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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 C4 |
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管理番号 | 1365002 |
審判番号 | 不服2019-15744 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-22 |
確定日 | 2020-08-18 |
意匠に係る物品 | 芳香器 |
事件の表示 | 意願2018- 14492「芳香器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成30年(2018年)6月29日の意匠登録出願であって,その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年11月 2日付け 拒絶理由通知書 平成30年12月25日 意見書 平成31年 3月29日付け 拒絶理由通知書 令和 1年(2019年)5月10日 意見書 令和 1年 8月19日付け 拒絶査定 令和 1年11月22日 審判請求書 令和 2年 3月13日付け 拒絶理由通知書 令和 2年 5月 8日 意見書 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「芳香器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「赤色で着色した部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である」(以下,この部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 第3 当審の拒絶の理由 当審において令和2年3月13日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審の拒絶の理由」という。)は,本願意匠が,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,その概要は,本願の出願前に公然知られた形状として以下の意匠1ないし意匠5を示しつつ,本願部分は,公知の漏斗形状の口部を有する容器に,天然素材による揮散体を公然知られた形状で配置して芳香器の形状としたものであり,その各部の比率も,公知形状から容易に導き出せるものであるから,本願意匠は,当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができたものと認められる,としたものである。 意匠1(別紙第2参照) 【情報源】インターネット 【掲載ページの表題】Rakuten みんなのレビュー 【掲載日】2017年12月16日 【検索日】2020年 2月27日 【掲載ページのアドレス】 https://review.rakuten.co.jp/item/1/261900_10001114/ c8b0-i0i1x-fgsi_2_1364371097/?l2-id=review_PC_il_body_05 【掲載内容(証拠として示す内容)】 別紙第3の1枚目(ウェブ・サイト記事の1/4ページ)の左下に掲載さ れている,芳香器の意匠。 意匠2(別紙第3参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2018年1月5日に受け入れた 内国カタログ「September 2017 mercyu coll ection」 第9頁上から2段目の左所載の芳香器の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC29019645号) 意匠3(別紙第4参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2011年9月7日に受け入れた 外国雑誌「Good Housekeeping」(3号 253巻) 第38頁の左下所載の芳香器の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HB23003918号) 意匠4(別紙第5参照) 大韓民国意匠商標公報(2018年1月11日発行 17-42号) 登録番号「30-0939515」の芳香器の容器の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH29448776号) 意匠5(別紙第6参照) 米国特許商標公報(2009年12月8日発行 09W49号) 登録番号「US D605746S」の芳香器の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH21322114号) 第4 当審の拒絶の理由に対する審判請求人の意見書における主張の概要 本願意匠における揮散体の具体的構成態様を全て兼ね備えた形状等は公知ではなく,本願意匠の口部の上端から表れている揮散体の長さが口部の長さの約3倍とした特徴は公知意匠には見られず,揮散体の枝分かれの態様,本数,広がり方,揮散体の全長のうち容器から出ている部分の長さには,様々な選択の余地があり,現に例示意匠においても,これら要素が多種多様に組み合わされている。 本願意匠と意匠1,2,3,5とを比較すると,これら意匠の容器の口部は,いずれも,略円筒形に窄まっており,本願意匠の容器の口部と,その具体的な態様が異なる。本願意匠と例示意匠4のそれぞれの口部の具体的な態様を比較すると,本願意匠の口部の広がりは,例示意匠4のそれよりも大きく,例示意匠4の口部の形態は,漏斗形状というよりも,むしろ,円筒状に近いというべきである。 本願意匠の芳香器は,容器に芳香液を注ぎ入れ,それに揮散体を挿入することにより,揮散体が芳香液を吸引し,空気中に芳香液を揮散させるものである。このような芳香器の分野では,揮散体をあまりに大きく傾斜させて挿入し,さらに,口部との接地面が大きいと,揮散体から芳香液が滴りおちる,あるいは,揮散体が家具等に触れてしまうことによって,周囲を汚染等してしまう蓋然性が,また,揮散体と容器の口部との接地面から芳香液が伝い漏れてしまう蓋然性が高まってしまう。本願意匠は,あえて,容器の口部の外周面及び内周面の傾斜のいずれをも大きくし,当該内周面に沿わせて揮散体を挿入する構成とし,さらに,公知意匠に見られない,口部の上端から表れている揮散体の長さを口部の長さの約3倍とした構成をも相まって,全体として揮散体が大きく広がった華やかな印象を与えるように創作されている。 このように,本願意匠は,揮散体の具体的構成態様,容器の口部の具体的構成態様ともに,多種多様に存在する選択肢の中から,全体として揮散体が大きく広がった華やかな印象を与えるよう,従前,当業者が採用し得なかった構成をも採用し,全体として従来にない,本願意匠特有の新たな美感を創出するものであって,単に,公知意匠に見られる要素を分断し,寄せ集めただけのものではなく,また,本願意匠の特徴を選択することは,当業者が容易に成し得ることではない。 以上の通り,本願意匠は,意匠法第3条第2項の拒絶理由に該当するものではない。 第5 当審の判断 1.本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,芳香器である。 (2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 本願部分は,上端を開口した容器に,乾燥した草木を素材とした(以下「天然素材」という。)揮散体を複数本,上方が容器から露出するように(花瓶に生けた花のように)挿した芳香器において,容器本体の上部に設けた口部の下端から上(揮散体の上端まで)の部分であって,その高さを芳香器全体の約2分の1としたものであり,揮散体が芳香液の揮散,口部が揮散体の支持という用途及び機能を有している。 (3)本願部分の形状 (ア)口部は,漏斗形状としたものであり,(イ)揮散体は,不規則に湾曲した細棒状で,表面に凹凸が見られる,太さが不ぞろいの6本の天然素材を用いたものであって,先端付近で枝分かれしたものと,枝分かれしていないものとを,交互に表れるという規則性をもって混在させ,これらを,漏斗形状の口部で支持して,口部の上端から略逆円錐台状に表れるように配置し,(ウ)その揮散体の最大幅が口部上端の直径の約2.5倍に広がり,(エ)口部の上端から表れている揮散体の長さは口部の高さの約3倍としたものである。 2.本願意匠の創作容易性の検討 芳香器には,容器に芳香液を注入し揮散体を挿し,該揮散体が芳香液を吸い上げて揮散させ芳香を放つもの,あるいは容器に挿入された揮散体に,芳香液を噴霧して芳香を放つものがあるところ,これら芳香器の形状として,上端を開口した容器に天然素材の揮散体を複数本,上方が容器から露出するように(花瓶に生けた花のように)挿したものは,本願の出願前からありふれたものであり(意匠1及び意匠2),口部の下端から上を芳香器全体の高さの約2分の1としたものも,本願の出願前に見られるものである(意匠3)。 また,前記(ア)の,口部を漏斗形状としたものは,本願の出願前に見られるものである(意匠4)し,その広がり角度に大小の相違が有ったとしても,共に下方へ向けてすぼまった漏斗形状であって,角度にそれほど差の無い相違といえるから,本願意匠の口部の広がり角度とすることに,特に困難性は認められない。 前記(イ)の,揮散体については,不規則に湾曲した細棒状で,表面に凹凸が見られる,太さが不ぞろいの天然素材を用いたもので,先端付近で枝分かれしたものと,枝分かれしていないものとを混在させたものは,本願の出願前に見られ(意匠1),6本配したものは,本願の出願前に見られ(意匠3),容器から略逆円錐台状に表れるように配置したものは,本願の出願前に見られるし(意匠5),口部の内周の傾斜面で支持することに,特に困難性は認められない。 前記(ウ)の,揮散体が容器の口部上端の直径の約2.5倍に広がった形状は,本願の出願前に見られるものである(意匠3。なお,意匠3における口部の直径は,鍔状の端部を除いた部分の直径。)。 前記(エ)の,口部の上端から表れている揮散体の長さを口部の高さの約3倍とした形状は,本願の出願前に見られるものである(意匠6※)。 ※意匠6(別紙第7参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2018年1月5日に受け入れた 内国カタログ「September 2017 mercyu coll ection」 第2頁左上所載の斜めに3つ並べた芳香器の内,中央の芳香器の意匠 (なお,口部は,太くなっている本体よりも上の部分に当たる,上端に鍔 の有る細口部分とする。) (特許庁意匠課公知資料番号第HC29019635号) しかしながら,前記(イ)の揮散体について,先端付近で枝分かれしたものと,枝分かれしていないものとを混在させたものについては,前述したとおり公然知られたものといえるとしても,先端付近で枝分かれしたものと,枝分かれしていないものとを,交互に表れるという規則性をもって混在させた配置までは,本願の出願前に公然知られたものとはいえないし,ありふれた手法により多少の改変を加えた程度ともいえない。 よって,本願意匠は,当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができた意匠とは認められない。 第6 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-08-03 |
出願番号 | 意願2018-14492(D2018-14492) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(C4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 神戸 頌子、神谷 由紀、小林 佑二 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2020-08-26 |
登録番号 | 意匠登録第1668130号(D1668130) |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 村松 由布子 |
代理人 | 藤本 一 |
代理人 | 杉村 光嗣 |