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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1370060 
審判番号 不服2020-7924
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-09 
確定日 2021-01-04 
意匠に係る物品 輸液バッグ 
事件の表示 意願2019- 17656「輸液バッグ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

令和1年(2019年) 8月 7日 意匠登録出願
同年 12月20日付け 拒絶理由通知書
令和2年(2020年) 2月17日 意見書提出
同年 2月28日付け 拒絶査定
同年 6月 9日 審判請求書提出

第2 本願の意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとし、意願2019-17654を本意匠とする関連意匠の意匠登録出願であって、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「輸液バッグ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁意匠課が2002年 8月30日に受け入れた
NO.1 BRAND FROM TAIWAN
第1頁所載
「尿バック」のうち当該意匠に該当する部分の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD14020065号)

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、医療用の器具であって、患者に薬液を投与する際、内部に薬液を注入し、点滴用スタンドのフックに吊り下げる等して用いられる「輸液バッグ」であるのに対し、引用意匠の意匠に係る物品は、上端に挿通されるチューブを介して尿を溜める「尿バック」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、相違する。

(2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分をあわせて「両部分」という。)の用途及び機能については、本願部分は、本願意匠を点滴用スタンドに吊り下げたり、折り曲げて注意事項等を記載したシールを貼り付けるためのフラップ及びフラップから連続するバッグの両肩の外形部分であるのに対し、引用部分は、チューブの端部を挿入、固定し、又は、引用意匠をベッドや体に固定する紐を取り付けるためのフラップ及びフラップから連続するバッグの両肩の外形部分であるから、相違する。
位置、大きさ及び範囲については、両部分ともに、バッグの上端に位置し、上面全体を占める範囲のものであるから、共通する。

(3)両部分の形態
両部分の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア 共通点
両部分は、上面視において略細幅横帯状とし、正面視において外形を略横長凸状に形成したものであって、その左右端(以下「両肩部」という。)及び中央の突片(以下「フラップ部」という。)の両角を弧状に面取りしている点において共通する。

イ 相違点
(ア)正面視におけるフラップ部の縦(高さ)、横の長さの比率について、本願部分は、約1:3.4であるのに対し、引用部分は、約1:4で、本願部分の方が引用部分より高さが高く、フラップ部の横の長さと全幅との比率については、本願部分は、約1:1.3であるのに対し、引用部分は、約1:1.5で、本願部分の方が引用部分より横長である点、
(イ)両肩部及びフラップ部の両角の面取りについて、本願部分は、両肩部は大きな弧状とし、フラップ部は小さな隅丸状としているのに対し、引用部分は、両肩部は小さな隅丸状とし、フラップ部は大きな弧状としている点、
(ウ)両肩部とフラップ部の境目について、本願部分は、隅丸状としているのに対し、引用部分は、直角に屈曲している点、
(エ)フラップ部について、本願部分は、上端を凹凸等のない平坦面状としているのに対し、引用部分は、上端中央にチューブを差し込むための小孔を形成した小さな略矩形状の突起を設けている点、
(オ)色彩等について、本願部分は、全体が透明であるのに対し、引用部分は、全体が乳白色である点において相違する。


2 類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、それぞれ「輸液バッグ」と「尿バック」であって、用途及び機能が異なるから、非類似である。

(2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能は非類似であるが、位置、大きさ及び範囲は、同一である。

(3)両部分の形態
以下、両部分の形態について検討する。

ア 形態の共通点及び相違点の評価
両部分は、医療用バッグの両肩部及びフラップ部であるから、需要者は、主に医療関係者のほか、医療機器メーカーや医療機器の取引業者が含まれる。
したがって、まず、需要者が最も注意を払う部位であるフラップ部の態様について評価し、かつそれ以外の形態も併せて、部分全体として形態を評価することとする。

イ 共通点の評価
この種物品の分野において、上面視において略細幅横帯状とし、正面視において外形を略横長凸状に形成し、両肩部とフラップ部の両角を弧状に面取りしたものは、両部分の他にもごく普通に見受けられるものであるから、この態様は、両部分のみに共通するものとはいえず、この共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。

ウ 相違点の評価
相違点(ア)について、本願部分は、縦横の長さの比率において、引用部分より高さが高く、また、全幅との比較において、引用部分より横長であるが、これらは、いずれも全体を略横長凸状としたなかにおける部分的な相違又は常套的になされる改変の範囲内のものであるから、格別、需要者の注意を惹くものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(イ)について、両肩部を大きな弧状とし、フラップ部を小さな隅丸状としている本願部分と、これとは逆に、両肩部を小さな隅丸状とし、フラップ部を大きな弧状としている引用部分とは、正面からみた視覚的印象が明らかに相違しており、需要者に異なる美感をもたらしているといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)について、本願部分は、両肩部とフラップ部の境目を隅丸状とすることにより、あたかも1本の曲線によって表しているかのように全体が滑らかに繋がっているのに対し、引用部分は、当該境目が直角に屈曲しているため、両肩部とフラップ部は一体感のない別々な印象を与えており、相違点(イ)の態様と相まって、需要者に別異の美感を与えているから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(エ)について、上端が凹凸等のない平坦面状である本願部分と、上端中央にチューブを差し込むための小孔を形成した小さな略矩形状の突起を設けている引用部分は、需要者に対して明らかに異なる視覚的印象を与えているものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(オ)について、この種医療用バッグの物品分野においては、全体を透明としたものも、乳白色としたものも、どちらもごく普通に見られるものであるから、格別、需要者の注意を惹くものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

以上のとおり、相違点(ア)及び相違点(オ)が両部分の類否判断に与える影響は小さいが、相違点(イ)ないし相違点(エ)は、いずれも両部分の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

3 小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は非類似で、両部分の位置、大きさ及び範囲は同一であるが用途及び機能は非類似で、形態においても、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-12-08 
出願番号 意願2019-17656(D2019-17656) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 杏子 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 渡邉 久美
内藤 弘樹
登録日 2021-01-14 
登録番号 意匠登録第1678407号(D1678407) 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 野間 悠 
代理人 黒川 朋也 

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