• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B3
管理番号 1371752 
審判番号 不服2020-11385
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-17 
確定日 2021-02-26 
意匠に係る物品 コンタクトレンズ 
事件の表示 意願2019- 14764「コンタクトレンズ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年(2019年)7月1日の意匠登録出願であって、同年12月26日付けの拒絶理由通知に対し、令和2年2月18日に意見書が提出されたが、同年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠は、意匠に係る物品を「コンタクトレンズ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠とあわせて「両意匠」という。)に類似するものと認められますので、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1522471号
(意匠に係る物品、カラーコンタクトレンズ)の意匠 (別紙第2参照)

第4 当審の判断
1 意匠の認定
当審では、本件登録意匠の形態について、以下のように認定した(以下の「当審作成の参考図1(本審決で用いる用語について)」参照。)

(1)本願意匠
ア 本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、主に美容用の用途に用いる「コンタクトレンズ」であって、角膜(黒目)と角膜の外縁の強膜(白目)の一部を被覆するものであり、コンタクトレンズに付した模様が、コンタクトレンズ装着者の虹彩の一部を覆うように構成してなるものである。

イ 本願意匠の形態
(ア)全体形状
全体形状は、透光性を有する略円板状体であって、角膜と角膜の外縁に隣接する強膜(白目)の一部を被覆可能とする曲率で、一方向に膨出してなるものである。正面側に表れた態様は、中央部から、瞳孔を覆う無模様で透光性を有する略円形状の瞳孔領域、瞳孔領域の周囲を略同幅の環状模様を付してなる虹彩領域、及び、虹彩領域の外側の、強膜の一部を被覆する無模様で透光性を有する外縁領域の3つの領域からなるものであり、瞳孔領域、虹彩領域及び外縁領域の中心から外縁までの半径方向の構成比を約46:47:7とするものである。

当審作成の参考図1(本審決で用いる用語について)


(イ)虹彩領域の模様及び色彩
虹彩領域は、大きさ及び明暗調子の異なる墨色の網点(あみてん。縦横規則的に並んだ小さなドット)を複数層重ね合わせて環状模様を形成してなるものであり、外縁領域との境界部分(以下「外縁部」という。)から中心方向に連続する模様を構成するものであって、外縁部と、その内側を構成する部分(以下「内側(ないそく)部」という。)からなるものである。

a 外縁部
外縁部は、単層の粗く大きな網点により形成し、虹彩領域の外側から約10%の範囲に、暗調子のドットを半径方向に2列程度配設し、列ごとのドットの径及び面積率は外縁に向けて徐々に低くなるものである。

b 内側部
内側部は、複数層のやや大きな網点を重ね合わせて虹彩領域の大部分の模様を表してなるものである。ドットの密度は、外側から内側に向けて徐々にまばらにしてなるものであり、外側から、おおよそドットが集合してまとまりを形成している部分(以下「暗調子クラスタ部」という。)、及び、明調子のドットがまとまりを形成している部分(以下「明調子クラスタ部」という。)に大別することができ、それぞれの具体的態様は以下のとおりである。

(a)暗調子クラスタ部
暗調子クラスタ部は、複数層の粗く大きな面積率の低い網点を重ね合わせて、虹彩領域の約1/4幅の濃環状部、及び、濃環状部の内側全域に形成した多数の略山形クラスタからなるものであり、略山形クラスタの高さは、外縁部寄りから内側部の約2/5であり、網点の面積率は低い。

(b)明調子クラスタ部
明調子クラスタ部は、暗調子部とほぼ同径の明調子のドットが、内側寄りではまばらな散点状に、外縁部寄りでは、隣り合うドットと融合して表れており、中心方向に大小のクラスタを放射状に配置してなるものである。明調子部と瞳孔領域との境界には、全周にわたり深い鋸歯状の凹凸が表れている(以下の当審作成の参考図2(本願意匠の明調子クラスタ部における「大クラスタ」と「小クラスタ」)参照)。

当審作成の参考図2
(本願意匠の明調子クラスタ部における「大クラスタ」と「小クラスタ」)


(2)引用意匠
ア 意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、主に美容用の用途に用いる「コンタクトレンズ」であって、角膜と角膜の外縁の強膜の一部を被覆するものであり、コンタクトレンズに付した模様が、コンタクトレンズ装着者の虹彩の一部を覆うように構成してなるものである。

イ 引用意匠の形態
以下、本審決においては、引用意匠の図面の向きを、本願意匠の図面の向きに合わせて認定、対比する。
(ア)全体形状
全体形状は、透光性を有する略円板状体であって、角膜と角膜の外縁に隣接する強膜の一部を被覆可能とする曲率で、一方向に膨出してなるものである。正面側に表れた態様は、中央部から、瞳孔を覆う無模様で透光性を有する略円形状の瞳孔領域、瞳孔領域の周囲を略同幅の環状模様を付してなる虹彩領域、及び、虹彩領域の外側の、強膜の一部を被覆する無模様で透光性を有する外縁領域の3つの領域からなるものであり、瞳孔領域、虹彩領域及び外縁領域の半径方向の構成比を約54:39:7とするものである。

(イ)虹彩領域の模様及び色彩
虹彩領域は、大きさ及び明暗調子の異なる薄茶色の網点により環状模様を形成してなるものであり、外縁領域との境界部分(以下「外縁部」という。)から中心方向に連続する模様を構成するものであって、おおよそ外縁部及び内側部からなるものである。

a 外縁部
外縁部は、単層の粗く大きな網点により形成し、虹彩領域の外側から約16%の範囲に、暗調子のドットを半径方向に2列程度配設し、ドットの径及び網点の面積率は外縁側を低くしてなるものである。

b 内側部
内側部は、明度の異なるやや大きな網点により虹彩領域の大部分の模様を表してなるものである。ドットの密度はほぼ均一であって、外側から、おおよそ暗調子クラスタ部及び明調子部に大別することができ、それぞれの具体的態様は以下のとおりである。

(a)暗調子クラスタ部
暗調子クラスタ部は、外縁部より大径でピッチを等しくする周囲のにじんだドットからなる面積率の高い網点で表れており、隣り合うドットと相互に融合して、虹彩領域の約1/5幅の断続する濃環状部として表れるものである。
これらの暗調子クラスタは、略同一円周上に不定形で断続的な長短のクラスタとして表れている(以下の当審作成の参考図3(引用意匠の暗調子クラスタ部における「長クラスタ」と「短クラスタ」)参照)。

当審作成の参考図3
(引用意匠の暗調子クラスタ部における「長クラスタ」と「短クラスタ」)


(b)明調子部
明調子部は、暗調子クラスタ部より大径の明調子の周囲のにじんだドットが面積率の高い網点として表れている。明調子部と瞳孔領域との境界には、全周にわたり急峻な鋸歯状の大小の凹凸が平均して表れている。

2 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれもコンタクトレンズに付した模様が、コンタクトレンズ装着者の虹彩の一部を覆うように構成してなる、主に美容用の用途に用いる「コンタクトレンズ」であるから一致する。

(2)形態の対比
ア 形態の共通点
(共通点1)両意匠の全体形状について、透光性を有する略円板状体であって、角膜と角膜の外縁に隣接する強膜の一部を被覆可能とする曲率で、一方向に膨出してなるものであり、正面側に表れた態様は、中央部から、瞳孔を覆う無模様で透光性を有する略円形状の瞳孔領域、瞳孔領域の周囲を略同幅の環状模様を付してなる虹彩領域、及び、虹彩領域の外側の、強膜の一部を被覆する無模様で透光性を有する外縁領域の3つの領域からなるものである点で共通する。
(共通点2)両意匠の虹彩領域の模様は、大きさ及び明暗調子の異なる網点により環状模様を形成してなるものであり、外縁部から中心方向に連続する模様を構成するものである点で共通する。
(共通点3)両意匠の外縁部は、粗く大きな網点により形成してなるものであって、暗調子のドットを半径方向に2列程度配設し、ドットの径及び面積率は外縁側を低くしてなるものである点で共通する。
(共通点4)両意匠の内側部は、やや大きな網点を重ね合わせて虹彩領域の大部分の模様を表してなるものである点で共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)両意匠の正面視における瞳孔領域、虹彩領域及び外縁領域の構成比率について、本願意匠が約46:47:7であるのに対し、引用意匠は約54:39:7であって、本願意匠の方が虹彩領域の幅をやや広く形成してなる点で相違する。
(相違点2)両意匠の虹彩領域の色彩について、本願意匠は墨色の明暗調子により表されているのに対し、引用意匠は薄茶色の明暗調子により表されている点で相違する。
(相違点3)外縁部について、本願意匠は、虹彩領域の外側から約10%の範囲に配設してなるものであるのに対し、引用意匠は、約16%の範囲に配設してなるものであって、本願意匠の方が外縁部が狭いものである点で相違する。
(相違点4)内側部について、本願意匠は、ドットの密度が、外側から内側に向けて徐々にまばらにしてなるものであるのに対し、引用意匠は、ドットの密度はほぼ均一である点で相違する。
(相違点5)暗調子クラスタ部について、本願意匠は、複数層の粗く大きな面積率の低い網点を重ね合わせて、虹彩領域の約1/4幅の濃環状部、及び、濃環状部の内側全域に形成した多数の略山形クラスタからなるものであり、略山形クラスタの高さは、外縁部寄りから内側部の約2/5であるのに対し、引用意匠は、外縁部より大径でピッチを等しくする周囲のにじんだドットからなる面積率の高い網点で表れており、隣り合うドットと相互に融合して、虹彩領域の約1/5幅の濃淡差のある濃環状部として表れるものであり、略同一円周上に不定形で断続的な長短のクラスタとして表れている点、すなわち、本願意匠の方が、濃環状部が途切れることなく形成し、余白部を有する網点からなる略山型クラスタを配設してなる点で相違する。
(相違点6)明調子部について、本願意匠は、暗調子部とほぼ同径の明調子のドットが、内側寄りではまばらな散点状に、外縁部寄りでは、隣り合うドットと重なって表れており、中心方向に大小のクラスタを放射状に配置してなるものであり、網点の面積率は低いものであり、明調子部と瞳孔領域との境界には、全周にわたり深い鋸歯状の凹凸となって表れているのに対し、引用意匠では、暗調子クラスタ部より大径で明調子の周囲のにじんだドットが面積率の高い網点状に表れており、明調子部と瞳孔領域との境界には、全周にわたり急峻な鋸歯状の大小の切り欠きが平均して表れている点、すなわち、本願意匠の方が、ドットの配置が不規則で、瞳孔領域との境界は凹凸差の大きい態様であり、ドットがまばらに形成されている点で相違する。

3 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、主に美容用の用途に用いる「コンタクトレンズ」であり、コンタクトレンズに付した模様が、装着者の虹彩の一部を被覆し、装着者の外観を変化させる目的で使用するものであると解される。
両意匠の虹彩領域部に付された模様は、実際には直径1センチメートル程度の限られた範囲に付されたものであるものの、需要者は、装着した状態の審美的な効果(見映え)という観点から、当該部分に付された模様を近接して、あるいは拡大して観察するものといえる。そうすると、虹彩領域部に付された模様が需要者の注意を強く惹く部分であるといえるから、これらの前提に基づき、以下両意匠の類否について評価、判断する。

ア 共通点の評価
(共通点1)については、主に角膜を被覆する大きさ及び曲率を有する態様であって、瞳孔領域及び外縁領域を無模様で透光性を有する態様とすることは、必然的に選択される形状であるから、当該共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(共通点2)ないし(共通点4)の模様を網点で表すこと、及びそれらを単層あるいは複層として虹彩領域の模様を形成することは、この種物品分野において従来から見られる態様であるから、当該共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)は、両意匠の虹彩領域の模様の構成比に係るものであり、本願意匠は、引用意匠よりも瞳孔領域を狭く形成してなるものである点で相違するものであり、そうすると、本願意匠の方が引用意匠よりも虹彩に馴染む態様とする効果が表れるものと認められるから、当該相違点が需要者の注意を引く部分といえ、両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
(相違点2)は、虹彩領域の色彩に係るものであるが、この種物品分野においてはどちらも従来から見られる態様であるから、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(相違点3)は、外縁部の模様に係るものであるが、細かく小さな網点による暗調子のドットを2、3列程度配設する範囲が、本願意匠では虹彩領域の外側から約10%の範囲に表してなるのに対し、引用意匠では、同約12%の範囲に表してなるものであって、需要者が装着した際の模様部外縁が、本願意匠では、狭い範囲になされるものであるから、当該相違点が両意匠の類否判断には一定程度の影響を与えるものである。
(相違点4)は、内側部の模様に係るものであるが、本願意匠は、網点を複数層重ね合わせて、ドットの密度を外側から内側に向けて徐々にまばらにしてなるものであるのに対し、引用意匠は、ドットの密度はほぼ均一とするものであり、本願意匠がより人の虹彩に近い創作となっているものと認められるから、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
(相違点5)暗調子クラスタ部について、本願意匠は、複数層の網点を重ね合わせてなる濃環状部の内側全域に多数の略山形クラスタとを組み合わせてなるものであるのに対し、引用意匠は、周囲のにじんだドットからなる面積率の高い網点により濃淡差のある濃環状部を表してなるものであるから、本願意匠の濃環状部がアウトラインとなり、角膜をくっきり見せる態様に寄与するものであるから、当該相違点は、需要者の注意を大きく引くものであって、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
(相違点6)は、明調子部に係るものであるが、両意匠は、大きさ及び配設態様が大きく異なるだけでなく、ドット周囲のにじみの態様が大きく異なり、かつ瞳孔領域との境界の態様が異なるものであって、本願意匠の方がより人の虹彩に馴染む態様となっており、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして、(相違点1)ないし(相違点6)が相俟って、両意匠の固有の特徴ある形態となって表れているものであるから、これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものと認められる。

(3)両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として観察した場合、両意匠は、前記2の前文のとおり、虹彩領域部に付された模様が需要者の注意を強く引く部分であり、前記2(2)のとおり、虹彩領域部の模様は、需要者に異なる美感を与えるものである。
そして、前記(2)アの(共通点1)ないし(共通点5)に記載したとおり、全体の基本構成等が共通するとしても、それらはこの種物品分野において必然的に選択される形態であることを考慮すれば、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものと認められるのに対し、前記(2)イの(相違点2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものの、(相違点1)及び(相違点3)ないし(相違点6)の各点は、それぞれ両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きい、あるいは一定程度認められるものであり、更に(相違点1)ないし(相違点6)の各点が組み合わさってなる態様は、本願意匠の特徴を強く表しているから、両意匠は類似しているものとはいえず、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2021-02-10 
出願番号 意願2019-14764(D2019-14764) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 史彬 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
木村 恭子
登録日 2021-03-12 
登録番号 意匠登録第1682240号(D1682240) 
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ