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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1368162 
審判番号 不服2020-1100
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-27 
確定日 2020-08-04 
意匠に係る物品 プロジェクター 
事件の表示 意願2019- 2017「プロジェクター」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成31年 2月 1日 意匠登録出願
令和 1年 7月29日付け 拒絶理由通知書
令和 1年 9月 3日 意見書
令和 1年10月25日付け 拒絶査定
令和 2年 1月27日 審判請求書

第2 本願意匠
本願は物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「プロジェクター」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであり、願書の「意匠の説明」の欄には「断面図を含む実線で表された部分(当審注:以下「本願部分」という。)が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分と、その他の部分との境界のみを示す線である。」と記載されている(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとの理由であって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。
特許庁が平成21年10月19日に発行した意匠公報に記載された、
意匠登録第1371149号(意匠に係る物品、液晶プロジェクター)の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)
なお、類否判断において形態の対比の対象となる部分は、引用意匠のうち本願部分に対応する部分(以下「引用部分」という。)である。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも壁面などに画像を投影するプロジェクターであるから、用途及び機能が共通する。

2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、共にプロジェクター筐体の正面外周角部を構成する点で用途及び機能は共通する。他方、引用部分の正面左右の部分は取っ手部を構成しているところ、本願意匠には取っ手部がなく、この点で両部分の用途及び機能は相違する。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、共にプロジェクター筐体の正面外周角部の位置にあり、平面、底面及び側面を繋ぐ角部の正面寄りの部分も範囲に含まれているから、両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。

4 両部分の形態の対比
(1)形態の共通点
(共通点1)両部分は、正面視略ロ字形の細幅帯状であって、左側面視では略縦長コ字形(右側面視では逆コ字形)に表れ、平面視及び底面視では略扁平倒コ字形に表れている。
(共通点2)正面、側面及び平面から見た態様
正面、側面及び平面から見て、外周に表れる細幅帯状は等幅で2重に形成されており、外側の帯状部の幅が内側の帯状部の幅よりも大きくて傾斜しており、内側帯状部は各面において垂直状又は水平状に形成されている。
外側帯状部の正面視四隅、側面視上側の隅、及び平面視左右の隅は、いずれも約45度傾斜している。
(2)形態の相違点
(相違点1)外側帯状部の形状
本願部分では、正面、側面及び平面が交わる2つの角部、並びに正面、側面及び底面が交わる2つの角部に平坦な変形6角形面が形成され、その近傍3方向に長方形状区画部が配されている。
これに対して、引用部分にはそのような変形6角形面と長方形区画部はなく、上記4つの角部寄りに、正面から平面又は底面にかけて垂直分割線が設けられ、側面から平面又は底面にかけても垂直分割線が設けられている。
(相違点2)内側帯状部の形状
正面、側面及び平面に表されている本願部分の内側帯状部の幅は外側帯状部の幅の約1/7であるが、引用部分では約2/3である。また、本願部分の底面には内側帯状部があるが、引用部分の底面には内側帯状部はない。
引用部分では、正面視四隅付近、側面視上下隅付近、及び平面視左右隅付近の内側帯状部、並びに底面視左右隅付近の外側帯状部内側が、アール状に形成されているが、本願部分では約45度傾斜している。
引用部分では、正面視下側内側帯状部の左右方向中央付近が、下に凸の緩やかな弧状に形成されているが、本願部分ではそのような弧状は形成されていない。
(相違点3)縦長小矩形部の有無
引用部分の正面視上部右半部には、平面側の内側帯状部から正面側の内側帯状部にかけて、細幅の縦長小区画部が等間隔に左右に並んで7つ配され、その右側にはやや幅広の縦長小区画部が1つ配されているが、本願部分には、そのような複数の縦長小矩形部はない。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するから、類似する。

2 両部分の用途及び機能の評価
両部分の用途及び機能は、前記第4の2で認定したとおり共通する点があるが、相違する点もあるので、両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすものではない。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、前記第4の3で認定したとおり共通するので、両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。

4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価
(1)形態の共通点の評価
両部分に相当する部分の形状について、正面視略ロ字形の細幅帯状として、左側面視では略縦長コ字形(右側面視では逆コ字形)に表し、平面視及び底面視では略扁平倒コ字形に表して、その細幅帯状の正面視四隅、側面視上側の隅、及び平面視左右の隅を約45度傾斜させることは、「プロジェクター」の物品分野において本願の出願前に見受けられるから(例えば、意匠登録第1430814号の意匠(参考意匠)。別紙第3参照。)、需要者がこれらの共通点に殊更注目するということはできない。
また、傾斜する外側の帯状部の幅が内側の帯状部の幅よりも大きいという共通点は、次項で述べるように、両部分では外側の帯状部の幅に対する内側の帯状部の幅が大きく異なっており、すなわち、相違点として高く評価されるから、当該共通点を重視することはできない。
したがって、共通点1及び共通点2が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(2)形態の相違点の評価
これに対して、本願部分の4つの角部に見られる変形6角形面と、その近傍3方向の長方形状区画部は、需要者が一見して気付くものであり、4つの角部寄りに垂直分割線のみが設けられた引用部分と美感を大きく異にしているということができる。この相違は、角部という目立つ位置における相違でもあるから、相違点1が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
また、正面、側面及び平面に表されている内側帯状部の幅が外側帯状部の幅の約1/7であるか(本願部分)、約2/3であるか(引用部分)は大きな相違であって、正面視四隅付近、側面視上下隅付近、及び平面視左右隅付近の内側帯状部、並びに底面視左右隅付近の外側帯状部内側がアール状であるか(引用部分)、約45度傾斜しているか(本願部分)の相違とあいまって、需要者に異なる視覚的印象を与えているから、正面視下側内側帯状部の左右方向中央付近が下に凸の緩やかな弧状に形成されているか否かの相違が目立たないとしても、相違点2が両部分の類否判断に及ぼす影響は総じて大きいといわざるを得ない。
そして、縦長小矩形部の有無に係る相違点3についても、プロジェクターを注意深く観察する需要者が抱く美感に変化をもたらすというべきであるから、相違点3が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
そうすると、両部分の形態の相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きいというほかない。

5 両意匠の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して、相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きい。
したがって、両意匠の意匠に係る物品は類似し、両部分の位置、大きさ及び範囲の共通点についても一定程度評価できるものの、両部分の用途及び機能は両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすものではなく、両部分の形態の相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きいから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、当審における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2020-07-14 
出願番号 意願2019-2017(D2019-2017) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 宏幸 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
濱本 文子
登録日 2020-11-30 
登録番号 意匠登録第1674936号(D1674936) 
代理人 野村 幸一 
代理人 鎌田 健司 

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