615) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清水 玲香 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2020-09-04 |
登録番号 | 意匠登録第1668770号(D1668770) |
代理人 | 園田・小林特許業務法人 |