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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 J3 |
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管理番号 | 1369060 |
審判番号 | 不服2020-7961 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-09 |
確定日 | 2020-12-21 |
意匠に係る物品 | ルーペ |
事件の表示 | 意願2019- 19054「ルーペ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和元年(2019年)8月28日の意匠登録出願であって、その後の主な手続は、以下のとおりである。 令和元年10月29日付け 拒絶理由通知 同 年12月 3日 意見書の提出 令和2年 3月19日付け 拒絶査定 同 年 6月 9日 拒絶査定不服審判書の提出 同 年10月28日付け 審尋 同 年10月29日 手続補正書の提出 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「ルーペ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。別紙第1参照)、意匠登録を受けようとする部分を、「図面中、実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下「本願部分」という。)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「以下、意匠1及び意匠2の図の表示、図の向き及び角度を、本願意匠の添付図面に合わせて記述します。 本願意匠は、ルーペレンズを収納するケースの右側面側及び底面側を構成する壁面部材であって、隣り合う壁面(正面側及び背面側の壁面)と交互に嵌合する態様で形成された複数の略歯状部のうち、右側面視の上方及び下方、底面視の左方及び右方に配された部分について、部分意匠として意匠登録を受けようとするものです。 本物品分野において、ルーペレンズを収容するケースであって、右側面側及び底面側に壁面部を設けた態様は、本願出願前から公然知られた形状(例えば、下記の意匠1)です。また、本物品分野を含む、略箱型を構成する物品分野において、隣り合う壁面と交互に嵌合する態様で複数の略歯状部を形成する手法は、いわゆる組継ぎと呼ばれ、本願出願前からありふれた手法(例えば、下記の意匠2)と認められます。 そうすると、本願意匠は、単に、公然知られた下記の意匠1のケースの右側面側及び底面側の壁面の形状を、下記の意匠2のようにありふれた手法(いわゆる組継ぎ)を用いて、隣り合う壁面と交互に嵌合する態様で複数の略歯状部を設けた程度に過ぎませんので、当業者であれば容易に創作をすることができたものと認められます。 意匠1 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1515210号の意匠 (意匠に係る物品:固定式折り畳み拡大鏡) 意匠2 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2008年 7月22日 受入日 特許庁意匠課受入2008年 7月25日 掲載者 イデア株式会社 表題 RACK&STOOL 掲載ページのアドレス http://www.ideaco-web.com/japanese/product/detail/ideaco_muku/penstand/penstand.html に掲載された「ペン立て」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ20017754号)」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、レンズとケースとを一体的に形成した「ルーペ」であって、略同厚の板体を組み合わせてなるものであり、具体的には、ケースは、正背面に表れる2枚の略矩形状板体(以下「ケース用板体」という。)及び底面側と右側面側の隣り合う2面に表れる略長方形状板体(以下「ケース側壁用板体」という。)による側壁からなるものであって、それぞれの板体同士を、組継ぎによって係合してなり、ルーペレンズは、2枚のケース用板体に挟まれ、ケース用板体の開口隅部に配した支軸を介して、回動可能に出し入れするものである。 (2)本願部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本願部分は、2枚のケース用板体の底面側と右側面側の間に、それぞれケース側壁用板体を配設し、それらの板体を組み合わせてなるケースの一部であって、ケース用板体とケース側壁用板体とを、固着する組継ぎ用のほぞ(木材などの二つの部材を接続するとき、材端につくる突起。)の用途及び機能を有するものであり、ケースの周縁において、ケースを組み立ててなる板体端部に形成されたほぞの一部とする位置、大きさ及び範囲を占めるものである。 そして、本願部分は、正背面視において、L字状の配設位置として表れてなるものであって、右側面側のケース側壁用板体のうち、左右両辺のそれぞれ上下端寄りに一箇所ずつ、計4箇所に位置するほぞ部、及び、底面側のケース側壁用板体のうち、上下両辺のそれぞれ左右端寄りに一箇所ずつ、計4箇所に位置するほぞ部とするものである。 (3)本願部分の形態 本願部分は、右側面側及び底面側に表れるケース側壁用板体に、それぞれ4箇所ずつ表れるほぞと、それらから連続して、正背面側の略正方形状のケース用板体に表れるほぞ端面の計8箇所からなるものであり、具体的には、以下のとおりである。 ア 右側面視のケース側壁用板体について 上端寄りの2つのほぞは、下端寄りの2つのほぞの約1.7倍の長さを有するものである。そして、当該ケース側壁用板体の左辺に表れたほぞは、正面視に表れるケース用板体の右辺上下端寄りにそれぞれ連続して表れ、同右辺に表れるほぞは、背面視に表れるケース用板体の左辺上下端寄りにそれぞれ連続して表れている。 イ 底面視のケース側壁用板体について 左端寄りの2つのほぞは、右端寄りの2つのほぞの約1.7倍の長さを有するものである。そして、当該ケース側壁用板体の上辺に表れるほぞは、正面視に表れるケース用板体の下辺左右端寄りにそれぞれ連続して表れ、同下辺に表れるほぞは、背面視に表れるケース用板体の下辺左右端寄りにそれぞれ連続して表れるものである。 2 引用意匠の認定 原審において、拒絶の理由で引用された意匠1及び意匠2の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。 (1)意匠1 意匠1の意匠に係る物品は、例えばショッピングカートのハンドル部に設置して用いる「固定式折り畳み拡大鏡」であり、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、ルーペレンズを収納するケースの隣り合う2面を側壁として設けてなる態様である。 (2)意匠2 意匠2の意匠に係る物品は、「ペン立て」であって、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、組継ぎの手法を用いて略箱型を形成する態様である。 3 本願意匠の創作非容易性について 意匠法第3条第2項の規定の適用についての判断は、「意匠登録を受けようとする部分」の全体の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形態に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うものである。 この種物品分野において、当業者は、他の同種の意匠との差別化のために、実用性を供えつつも趣味性の高い、各種趣向を凝らしたケースを有するルーペの意匠の創作を行うものであるといえるところ、 前記1(1)のうち、携帯用のルーペを、レンズとケースとを一体的に形成することや、2枚のケース用板体に挟まれてなるルーペレンズを、ケース用板体の開口隅部に配した支軸を介して回動可能に出し入れすることは、この出願前より見受けられる態様である。また、レンズを挟んでなる2枚のケース用板体のうち、右側面側と底面側の隣り合う2面に、それぞれ同幅の略細幅長方形板体による側壁を形成することも、この種物品分野においては、この出願前に見受けられる態様である。 しかしながら、前記1(3)に表れる態様は、意匠1及び意匠2には表れていない。 また、前記1(2)のうち、本願部分の配設位置は、正背面視において、ケース用板体の底面側と右側面側とに、L字状の配設位置として表れてなるものであるのに対し、意匠2に表れた組継ぎの態様は、ほぞを板材の側面側にのみ配設してなるものであるから、本願のような配設位置とすることは、意匠2からは導き出せず、この種、組継ぎの手法においてもありふれた形状といえるものでもなければ、ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえる証拠もないから、当業者が容易に創作することができたものということはできない。 そうすると、本願意匠は、ルーペの分野において、前記1(1)のうち、携帯用のルーペを、レンズとケースとを一体的に形成することや、2枚のケース用板体に挟まれてなるルーペレンズを、ケース用板体の開口隅部に配した支軸を介して回動可能に出し入れすること、及び、2枚のケース用板体のうち、右側面側と底面側の隣り合う2面に、それぞれ同幅の略細幅長方形板体による側壁を形成することについては、特段の創作性を認めることはできないものの、前記1(3)に表れる態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものといわざるを得ず、更に、前記1(2)のうち、本願部分の配設位置として、正背面視に表れる略正方形板体の隣り合う2面として、すなわち、板体の底面側と側面側のL字状の位置関係に表れてなることも、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 結び 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-12-02 |
出願番号 | 意願2019-19054(D2019-19054) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(J3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石川 天乃、竹下 寛 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
木村 恭子 濱本 文子 |
登録日 | 2021-01-12 |
登録番号 | 意匠登録第1677963号(D1677963) |
代理人 | 楠本 高義 |