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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1368185 |
審判番号 | 不服2020-5340 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-04-20 |
確定日 | 2020-11-24 |
意匠に係る物品 | コイル部品 |
事件の表示 | 意願2019- 3480「コイル部品」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年(2019年)2月21日の意匠登録出願であって、令和元年(2019年)9月13日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月31日に意見書が提出されたが、令和2年1月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和2年4月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「コイル部品」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。別紙第1参照)、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下「本願部分」という。)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「本願の意匠は、意匠に係る物品を「コイル部品」とし、ドラムコアの軸部外周に左右二分割かつ二層巻きの態様で巻回したコイルの巻き線部分の形状について、意匠登録を受けようとするものと認められます。 コイル部品の物品分野においては、本願意匠のように、ドラムコアの軸部外周に左右二分割かつ二層巻きの態様で巻回する例が引用例の【図1】及び【図3】において、また、当該二分割した巻き線の中間部を本願意匠のように二線が接したまま交差する態様として接続した例が引用例の【図6】において、いずれも本願出願前から公然知られています。 そうすると、本願の意匠は、コイル部品の物品分野で公然知られたこれら形状を組み合わせて表したまでに過ぎませんので、この種物品について通常の知識を有する者であれば、容易にその意匠の創作をすることができたといわざるを得ません。 (引用例)(当審注:以下「引用意匠」という。別紙第2参照) 特許庁発行の公開特許公報記載 特開2018-120885 【図1】及び【図3】に表されたコモンモードフィルタの形状、 並びに、【図6】に表されたワイヤの巻回形状」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、電子回路に用いる「コイル部品」である。 (2)本願部分の用途及び機能 本願部分の用途及び機能は、電子回路に用いる「コイル部品」のうち、ドラム型コアに巻回するワイヤに係る部分であるから、電流を安定させ、電気信号を選別し、ノイズを抑制する用途及び機能を有するものである。 (3)本願部分の位置、大きさ及び範囲 本願部分は、板状コアの上に載置した、略横長直方体状の磁芯及び磁芯両端に配線した板状鍔部からなるドラム型コアの磁芯に巻回したワイヤ並びにワイヤ端部の端子電極からなるもののうち、ドラム型コアの磁芯全域に巻回したコイルであって、コイル端部は鍔部上面の凹嵌部まで配架した範囲とするものである。 (4)本願部分の形態 ア 全体について 2本のワイヤ(以下「2線」という。)を磁芯に巻回してなるものであり、正面視において、横方向に大略3分割し、左右両側領域では2線を積み重ね、中間領域部では、左右両端の略1ターン分は第1線のみを一重に巻回し、中間部は2線を上面で斜めに配設したものであり(以下、正面視において2線を積み重ねた右側の領域を「右巻回領域」、2線を積み重ねた左側の領域を「左巻回領域」、及び、それらの中間の領域を「中間領域」といい、左右巻回領域において上側のワイヤを「第1線」、下側のワイヤを「第2線」という。)、右巻回領域:中間領域:左巻回領域の磁芯における占有比を約1:1:1とするものである。 そして、後述のイ及びエの態様から、コイルは左右非対称に巻回してなるものである。 イ 右巻回領域について 右巻回領域では、2線が積み重なって約10ターン巻回しており、右巻回領域の正面視右端寄りでは、2線は上下に接した状態で、背面側から前方斜め上方の鍔部上面まで配線しており、 ウ 中間領域について 中間領域は、コイル約10ターン分の幅からなるものであり、同領域においては、左右両端の略1ターン分は第1線のみを一重に巻回し、左右の中間部の8ターン分は、2線は相互に接したまま、平面視において右下から左上に亘って斜めに配線しており、2線は、上面略中央で交差してなるものであり、 エ 左巻回領域について 左巻回領域では、2線が積み重なって約10ターン巻回しており、左巻回領域の正面視左端寄りには、2線は相互に接した状態で、底面側中央で交差しつつ略一周し、前面側から後方斜め上方の鍔部上面まで配線したものである。 2 引用意匠の認定 原審において、拒絶の理由で引用された意匠の意匠に係る物品及び形態は以下のとおりである。なお、引用意匠の向きを本願意匠の向きに合わせて、以下認定、評価を行う。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は、電子回路に用いる「コモンモードフィルタ」である。 (2)本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)の用途及び機能 引用部分の用途及び機能は、電子回路に用いる「コモンモードフィルタ」のうち、ドラム型コアに巻回するワイヤに係る部分であるから、電流を安定させ、電気信号を選別し、ノイズを抑制する用途及び機能を有するものである。 (3)引用部分の位置、大きさ及び範囲 引用部分は、板状コアの上に載置した、略横長直方体状の磁芯及び磁芯両端に配線した板状鍔部からなるドラム型コアに巻回したワイヤ並びにワイヤ端部の端子電極からなるもののうち、ドラム型コアの磁芯全域に巻回したコイルとするものである。 (4)引用部分の形態 ア 全体について 2線を巻回してなるものであり、正面視において、横方向に大略3分割し、右巻回領域及び左巻回領域では2線を積み重ね、中間領域では2線を上面で斜めに配設したものであり、右巻回領域:中間領域:左巻回領域の磁芯における占有比を約2:1:2とするものである。 そして、後述のイ及びエの態様から、コイルは左右対称に巻回してなるものである。 イ 右巻回領域について 右巻回領域では、2線が積み重なって約14ターン巻回しており、右巻回領域の正面視右端寄りでは、2線は背面側下部から前後にV字状に離間して鍔部上面まで配線したものであり、 ウ 中間領域について 中間領域は、コイル約7ターン分の幅からなるものであり、同領域においては、左右両端の略半ターン分を積み重ねずに巻回する領域を有し、その中間部においては、2線は相互に接したまま、平面視において右巻回領域と左巻回領域の間を右下から左上に亘って斜めに配線しており、2線は上面略中央で交差してなるものであり、 エ 左巻回領域について 左巻回領域では、2線が積み重なって約14ターン巻回しており、左巻回領域の正面視左端寄りでは、2線は正面側下部から前後にV字状に離間して鍔部上面まで配線したものである。 3 本願意匠の創作非容易性について 意匠法第3条第2項の規定の適用についての判断は、「意匠登録を受けようとする部分」の全体の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて当業者が容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うものであるところ、 まず、前記1(4)アの態様のうち、ドラム型コアの磁芯に2線のコイルを巻回し、正面視において、横方向に大略3分割し、左右両側領域では2線を積み重ね、中間領域部では2線を上面で斜めに配設した点、同ウの形態のうち、2線は相互に接したまま、平面視上面略中央で交差してなる点については、引用意匠に見られるとおりこの出願前から公然知られた態様であり、この態様に着想の新しさないし独創性があるとはいえず、当業者であれば、格別の障害も困難もなく容易に創作し得るものであるといえ、また、同イ及びエの態様のうち、2線を相互に接したまま巻回領域端部から鍔部上面に至る態様とした点も意匠登録第1211228号に表れるとおりであり、同アのうち、コイルを左右非対称に巻回し、左巻回領域の左端において、2線を相互に接した状態で巻回する態様は、例えばこの出願前、特開2018-120887の図5に表れるところであるから、それぞれ着想の新しさないし独創性があるとはいえず、当業者であれば容易に創作しうるものであるといえる。 しかしながら、この種物品分野における当業者は、電子機器において、実装基板に搭載した際の作用効果に留意して意匠の創作を行うものといえ、また、コイルの巻回態様や、コイル部品の配設方向により異なる特性が得られる点についても、特に注意を払って創作するものと認められるところ、前記1(4)アないしエが組み合わせてなる形態は、前記公知意匠には見られない本願意匠独自の形態であり、公知意匠に基づいて容易に創作をすることができたという域を超えているものであるから、一定の創作がなされたというべきである。 そうすると、本願意匠の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといわざるを得ず、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-11-04 |
出願番号 | 意願2019-3480(D2019-3480) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 宏幸 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
木村 恭子 濱本 文子 |
登録日 | 2020-11-30 |
登録番号 | 意匠登録第1674948号(D1674948) |
代理人 | 前田・鈴木国際特許業務法人 |