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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 J5
管理番号 1370073 
審判番号 不服2020-9746
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-10 
確定日 2021-01-08 
意匠に係る物品 シール自動販売機用画像編集機 
事件の表示 意願2019- 19139「シール自動販売機用画像編集機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年(2019年)8月28日の意匠登録出願であり、主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年(2019年)12月20日付け 拒絶理由の通知
令和2年(2020年) 4月 8日付け 拒絶査定
令和2年(2020年) 7月10日 拒絶査定不服審判の請求
令和2年(2020年)11月 9日 面接の実施

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「シール自動販売機用画像編集機」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願は「シール自動販売機用画像編集機」の操作をするための画像における二重の略大長方形部分の内部に2つの略小長方形部分を左右方向に並置して設けた部分を意匠登録を受けようとする部分としたものですが、画像デザインの分野においては、物品分野を超えて様々な意匠を利用することは当たり前に行われているところ、二重の略大長方形部分の内部に2つの略小長方形部分を左右方向に並置して設けることは、例えば、意匠1?2のように本願出願前からみられる態様です。
そうすると、本願意匠は、本願出願前より知られた意匠に基づいて、この種物品分野の通常の知識を有する者が、容易に創作できたものと認められます。
(中略)
意匠1
米国特許商標公報 2016年 2月 9日
ディスプレースクリーン用画像(登録番号US D749123S)
の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH28302865号)
意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1396534号の意匠(当審注:平成22年9月6日発行)」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「シール自動販売機用画像編集機」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「この意匠に係る物品は、シール自動販売機用の撮影機で写真を撮影した後に、編集する画像の選択とその編集、出力レイアウトを選択する等の操作を行うことができるものである。正面図中央のタッチパネル操作部に表された画像は、編集機能を発揮できる状態にする操作を行うためのものであり、操作部等を説明する参考図に示すように、編集内容等を選択し、編集対象画像を編集する操作を行うものである。」
また、願書の「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
「実線であらわした部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。拡大図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特定している。」
これらの願書の記載によれば、本願物品であるシール自動販売機用画像編集機の正面部に設けられた表示部に、編集に係る画像が表示され、また、願書添付図面中の「操作部等を説明する参考拡大図」には各種のボタンが表されているから、ユーザーは編集に関する操作を行う。
(2)本願物品の正面部の表示部に表された画像
前記(1)のとおり、ユーザーは、本願物品の正面部の表示部に表された画像(以下「本願画像」という。)に対して操作を行い、本願物品は編集機能を有するから、同画像は、本願物品の機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像(平成18年改正意匠法第2条第2項で規定された操作画像)であると認められる。
本願意匠において物品の部分について意匠登録を受けようとする部分は、本願画像内で「実線であらわした部分」(以下「本願画像部分」という。)である。
(3)本願画像部分の用途及び機能
前記(1)で摘記した願書の記載、並びに「操作部等を説明する参考拡大図」中の本願画像部分を説明する「編集対象画像」の表示から、本願画像部分は書き込みなどを行う編集対象画像を2つ含んでおり、本願意匠の正面部には物理的な操作ペンが表示部の左右に1つずつ設けられているから、本願画像部分の用途及び機能は、2人のユーザーが、左右に分かれて編集対象画像に対して書き込みなどを行うことであると推認される。
(4)本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像部分は、本願意匠の正面部中央やや上に位置する表示部に表示されるものであり、正面部における本願画像部分の縦幅は、正面視の本願意匠の縦幅の約1/8の大きさ及び範囲を占めている。
(5)本願画像部分の形態
「タッチパネル操作部拡大図」に表された本願画像部分の形態は、以下のとおりである。
ア 全体の形態
全体は、縦横比が約1:1.8の横長長方形であり、その内側に、縦横比が約1:2.6の横長長方形の区画(以下「横長区画」という。)が表されて、横長区画の内側に、同形同大の2つの編集対象画像区画(以下、単に「編集区画」という。)が左右に並んで配されている。
イ 全体における横長区画の構成態様
横長区画は上方に寄っており、横長区画の上側と左右の余地部は小さく、下側の余地部が大きくなっている。上側の余地部と左右の余地部はほぼ同じ幅であり、上側の余地部の縦幅:横長区画の縦幅:下側の余地部の縦幅の比は、約1:17:8である。横長区画の縦幅:下側の余地部の縦幅の比は、約2.1:1である。
ウ 横長区画内の編集区画の構成態様
編集区画は縦横比が約3:4の横長長方形状であって、2つの編集区画は横長区画内において左右対称に配されている。横長区画内の左側編集区画の左方の余地部(以下、単に「左方余地部」という。)、2つの編集区画の中間の余地部(以下、単に「中間余地部」という。)及び右側編集区画の右方の余地部(以下、単に「右方余地部」という。)について、これらの横幅の比は、約2:5:2である。編集区画の上方の余地部の縦幅と下方の余地部の縦幅はほぼ同じであり、これらと左方余地部及び右方余地部の横幅もほぼ同じである。すなわち、左側編集区画は、上方、左方及び下方が等幅の余地部に囲まれており、右側編集区画も、上方、右方及び下方が等幅の余地部に囲まれている。
なお、願書添付図面中の「操作部等を説明する参考拡大図」によれば、左方余地部、中間余地部及び右方余地部には、操作のためのアイコンなどが設けられており、これらの余地部は単なる余白ではなく、機能的要素が出現する部分であると認められる。

2 引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された意匠について、以下のとおり認定する。主として、表示部に表された画像における本願画像部分に対応する部分を認定する。なお、各引用意匠の出典や公開日は、前記第3に記載されたとおりである。
(1)意匠1(別紙第2参照)
当審では、「mobile terminal」とそれに表示された画像を示す「FIG.2」に表された意匠を認定する。また、破線部も含めて意匠の形態を認定する。
ア 意匠に係る物品並びに画像の用途及び機能
意匠1の意匠に係る物品は「DISPLAY SCREEN OR PORTION THEREOF WITH GRAPHICAL USER INTERFACE」であり(別紙第2第1頁参照)、一般にグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)では入出力(機器とユーザーとのインタラクション)が行われるから、「FIG.2」に表された画像は、その入出力を行う用途及び機能を有すると認められる。
イ 本願画像部分に対応する部分の位置、大きさ及び範囲
「FIG.2」における本願画像部分に対応する部分は、「mobile terminal」の正面中央に表示された横長長方形状の画像(以下「意匠1部分」という。)であって、意匠1部分は正面のほぼ一杯の大きさ及び範囲を占めている。
ウ 意匠1部分の用途及び機能
意匠1部分には、「Monitoring System」の文字表示を含む区画と、「Breathing Guide」の文字表示を含む区画が表されているから、「監視システム」及び「呼吸ガイド」に係る用途及び機能を有している。
エ 意匠1部分の形態
(ア)全体の形態
全体は、縦横比が約1:1.6の横長長方形であり、その内側に、縦横比が約1:3.1の横長長方形の区画(以下「横長区画」という。)が表されて、横長区画の内側に、アイコンを含む同形同大の2つの区画(以下、単に「アイコン区画」という。)が左右に並んで配されている。
(イ)全体における横長区画の構成態様
横長区画は意匠1部分の中央に位置しており、上下の余地部は左右の余地部寄りも大きくなっている。上側の余地部の縦幅:横長区画の縦幅:下側の余地部の縦幅の比は、約2:3:2であり、左側の余地部の横幅:横長区画の横幅:下側の余地部の横幅の比は、約1:10:1である。
(ウ)横長区画内のアイコン区画の構成態様
アイコン区画は縦横比が約1:1.6の横長長方形状であって、2つのアイコン区画は横長区画内において左右対称に配されている。横長区画内の左側アイコン区画の左方の余地部(以下、単に「左方余地部」という。)、2つのアイコン区画の中間の余地部(以下、単に「中間余地部」という。)及び右側アイコン区画の右方の余地部(以下、単に「右方余地部」という。)について、これらの横幅の比は、約1:4:1である。アイコン区画の上方の余地部の縦幅と下方の余地部の縦幅はほぼ同じであり、これらと左方余地部及び右方余地部の横幅もほぼ同じである。すなわち、左側アイコン区画は、上方、左方及び下方が等幅の余地部に囲まれており、右側アイコン区画も、上方、右方及び下方が等幅の余地部に囲まれている。

(2)意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠に係る物品並びに画像の用途及び機能
意匠2の意匠に係る物品は「携帯用現在位置表示モニター」であり、「正面図」に表された画像は、意匠公報の説明や参考図によれば、自車位置情報や目的地へのルート等の情報を運転手に提供する用途及び機能の他に、テレビ、音楽等の再生機能やアプリケーション機能も有している。
イ 本願画像部分に対応する部分の位置、大きさ及び範囲
「正面図」における本願画像部分に対応する部分は、正面中央に表示された横長長方形状の画像(以下「意匠2部分」という。)であって、意匠2部分は正面のほぼ一杯の大きさ及び範囲を占めている。
ウ 意匠2部分の用途及び機能
参考図によれば、意匠2部分には、「ナビゲーション」の文字表示を含む区画と、「テレビ視聴」の文字表示を含む区画が表されているから、これらに係る用途及び機能を有している。
エ 意匠2部分の形態
(ア)全体の形態
全体は、縦横比が約1:1.8の横長長方形であり、その内側に、縦横比が約1:3.2の角丸横長長方形の区画(以下「横長区画」という。)が表されて、横長区画の内側に、アイコンが表示される同形同大の2つの区画(以下、単に「アイコン区画」という。)が左右に並んで配されている。
(イ)全体における横長区画の構成態様
横長区画は意匠2部分の中央やや上に位置しており、上下の余地部は左右の余地部寄りも大きくなっている。上側の余地部の縦幅:横長区画の縦幅:下側の余地部の縦幅の比は、約1:2.4:1.3であり、左側の余地部の横幅:横長区画の横幅:下側の余地部の横幅の比は、約1:44.2:1である。
(ウ)横長区画内のアイコン区画の構成態様
アイコン区画は縦横比が約1:1.4の角丸横長長方形状であって、2つのアイコン区画は横長区画内において左右対称に配されている。横長区画内の左側アイコン区画の左方の余地部(以下、単に「左方余地部」という。)、2つのアイコン区画の中間の余地部(以下、単に「中間余地部」という。)及び右側アイコン区画の右方の余地部(以下、単に「右方余地部」という。)について、これらの横幅は同じである。アイコン区画の上方の余地部の縦幅と下方の余地部の縦幅はほぼ同じであり、左方余地部の横幅よりも小さくなっている。すなわち、上下の余地部の幅が小さく、左右と中間の余地部が大きくなっている。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
まず、本願物品がシール自動販売機用画像編集機であって、正面部の中央やや上に位置する表示部に編集に係る画像が表示される点については、編集に係る画像を表示する表示部を正面部のほぼ中央に設けたシール自動販売機用画像編集機の意匠が例を挙げるまでもなく本願の出願前に広く知られており、また、本願画像部分の縦幅を本願意匠の縦幅の約1/8の大きさ及び範囲とする点についても、同様に広く知られている。そうすると、本願画像部分の位置、大きさ及び範囲については、特段の創作性を認めることはできない。
また、本願画像部分の用途及び機能は、シール自動販売機用画像編集機において書き込みなどを行う編集対象画像を2つ含み、2人のユーザーが左右に分かれて編集対象画像に対して書き込みなどを行うことであるところ、このような用途及び機能を有する画像がシール自動販売機用画像編集機の分野において例を挙げるまでもなく本願の出願前に広く知られているから、本願画像部分の用途及び機能についても、特段の創作性を認めることはできない。
しかしながら、前記1(5)で認定したとおり、本願画像部分の形態は、意匠1部分及び意匠2部分には見られない独特なものであり、具体的には、全体における横長区画の構成態様について、本願画像部分の横長区画が上方に寄って、上側の余地部の縦幅:横長区画の縦幅:下側の余地部の縦幅の比が約1:17:8となっている形態、さらに、横長区画内の編集区画の構成態様について、編集区画の上方、左方(又は右方)及び下方の余地部が等幅であって、左方余地部:中間余地部:右方余地部の横幅の比が約2:5:2になっている形態は、意匠1部分及び意匠2部分の形態とは異なるものである。そして、左方余地部、中間余地部及び右方余地部は単なる余白ではなく、機能的要素が出現する部分であることを考慮すると、意匠1部分及び意匠2部分の形態に基づいて、本願画像部分の余地部に係る構成態様を当業者が容易に創作をすることができたとはいい難い。
そうすると、本願画像部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲に係る創作は当業者にとって容易であるものの、本願画像部分の形態については、当業者が意匠1部分及び意匠2部分の形態に基づいて容易に創作することができたということはできない。
したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2020-12-22 
出願番号 意願2019-19139(D2019-19139) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (J5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 杏子 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
濱本 文子
登録日 2021-02-01 
登録番号 意匠登録第1679513号(D1679513) 
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ 

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