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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1369040 
審判番号 不服2020-77
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-06 
確定日 2020-11-17 
意匠に係る物品 太陽電池モジュール 
事件の表示 意願2019- 790「太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする平成31年(2019年) 1月17日(パリ条約による優先権主張 2014年 5月27日 (US)アメリカ合衆国 2014年 8月11日 (US)アメリカ合衆国 2014年 8月12日 (US)アメリカ合衆国 2014年 8月27日 (US)アメリカ合衆国 2014年 9月11日 (US)アメリカ合衆国 2014年10月15日 (US)アメリカ合衆国 2014年10月15日 (US)アメリカ合衆国 2014年10月16日 (US)アメリカ合衆国 2014年10月20日 (US)アメリカ合衆国 2014年10月31日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月 4日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月 5日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月 7日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月12日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月17日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月18日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月19日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月19日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月19日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月21日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月21日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月25日 (US)アメリカ合衆国 2014年12月 4日 (US)アメリカ合衆国 2014年12月10日 (US)アメリカ合衆国 2014年12月10日 (US)アメリカ合衆国 2014年12月16日 (US)アメリカ合衆国 2014年12月19日 (US)アメリカ合衆国 2014年12月30日 (US)アメリカ合衆国 2014年12月30日 (US)アメリカ合衆国 2015年 1月12日 (US)アメリカ合衆国 2015年 1月15日 (US)アメリカ合衆国 2015年 1月26日 (US)アメリカ合衆国 2015年 2月 4日 (US)アメリカ合衆国 2015年 2月 6日 (US)アメリカ合衆国 2015年 3月17日 (US)アメリカ合衆国 2015年 3月31日 (US)アメリカ合衆国 2015年 4月21日 (US)アメリカ合衆国を伴う、平成27年(2015年)5月26日に出願された特許出願(特願2016-567741)の一部を、特許法第44条第1項の規定により、平成30年(2018年)12月18日に新たに特願2018-236737として特許出願したものを、意匠法第13条第1項の規定により、平成31年1月17日に意願2019-790として意匠登録出願に変更したもの)の出願であって、その後の手続は、以下のとおりである。
令和元年(2019年)6月13日付け 原審拒絶理由の通知
同 年 7月30日 意見書の提出
同 年11月26日付け 拒絶査定
令和2年 1月 6日 拒絶査定不服審判請求書の提出
同 年 1月 6日 手続補正書の提出(図面の追加)
同 年 3月31日付け 当審拒絶理由の通知
同 年 7月 6日 期間延長請求書の提出(1か月)
同 年 8月 7日 意見書の提出


第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「太陽電池モジュール」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。


第3 当審における拒絶の理由及び引用意匠
当審における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
拒絶の理由において引用された意匠は、以下のとおりである。

「引用意匠(別紙第2参照)
世界知的所有権機関国際事務局(WIPO)が、
2014年5月15日に発行した
国際事務局PCT公報に記載された
国際公開第WO2014/074826号
FIG.2、FIG.3、FIG.1A、FIG.1B及び関連する記載
に表れた「太陽電池モジュール」の意匠。
なお、引用意匠において、本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)と対比、判断する部分を、本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)として、以下記載します。

<判断理由の詳細>
本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が共通し、本願部分と引用部分(以下、本願部分と引用部分を合わせて、「両部分」という。)の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が共通するものと認められます。そして、両部分の形態についても、太陽電池セルの縦横比及び太陽電池セル正面に表れた細線の配設態様が共通するだけでなく、4つの太陽電池セルを、こけら葺き状に配置して太陽電池モジュールとする配設態様が共通するものであり、意匠全体としてみた場合には、需要者に別異の印象をもたらすほどのものとはいえません。
したがって、両意匠は類似するものと認められます。」


第4 請求人の主張の要旨
これに対し、請求人は、令和2年8月7日に意見書を提出し、要旨以下のとおり主張した。
「(1)引用意匠に対する共通点について
上記拒絶理由通知において審査官が認定した通り、引用意匠は、「太陽電池セルの縦横比及び太陽電池セル正面に表れた細線の配設態様が共通するだけでなく、4つの太陽電池セルを、こけら葺き状に配置して太陽電池モジュールとする配設態様が共通する」。

(2)引用意匠に対する相違点について
(A)相違点1について
本願意匠のA-B部分拡大図と、引用意匠のFIG.2とを、概ね同じ大きさにして、向きを揃えて下記に示す。

[A-B部分拡大図](本願意匠)
(図面省略)

[FIG.2](引用意匠)
(図面省略)

本願意匠は、本願のA-B部分拡大図に示すように、こけら葺き状に配置された太陽電池セルのみにより形成される。

引用意匠は、引用意匠のFIG.2に示すように、図上で左右の側縁が、1対の平坦な側縁部を形成する基板(50)により縁取られている。このため、引用意匠は、こけら葺き状配置により起伏を有する太陽電池セル部分と、平坦な側縁部とが混在する意匠となっている。更に、引用意匠においては、太陽電池セル(10)の各々が、矩形の輪郭に沿って形成された縁取りを個別に有する。

(B)相違点2について
本願意匠のC部分拡大図とを、引用意匠のFIG.3Aとを、概ね同じ大きさにして下記に示す。図中の破線、角度の数値、一対の矢印、「段差」の文字は、各々説明のために加筆した。

[C部分拡大図](本願意匠)
(図面省略)

本願意匠は、A-B部分拡大図に示すように、太陽電池セルの一部が直接に接するように重ねてこけら葺き状の配置を形成している。

引用意匠は、FIG.2に示すように、こけら葺き状に配置された太陽電池セル(10)の重複部分で、太陽電池セル相互の間に他の部材(18、30)が挟まっている、このため、引用意匠における太陽電池セル(10)相互の間にはより大きな段差が形成され、個々の太陽電池セル(10)の傾斜が、本願意匠の太陽電池セルと比較して顕著に強い。

(3)共通点の評価と相違点の評価
(A)共通点の評価
太陽電池モジュールは一般に、複数の太陽電池セルにより形成される。太陽電池セルの材料であるソーラーセルグレードのシリコン基板は一般に矩形の薄板として製造される。また、太陽電池モジュールの発電量は太陽電池セルの受光面積に比例するので、太陽電池モジュールにおいて太陽電池セルは隙間なく配列される。これらの構造的な制約により、上記2.(1)欄に記載した指摘でいう共通点は、太陽電池モジュールとしてありふれたものである。

(B)相違点1の評価
本願意匠は、こけら葺き状に配置された太陽電池セルのみにより形成され、太陽電池セル相互の間には、太陽電池セル自体の厚さに相当する段差のみが形成される。このため、本願意匠の印象は、敷き詰められた太陽電池セルを想起させるものとなる。

引用意匠は、互いに隣接して配置された平坦な側縁部(基板50)とこけら葺きにより傾斜した太陽電池セル(10)とを対比させることにより、太陽電池セル(10)の傾斜をより強く印象付けている。また、太陽電池セル(10)の各々が個々に縁取りを有するので、平坦な側縁部(基板50)と傾斜した太陽電池セル(10)との対比が一層強調される。

(C)相違点2の評価
引用意匠では、太陽電池セル(10)が明らかに強い傾斜を有する。上記した本願意匠のC部分拡大図と、引用意匠のFIG.3Aとに記入したように、太陽電池セルの傾斜の差は7°程度ある。この差は、太陽電池モジュールの法線方向から見た場合であっても識別できる傾きの差である。

(4)本願意匠の引用意匠に対する類比判断について
上記の通り、本願意匠の引用意匠に対する共通点は太陽電池モジュールとしてありふれたものであり、看者の目を引くものではない。それに対して、本願意匠と引用意匠との相違点は、上記の通り看者に明確に異なった印象を与える。よって、本願意匠の引用意匠に対する相違点は両者の共通点を凌駕するものであり、本願意匠は、引用意匠に類似するとはいえない。」


第5 当審の判断
請求人の主張を踏まえ、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否か、すなわち、先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠に該当するか否かについて検討し、併せて、意匠法第3条第1項第3号に該当するかについて検討する。

1 両意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品の対比
両意匠の意匠に係る物品は、ともに「太陽電池モジュール」であるから、両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致する。

(2)両部分の用途及び機能
両部分は、いずれも、太陽電池モジュールのため配列した太陽電池セルの一区画に係るものであって、太陽光を受光して蓄電の用に供する部分であるから、両部分の用途及び機能は共通する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分は、こけら葺き状に配列した太陽電池セルのうち、直列状に配置した4枚のセルに係る部分であり、引用部分は、本願部分に相当する部分であるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。
他方、太陽電池セルの配設態様について、本願部分は、太陽電池セルのみからなる太陽電池モジュールの一部であるのに対し、引用部分は、細長い基板上に太陽電池セルが重なりあうように配設してなる太陽電池モジュールの一部であって、当該基板はFIG.2の図面上に50(基板)として、太陽電池セルより拡幅した態様で図示されているものの一部であるから、この点で、両部分の位置、大きさ及び範囲は相違する。

(4)両部分の形態の対比
両部分の形態の対比にあたって、引用意匠の図の向きを本願意匠の図の向きに合わせて、以下対比する。

ア 両部分の形態の共通点
(共通点1)太陽電池セルの個別形状について、アスペクト比を大略6:1とする横長長方形の薄板状とするものであって、上面側(太陽側)全面には、長手方向に直交する平行細線模様を密に配設し、上面側における下辺寄り及び下面側(地面側)における上辺寄りほぼ全幅に、それぞれ電気接続を可能とする細幅導電素材を配したものである点、
(共通点2)前記(共通点1)の太陽電池セルの上面側と下面側の細幅導電素材を重ね合わせて、こけら葺き状とした点で共通する。

イ 両部分の形態の相違点
(相違点1)太陽電池セルの配設態様について、本願部分は、太陽電池セルのみからなるものであるのに対し、引用部分は、細長い基板上に太陽電池セルが重なりあうように配設してなるものである点、
(相違点2)太陽電池セルをこけら葺き状に重ね合わせた具体的態様について、それぞれの図面記載内容によれば、前記ア(共通点1)の細幅導電部材が重なりあった箇所について、本願部分は、導電部材はほぼ厚みを有さずに形成しているものであるのに対し、引用部分は、これが模式図であるとしても、太陽電池セルと略同厚の導電部材を介して重ね合っているものであって、本願部分が約5度の傾斜角であるのに対し、引用部分は約10度の傾斜角となっている点で相違する。

2 両意匠の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、「太陽電池モジュール」であり、その使用方法は、屋外に設置して、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する電力機器であるから、この種物品分野の需要者は、主に電気事業者であり、これに設置業者が含まれるものということができる。

(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、こけら葺き状に配設した太陽電池セルのうち、直列状に配置した4枚のセルに係る部分である点で一致するとしても、物品全体の形態が、本願意匠は、太陽電池セルのみからなるものであるのに対し、引用意匠は、基板の上に配置された太陽電池セルからなるものであるから、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲は相違するものであり、この種物品分野の需要者であれば、当該態様を関心を持って観察するといえるから、両部分の位置、大きさ及び範囲の相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。

(4)両部分の形態の類否判断
ア 共通点の評価
(共通点1)は、引用意匠の前には見られない両意匠に共通する特徴であるものの、太陽電池モジュールを構成する一要素である太陽電池セルの個別形状に係るものであるから、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
(共通点2)は、太陽電池モジュールにおける太陽電池セルの配設態様に係るものであるが、この種物品分野において、太陽電池セルの表面側と背面側の細幅導電素材を直列状に重ね合わせて、こけら葺き状に配置することは、この出願前より既に見られる態様であって(例えば、特許庁発行の公開特許公報記載、特開2013-012575における図1に表された太陽電池セルの配設態様)、両意匠のみの特徴とはいえないから、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)は、前記3に係る物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲にも関連する相違点であるところ、需要者であれば、太陽電池モジュールが基板の上に重なりあうように配設してなるものであるか否かの相違点を関心を持って観察するものといえるから、相違点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
(相違点2)は、太陽電池モジュールにおける太陽電池セルの傾斜角に係るものであるところ、需要者は、太陽光モジュールの方位だけでなく、設置角度についても関心を持って意匠を観察するものであるといえ、また、直列状に重なり合った太陽電池セルと太陽電池セルとの間に、当該セルと略同厚のすき間が配されるか否かの点についても、効率的な配置の観点から、需要者は関心を持って両意匠を観察するものといえるから、相違点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものといえる。

ウ 両部分の形態の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、太陽電池モジュールが基板の上に重なりあうように配設してなるものかどうかといった、配設態様が表出する美感に大きな差異があるといえる。そして、この差異点は、個別の太陽電池セルの形態の美感が共通することを考慮したとしても、意匠登録を受けようとする部分の、物品全体に占める位置、大きさ及び範囲の相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響と相俟って、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似し、両部分の用途及び機能が類似し、両部分の位置、大きさ及び範囲に共通する点があるものの、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。


第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2020-10-28 
出願番号 意願2019-790(D2019-790) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 佑二坂田 麻智神戸 頌子 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 木村 恭子
江塚 尚弘
登録日 2020-12-18 
登録番号 意匠登録第1676513号(D1676513) 
代理人 龍華国際特許業務法人 

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