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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立成立) D7 |
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管理番号 | 1368194 |
判定請求番号 | 判定2020-600014 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2020-03-13 |
確定日 | 2020-10-30 |
意匠に係る物品 | テーブル |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1582694号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 |
結論 | 本件判定請求書に添付した「イ号意匠及び説明書」によって示された意匠は,登録第1582694号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成28年10月28日 意匠登録出願(意願2016-23582号) 平成29年 7月 7日 意匠権の設定の登録(登録第1582694号) 令和 2年 3月13日 本件判定請求(本件判定請求人) 第2 請求の趣旨及び理由の概要 1.請求の趣旨 本件判定請求人(以下「請求人」という。)は,イ号意匠は,登録第1582694号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求め,おおむね以下のように主張した。 2.請求の理由 (1)判定請求の必要性 請求人のグループ会社であるアイリスチトセ株式会社及び株式会社ホウトクが,本件判定請求書に添付した「イ号意匠及び説明書」によって示された意匠(以下「イ号意匠」という。)及びそれに類似する意匠を実施していたところ,被請求人より被請求人の登録意匠第1582694号(以下「本件登録意匠」という。)及びその関連意匠に類似するとの警告を受けたので,請求人として本件意匠権侵害の成立の有無を検討し,対処する必要が生じた。 (2)両意匠の対比 ア.両意匠の共通点 イ号意匠及び本件登録意匠(以下「両意匠」という。)は,意匠に係る物品を「テーブル」とするものであり,イ号意匠の支柱及び脚部分と本件登録意匠の意匠登録を受けようとする支柱及び脚部分は,テーブル全体に占める位置,大きさ,範囲は一致する。 (ア)基本的構成態様における共通点 ともに四角柱を基本とする支柱下端から前後に分岐し,収納時に平行スタック可能とするために後脚が前脚より外側に張り出し,後脚の支柱への取り付け部に丸みを持たせた形状としている。 イ.両意匠の具体的構成態様における差異点 (ア)前脚について (ア-1)前脚の支柱への取り付け角度の差異について イ号意匠 …垂直面に対する傾き約37° 本件登録意匠…垂直面に対する傾き約47° (ア-2)前脚の形状の差異について イ号意匠 …断面形状を略正方形状とし,支柱接合部に向けて前脚部前 面を緩やかに大きく湾曲させて接合 本件登録意匠…断面形状を略縦長長方形状とし,支柱接合部に向けて前脚 部前面を直線的に屈曲させて接合 (ア-3)前脚の角部の面取りの態様の差異について イ号意匠 …キャスター部に向けて広くなる面取りを施し,丸みを帯び た態様 本件登録意匠…面取りがなく角張った態様 (イ)後脚について (イ-1)後脚の太さの差異について イ号意匠 …上方から見たときに,後脚の幅を支柱の幅と同幅で断面形 状を略正方形状とし,キャスター部に向け次第に細くなる 態様 本件登録意匠…上方から見たときに,後脚の幅を支柱の幅の約半分程度で 断面形状を略縦長長方形状とし,キャスター部に向け次第 に細くなる態様 (イ-2)後脚の支柱への取付け位置の差異について イ号意匠 …支柱下端の前側縁部から大きな丸みを持って後脚を接合 本件登録意匠…支柱下端の側面中央付近から後脚を緩やかな丸みを持って 接合 (イ-3)後脚の湾曲の態様の差異について イ号意匠 …支柱下端の前側縁部から後脚側面に大きく外側に張り出す ようにアールでつないだ態様 本件登録意匠…支柱下端の側面中央付近から後脚側面に緩やかに斜め後ろ 方向に流れる丸みを形成 (イ-4)後脚の角部の面取りの態様の差異について イ号意匠 …キャスター部に向けて広くなる面取りを施し,丸みを帯び た態様 本件登録意匠…面取りがなく角張った態様 ウ.両意匠の類否判断 (ア)共通点の評価 両意匠の基本的構成態様における共通点は,本件登録意匠の出願前より一般的に見られる態様であり,本件登録意匠の登録に際しても本件登録意匠の独自の特徴として評価されたということはできず,両意匠の類否判断に与える影響は少ない。 (イ)差異点の評価 一方,両意匠の具体的構成態様における差異点について,支柱及び脚部はテーブル設置時や収納時に使用者が設置位置を確かめ,使用時に自分の足が当たるのを意識することから注意を払う部分であり,非常に目につきやすい箇所でもあり,意匠全体の印象を大きく左右するものである。 (イ-1)前脚の支柱への取り付け角度の差異(イ.(ア-1))について イ号意匠の方が本件登録意匠に対しやや傾きが小さく立った状態であるが,全体としてみたときには微差であり,類否判断に与える影響は少ない。 (イ-2)前脚の形状の差異(イ.(ア-2))について イ号意匠では,断面略正方形状の前脚を支柱下端部に向けて緩やかに大きく湾曲させて接合させていることから,支柱と前脚がなめらかに接合し,一体的な印象を与えるのに対し,本件登録意匠では,断面略縦長長方形状の前脚を支柱下端部に向けて直線的に屈曲させて接合させており,部材をつなぎ合わせたような印象を与え,需要者に別異な印象を強く与える。 (イ-3)前脚の角部の面取りの態様の差異(イ.(ア-3))について イ号意匠は,四角柱の上縁部に面取りを施し,キャスター部に向けて面取りの幅を次第に広くなるものとしており,全体として丸みを帯びた印象を与えるのに対し,本件登録意匠は面取りがされていなく,角張った印象であり,類否判断に与える影響は大きい。 (イ-4)後脚の太さの差異(イ.(イ-1))について イ号意匠では,上方から見たときに,後脚の幅を支柱の幅と同幅で断面形状を略正方形状とし,キャスター部に向け次第に細くなる態様で,がっしりと堅牢な印象であるのに対し,本件登録意匠では,上方から見たときに,後脚の幅を支柱の幅の約半分程度で断面形状を略縦長長方形状とし,キャスター部に向け次第に細くなる態様で,スリムで華奢な印象を与え,需要者に別異な印象を強く与えるものとなっている。 (イ-5)後脚の支柱への取付け位置の差異(イ.(イ-2))について イ号意匠では,支柱下端の前側縁部から大きな丸みを持って後脚を接合し,後脚の上面に支柱が乗ったような態様となっているのに対し,本件登録意匠では,支柱下端の側面中央付近から後脚を緩やかな丸みを持って接合し,後脚が支柱に潜り込んだような印象を与え,両意匠の具体的な構成の差異を大きく特徴付けるものとなっている。 (イ-6)後脚の湾曲の態様の差異(イ.(イ-3))について イ号意匠では,支柱前側縁部から後脚側面に大きく外側に張り出すようにアールでつなぎ,がっしりと堅牢な印象を与えるのに対し,本件登録意匠では,支柱下端の側面中央付近から後脚側面に緩やかに斜め後ろ方向に流れる丸みを形成し,繊細で華奢な印象を与え,上記(イ-5)の取付け位置の差異から来る印象と相まって,需要者に別異な印象を強浮く与えるものとなっている。 (イ-7)後脚の角部の面取りの態様の差異(イ.(イ-4))について イ号意匠は,四角柱の上縁部に面取りを施し,キャスター部に向けて面取りの幅を次第に広くなるものとしており,全体として丸みを帯びた印象を与えるのに対し,本件登録意匠は面取りがされていなく,角張った印象であり,類否判断に与える影響は大きい。 (ウ)類否判断 以上のように,両意匠の基本的構成態様における共通点は,本件登録意匠の出願前より一般的に見られる態様であり,本件登録意匠の登録に際しても評価された観点ということもできず,両意匠の類否判断に大きな影響を与えない。 一方,両意匠の具体的構成態様における差異点は,需要者の注目する部分における差異であり,両意匠の類否判断に大きな影響を与え,両意匠は特徴を異にする。 具体的構成態様における差異点の内,(イ-1)の前脚の角度の差異は類否判断に与える影響は小さいものの,その他(イ-2)?(イ-7)で述べた,前脚の形状や面取りの態様の差異,及び後脚の太さや支柱への取り付け部の態様における差異は,需要者に両意匠が別なものと印象づける大きな要因となっており,特に,イ号意匠では,前脚が支柱へ大きく緩やかに湾曲して接合することから支柱と前脚との一体性が強く印象づけられ,また,後脚の支柱への取り付け部分の態様において,支柱下端の前側縁部から大きく外側に湾曲して張り出し,後脚に支柱が乗ったような印象を与えているのに対し,本件登録意匠では,前脚が支柱に直線的に屈曲して接合し,後脚は支柱下端の側面中央付近から斜め後ろ方向に緩やかに接合していることから,両意匠の構造に大きな差異が見て取れ,需要者に別異な印象を強く与えるものとなっている。 当該差異は,一般的な共通する基本的構成態様にあって,使用時にも収納時にも非常に目立つ部位における差異であり,両意匠の特徴の根幹をなし,支柱及び脚部における本件登録意匠の繊細で華奢なイメージとイ号意匠のがっしりと堅牢なイメージの印象が,両意匠全体の印象を左右するような大きな特徴となっている。 以上の点から,両意匠は,差異点が共通点を凌駕し,イ号意匠は本件登録意匠に類似しない意匠といわざるを得ない。 (3)むすび よって,請求の趣旨のとおり,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定に与るよう希求します。 第3 被請求人の答弁 当審は,被請求人に判定請求書の副本を送り,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。 第4 証拠方法 甲第1号証 被請求人からアイリスチトセ株式会社宛に届いた警告書の写し 甲第2号証 アイリスチトセ株式会社のWEBカタログの表紙,該当頁,裏表紙の写し 甲第3号証 関連意匠登録第1582809号公報の写し 甲第4号証 意匠登録第1187737号公報の写し 甲第5号証 意匠登録第1474905号公報の写し 甲第6号証 意匠登録第1475021号公報の写し 甲第7号証 意匠登録第1448076号公報の写し 第5 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は,その願書及び願書に添付した図面によれば,物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって,意匠に係る物品を「テーブル」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「赤色で着色した部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 そして,本件登録意匠については,以下の点を認めることができる。 (1)意匠に係る物品 本件登録意匠の意匠に係る物品は,テーブルである。 (2)本件登録部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 本件登録意匠に係る物品のうち,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本件登録部分」という。)は,テーブルの左脚(正面図において右側の脚)の支柱下端から前後二股に分かれた,前脚と後脚部分であって,脚下端に設けたキャスターを除いた部分である。 本件登録部分は,テーブルの左脚の下側2分の1弱を占める位置,大きさ及び範囲である。 本件登録部分は,テーブルの,左脚の前脚と後脚部分の用途及び機能を有している。 (3)本件登録部分の形状 ア.基本的構成態様 (ア)支柱より一直線状に前へ伸びた前脚と,前脚との接合部分から外側に張り出した後脚により,右側面視では,略への字状となっている。 イ.具体的構成態様 (イ)前脚の,床面に対する傾斜角度は,約45°である。 (ウ)前脚の断面形状は,縦長長方形である。 (エ)前脚の高さと横幅は,先端に向かって次第に小さくなっている。 (オ)前脚と支柱との接合部については,前面が屈曲しており,後ろ側は,支柱下端を5分の1ほど残した,支柱前側約5分の4の部分が斜め下に向けて屈曲して前脚となっている。 (カ)前脚の前端は下に折れ曲がり,鉛直方向の縦長円柱状部分を設けている。 (キ)前脚と後脚の長さの比率は,約4:6である。 (ク)後脚の断面形状は,縦長長方形である。 (ケ)後脚の高さと横幅は,先端に向かって次第に小さくなっている。 (コ)後脚と支柱との接合部については,支柱の前後幅中央から,鈍角で始まり,放物線状の曲線で外側に張り出して後ろへと向かって後脚となっている。 (サ)後脚の後端は下に折れ曲がり,鉛直方向の縦長円柱状部分を設けている。 2.イ号意匠 イ号意匠は,本件判定請求書に添付した「イ号意匠及び説明書」によれば,以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本件判定請求書に添付した「イ号意匠及び説明書」には,イ号意匠の意匠に係る物品について記載がないが,請求書の記載内容も含めて勘案すると,イ号意匠の意匠に係る物品は,テーブルである。 (2)イ号部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 イ号意匠中,本件登録部分に相当する部分(以下「イ号部分」といい,本件登録部分と併せて「両部分」ともいう。)は,テーブルの左脚(正面図において右側の脚)の支柱下端から前後二股に分かれた,前脚と後脚部分であって,脚下端に設けたキャスターを除いた部分である。 イ号部分は,テーブルの左脚の下側2分の1弱を占める位置,大きさ及び範囲である。 イ号部分は,テーブルの,左脚の前脚と後脚部分の用途及び機能を有している。 (3)イ号部分の形状 ア.基本的構成態様 (ア)支柱より一直線状に前へ伸びた前脚と,前脚との接合部分から外側に張り出した後脚により,右側面視では,略への字状となっている。 イ.具体的構成態様 (イ)前脚の,床面に対する傾斜角度は,約50°である。 (ウ)前脚の断面形状は,略正方形である。 (エ)前脚の高さと横幅は,先端に向かってほとんど変わらない。 (オ)前脚と支柱との接合部については,前面が大きなR(半径)の曲線で緩やかにつながっており,後ろ側は,支柱下端を残さずに斜め下に向けて屈曲して前脚となっている。 (カ)前脚の上面角は,前端に向かって徐々に広くなる面取りを施し,端部は半円状に丸くなっている。 (キ)前脚と後脚の長さの比率は,約3:7である。 (ク)後脚の断面形状は,略正方形である。 (ケ)後脚の高さと横幅は,先端に向かって次第に小さくなっている。 (コ)後脚と支柱との接合部については,外側面は,支柱の前面からつながって始まり,円弧状の曲線で外側に張り出して後脚の外側面となっており,内側面は,支柱の後面からつながって始まり,円弧状の曲線で外側に張り出して後脚の内側面となっていることから,後脚と支柱との接合部は上方から見たときに扇面状になっている。 (サ)後脚の上面角は,後端に向かって徐々に広くなる面取りを施し,端部は面取り面と共に,半円状に丸くなっている。 3.本件登録意匠とイ号意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本件登録意匠に係る物品も,イ号意匠に係る物品も,共に「テーブル」である。 (2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比 両部分共に,テーブルにおける左脚の支柱下端から前後二股に分かれた,前脚と後脚部分であって,脚下端に設けたキャスターを除いた部分である。 両部分共に,テーブルの左脚の下側2分の1弱を占める位置,大きさ及び範囲である。 両部分共に,テーブルの,左脚の前脚と後脚部分の用途及び機能を有している。 (3)両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について (ア)支柱より一直線状に前へ伸びた前脚と,前脚との接合部分から外側に張り出した後脚により,右側面視では,略への字状となっている。 (イ)前脚の断面形状は,略四角形である。 (ウ)後脚の断面形状は,略四角形である。 (エ)後脚の高さと横幅は,先端に向かって次第に小さくなっている。 (オ)後脚と支柱との接合部については,後脚が曲線によって外側に張り出している。 イ.相違点について (ア)前脚の,床面に対する傾斜角度につき,本件登録部分は,約45°であるのに対して,イ号部分は,約50°である。 (イ)前脚の断面形状につき,本件登録部分は,縦長長方形であるのに対して,イ号部分は,略正方形である。 (ウ)前脚の高さと横幅につき,本件登録部分は,先端に向かって次第に小さくなっているのに対して,イ号部分は,ほとんど変わらない。 (エ)前脚と支柱との接合部につき,本件登録部分は,前面が屈曲しており,後ろ側は,支柱下端を5分の1ほど残した,支柱前側約5分の4の部分が下に向けて屈曲して前脚となっているのに対して,イ号部分は,前面が大きなR(半径)の曲線で緩やかにつながっており,後ろ側は,支柱下端を残さずに斜め下に向けて屈曲して前脚となっている。 (オ)前脚の前端につき,本件登録部分は,下に折れ曲がり,鉛直方向の縦長円柱状部分を設けているのに対して,イ号部分は,そのような縦長円柱状部分を設けていない。 (カ)前脚の上面角につき,本件登録部分は,面取りを施していないのに対して,イ号部分は,前端に向かって徐々に広くなる面取りを施し,端部は面取り面と共に,半円状に丸くなっている。 (キ)前脚と後脚の長さにつき,本件登録部分は,前脚が比較的寝ている分,後脚はやや短くなっており,その比率は,約4:6であるのに対して,イ号部分は,前脚が比較的立っている分,後脚は長くなっており,その比率は,約3:7である。 (ク)後脚の断面形状につき,本件登録部分は,縦長長方形であるのに対して,イ号部分は,略正方形である。 (ケ)後脚と支柱との接合部につき,本件登録部分は,支柱の前後幅中央から,鈍角で始まり,放物線状の曲線で外側に張り出して後ろへと向かって後脚となっているのに対して,イ号部分は,後脚の外側面は,支柱の前面からつながって始まり,円弧状の曲線で外側に張り出して後脚の外側面となっており,内側面は,支柱の後面からつながって始まり,円弧状の曲線で外側に張り出して後脚の内側面となっていることから,後脚と支柱との接合部は上方から見たときに扇面状になっている。 (コ)後脚の後端につき,本件登録部分は,下に折れ曲がり,鉛直方向の縦長円柱状部分を設けているのに対して,イ号部分は,そのような縦長円柱状部分を設けていない。 (サ)後脚の上面角につき,本件登録部分は,面取りを施していないのに対して,イ号部分は,後端に向かって徐々に広くなる面取りを施し,端部は面取り面と共に,半円状に丸くなっている。 4.類否判断 イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,すなわち,両意匠が類似するか否かについて,検討する。 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の,意匠に係る物品は,共に「テーブル」であって,一致している。 (2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価 両部分共に,テーブルにおける左脚の支柱下端から前後二股に分かれた,前脚と後脚部分であって,脚下端に設けたキャスターを除いた部分であり,テーブルの左脚の下側2分の1弱を占める位置,大きさ及び範囲であるから,位置,大きさ及び範囲は一致し,両部分共に,テーブルの,左脚の前脚と後脚部分の用途及び機能を有しているから,用途及び機能が一致している。 (3)両部分における形状の評価 ア.共通点について 共通点(ア)ないし(オ)については,この物品分野においてはありふれた形状であって,両意匠のみの特徴とはいえず,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 イ.相違点について 相違点(ア)は,相違点(キ)と相まって,前脚と後脚の接合位置が,本件登録部分は,やや後ろ寄りで,イ号部分は前寄りになるが,この点については,一般需要者が着目する点とは考えられず,また,その相違もそれほど大きいものではなく,両部分において別異の印象を生じさせているとは認められないから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 相違点(イ)は,相違点(オ)及び(カ)と相まって,本件登録部分は,細くて角張った印象を与えるのに対して,イ号部分は,太くて丸みを帯びた印象を与えるものであるから,両部分において別異の印象を生じさせ,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 相違点(ウ)は,僅かばかりの相違といえ,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 相違点(エ)は,本件登録部分では,前脚と支柱が別部材であって,それらの別部材をつなぎ合わせたような印象を与えるのに対して,イ号部分は,前脚と支柱とが一体的な印象を与えるから,相違点(エ)は需要者に別異の印象を与えると認められ,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 相違点(ク)は,相違点(コ)及び(サ)と相まって,本件登録部分は,細くて角張った印象を与えるのに対して,イ号部分は,太くて丸みを帯びた印象を与えるものであるから,両部分において別異の印象を生じさせ,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 相違点(ケ)は,本件登録部分は,華奢でスマートな印象を与えるのに対して,イ号部分は,支柱と後脚との接合部分が大きく,堅牢な印象を与えるから,両部分において別異の印象を生じさせ,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 (4)小括 そうすると,両部分の形状については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響は小さいものであるのに対して,相違点(イ),(エ),(オ),(カ),(ク),(ケ),(コ)及び(サ)によって類否判断に及ぼす影響は大きいものといえるものであり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。 (5)両意匠における類否判断 以上のとおり,本件登録意匠とイ号意匠を対比した場合,意匠に係る物品が一致し,両部分の位置,大きさ及び範囲が一致し,用途及び機能が一致している。 しかし,両部分の形状については,上記(4)のとおり,類似するとは認められないものである。 よって,本件登録意匠とイ号意匠とは類似するとはいえない。 5.結び 以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって,結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2020-10-20 |
出願番号 | 意願2016-23582(D2016-23582) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZA
(D7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松下 香苗 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2017-07-07 |
登録番号 | 意匠登録第1582694号(D1582694) |
代理人 | 五味 飛鳥 |
代理人 | 原田 雅美 |
代理人 | 川越 弘 |