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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1370919 |
審判番号 | 不服2020-11171 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-08-11 |
確定日 | 2021-02-04 |
意匠に係る物品 | 使用情報表示機能付き電子計算機 |
事件の表示 | 意願2018- 26209「使用情報表示機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2018年6月3日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、平成30年(2018年)12月3日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和1年 6月13日付け 拒絶理由の通知 令和1年 9月13日 意見書の提出 令和2年 4月27日付け 拒絶査定 令和2年 8月11日 拒絶査定不服審判の請求 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「使用情報表示機能付き電子計算機」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「本願意匠は、角丸の正方形のボタン部の下に砂時計を模したアイコンを設け、電子計算機等の使用情報を表示する機能を有する画像としたものですが、何らかの情報を表示する機能を有する画像においては、角丸の正方形のボタン部の下に、アイコンと文字とを組み合わせた態様は、本願出願前から公然知られています(画像1)。 また、底角の角を丸めた三角形を上下に組み合わせて、片方の三角形の内部に三角形で砂を表現した砂時計を模したアイコンは、本願出願前からごく一般的に知られており(例えば、画像2、画像3)、本願の砂時計のアイコンはそれらとほぼ同様のものであることから、本願の砂時計のアイコンに格段の創意は認められません。 そうすると、本願意匠は、本願出願前から公然知られた画像1のアイコン部分を、ごく一般的に知られたものとほぼ同様の砂時計のアイコンに置き換えたものにすぎず、当業者であれば容易に創作をすることができたものと認められます。 (中略) 画像1 著者の氏名 みきしろ 表題 【小技】フォルダの名前に絵文字を使うと、 ホーム画面がわかりやすくて可愛くなります♪ 掲載箇所 ニュースサイト isuta 媒体のタイプ online 掲載年月日 2014年7月9日 検索日 2019年5月28日検索 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス https://isuta.jp/category/iphone/2014/07/363598 に掲載された画像 画像2 中華人民共和国意匠公報 2018年 3月 2日 グラフィックユーザーインターフェイスを備えたスマートフード(公開番号CN304525790S)に表された砂時計アイコンの画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HH30001200号) 画像3 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1549470号の意匠 (意匠に係る物品、バルブ用ハブ)に表された砂時計アイコンの画像」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は、「使用情報表示機能付き電子計算機」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。 「本物品は、電子計算機及び/又はアプリケーションの使用情報を表示する機能を有する。[正面図]、[正面図の表示部拡大図]、及び[画像のみの拡大図]に表された画像は、アプリケーションの機能が使用制限下にあることを表示するためのものである。」 また、願書の「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。 「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線であり、一点鎖線で囲まれた部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図、右側面図及び底面図は、意匠登録を受けようとする部分が表れないため省略する。」 これらの願書の記載によれば、本願物品である使用情報表示機能付き電子計算機に設けられた表示部に、電子計算機及び/又はアプリケーションの使用情報が表示される。 (2)本願物品の表示部に表された画像 [正面図]、[正面図の表示部拡大図]、及び[画像のみの拡大図]に表された各画像内には、メールアイコンと推認される区画領域(内部に封筒の図形が破線で表されて、下方に「Mail」の文字部が破線で示されている。)があり、アイコンが操作の対象であること、及び本願物品が電子計算機及び/又はアプリケーションの使用情報を表示する機能を有することから、本願物品の表示部(物理的画面)には、その機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像(平成18年改正意匠法第2条第2項で規定された操作画像)が表されている(以下、表示部に表示される画像を「本願画像」という。)。 本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像における一点鎖線で囲まれた部分であって実線で表された部分(以下「本願画像部分」という。)である。破線で表された封筒の図形と「Mail」の文字部は、本願画像部分を構成しない。 (3)本願画像部分の用途及び機能 前記(1)で摘記した願書の記載によれば、本願画像部分は、アプリケーションの機能が使用制限下にあることを表示する用途を有しており、電子計算機及び/又はアプリケーションの使用情報を表示する機能を有していると認められる。 (4)本願画像部分の位置、大きさ及び範囲 本願画像部分の位置は、略板状の本願意匠の正面のほぼ全域を占める縦長長方形の本願画像の左上であって、一点鎖線で囲われた部分の大きさ及び範囲は、本願画像の縦幅の約1/10、横幅の約1/6を占めている。 (5)本願画像部分の形態 ア 全体の形態 本願画像部分は、外周が縦長長方形状(縦横比が約5:4)であり、その内側に、外周上辺と左右辺に近接するように略角丸正方形状の区画(アイコン区画)が設けられ、その区画の左下に、外周下辺に近接するように、砂時計を模した小さな図形(以下「砂時計図形」という。)が表されている。 イ 砂時計図形の形状 全体が、略ワイングラス上半部形状を上下に接いだような上下対称の形状を成し、下半分の内側に、略角丸二等辺三角形区画が表されている。 ウ 砂時計図形の配置 アイコン区画と砂時計図形との間には、砂時計図形の縦幅の約半分ほどの隔たりがある。 2 画像1ないし画像3の認定 原査定における拒絶の理由で引用された画像1ないし画像3について、以下のとおり認定する。なお、画像1ないし画像3の出典や公知日などについては、前記第3に記載したとおりである。 主として、本願画像部分の形態に関係する形態について認定する。 (1)画像1(別紙第2参照) ア 画像1の用途及び機能 画像1は、スマートフォンのホーム画面であり、いくつかのアプリをまとめて入れたフォルダの名前に絵文字を使用したものである。具体的には、「引例」と指示されたフォルダの真下に、絵文字と文字が記されている。画像1は、この絵文字によってフォルダの中身がイメージしやすくなるという用途及び機能を有している。 イ 画像1の形態 (ア)全体の形態 画像1は、外周が縦長長方形状(縦横比が約1.7:1)であり、その内側に、に略角丸正方形状のアイコン又はフォルダが6段4列並べられている。 絵文字が記されたフォルダは下から2段目で右端列にある (イ)絵文字が記されたフォルダの形態 フォルダの内側に、小さな略角丸正方形状の区画が格子状に7個配されている。フォルダの真下に、僅かな隙間を介して、左側に絵文字部が配され、右側に文字部が入れている。絵文字は、青ざめて頬に手を当てて叫ぶ人の顔を模している。 (2)画像2(別紙第3参照) ア 画像2の用途及び機能 画像2は、グラフィックユーザーインターフェイスを備えたスマートフードに係る画像であり、「正面図のインターフェイス拡大図」の左下の区画内に、砂時計図形が表されている。この砂時計図形は、右に「預約設定(日本語仮訳:予約設定)」と記されているので、予約設定に関する用途及び機能があると推認される。 イ 画像2の形態 (ア)砂時計図形の形状 全体が、略お椀形状を上下に接いだような上下対称の形状を成し、下半分の内側に、略台形区画が表されている。 (3)画像3(別紙第4参照) ア 画像3の用途及び機能 画像3は、「バブル用ハブ」の正面に設けられた表示部に表示された画像であり、バルブの開閉に係る作業回数などの変化値を表示する用途及び機能を有している。特に、「変化を示す表示部4」及び「同5」では、バルブの単位時間当たりの作業回数が数字と共に図形で表示されており、図形の中には砂時計図形が表されている。 イ 画像3の形態 (ア)砂時計図形の形状 全体が、略ホームベース形状を上下に接いだような上下対称の形状を成し、上半分の内側に、略ホームベース形状区画が表されている。 3 本願意匠の創作非容易性について 本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。 まず、本願物品が使用情報表示機能付き電子計算機であって、本願画像部分は、アプリケーションの機能が使用制限下にあることを表示する用途を有しており、電子計算機及び/又はアプリケーションの使用情報を表示する機能を有しているところ、このような用途及び機能を有する画像の形態が本願の出願前に公然知られているかについては明らかではない。例えば、画像1の用途及び機能は、絵文字によってフォルダの中身をイメージしやすくすることであるから、本願画像部分の用途及び機能とは異なっている。 そして、本願画像部分の形態についても、アイコン区画が略角丸正方形状であることはごくありふれているものの、略ワイングラス上半部形状を上下に接いだような上下対称の形状を成す本願画像部分の砂時計図形の形状は、画像2及び画像3に見られる砂時計図形の形状とは異なっており、具体的には、画像2では略お椀形状を上下に接いだような形状の下半分の内側に略台形区画が表されており、画像3では略ホームベース形状を上下に接いだような形状の上半分の内側に略ホームベース形状区画が表されている。使用情報表示機能付き電子計算機などの画像を含む物品分野においては本願の出願前に様々な形状の砂時計図形が見受けられ、これを踏まえると当業者が画像2及び画像3の形態に基づいて本願画像部分の砂時計図形の形状を容易に創作することができたということはできない。 また、本願画像部分の砂時計図形の配置について、アイコン区画と砂時計図形との間には砂時計図形の縦幅の約半分ほどの隔たりがあるところ、画像1では、フォルダとその真下の絵文字との間には僅かな隙間があるだけであるから、画像1の形態をそのまま採用して本願画像部分の砂時計図形の配置を創作したということはできない。画像を創作する当業者が視認性などに配慮して画像の要素を配置することを勘案すると、引用された画像1ないし画像3の限りでは、本願画像部分の配置の創作が容易であるとはいい難い。 したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-01-20 |
出願番号 | 意願2018-26209(D2018-26209) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 康平、小林 佑二 |
特許庁審判長 |
北代 真一 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 濱本 文子 |
登録日 | 2021-03-01 |
登録番号 | 意匠登録第1681302号(D1681302) |
代理人 | 工藤 由里子 |
代理人 | 山本 泰史 |
代理人 | 松下 満 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | 田中 伸一郎 |