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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C7
管理番号 1371768 
審判番号 不服2020-8585
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-22 
確定日 2021-03-26 
意匠に係る物品 棺 
事件の表示 意願2019- 12790「棺」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年(2019年)6月11日に出願された意匠登録出願であって、令和2年1月24日付けの拒絶理由の通知に対し、同年3月10日に意見書が提出されたが、同年3月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとするもので、その意匠は、意匠に係る物品を「棺」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表わされた部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。「斜視図」「A-A拡大端面図」及び「蓋部を開けた状態のA-A拡大端面図」を含め、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定している。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。「意匠登録を受けようとする部分を示す参考図」において青色の着色を施した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願は、意匠に係る物品を「棺」として出願されたものですが、箱の加工の分野において、容器部の材と蓋部の材との接続部の角を直角にするために、それぞれの木口を45°に面取りすることは、本願出願前よりありふれた手法です(例えば意匠1)。
そうすると、本願は、本願出願前よりありふれた手法として知られているように棺の容器部の材と蓋の材との接続部を、45°に面取りし、接続部の一部を意匠登録を受けようとする部分にしたに過ぎないので、当業者であれば容易に創作できたものです。

意匠1
著者の氏名 石川 寛
表題 家具工房KANの仕事
掲載箇所 小箱(注文品)
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2012年08月04日
検索日 令和2年1月23日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス
https://kfurniture.ti-da.net/d2012-08-04.html
に掲載された「小箱」の意匠
(このページをプリントアウトしますと全部でA4の用紙4枚になりますが、意匠1に特に関係する1枚目のみを添付します。)」

当審注:当審決においては別紙第2に全4頁(検索日は令和3年2月9日)を添付。

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「棺」であり、願書の意匠に係る物品の説明欄には、「本物品は『各部の名称を示す参考図1』に示すように蓋部に手掛け部を有し、『各部の名称を示す参考図2』に示すように棺本体と蓋部が接触している部分がそれぞれ傾斜した点及び蓋部を開いた際に、蓋部の上面が棺本体まで回動可能となっている点を特徴とする棺である。」と記載されている。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、棺の蓋部から接続部を介して連接する棺本体側面の一部に係り、蓋部が回動する用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、棺全体の長手方向において平面視左端から約3/10の位置の蓋部の一部と連接する本体側面部の一部によって構成されるコーナー部に係り、長手方向(水平方向)の幅を棺全体の約1/9とする大きさで、蓋部は平面視下端側に水平方向:垂直方向を約10:4とする横長矩形状の範囲とし、蓋部から水平方向の幅を共通として連接する本体側面部は、正面視上端側に水平方向:垂直方向を約10:5とする横長矩形状の範囲とするものである。

(4)形態
本願意匠の形態は、以下のとおりである。
ア 全体について
本願部分は、蓋部を水平状の平板、本体側面部を垂直状の平板とし、両者が略直角状に連接するものである。

イ 蓋部と本体側面部の接続部について
接続部は、蓋部側、本体側面部側共に45度に面取がなされている。

ウ 蓋部の回動態様について
本願部分は、蓋部が閉まっている状態では蓋部と本体側面の接続部が略直角状に密着し、開いている状態では蓋部が約270度外側に回動し、蓋部上面と本体側面が密着する態様とするものである。

2 引用意匠の認定
インターネットの情報のアドレスに掲載された「小箱」の意匠は、別紙第2に示すとおり、1/4頁における「小箱が完成しました。」との記載以下、5つの写真画像が掲載されている(1/4頁に2つ、2/4頁に2つ、3/4頁の上段に1つ。)。このうち、3番目ないし5番目の写真画像から明らかなとおり、2番目の写真画像に現されているのは「小箱」の蓋であり、1番目に現されているのは蓋の枠と天板と認められる。2番目の写真画像の下の「鏡板は、木口を隠すために留(45度)でカット。」との記載からも1番目の写真画像の右側に現された板は、鏡板(天板)の裏側が見えている状態で、左側に現された枠にはめ込む際、木口を隠すために外周4面に留が施されたもので、ヒンジ等が無いことから、少なくとも天板が回動する構造ではなく、天板と枠が固着される前の状態が掲載されたものと認められる。

3 本願意匠の創作非容易性について
板をはめ合わせる際に、木口面を表出させないために端部を45度カットして接続すること(いわゆる留継)が周知の手法であることは認められ、また、「棺」の物品分野においては、蓋部が270°回動して蓋部上面と本体側面が密着する態様とするものも出願前より公然知られている(特開2001-145673に表された「棺」の意匠、実用新案登録第3205693号に表された「蓋折畳み式棺」の意匠など。)。
しかしながら、本願意匠の形態は、水平の蓋部と垂直の本体側面部が双方の接続部を45度に面取りがなされることによって、閉まった状態で小口面を表出させることのない点と、開蓋時には蓋部が270度外側に回動し、蓋部上面と本体側面が密着する態様とする点を併せ持った形態とするものであり、このような形態は、公然知られたものとは認められない。
そうすると、本願意匠は、この種物品分野において独自の着想によって創出したというほかなく、当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-03-11 
出願番号 意願2019-12790(D2019-12790) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 濱本 文子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
北代 真一
登録日 2021-04-06 
登録番号 意匠登録第1684046号(D1684046) 
代理人 日高 一樹 

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