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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 M1
管理番号 1365001 
審判番号 不服2019-15472
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-19 
確定日 2020-08-18 
意匠に係る物品 織物地 
事件の表示 意願2018- 18293「織物地」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)8月22日の意匠登録出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年(2018年)2月1日付け:拒絶理由の通知
令和1年(2019年)5月7日:意見書の提出
令和1年8月16日付け:拒絶査定
令和1年11月19日:審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「織物地」とし、意匠の説明の欄で「この意匠は、正面図において上下左右に連続するものである。背面図は、無模様であるから省略する。」として、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)を、願書及び願書添付図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用した柄
原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当する、というものであって、具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、意匠に係る物品を「織物地」とするものですが、この種物品分野においては、本願出願前より公然知られた模様やモノグラム等の図柄を、ほとんどそのまま織物地の表面模様とすることは、本願出願前よりごく普通に行われています。
そうすると、本願出願前より、公然知られたモノグラム柄(意匠1)をありふれた手法でモノトーンに変更し、ほとんどそのまま織物地の表面模様として表したにすぎない本願の意匠は、当業者であれば、容易に創作することができたものです。
(意匠1)
著者の氏名:Burberry
表題:BurberryさんはInstagramを利用しています:
「The #ThomasBurberryMonogram August 2018」
媒体のタイプ:online
掲載年月日:2018年8月2日
検索日:2019年1月30日
情報の情報源:インターネット
情報のアドレス:URL:
https://www.instagram.com/p/BlcMBcHhFD/?utm_source=ig_embed&utm_campaign=embed_loading_state_control
に掲載されたモノグラム柄」(別紙第2参照)

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作をすることができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「織物地」である。

(2)形態
ア 形状
この意匠は、正面図(横長長方形)において上下左右に連続する。

イ 模様
(ア)正面
a 略「T」字状の模様(以下「T」という。)に略「B」字状の模様(以下「B」という。)を絡ませた一単位の模様(以下「単位模様」という。)を、略千鳥状に連続して並べた基本構成とする。
b Bが「1」字状部位と「3」字状部位を合体させて成るとすると、単位模様は、Tの縦棒がBに差し込まれ、「3」字状部位の中央の横棒を隠している模様である。
c 単位模様はTの縦棒方向に一直線上に並んで連続した模様を成す。
d 単位模様はTの横棒方向には、一直線上に連続した模様を成していない。Tの横棒の左端は、左隣のBの「3」字状部位の右下寄り、右端は、右隣のBの「1」字状部位の中央やや上寄りに、接する。したがって、Tの横棒は、一直線上に連続していない。
e TもBもほぼ同じ太さの線から成るものである。したがって、正面の全体の模様は、すきまが少なく、密になっている。
f 正面図において、単位模様の縦方向と横方向が、図の上下方向、左右方向に、一致しており、各単位模様は鉛直に配列されている。

(イ)背面
無模様である。

ウ 色彩
正面全体は、単色で、ごく僅かな薄紫色である。
T、B、それらの背景について、明度が異なる。Tの明度を一番低く、背景を次に低くし、Bの明度を極めて高くしている。

(イ)背面
願書に記載がないため、不明である。

2 引用した柄
前記第3の原査定の拒絶の理由に物品を示す表記はみられない。前記第3の「意匠1」は、柄の模様及び色彩と認められる。

柄は、別紙第2第2頁の左上に、長方形に区切って表れており、その形態は以下のとおりである。

(1)模様
上記1(2)イ(ア)のaないしeの認定と同じである。
単位模様が左45度程度傾いて配列されている。

(2)色彩
全体は、主に、3色である。
Tを朱色、Bを白色、それらの背景を薄茶色としている。

3 本願意匠の創作容易性の判断
この種物品分野においては、スカーフ、ハンカチーフ、服飾の生地といった多種の使用目的に共通させて、多様な模様及び色彩を備えた織物地が創作されている。織物地の当業者は、それぞれの使用目的に特化することなく、自由に、その創作を行うものと認められる。

ア 本願意匠の正面の全体の模様は、上記2(2)(ア)の、「引用した柄」の公然知られた模様であって、格別の創作を要するとは認めることができない。また、片面に模様を施す一方で反対面を無模様とすることは一般的な手法であるから、本願意匠の正面に模様があるのに対し背面が無模様であることに、創作性は認められない。

イ 「引用した柄」は、本願意匠と比較して、柄の全体が左45度程度傾いている。しかし、それは引用した資料における柄の見せ方の違いに過ぎない。すなわち、傾けても柄の模様及び色彩は変更されない。したがって、そのことに創作性は認められない。

ウ しかし、引用した柄の色彩は、Tを朱色、Bを白色、それらの背景を薄茶色として、主に3色であって、そのように多色とすることは本願意匠において表されておらず、一定の創作性を有するものといわざるを得ない。

そうすると、織物地の分野において、模様に創作性を認めることはできないものの、色彩は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといえるものであり、「引用した柄」の形態に基づいて、本願意匠の形態を容易に創作することができたとはいえないから、本願意匠の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといわざるを得ず、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。


第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の拒絶の理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2020-08-03 
出願番号 意願2018-18293(D2018-18293) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (M1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 宮田 莊平
小柳 崇
登録日 2020-08-27 
登録番号 意匠登録第1668206号(D1668206) 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 宮川 美津子 
代理人 茜ヶ久保 公二 
代理人 林 美和 

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