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審決分類 審判    B1
審判    B1
管理番号 1373819 
審判番号 無効2019-880005
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-09-20 
確定日 2021-04-02 
意匠に係る物品 エプロン 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1629505号「エプロン」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が意匠権者である意匠登録第1629505号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)についての登録を無効とすることを求める事案である。
本件登録意匠は、平成30年(2018年)6月10日に意匠登録出願(意願2018-12685)されたものであって、審査を経て平成31年3月22日に意匠権の設定の登録がなされ、平成31年4月15日に意匠公報が発行されたものである。
その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。
令和1年 9月20日付け:審判請求書の提出
令和2年 1月28日付け:無効審判事件答弁書の提出
令和2年 4月23日付け:審判事件弁駁書の提出
令和2年10月14日付け:書面審理通知書の送付
令和2年12月18日付け:審理終結通知の送付

第2 請求人の申し立て及び理由
請求人は、令和1年9月20日付けで審判請求書を提出し、「登録第1629505号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のように主張するとともに、その主張事実を立証するため、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証の書証を提出した。

1 手続の経緯
意匠登録出願 平成30年 6月10日
意匠権設定の登録 平成31年 3月22日
意匠公報発行 平成31年 4月15日

2 意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠は、意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下、「本件公知意匠1、本件公知意匠2、本件公知意匠3、又は本件公知意匠4」と言う。)と同一又は類似する意匠であり意匠法第3条第1項第2号又は意匠法第3条第1項第3号に該当し、又は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」と言う。)に基づいて容易に意匠の創作ができたものであり意匠法第3条第2項に該当し、意匠登録を受けることができないものである。
したがって、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号により、無効とされるべきである。

3 無効理由
(1)本件登録意匠について
ア 本件登録意匠の意匠に係る物品について
本件登録意匠は、意匠公報(甲第2号証)に掲載の通り、意匠に係る物品を「エプロン」とするものである。

意匠公報の「意匠に係る物品の説明」によれば、「本物品は、食事時に食べこぼしや食べ物の汁やはね等により洋服等を汚さないようにするための携帯用エプロンである。使用に際しては使用状態を示す参考図のように、ストールのように首にかけて左右をスナップボタンで留めて使用する。使用した場合、周囲からは洋服の一部、ベストのように見えて違和感を感じさせない。洋服や食事シーンに合わせて使い分けができるようにリバーシブルになっており、また服に汚れがしみ込みにくい特殊な加工を施してある。」と記載されている。

すなわち、本件登録意匠の意匠に係る物品は、ナプキンであるとともに被服として使用される簡易ベストであると言える。

具体的には、本件登録意匠の意匠に係る物品は、首掛け部と首掛け部の左右側から伸延する左右前身頃(当審注:令和1年9月20日提出の無効審判請求書では「見頃」と記載されているが、「身頃」の誤りとして判断し、以下、「身頃」に統一して記載する。)からなるベストであって、着用性やファッション性といった着用者の着心地を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折り畳み携帯でき、食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性を備え、しかも、安価に生産でき商品価格を抑えることができる経済性を兼ね備えた、食事用ナプキンとして兼用できる簡易ベストである。

イ 本件登録意匠の形態について
本件登録意匠の形態は、以下の通りである。

[基本的構成態様]
全体が、後身頃を排して両腕を通す袖部分をなくした略長手帯状の簡易ベストであって、帯状生地の長手方向中央部に幅狭の略長方形状の首掛け部を形成するとともに、首掛け部の両端で漸次拡幅して伸延する幅広の略長方形状の左右前身頃を形成した態様である。左右前身頃の対向端部には、互いに係合するボタン部が上下方向に等間隔に3つ設けられている。

[具体的構成態様]
(あ)首掛け部と左右前身頃の長さ比は、略1:2である。

(い)首掛け部と左右前身頃の幅比(最大幅比)は、略1:4である。

(う)首掛け部は、中央から下方湾曲した円弧状の態様である。

(え)左右前身頃の外側縁は、首掛け部の湾曲する外側縁に連続して直線状に伸延した態様である。

(お)左右前身頃の内側縁は、首掛け部の湾曲する内側縁よりも外方へ広がる直線状に傾斜し、中途から左右前身頃の外側縁と略平行の直線状に伸延した態様である。

(か)左右前身頃の前裾は、それぞれ内側縁と下端縁とによりなす内側角部を一部切り欠いて頂部を中心に左右非対称の略剣先状とし、左右前身頃の対向前端部同士を突き合わせた状態のベストの中央下部に逆V字状の切り欠きを形成する態様である。

(き)3つのボタン部は、それぞれ略正方形状の雌雄スナップボタンであり、左右前身頃の対向端部に対して間隔幅を左右前身頃の対向端部長さの約1/3長さにして上から順番に配設した態様である。

(2)本件公知意匠1ないし本件公知意匠4について
ア 本件公知意匠1、本件公知意匠2、本件公知意匠3、本件公知意匠4の公知性について
本件公知意匠1は、本件登録意匠出願前に発行された特許第6148417号に係る特許公報(甲第3号証の1)の図面に表されたデザインである。

具体的には、本件公知意匠1は、平成29年1月4日に特許出願がされ、審査において一度も拒絶理由通知を受けることなく平成29年5月26に特許登録がされ、その後、平成29年6月14日に特許公報(甲第3号証の1)が発行された「簡易ベスト服構造」の発明に係る簡易ベストのデザインである(甲第3号証の2)。

また、本件公知意匠2は、本件登録意匠出願前に頒布されたチラシに表された簡易ベストのデザイン(甲第4号証の1、甲第4号証の2)である。

具体的には、本件公知意匠2は、本件公知意匠1に係る特許第6148417号の簡易ベストの実施品のデザインであって、特許公報の発行後の平成30年4月9日に頒布された簡易ベストの紹介用のチラシ(甲第4号証の1)、及び平成30月5月21日に頒布された販売用のチラシ(甲第4号証の2)に表された意匠である。

本件公知意匠2が表れた写真を掲載した紹介用のチラシ、及び販売用のチラシは、本件公知意匠2に係る簡易ベストの宣言広告目的で横田洋子が作成したものである。

紹介用のチラシ(甲第4号証の1)は平成30年4月7日付け作成の送付状(甲第4号証の3)とともに平成30年4月9日に196テキスタ(略)へ宛てて、販売用のチラシ(甲第4号証の2)は平成30年5月21日付け作成の送付状(甲第4号証の4)とともに同年同日に山崎織物株式会社(略)へ宛てて、熊本長嶺郵便局から郵送された。なお、甲第4号証の5は、紹介用のチラシを熊本長嶺郵便局から郵送した際に発行された郵送費用の領収書の写真である。

また、本件公知意匠3は、本件公知意匠2と同じ写真であって、本件登録意匠出願前にウェブサイトにアップロードされた写真の画像データに表された簡易ベストのデザインである(甲第5号証の1)。

具体的には、本件公知意匠3を表す写真は、請求人横田洋子の有する「わんわんズ便BEN」のウェブサイト(http://wanwans-ben2.sakura.ne.jp/)の新作展示室ページ(http://wanwans-ben2.sakura.ne.jp/sinnsakutennji.html)に、請求人横田洋子自らにより、簡易ベストの画像データとして、ベストの正面側の画像データ『image2.jpg』(甲第5号証の2)、ベストの折り畳み状態の画像データ『image3.jpg』(甲第5号証の3)、男性がベストを首に掛けた状態の画像データ『image1111.jpg』(甲第5号証の4)を平成30年5月9日8時9分に、また同じく、ベストの正面側の画像データ『image21.jpg』(甲第5号証の5)、男性がベストを首に掛けた状態の画像データ『image111』(甲第5号証の6)を同日15時25分に、それぞれ2回に分けてアップロードされ、何人からもアクセス可能な状態におかれていた。

また、本件公知意匠4は、本件公知意匠2及び本件公知意匠3と同じ写真であって、本件登録意匠出願前に、守秘義務のない第三者にメールに添付され、送信された写真の画像データに表された簡易ベストのデザインである(甲第6号証の1ないし甲第6号証の3)。

具体的には、本件公知意匠4を表す写真は、請求人横田洋子が創作した簡易ベストの紹介目的で、簡易ベストの画像データとして、ベストの正面側の画像データ『製品見本.jpg』、ベストの折り畳み状態の画像データ『ベストとネクタイ(右)比較.jpg』、男性がベストを首に掛けた状態の画像データ『着用例.jpg』を、それぞれ請求人横田洋子(略)から196テキスタ(略)へ宛てたメールに添付され、平成30年3月29日午後2時47分に送信された(甲第6号証の1ないし甲第6号証の3)。

すなわち、本件公知意匠1は本件登録意匠の出願日である平成30年6月10日よりも前の平成29年6月14日に、また、本件公知意匠2は本件登録意匠の出願日である平成30年6月10日よりも前の平成30年4月9日及び平成30年5月21日に、また、本件公知意匠3は本件登録意匠の出願日である平成30年6月10日よりも前の平成30年5月9日に、また、本件公知意匠4は本件登録意匠の出願日である平成30年6月10日よりも前の平成30年3月29日に、それぞれ日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に該当する(甲第7証)。

なお、上述のとおり、本件公知意匠1ないし本件公知意匠4は、互いに密接関連した意匠であるから、各公知意匠についてそれぞれ特筆すべき場合を除き、以下、単に本件公知意匠と称する。

イ 本件公知意匠の意匠に係る物品について
本件公知意匠に係る物品は、特許第6148417号に係る特許公報(甲第3号証の1)の記載や、紹介用及び販売用のチラシ(甲第4号証の1、甲第4号証の2)の記載、ウェブサイト(甲第5号証の1)の記載、メールに添付された画像データ(甲第6号証の1)から、それぞれ食事用ナプキンとして兼用できる簡易ベストであることは明らかである。

特に、本件公知意匠1について、特許公報(甲第3号証の1)の特許請求の範囲には、「[請求項1] 略長手帯状に形成した簡易ベスト生地の長手方向略中央部を幅方向左右側縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代としこの部分を着用者の首掛け部とすると共に、簡易ベスト生地の長手方向左右半部のうち一半部の幅方向一側縁にボタンを、他半部の幅方向一側縁に前記ボタン部分に連結する連結部を設け、しかも簡易ベスト生地の左右端部は略山形状として、簡易ベスト生地を首掛け部を介して首元から折返して胸元で着用した際に簡易ベスト生地の前記左右半部の上半部がスーツの襟元から露見してベスト風の外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も兼用することを特徴とする簡易ベスト服構造。」との記載がされている。

また、明細書の段落[0015]には、「着用性やファッション性といった着用者の快適な着心地を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折り畳み収容して携帯でき、更には食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性、安価に生産でき商品価格を抑えることができる経済性を兼ね備えた被服として利用可能な簡易ベスト服構造を提供する。」との記載がされている。

また、明細書の段落[0090]には「ベストAを裏返して左右身頃30、40の背面側を食事用ナプキンとして使用してもよく、食べこぼしや飛び跳ねにより左右身頃30、40が汚れたベストAを収納する際には、上述のように互いの左右身頃30、40同士を汚れた背面側同士を合わせて折り畳むことで包み込み、汚れやシミを外側に表出させることなく鞄に清潔に収納することができる。」との記載、段落[0091]には「ベストAの生地10の全表面に撥水加工を施しておけば、汚れた部分のふき取りを容易にして清潔さを保ち、会食後には再びベストAの装いとして利用することも可能である。」との記載がされている。

さらに、図6には簡易ベストをベスト風に着用した例を示す外観斜視図が、図8には簡易ベストを食事用ナプキンとして着用した例を示す外観斜視図が、それぞれ表されている。

また、本件公知意匠2について、各チラシ(甲第4号証の1及び甲第4号証の2)には「パーティー会場などで食事の際は、スーツ上着の前ボタンを外す場合が多い。簡易型ベストは、シャツの上に着用し、更にスーツの上着を着用する。ネクタイを隠さない上、簡易ベストが保護する部分は、食事で汚す部分とほぼ一致し、ナプキンとしても効果的に利用できる。」との記載がされている。

また、本件公知意匠2として、各チラシ(甲第4号証の1及び甲第4号証の2)には、簡易ベストを着用した状態の男性や、簡易ベストの正面が表されている。

また、本件公知意匠3について、ウェブサイト(甲第5号証の1)には「レストランのナプキンを、胸に掛けたままでは話もできない、そこで、華やかな装いの時身に着けて恥ずかしくない、それでいて、胸元の食事の汁はねを防止できるワンモアベストを考案しました。」との記載がされている。

また、本件公知意匠3として、ウェブサイトにアップロードされた画像データには(甲第5号証の1)には、本件公知意匠2と同様に、簡易ベストを着用した状態の男性や、簡易ベストの正面が表されている。

また、本件公知意匠4として、196テキスタ宛のメールに添付された画像データには、本件公知意匠2及び本件公知意匠3と同様に、簡易ベストを着用した状態の男性や、簡易ベストの正面が表されている(甲第6号証の1)。

以上のように、本件公知意匠の意匠に係る物品は、本件登録意匠の意匠に係る物品と用途及び機能を同一とする。

ウ 本件公知意匠の形態について
本件公知意匠の形態は、以下の通りである。

[基本的構成態様]
全体が、後身頃を排して両腕を通す袖部分をなくした略長手帯状のベストであって、帯状生地の長手方向中央部に幅狭の略長方形状の首掛け部を形成するとともに、首掛け部の両端で漸次拡幅して伸延する幅広の略長方形状の左右前身頃(本件公知意匠に係る特許公報の図12を参照)を形成した態様である。左右前身頃の対向端部には、互いに係合するボタン部が上下方向に等間隔に3つ設けられている。

[具体的構成態様]
(ア)首掛け部と左右前身頃の長さ比は、略1:3である。

(イ)首掛け部と左右前身頃の幅比(最大幅比)は、略1:5である。

(ウ)首掛け部は、外側縁を直線状に伸延するとともに内側縁を中央から下方湾曲した円弧状に伸延した態様である。(特に本件公知意匠1を表した第3号証の図12を参照)

(エ)左右前身頃の外側縁は、首掛け部の外側縁に連続して直線状に伸延した態様である。

(オ)左右前身頃の内側縁は、首掛け部の湾曲する内側縁よりも外方へ広がる直線状に傾斜し、中途から左右前身頃の外側縁と略平行の直線状に伸延した態様である。

(カ)左右前身頃の前裾は、それぞれ下端縁と内外側縁とによりなす内外側角部を切り欠いて頂部を中心に左右対称の略剣先状とし、左右前身頃の対向端部同士を突き合わせた状態のベストの中央下部に逆V字状の切り欠きを形成する態様である。

(キ)3つのボタン部は、それぞれ略円形状の雌雄スナップボタンであり、左右前身頃の対向端部に対して間隔幅を左右前身頃の対向端部長さの約1/2長さにして上から順番に配設した態様である。

(3)本件登録意匠が本件公知意匠をもとに、意匠法第3条第1項第2号又は同条同項第3号に該当することについて

本件公知意匠において首周り経て左右前身頃同士を連結した構成自体が意匠の要部であり、同要部を踏襲する本件登録意匠は無効理由を有するものである。その他、差異も散見されるが、微差にとどまり要部を凌駕するほどの特徴とは言えない。以下、その理由を詳説する。

あ 本件登録意匠と本件公知意匠の意匠に係る物品の対比
上述の通り、本件公知意匠に係る物品は、食事用ナプキンとして兼用できる簡易ベストであり、本件登録意匠の意匠に係る物品と用途、機能及び通常の使用状態を同一とする。

すなわち、本件登録意匠に係る物品が「エプロン」であるのに対して本件公知意匠に係る物品が「ベスト」であるとする物品の名称の表記上の形式的な相違があるにせよ、両意匠の物品の「着用性やファッション性といった着用者の着心地を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折り畳み携帯でき、食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性」といった用途、機能、及び通常の使用状態の共通性が認められる。

従って、本件登録意匠の意匠に係る物品は本件公知意匠の物品と同一の物品である。

い 本件登録意匠と本件公知意匠の形態の共通点の列挙
本件登録意匠と本件公知意匠の両意匠の形態は、以下の点で共通する。

共通点(イ)
全体が、後身頃を排して両腕を通す袖部分をなくした略長尺帯状のベストであって、帯状生地の長手方向中央部に幅狭の略長方形状の首掛け部を形成するとともに、首掛け部の両端で漸次拡幅して伸延する幅広の略長方形状の左右前身頃を形成した態様である。左右前身頃の対向端部には、互いに係合するボタン部が上下方向に等間隔に3つ設けられている。

共通点(ロ)
左右前身頃の外側縁は、首掛け部の外側縁に連続して直線状に伸延した態様である。

共通点(ハ)
左右前身頃の内側縁は、首掛け部の湾曲する内側縁よりも外方へ広がる直線状に傾斜し、中途から左右前身頃の外側縁と略平行の直線状に伸延した態様である。

共通点(ニ)
左右前身頃の対向端部同士を突き合わせた状態のベストの中央下部に逆V字状の切り欠きを形成する態様である。

う 本件登録意匠と本件公知意匠の形態の相違点の列挙
本件登録意匠と本件公知意匠の両意匠の形態は、以下の点で相違する。

相違点(ホ)
首掛け部と左右前身頃の長さ比について、本件登録意匠は略1:2であるのに対し、本件公知意匠は略1:3である。

相違点(ヘ)
首掛け部と左右前身頃の幅比(最大幅比)について、本件登録意匠は略1:4であるのに対し、本件公知意匠は略1:5である。

相違点(ト)
首掛け部について、本件登録意匠は中央から下方湾曲した円弧状の態様であるのに対し、本件公知意匠は外側縁を直線状に伸延するとともに内側縁を中央から下方湾曲した円弧状に伸延した態様である。

相違点(チ)
左右前身頃の前裾について、本件登録意匠はそれぞれ内側縁と下端縁とによりなす内側角部を一部切り欠いて頂部を中心に左右非対称の略剣先状とした態様であるのに対し、本件公知意匠はそれぞれ下端縁と内外側縁とによりなす内外側角部を切り欠いて頂部を中心に左右対称の略剣先状とした態様である。

相違点(リ)
3つのボタン部について、本件登録意匠はそれぞれ略正方形状の雌雄スナップボタンであり、左右前身頃の対向端部に対して間隔幅を左右前身頃の対向端部長さの約1/3長さにして上から順番に配設した態様であるのに対し、本件公知意匠はそれぞれ略円形状の雌雄スナップボタンであり、左右前身頃の対向端部に対して間隔幅を左右前身頃の対向端部長さの約1/2長さにして上から順番に配設した態様である。

え 本件登録意匠と本件公知意匠の形態の共通点の評価
本件登録意匠と本件公知意匠の両意匠は、共通点(イ)として、意匠の形態において視覚的印象に与える影響が最も大きい基本的構成態様を共通とする。

両意匠の物品にかかる構成、用途、機能及び通常の使用態様からすると、これら意匠の要部は、首掛け部と首掛け部の両端の左右前身頃の基本的構成態様にあると言える。

本件登録意匠は、上述のごとく、物品を「食事用ナプキンを兼用できる簡易ベスト」とし、その独特の用途、機能及び通常の使用態様といった物品の特性を実現すべく、後身頃を排して両腕を通す袖部分をなくした首掛け部とその両側の左右前身頃とからなる特異な態様の意匠である。

かかる物品の特性を実現する特異な形態のベストは、本件公知意匠1の特許第6148417号に係る特許公報の発行がなされる以前には、世の中に全く知られたものではなかった。

換言すれば、かかる物品の特性を実現する独創的な構成形態を有したベストは、本件公知意匠1に関し、審査において一度も拒絶理由通知を受けることなく特許査定がされ、基本的構成態様を同じくする他の公知文献等が発見されなかった経緯に鑑みると(甲第3号証の2)、特許第6148417号に係る特許公報(甲第3号証の1)の発行によって世の中に初めて公知となったものである(甲第7号証)。

かかる本件公知意匠は、通常の使用状態、すなわち着用状態で幅狭の略長方形状の首掛け部を介して着用者の首元の左右側から漸次拡幅して伸延する幅広の略長方形状の左右前身頃が垂下して、着用者の上部前面を覆い、左右前身頃の対向端部のボタン部も相俟って、略長尺帯状のベストのような特異的な態様を示す。

すなわち、本件公知意匠は、ベストとして着用しつつ食事用ナプキンとして兼用できるという本件公知意匠に係る物品の特性を実現するための「首掛け部とその両側の左右前身頃とからなる簡易ベスト」とする特異な基本的構成が、看者に対して、着用状態では後身頃や袖部を排した構成であるにも関わらず確かに被服としてのベストであるとの認識を与える態様を表し、非着用状態では現実に著しい異別感を与える態様を表すものである(甲第3号証の1、甲第4号証の1、甲第4号証の2、甲第5号証の1、甲第6号証の1)。

このような本件公知意匠に係る物品の特性を実現する特異な形態がこれまで世の中に全くないものであり大変ユニークであることは、本件公知意匠が、テレビで数多く報道されたり、「週間文春」にて小池都知事が着用した写真記事が掲載されたり、婦人発明家協会「なるほどニュース」No.20に掲載されるなどして各種業界で大変な評判となり、平成31年3月には婦人発明家主催 第52回なるほど展にて特許庁長官奨励賞を受賞するに至った経緯からも明らかである(甲第8号証)。

一方で、本件登録意匠は、本件公知意匠と同様、意匠公報(甲第2号証)に掲載の六面図を見るに、あたかも着用者が着用した際の態様、すなわち首周り沿うように後方側に湾曲させた首掛け部を中心に、その左右側から幅広略長方形状の左右前身頃を首掛け部から連続して垂下させ、後身頃や袖部を排した構成であるにも関わらず確かにベストであるとの認識を看者に与える態様である。

すなわち、本件登録意匠と本件公知意匠の両意匠の形態において、看者の視覚的印象に与える影響が最も大きいのは、これらの物品の特性から着用者が着用した際に目立つ「全体が、後身頃を排して両腕を通す袖部分をなくした略長尺帯状のベストであって、帯状生地の長手方向中央部に幅狭の略長方形状の首掛け部を形成するとともに、首掛け部の両端で漸次拡幅して伸延する幅広の略長方形状の左右前身頃を形成した態様である。左右前身頃の対向端部には、互いに係合するボタン部が上下方向に等間隔に3つ設けられている。」とする基本的構成態様である、と言わざるを得ない。

また、具体的構成態様における本件登録意匠と本件公知意匠の両意匠の共通点(ロ)ないし(ニ)についても同様に、いずれも両意匠を対比観察した場合に注意を引く部分である。
特に両意匠の共通点のうち、共通点(ロ)「左右前身頃の外側縁は、首掛け部の外側縁に連続して直線状に伸延した態様」や共通点(ハ)「左右前身頃の内側縁は、首掛け部の湾曲する内側縁よりも外方へ広がる直線状に傾斜し、中途から左右前身頃の外側縁と略平行の直線状に伸延した態様」は、意匠に係る物品の特性からみて、着用者が着用した際に着用者の前面の大部分を覆う左右前身頃の形態をなす稜線部分であり、また、意匠全体の中で占める割合が大きく、視覚的印象に大きな影響を及ぼす部分であると言える。

お 本件登録意匠と本件公知意匠の形態の相違点の評価
一方、相違点(ホ)ないし(リ)については、両意匠が意匠の要部、すなわち両意匠の共通点(イ)ないし(ニ)を凌駕する程の印象を看者に与えるものではなく、一般的なベストの有する形態を参考に容易に行われ得る改変の域を出ないものであり、両意匠の類否判断に与える影響は極めて小さいものである。

すなわち、具体的構成態様における両意匠の相違点(ホ)における「首掛け部と左右前身頃の長さ比」や相違点(ヘ)における「首掛け部と左右前身頃の幅比」、及び相違点(リ)における「ボタン部の左右前身頃の対向端部における間隔幅比」の各比率は、それぞれの差異が微差であってほとんど等しく、外観上も各部が占める割合を大幅に変更するものではないため、意匠全体の美感に与える影響はきわめて小さいものである。

従って、相違点(ホ)、(ヘ)及び(リ)における各比率は、上述した両意匠の共通点に鑑みれば、現実に著しい異別感を与えるものとまで認めることはできない。

また、具体的構成態様における両意匠の相違点(ト)における「首掛け部の形状」についても、意匠全体の美感に与える影響はきわめて小さいものであると言える。

すなわち、共通点(イ)で述べたように、通常看者の注意を引く形態は、両意匠の物品にかかる構成、用途及び通常の使用態様に鑑みて、着用状態における形態であることが本件登録意匠の意匠公報(甲第2号証)に掲載された六面図や、本件公知意匠1の特許公報(甲第3号証の1)に掲載された図6ないし図8から特定される。

具体的には、首掛け部は、両意匠にかかる物品を首に掛けた際の着用状態では両意匠ともに当然に円弧状に湾曲変態する部分であって、着用者の首の後ろに隠れる部分ある。

また、両意匠の首掛け部における形状の差異は、外側縁を中央から下方湾曲した円弧状に伸延したか否かであって、内側縁の形状は同じでその差異は微差であるといえる。しかも、首掛け部の意匠全体に占める割合は小さい。

従って、相違点(ト)は、意匠の類否判断における観察の比重は小さいため、両意匠の形態の対比において類否判断の認定に影響を及ぼさず省略しても問題ないと言える。

また、具体的構成多様における両意匠の相違点(チ)における「左右前身頃の前裾の形態」や相違点(ト)における「3つのボタン部の形状」は、一般的なべストの形態や同ベストに用いられるボタン部のありふれた態様の差異であって、当業界の通常の知識に基づいて容易に行われる改変であり、上述の共通点(ロ)ないし(ニ)の有する美感を凌駕するものとは言えない。

か 本件登録意匠と本件公知意匠の形態の共通点及び相違点の評価に基づく類否の結論
上述のとおり、本件登録意匠と本件公知意匠は、基本的構成態様を共通とし、具体的構成態様についても、両意匠の相違点(ホ)ないし(リ)が意匠全体の美感に与える影響は、両意匠の共通点が意匠全体の美感に与える影響と比べてきわめて小さい。
従って、両意匠の相違点を総合しても、両意匠の共通点を凌駕するものではないので、両意匠の形態は同一又は類似する。
以上より、本件登録意匠及び本件公知意匠の両意匠における物品は同一であり、両意匠の形態は同一又は類似であり、従って、両意匠は同一又は類似する。
従って、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号又は同条同項第3号に該当する。

(4)本件登録意匠が本件公知意匠をもとに、意匠法第3条第2項に該当することについて
本件登録意匠と本件公知意匠の形態の相違点として上記(3)う で列挙した相違点(ホ)ないし(リ)について、両意匠の共通点(イ)ないし(ニ)を凌駕する程の印象を看者に与えるものではないことは既に述べたが、創作非容易性の観点で検討してみても、本件登録意匠は本件公知意匠の形状等に基づいて容易に創作することができる意匠であるといえる。

すなわち、物品を同じくし、基本的構成態様を同じくする両意匠において、本件公知意匠は、本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物に掲載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠として、創作非容易性の判断の基礎とすることができる。

特に「食事用ナプキン兼用の簡易ベスト」という物品の特別な用途、機能、通常の使用態様、そしてこれらを実現する基本的構成態様について、初めて世の中に開示した本件公知意匠1の特許公報は、本件登録意匠の創作非容易性を判断する上で基礎となる刊行物証拠に資する。

換言すれば、本件登録意匠の創作非容易性は、甲第3号証の1ないし甲第8号証で示したように、これまでにないユニークな用途、機能、通常の使用状態を有する本件公知意匠の基本的構成態様を基礎に判断すべきである。

そうすると、本件登録意匠は、上述の相違点(ホ)における「首掛け部と左右前身頃の長さ比」や相違点(ヘ)における「首掛け部と左右前身頃の幅比」、及び相違点(リ)における「ボタン部の左右前身頃の対向端部における間隔幅比」の各比率について、本件公知意匠の全部又は一部の構成比率、すなわち本件公知意匠の具体的構成態様(あ)、(い)、(き)を当業者にとってありふれた手法により、公然知られた一般的なベストの構成要素に変更したにすぎない。

さらには、本件登録意匠は、相違点(ト)における「首掛け部の形状」や相違点(チ)における「左右前身頃の前裾の形態」、相違点(ト)(当審注:相違点(リ)の誤りと思われる)における「3つのボタン部の形状」について、本件公知意匠の構成要素の一部、すなわち具体的構成態様(う)、(か)、(き)を、当業者にとってありふれた手法により、公然知られた一般的なベストの構成要素に置き換えて構成したにすぎない。

また、両意匠に物品ついて、上述の通り、その用途、機能、及び通常の使用状態で共通性が認められる以上、本願公知意匠の物品名を「ベスト」ではなく「エプロン」とすることは記載上での形式的な相違であって、転用の商慣行というありふれた手法であると言わざるを得ない。

すなわち、両意匠の形態の相違点(ホ)ないし(リ)は、いずれも古来から広く流通するバリエーションのベストの一般的デザインの構成要素であり、該構成要素の比率の変更や他の一般的なベストにおける構成要素への置換、商慣行上の転用といった各種手法は服飾業界を営む者にとってありふれた手法である。

従って、本件登録意匠は、出願前にその意匠の属する通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた本件公知意匠の形状等に基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項に該当する。

4 むすび
本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号、意匠法第3条第1項第3号、又は意匠法第3条第2項に該当し、本件登録意匠の登録は、同条の規定に違反してされたものである。
本件公知意匠は、横田洋子が日夜努力を重ね、苦労の末に創作されたものであり、横田洋子の創作物として上述のとおり世の中に初めて発表されたものである。
そして本件公知意匠との関係で瑕疵のある本件登録意匠の意匠権を存続させることは、我が国の国民の知的財産活動における創作意欲を減殺せしめることとなり、ひいては意匠法第1条に掲げる法目的の根幹をゆるがすこととなる。
よって、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

5 証拠方法
・甲第1号証 意匠登録第1629505号の原簿の写し
・甲第2号証 意匠登録第1629505号の意匠公報の写し
・甲第3号証の1 本件公知意匠1の特許第6148417号に係る特許公報の写し
・甲第3号証の2 本件公知意匠1の特許第6148417号に係る経過記録
・甲第4号証の1 請求人横田洋子が作成のチラシの写し
・甲第4号証の2 本件公知意匠2の販売用のチラシの写し
・甲第4号証の3 本件公知意匠2の紹介用のチラシの送付状の写し
・甲第4号証の4 本件公知意匠2の販売用のチラシの送付状の写し
・甲第4号証の5 本件公知意匠2の紹介用のチラシを196テキスタ宛に熊本長嶺郵便局から郵送した際に熊本長嶺郵便局が発行した郵送費用の領収書の写真
・甲第5号証の1 本件公知意匠3のウェブサイトの写し
・甲第5号証の2ないし甲第5号証の6 本件公知意匠3を表す写真をウェブサイトへアップロードした日時等を示すサーバの履歴画面の写し
・甲第6号証の1 本件公知意匠4の画像データの写し
・甲第6号証の2 本件公知意匠4の画像データを添付したメールの送信履歴画面上半部の写し
・甲第6号証の3 本件公知意匠4の画像データを添付したメールの送信履歴画面下半部の写し
・甲第7号証 本件公知意匠の公表時期と本件登録意匠の出願時期の対比表
・甲第8号証 本件公知意匠の特許庁長官奨励賞受賞時の写真の写し

第3 被請求人の答弁及び理由
被請求人は、令和2年1月28日付けで無効審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)を提出し、答弁の趣旨を「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、その理由として以下のとおり主張した。

1 答弁の理由
(1)本件登録意匠及び各本件公知意匠について
ア 本件登録意匠について
本件登録意匠は、意匠登録第1629505号の意匠公報に掲載のとおり、意匠に係る物品を「エプロン」とし、平成30年6月10日に出願され、平成31年3月22日に登録されたものである(甲第1号証ないし甲第2号証)。
本件登録意匠の基本的態様は、
1)本体の中央部分に丸い山形形状に切り欠いた首掛け部を設け、
2)首掛け部から左右長手方向に向かって幅広となる帯状の左右前掛け部を設け、
3)左右前掛け部の両端は外縁から内縁に向かって略直角に切り欠いてなるエプロンである。
本件登録意匠の具体的態様は、
1)首掛け部は中央部の外縁の緩やかな扇形状と内縁の丸い山形形状の湾曲により形成され、
2)外縁部は湾曲した首掛け部から左右端部に向かって直線状に延び、
3)内縁部は丸い山形形状の裾から外縁部の直線と略平行になるように端部に向かって延び、
4)左右前掛け部の両端は外縁端から内縁端に向かって長手方向に対して略直角に直線状に切り欠き、
5)左右前掛け部の内縁端の角は小さく面取りするように直線状に切り取り、6)左右前掛け部には3つのボタンを設けてあるエプロンであり、ストールのように中央部を首に掛け、前でボタンで留めて、汚れを気にせずに食事ができるものである。

イ 引用意匠「本件公知意匠1」について
請求人が主張する本件公知意匠1は平成29年6月14日に発行された特許第6148417号の発明の名称を「簡易ベスト服構造」とする特許公報に掲載されたものである(甲第3号証の1)。
「本件公知意匠1」の基本的態様は、
1)本体の中央部分に直線状の首掛け部を設け、
2)首掛け部から左右長手方向に向かって幅広となる直線状の帯状を形成し、
3)帯状の両端は剣先状に切り欠いてなる
発明の名称を「簡易ベスト服構造」としたものである。
「本件公知意匠1」の具体的態様は、
1)首掛け部は中央部の幅方向左右側縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代として直線状に形成し、
2)首掛け部から左右長手方向に首掛け部の幅の約3倍の幅広になる直線状の帯状を形成し、
3)直線状の帯状の両端は角を三角形状に折り畳んで鋭く剣先状に切り欠き、
4)左右前身頃には3つのボタンを設けてある「簡易ベスト服構造」である。

ウ 引用意匠「本件公知意匠2」について
請求人は本件公知意匠2は、本件公知意匠1に係る特許第6148417号の簡易ベストの実施品のデザインであって、特許公報の発行後の平成30年4月9日に頒布された簡易ベストの紹介用のチラシ(甲第4号証の1)、及び平成30年5月21日に頒布された販売用のチラシ(甲第4号証の2)に表された意匠であり、本件登録意匠出願前に頒布されたチラシに表された簡易ベストのデザインである(甲第4号証の1、甲第4号証の2)と主張している。
しかし、甲第4号証の1及び甲第4号証の2は宣伝広告の目的で横田洋子氏が作成したものであると主張しているように、両方のチラシは共にタイトルの右上部に小さく日付が明記されているものの、個人が作成したチラシに過ぎず、当該日付はいつでも入力することが可能であることから、当該甲第4号証の1及び甲第4号証の2は本件登録意匠出願前に頒布されたチラシであることを何ら客観的に証明してはいないものである。
また、甲第4号証の3及び甲第4号証の4の日付も、横田洋子氏個人が作成した送り状に付された日付にすぎず、本件登録意匠出願前に作成された送付状であることを何ら客観的に証明してはいないものである。
更に、甲第4号証の5の領収書は、上様名義で発行され、また、どんな内容の郵便物を出したか何ら客観的に証明してはいないものである。

エ 引用意匠「本件公知意匠3」について
請求人は本件公知意匠3は、本件公知意匠2と同じ写真であって、本件登録意匠出願前にウェブサイトにアップロードされた写真の画像データに表された簡易ベストのデザインである(甲5号証の1)と主張している。
具体的には、本件公知意匠3を表す写真は、請求人横田洋子氏の有する「わんわんズ便BEN」のウェブサイトに、甲第5号証の2ないし甲第5号証の6をもって、本件登録意匠出願前にウェブサイトにアップロードされたと主張するが、甲第5号証の2のimage2.jpg、甲第5号証の3のimage3.jpg、甲第5号証の4のimagellll.jpg、甲第5号証の5のimage21.jpg、甲第5号証の6のimagelll.jpgが2018年5月9日にアップロードされたものと同一のものであるか、また当該日付をして客観的に2018年5月9日にアップロードされた事実を証明してはいないものである。

オ 引用意匠「本件公知意匠4」について
請求人は本件公知意匠4は、本件公知意匠2及び本件公知意匠3と同じ写真であって、本件登録意匠出願前に、守秘義務のない第三者にメールに添付され、送信された写真の画像データに表された簡易ベストのデザインである(甲6号証の1ないし甲6号証の3)と主張している。
具体的には、本件公知意匠4を表す写真は、請求人横田洋子氏が創作した簡易ベストの紹介目的で、簡易ベストの画像データとして、ベストの正面側の画像データ『製品見本.jpg』、ベストの折り畳み状態の画像データ『ベストとネクタイ(右)比較.jpg』、男性がベストを首に掛けた状態の画像データ『着用例.jpg』を、それぞれ請求人横田洋子氏から196テキスタヘ宛てたメールに添付され、平成30年3月29日午後2時47分に送信されたと主張するが、当該メールを送信先が閲覧したという事実は証明されておらず、当該私信メールの情報は必ずしも公衆に利用可能となってはいないものである。

(2)本件登録意匠出願前の公知意匠について
以上の点から、本件登録意匠出願前における公知意匠は平成29年6月14日に発行された特許第6148417号の発明の名称を「簡易ベスト服構造」とする特許公報とされる「本件公知意匠1」のみである。

(3)意匠法第3条第1項第2号及び第3号について
ア 意匠に係る物品について
意匠法第3条第1項第2号及び第3号に該当するか否かは、意匠は物品と一体となすものであるから、まずその意匠にかかる物品が同一又は類似であることを必要とし、更に、意匠自体においても同一又は類似と認められるものでなければならないものである。
すると、本件登録意匠に係る物品は「エプロン」であるにも拘わらず、請求人は恣意的に、審判請求書(以下、「請求書」という。)3頁上段で、「すなわち、本件登録意匠の意匠に係る物品は、ナプキンであるとともに被服として使用される簡易ベストであると言える。」「具体的には、本件登録意匠の意匠に係る物品は、首掛け部と首掛け部の左右側から伸延する左右身頃からなるベストであって、着用性やファッション性といった着用者の着心地を損なうことなく、装いを手軽に変化させることができ、折りたたみ携帯でき、食事用ナプキンとして使用できるなどの多機能性を備え、しかも、安価に生産でき商品価値を抑えることができる経済性を兼ねた、食事用ナプキンとして兼用できる簡易ベストである。」と主張している。
しかし、意匠は物品と一体となすものであるにも拘わらず、請求人は恣意的に本件登録意匠に係る物品「エプロン」を衣服の「簡易ベスト」であると不当に認定している。
そもそも、エプロンは正面は食べこぼし等で服を汚すことない一枚の紙、布等で造られているものであり、前掛け部が左右に開くエプロンという概念はなかったものである。
一方、本件引用意匠1は「簡易的なベスト」であり、もともとベストとして着用することを前提としているので、左右の前身頃を合わせてベストとすることは一般のベストの構造として何ら独特な構造を採っているものでもなく、一般的な上衣の基本的な構成態様にすぎないものである。
更に、「簡易ベスト」はスーツの下に着用することを前提としたベストであるが、本件登録意匠に係る物品「エプロン」はワイシャツ、シャツ、背広の上から着用するエプロンであって、明らかに機能に基づく物品自体が「エプロン」と「簡易ベスト」とは異なることから、本件登録意匠に係る物品の「エプロン」と本件引用意匠1に係る物品「簡易ベスト」とは明らかに非類似の物品といえるものである。

イ 本件登録意匠と本件公知意匠1の形態について
前述のように、本件登録意匠の基本的態様は、
本件登録意匠の基本的態様は、
1)本体の中央部分に丸い山形形状に切り欠いた首掛け部を設け、
2)首掛け部から左右長手方向に向かって幅広となる帯状の左右前掛け部を設け、
3)左右前掛け部の両端は外縁から内縁に向かって略直角に切り欠いてなるエプロンである。
本件登録意匠の具体的態様は、
1)首掛け部は中央部の外縁の緩やかな扇形状と内縁の丸い山形形状の湾曲により形成され、
2)外縁部は湾曲した首掛け部から左右端部に向かって直線状に延び、
3)内縁部は丸い山形形状の裾から外縁部の直線と略平行になるように端部に向かって延び、
4)左右前掛け部の両端は外縁端から内縁端に向かって長手方向に対して略直角に直線状に切り欠き、
5)左右前掛け部の内縁端の角は小さく面取りするように直線状に切り取り、
6)左右前掛け部には3つのボタンを設けてある
エプロンであり、ストールのように中央部を首に掛け、前でボタンで留めて、汚れを気にせずに食事ができるものである。
一方、本件公知意匠1の基本的態様は、
1)本体の中央部分に直線状の首掛け部を設け、
2)首掛け部から左右長手方向に向かって幅広となる直線状の帯状を形成し、
3)帯状の両端は剣先状に切り欠いてなる
発明の名称を「簡易ベスト服構造」としたものである。
「本件公知意匠1」の具体的態様は、
1)首掛け部は中央部の幅方向左右側縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代として直線状に形成し、
2)首掛け部から左右長手方向に首掛け部の幅の約3倍の幅広になる直線状の帯状を形成し、
3)直線状の帯状の両端は角を三角形状に折り畳んで鋭く剣先状に切り欠き、
4)左右前身頃には3つのボタンを設けてある
「簡易ベスト服構造」である。

ウ 本件登録意匠と本件公知意匠1の形態の対比について
そこで、本件登録意匠と本件公知意匠1を比較するに、
本件登録意匠と本件公知意匠1の形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。
共通点としては、
1)本体の中央部分に首掛け部を形成している点
2)首掛け部から左右長手方向に向かって幅広となる帯状を形成している点がある。
一方、差異点としては、
1)本件登録意匠の首掛け部は中央部の外縁の緩やかな扇形状と内縁の丸い山形形状の湾曲により形成しているのに対して、本件公知意匠1の首掛け部は中央部の幅方向左右側縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代として直線状に形成している点
2)本件登録意匠の外縁部は湾曲した首掛け部から左右端部に向かって直線状に延び、内縁部は丸い山形形状の裾から外縁部の直線と略平行になるように端部に向かって延びて左右前掛け部を形成しているのに対し、本件公知意匠1は首掛け部から左右長手方向に首掛け部の幅の約3倍の幅広になる直線状の帯状を形成している点
3)本件登録意匠の左右前掛け部の両端は外縁端から内縁端に向かって長手方向に対して略直角に直線状に切り欠き、左右前掛け部の内縁端の角は小さく面取りするように直線状に切り取られているのに対し、本件公知意匠1の直線状の帯状の両端は角を三角形状に折り畳んで鋭く剣先状に切り欠いている点がある。
そこで、本件登録意匠と本件公知意匠1について総合的に検討するに、
1)の点において、本件登録意匠の首掛け部は中央部の外縁の緩やかな扇形状と内縁の丸い山形形状の湾曲により形成しているのに対して、本件公知意匠1の首掛け部は中央部の幅方向左右側縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代として直線状に形成していることから、全体的な印象が異なる態様
2)の点において、本件登録意匠の外縁部は湾曲した首掛け部から左右端部に向かって直線状に延び、内縁部は丸い山形形状の裾から外縁部の直線と略平行になるように端部に向かって延びて左右前掛け部を形成しているのに対し、本件公知意匠1は首掛け部から左右長手方向に首掛け部の幅の約3倍の幅広になる直線状の帯状を形成していることから、全体的な印象が異なる態様
3)の点において、本件登録意匠の左右前掛け部の両端は外縁端から内縁端に向かって長手方向に対して略直角に直線状に切り欠き、左右前掛け部の内縁端の角は小さく面取りするように直線状に切り取られているのに対し、本件公知意匠1の直線状の帯状の両端は角を三角形状に折り畳んで鋭く剣先状に切り欠いていることから、全体的な印象が異なる態様
が本件登録意匠と本件公知意匠1の特徴をなす差異であり、これらの差異点は視覚的に顕著であることから、両意匠は別異の印象を与えるものであり、またこれらの差異点は全体として共通点を圧倒するところとなり、本件登録意匠と本件公知意匠1とは外観上大きく相違した印象を需要者、取引者に与えるものである。
したがって、意匠に係る物品において、本件登録意匠に係る物品が「エプロン」であるのに対し、本件引用意匠1に係る物品が「簡易ベスト」であり、両者は明らかに非類似の物品といえるものである。
次に、意匠の形態においても、本件登録意匠は何ら本件公知意匠1に類似するものではなく、需要者、取引者に訴える美感は異質である。
よって、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第2号及び第3号の規定には該当せず、何ら無効理由を有するものではないことは明らかである。

(4)意匠法第3条第2項について
前述のように、本件登録意匠に係る物品が「エプロン」であるのに対し、本件引用意匠1に係る物品が「簡易ベスト」であり、両者は明らかに非類似の物品といえるものである。
意匠の形態においても、本件登録意匠は何ら本件公知意匠1に類似するものではなく、需要者、取引者に訴える美感は異質である。
すると、本件登録意匠と本件引用意匠1は物品も異なり、本件登録意匠と本件引用意匠1の形態においても明らかに需要者、取引者に外観上大きく相違した印象を与え、本件登録意匠は本件引用意匠1とは全く異なった意匠的効果を有するものであるから、本件登録意匠はその着想点においても十分独創性が認められ、当業者が本件公知意匠1に基づいて容易に意匠の創作ができたものとはいえないものである。
よって、本件登録意匠は、出願前にその意匠の分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができないものであり、意匠法第3条第2項の規定には該当せず、何ら無効理由を有するものではないことは明らかである。

(5)結論
つまり、以上の如く、本件登録意匠は何ら引用意匠1に類似するものではなく、需要者、取引者に訴える美感は異質であり、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第2号及び第3号の規定に該当せず、何ら無効理由を有するものではないことは明らかである。
また、本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当せず、何ら無効理由を有するものではないことは明らかである。

第4 請求人の弁駁及びその理由
請求人は、被請求人の令和2年1月28日付け無効審判事件答弁書に対し、令和2年4月23日付けで審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)を提出し、要旨以下のように反論を行った。

1 理由
請求人は、被請求人の答弁に弁駁するために本件審判請求時に提出した証拠を補強する新たな証拠として甲第9号証ないし甲第14号証の13を提出し、被請求人により提出された令和2年3月25日付審判事件答弁書に対し、以下の通り弁駁した。

(1)「本件公知意匠2」について
被請求人は、本件公知意匠2を開示する甲第4号証の1及び甲第4号証の2に係るチラシや甲第4号証の3及び甲第4号証の4に係る送付状は個人が作成したもので日付はいつでも入力することが可能であり、チラシ及び送付状を送付した際に発行された甲第4号証の5の領収書が上様名義で発行されてどんな内容の郵便物を出したか明示がないため、甲第4号証の1及び甲第4号証の2に係るチラシが本件登録意匠出願前に頒布されたものであることを何ら証明していない旨、主張している。

意匠法第3条第1項2号は、「日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠は意匠登録を受けることができない」旨、規定している。
また、本件登録意匠に適用した令和2年修正前の意匠審査基準(22.1.2.2)には、「頒布とは、刊行物が不特定の者が見得るような状態におかれることをいい、現実に誰かがその刊行物を見たという事実を必要としない。」旨、規定している。
さらに意匠審査基準(22.1.2.4)には、「発行の年月日が記載されているときは、その年月日を採用する。」旨、規定している。

ここで「チラシ」は、その性質上、普く広く不特定多数人に対して周知を目的に複数作成され頒布されるものであり、チラシの受取者がチラシを受け取ったことを作成者や頒布者に対してわざわざ通知するものではない。すなわち、「チラシ」は、受領者側の受け取り日をもって頒布日付を特定する性質の刊行物ではなく、それに記載された年月日を採用することができると解釈するのが当然の理である。

また、仮に被請求人が主張するように、甲第4号証の3及び甲第4号証に係る送付状や甲第4号証の1及び甲第4号証の2に係るチラシの日付を本件登録意匠出願前の日付となるように請求人が故意に改変したものであるならば、それは本件審判審理を不当に欺くととなり重大な法律違反である。

さらに、後述する甲第5号証の1ないし甲第5号証の6に掲げた「ウェブサイト」、及び甲第6号証の1ないし甲第6号証の3に掲げた「メール」による簡易ベストの周知活動実態に鑑みても、甲第7号証の「本件公知意匠1ないし公知意匠4の公表時期と本件登録意匠の出願時期の対比表」に記載の通り、甲第4号証の1ないし甲第4号証の5「チラシ」による周知活動は、これら「ウェブサイト」や「メール」の周知活動時期と並行して行われている。すなわち、請求人は、特許第特許第6148417号の簡易ベストに係る実施品の周知活動を平成30年3月29日から平成30年5月9日の間の特定期間に集中して行っており、かかる周知活動時期に使用された「チラシ」にのみ日付の改変を加えることは不自然である。

すなわち、甲第4号証の1ないし甲第4号証の5は、請求人が特許第6148417号の簡易ベストに係る実施品の周知活動を「チラシ」を用いて信義誠実下、地道に行ってきた証左であり、被請求人が主張するように該「チラシ」は日付の改変が施されたものではない。
このように、請求人による信義誠実かつ地道な周知活動経緯や「チラシ」という刊行物の有する特性、及び審査運用に照らしても、被請求人の主張は不当な言いがかりに過ぎず失当であると言わざるを得ない。

(2)「本件公知意匠3」について
被請求人は、本件公知意匠3を表す写真が、請求人が有する甲第5号証の1の「わんわんズ便 BEN」のウェブサイトに、甲第5号証の2ないし甲第5号証の6のイメージファイルをもって本件登録意匠出願前の2018年5月9日にアップロードされたものと同一のものであるかの証明、また、当該日付をして2018年5月9日にアップロードされた事実の証明をしてはいないと主張している。

このような主張に対し、請求人は、本件公知意匠3が甲第5号証の1及び甲第5号証の6により本件登録意匠出願前の2018年5月9日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠であることを示す裏付けの補強資料として、ウェブサイトの管理会社と行った以下内容の問合せ履歴の写し(甲第9号証)を提出する。

甲第9号証に示すように、請求人は、請求人の有するウェブサイトのサーバ管理会社である「さくらインターネット株式会社」へ「サーバにアクセスするためのコントロールパネルに表示された日付は、サーバを介した真正な日付として表示されるか」、また「この日付の改変を横田個人が自由に書き換えることはできるか」について問い合わせを行った。
このような問い合わせに対し、さくらインターネット株式会社からは「・・・サーバコントロールパネルのログイン履歴は、どの環境からアクセスしてもアクセスされた時点でのサーバ側の日時がそのまま表示されます。また、この日時の改変は行なえません。・・・」との回答を得た。

そもそも、サーバにアクセスするためのコントロールパネルは、各種管理会社の管理義務を遂行するべく、ファイルのアップロード履歴を残しつつ個人が日付やファイルを自由に改変することができないように技術的アクセス制限手段を施していることは世の中の常識であり、甲第5号証の2ないし甲第5号証の6のサーバの履歴画像においてイメージファイルのファイル名とアップロードされた画像との客観的な整合性を求める被請求人の主張は無意味である。

このような管理会社からの明確な回答からも判るように、本件登録意匠と同一又は類似の本件公知意匠3が、本件登録意匠の出願前の2018年5月9日に、甲第5号証の1及び甲第5号証の6によって電気通信回線を通じて公衆に利用可能な状態にあったことは疑いようの余地がなく、被請求人の主張は失当である。

(3)「本件公知意匠4」について
被請求人は、本件公知意匠4に関し、甲第6証の1の簡易ベストの画像データ『製品見本.jpg』、ベストの折り畳み状態の画像データ『ベストとネクタイ(右)比較.jpg』、男性がベストを首に掛けた状態の画像データ『着用例.jpg』を添付し、196テキスタへ宛てて平成30年3月29日午後2時47分に送信したメールが、送信先で閲覧したという事実が証明されていないため、当該メールの情報は必ずしも公衆に利用可能となってはいないものである、と主張している。

しかしながら、前述の「本件公知意匠2」及び「本件公知意匠3」の場合と同様に、本件公知意匠4が、甲第6号証の1及び甲第6号証の3により本件登録意匠出願前の2018年5月9日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠であることは明らかである。

本件公知意匠4は、前述の「本件公知意匠2」と同様に、宣伝周知活動の一環として守秘義務のない196テキスタ宛てに送信した「ダイレクトメール」に添付された意匠であり、その内容を現実に誰かが見た事実を要しない。
すなわち、返信義務のない不特定多数人に向けた宣伝広告手段という「ダイレクトメール」の性質上、当該メールを守秘義務のない第三者に送信した時点で公衆に利用可能となった意匠と解釈するのは当然の理である。

請求人は、本件公知意匠4が甲第6号証の1及び甲第6号証の3により本件登録意匠出願前の平成30年3月29日に電気通信回線としてのダイレクトメールを通じて公衆に利用可能となった意匠となっていることを示す裏付けの補強資料として、メールサーバの管理会社と行った以下の内容の問合せ履歴の写し(甲第10号証)を提出する。

甲第10号証に示すように、請求人は、請求人のメールサーバの管理会社であるNTTコミュニケーションズ株式会社に「a:OCNメール画面で送信済みメールに表示されている差出人、件名、サイズの次に表示されている月日は、・・・自分で簡単に改変できるか」、「b:送信済メールの本文を開いた時に表示される月日も、同様に自分で勝手に改変できるか」、「c:OCNメールのソフトでは、この様な日時の改変にそなえて独自にプロテクトしているか」との問い合わせをした。
このような問い合わせに対し、NTTコミュニケーションズ株式会社から「abについては、お客さまのご希望で(送信)日時を変更することはできない仕様となっている」、「cについては、・・・、受信(送信)日時の並び替えのみ可能な仕様となっている」旨の回答を得た。

このように、前述の本件公知意匠3と同様、管理会社は不用意な改変を防止する技術的アクセス制限手段を介してメールサーバの管理義務を遂行しており、したがって、本件登録意匠と同一又は類似の本件公知意匠4が、本件登録意匠の出願前の平成30年3月29日午後2時47分にメールにて送信され、甲第6号証の1ないし甲第6号証の3により電気通信回線を通じて公衆に利用可能な状態にあったことは明白であり、被請求人の主張は失当である。

(4)本件登録意匠出願前の公知意匠について
以上より、被請求人による本件公知意匠2、本件公知意匠3、及び本件公知意匠4は、公知の証明がないため本件審判審理の引用意匠に用いることはできないとする主張は失当である。

すなわち、本件登録意匠出願前における公知意匠は、平成29年6月14日に発行された特許第614817号により公開された本件公知意匠1、平成30年4月7日及び平成30年5月21日に頒布されたチラシに記載された本件公知意匠2、平成30年5月9日当時から被請求人の保有するウェブサイトを通じて公衆に利用可能となった本件公知意匠3、平成30年3月29日に送信されたメールに添付された本件公知意匠4である。以下、これら本件公知意匠1ないし本件公知意匠4を「本件公知意匠」とし、本件登録意匠に対する引用意匠とする。

(5)意匠法第3条第1項第2号及び第3号について
ア 意匠に係る物品について
被請求人は、本件登録意匠に係る物品「エプロン」と本件公知意匠に係る物品「簡易ベスト」は非類似の物品である旨、主張している。

意匠審査基準(22.1.3.1.2)は、「意匠とは物品の形態であることから、意匠の類似は、対比する意匠同士の意匠に係る物品の用途及び機能が同一又は類似であることを前提とするが、この場合にいう「意匠に係る物品の用途及び機能が同一又は類似であること」とは、物品の詳細な用途及び機能を比較した上でその類否を決するまでの必要はなく、具体的な物品に表された形態の価値を評価する範囲において、用途(使用目的、使用状態等)及び機能に共通性がある物品であれば、物品の用途及び機能に類似性があると判断するに十分である。」旨、規定している。

本件登録意匠に係る物品「エプロン」及び本件公知意匠に係る物品「簡易ベスト」はそれぞれ、本件審判請求書の2頁ないし3頁の項目3(1)ア「本件登録意匠の意匠に係る物品について」、及び本件審判請求書の6頁ないし7頁の項目イ「本件公知意匠の意匠に係る物品について」にて既に述べた通り、食べこぼし等で服を汚すことを防止するエプロン機能を備えつつスーツの下に着用してベスト風の外観を呈するベスト機能を備えるものである。なお、甲第3号証の1に係る特許第6148417号公報では「ナプキン」の用語を用いているが、「エプロン」と「ナプキン」とは互いに語源を共通にすると共に同じ意味を持つ言い換え可能な用語である。

このように両意匠に係る物品が互いに用途及び機能において共通性があることを裏付ける補強資料として、請求人は、被請求人の本件登録意匠に係る実施品を紹介する被請求人の保有するウェブサイト「Table with 新しい・大人の食事習慣」(https://www.ukiuki-senior.jp)の写し(甲第11号証の1)及び実施品のパッケージ正面の写し(甲第11号証の2)を提出する。

甲第11号証の1及び甲第11号証の2からも判るように、被請求人は、本件登録意匠に基づく実施品に係る「エプロン」について、「Table with」の商品名を付して販売を行っている。
また、被請求人の保有するウェブサイト(甲第11号証の1)や実施品のパッケージの正面(甲第11号証の2)には、「Table with ベストタイプ」との記載が、さらに被請求人の保有するウェブサイト(甲第11号証の1)には、会合の場と思われる場所でワイングラスを手にした紳士がスーツの下に本件登録意匠に係る実施品を着用した態様の写真がアップロードされている。
かかる写真の下部中央には、薄字で「ビジネスのシーンでも大事な会食やビジネスのシーンなどのフォーマルな装いにもマッチ」との記載がされている。

このような被請求人の本件登録意匠の実施実態に鑑み、被請求人らによって本件登録意匠がエプロン機能以外の他の用途、すなわちスーツの下に着用してベスト風の外観を呈するベスト機能を有するようにデザインされたことは明らかである。

換言すれば、スーツの下に「エプロン」や「簡易ベスト」を着用するか否かは着用場所でのシーンに応じて着用者の自由な選択により適宜なされるものあり、意匠に係る物品の名称はこのような2つの用途、機能を兼用できる物品に対して一義的に定まるものではない。

すなわち、本件公知意匠と本件登録意匠の両物品は、エプロン機能及びベスト機能という他にはない特別な用途、機能における共通性を有する以上、意匠に係る物品を「エプロン」とするか「簡易ベスト」とするかは単なる形式的な表記上の差異にすぎず、同一の物品であると言わざるを得ない。

イ 意匠の形態について
被請求人は、本件登録意匠と本件公知意匠の形態の対比において、以下3つの相違点1)?3)を列挙して両意匠は非類似である旨を主張している。
1)本件登録意匠の首掛け部は中央部の外縁の緩やかな扇形状と内縁の丸い山形形状の湾曲により形成しているのに対して、本件公知意匠の首掛け部は中央部の幅方向左右縁側からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代として直線状に形成している点
2)本件登録意匠の外縁部は湾曲した首掛け部から左右端部に向かって直線状に延び、内縁部は丸い山形形状の裾から外縁部の直線と略並行になるように端部に向かって延びて左右前掛け部を形成しているのに対し、本件公知意匠は首掛け部から左右長手方向に首掛け部の幅約3倍の幅広になる直線状の帯状を形成している点
3)本件登録意匠の左右前掛け部の両端は外縁端から内縁端に向かって長手方向に対して略直角に直線状に切り欠き、左右前掛け部の内縁端の角を面取りし直線状に切り取られているのに対し、本件公知意匠の直線状の帯状の両端は角を三角形状に折り畳んで鋭く剣先状に切り欠いている点

このような主張に対し、請求人は、本件登録意匠が本件公知意匠の形態と同一又は類似であること及び後述する本件公知意匠の形態に基づき創作容易であることを示す補強資料として、甲第12号証の1ないし甲第14号証の13を提出する。

甲第12号証の1ないし甲第14号証の13によれば、「エプロン、チョッキ、ベスト、ジャケット」等の衣服の形状において、物品本体の下縁部の形状、すなわち前身頃の裾形状は次のような各種形状のものが意匠登録されている。

前身頃の裾形状としては、例えば、水平かつL字形状であったり、半円弧状であったり、傾斜カット状であったり、種々の形状のものがある。
すなわち、各種衣服における前身頃の下端形状は、大きく以下の3つの態様に分けることができ、
a:略水平状態様(甲第12号証の1ないし項第12号証の3)
b:略半円弧状態様(甲第13号証の1ないし項第13号証の3)
c:略傾斜状態様(甲第14号証の1ないし項第14号証の13)
が存在する。

すなわち、かかる前身頃の下端のバリエーションに係るaないしcに列挙した裾形状態様は、意匠登録された種々の被服の形状から考察するに、約半世紀の間に多数のものが意匠公報に掲載されていずれも周知形態となっていたことが判る。

換言すれば、衣服業界における前身頃の裾形状は、衣服の形状や用途等に応じて当業者により裁断時に、水平、半円弧、傾斜等の各裾の形状に適宜選択して裁断して縫製するものであり、aないしcにおける裾形状態様は意匠の要部を構成するほどの特異な形状を表したものではなく他の部分に意匠の要部があったからこそそれぞれ登録となった経緯があることが判る。

このような前身頃の裾形状の衣服業界における周知形態の具体的変遷を示す証拠として、例えば意匠登録第435678号に係る「ネック付きベスト」の意匠(以下、単に本意匠と称す。)(甲第14号証の2)と、同意匠登録第435678号の類似意匠登録第1号に係る「ネック付きベスト」の意匠(以下、単に類似意匠と称す。)(甲第12号証の1)がある。

(i)本意匠は、全体が後身頃を排すると共に両腕を通す袖部分を排した前身頃からなるベストであって、前身頃の上端部で環体をなす略帯状の首掛け部を形成すると共に前身頃の下部左右端で帯状の係止ベルトを突出形成した態様であり、通常のベストに比して特異な形態を表している。
また、該意匠の裾形状は、正面図や背面図において、フラットな下縁部を中央でV形にカットしたc:略傾斜状態様を表している。

(ii)一方で、類似意匠は、本意匠と同じ態様、すなわち全体が後身頃を排すると共に袖部分を排した前身頃からなるベストであって、前身頃の上端部で環状をなす首掛け部を形成すると共に前身頃の下部左右端で帯状の係止ベルトを突出形成した態様であり、通常のベストに比して特異な形態を表している。
また、該意匠の裾形状は、正面図や背面図において、下縁部を水平方向に略フラットにしたa:略水平状態様を表している。

すなわち、本意匠と類似意匠の形態を対比すると、両意匠は「首に掛けてベストの前身頃を形成する態様」とした点で一致しており、前身頃の裾形状の態様として本意匠は「下縁部を中央でV形にカットしたc:略傾斜状態様」とする一方、類似意匠は「下縁部を水平方向に略フラットにしたa:略水平状態様」とした点で相違している。

換言すれば、本意匠と類似意匠の両意匠は、「首にかける略帯状本体の形状」と「前身頃の形状」の組み合わせによる態様が意匠の要部としての看者に与える影響の最も大きい態様であるとされ、一方で裾形状については被服の裾部分になされるデザインの範疇であるとしてc:略傾斜状態様であるか a:略水平状態様であるかは看者に与える影響が少ない態様であるとされ、類似関係にあると認定されたことが判る。

翻って、本件無効審判請求に係る本件登録意匠とこれに類似する本件公知意匠とを対比すると、以下のように類似形状と言わざるを得ず、被請求人の相違点1)ないし3)により両意匠の形態は非類似であるとする主張は失当である。

本件登録意匠の本体的形状については帯状の本件公知意匠があり、使用時に首にかけて首掛け両脇部分がエプロン、ナプキン、ベスト等の使用目的に対応して衣服の前身頃に相応するような形状となっている。

すなわち、本件登録意匠と本件公知意匠の両物品の名称において本件登録意匠は「エプロン」とされる一方、引用される本件公知意匠は「簡易ベスト」とされているがそれらの使用実態は前述の通り用途、機能を共通にして「首にかけて両脇の部分がベスト風の前身頃を形成する」という点で一致している。

換言すれば、本件登録意匠と本件公知意匠の両形態の要部は、まさにこの「首にかける略帯状の首掛け部」と「その左右脇部分が着用時の左右前身頃となる帯形状」の組み合わせにあることは一目瞭然である。

(I)具体的には、相違点1)について、被請求人は本件公知意匠の首掛け部は「中央部の幅方向左右縁側からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代として直線状に形成」と特許請求の範囲の記載を恣意的に引用して「しわ寄せ」部分を強調し、あたかも首掛け部に「しわ寄せ」部分の形態が外観として表れているような主張をしている。

しかしながら、被請求人が主張する「しわ寄せ」部分の形態は、いずれの本件公知意匠1ないし4において表れてはない。例えば、本件公知意匠1においては甲第3号証の1の特許第1629505号公報では図12で、また、本件公知意匠2ないし本件公知意匠4では写真や画像データで「しわ寄せ」部分の形態が表れていない帯状の首掛け部の帯状形態が表れている。

すなわち、両意匠の首掛け部の形態の対比において、首掛け部は両意匠ともに帯形状の形態として表れている点で共通しており、したがって、両意匠の首掛け部の形態は同一である。

(II)また、相違点2)について、被請求人は「本件公知意匠の左右前身頃は首掛け部の幅の約3倍の幅広になる帯状を形成」として左右前身頃の幅員の相違を強調しているが、かかる幅員の大小は意匠全体の中で微々たる差異にすぎず全体に及ぼす影響は小さい。

また、左右身頃の内外縁部の形状の違いを強調しているが、かかる形状の違いは意匠全体の印象に影響を及ぼす程の差異はなく、取引者や需要者からみて周知形状に基づいて適宜選択するバリエーションの範疇を超えるものではない。
すなわち、両意匠は、左右前身頃の形態の対比において本質的に重要なのは、帯状の首掛け部との組み合わせによる「左右脇部分が着用時の左右前身頃となる帯形状」としている点が特異な形態を表すのであり、被請求人は左右前身頃の幅員や内外縁部の形状について殊更に細かく認定することにより差異点をこじつけて誇張表現したにすぎず、何ら新規な形態を表してはいない。したがって、両意匠の左右前身頃の形態は同一である。

(III)また、相違点3)について、被請求人は本件登録意匠と本件公知意匠の両形態の対比において、裾部のカット形状の違いを強調して両意匠は非類似と主張しているが、この裾形状は前述の通り被服においてこの半世紀の間に登録された意匠において、
a:略水平状態様
b:略半円弧状態様
c:略傾斜状態様
が周知形態とされており、これらaないしcの形態は意匠の視覚的美観において何ら特異性のある態様とはならず、当業者が適宜変更できる裾形状の形態に過ぎない。

換言すれば、本件登録意匠の前身頃の左右裾部の角部がカットされて正面視でV形カットになっていても、かかる裾部の下縁線形状には特異な形状としての外観上の差異を見出すことはできず、両裾部の形状は類似と判断することができる。

このように、前述の通りa:略水平状態様とc:略傾斜状態様とが類似関係にあると判断されている以上、殊更c:略傾斜状態様において本件登録意匠の裾形状を「V形カット」とし、引用される本件公知意匠の裾形状を「W形カット」とし、模式的に簡略化して対比してみても、該形状の違いは極微々たる違いにすぎず互いに同一又は類似の範囲に属し、該裾形状が意匠全体に及ぼす影響の差異はないと考えるべきである。

したがって、本件無効審判請求に係る本件登録意匠と本件公知意匠とは、両意匠の相違点を総合しても、両意匠の共通点を凌駕するものではないので、両意匠の形態は同一又は類似する。

以上より、本件登録意匠及び本件公知意匠の両意匠における物品は同一であり、両意匠の形態は同一又は類似であり、両意匠は同一又は類似する。
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号又は同条同項第3号の無効理由に該当する。

(6)意匠法第3条第2項について
前述の通り、本件登録意匠は、本件公知意匠と甲第12号証の1ないし甲第14号証の13で示した衣服関係の周知形状との組み合わせにより容易に創作できるものであり、何ら新規なものではないため、独創性のある意匠とは言えない。
すなわち、前述の通り、被請求人が主張する相違点1)ないし相違点3)は、本件公知意匠をベースにして、左右前身頃の形態について半世紀の間に登録された意匠における周知形状を組み換えたにすぎず、何ら特異性のある態様ではなく前述の通り当業者により適宜変更可能な範囲を超えることはない。

したがって、本件登録意匠は、出願前にその意匠の属する通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた本件公知意匠の形状等に基づいて容易に創作することができたものであり、意匠法第3条第2項に該当する。

(7)結論
本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号、意匠法第3条第1項第3号、又は意匠法第3条第2項に該当し、本件登録意匠の登録は、同条の規定に違反してされたものである。

2 証拠方法
・甲第 9号証 公知資料3に係るウェブサイトの管理会社への問合せ履歴の写し
・甲第10号証 公知資料4に係るメールサーバの管理会社への問合せ履歴
・甲第11号証の1 本件登録意匠に係る実施品を紹介するウェブサイトの写し
・甲第11号証の2 本件登録意匠に係る実施品のパッケージ正面の写し
・甲第12号証の1 意匠登録第435678号の類似意匠登録第1号の意匠公報
・甲第12号証の2 意匠登録第1384306号の意匠公報の写し
・甲第12号証の3 意匠登録第1410584号の意匠公報の写し
・甲第13号証の1 意匠登録第317281号の意匠公報の写し
・甲第13号証の2 意匠登録第317282号の意匠公報の写し
・甲第13号証の3 意匠登録第528199号の意匠公報の写し
・甲第14号証の1 意匠登録第347608号の意匠公報の写し
・甲第14号証の2 意匠登録第435678号の意匠公報の写し
・甲第14号証の3 意匠登録第524902号の意匠公報の写し
・甲第14号証の4 意匠登録第581687号の意匠公報の写し
・甲第14号証の5 意匠登録第640373号の意匠公報の写し
・甲第14号証の6 意匠登録第1090561号の意匠公報の写し
・甲第14号証の7 意匠登録第1134144号の意匠公報の写し
・甲第14号証の8 意匠登録第1327239号の意匠公報の写し
・甲第14号証の9 意匠登録第1327599号の意匠公報の写し
・甲第14号証の10 意匠登録第1384191号の意匠公報の写し
・甲第14号証の11 意匠登録第1513659号の意匠公報の写し
・甲第14号証の12 意匠登録第1573100号の意匠公報の写し
・甲第14号証の13 意匠登録第1573101号の意匠公報の写し

第5 書面審理
当審は、本件審判について、令和2年(2020年)10月14日付けで、書面審理に付する旨を請求人と被請求人とに通知した。

第6 当審の判断
1 本件登録意匠(甲第2号証の意匠、別紙第1参照)
本件登録意匠の認定は、以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は「エプロン」であり、意匠公報記載の意匠に係る物品の説明の欄には、「本物品は、食事時に食べこぼしや食べ物の汁やはね等により洋服等を汚さないようにするための携帯用エプロンである。使用に際しては使用状態を示す参考図のように、ストールのように首にかけて左右をスナップボタンで留めて使用する。使用した場合、周囲からは洋服の一部、ベストのように見えて違和感を感じさせない。洋服や食事シーンに合わせて使い分けができるようにリバーシブルになっており、また服に汚れがしみ込みにくい特殊な加工を施してある。」と記載されているものである。

(2)本件登録意匠の形態
ア 基本的構成態様
本件登録意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、参考展開図によれば、広げた状態では、全体が略倒くの字状の略帯状体であって、略倒くの字の外側を背側、内側を前側にし、また、略帯状体の長手方向中央部に幅狭の首掛け部を形成するとともに、首掛け部の両脇を漸次拡幅させて首掛け部より約4倍の幅の左右前身頃を形成したものである。また、本件登録意匠は、同厚の首掛け部と左右の前身頃部からなり、左右前身頃の対向する前端部(以下、「打ち合わせ部」という。)の正面視左側には表側に、正面視右側には裏側に、互いに係合するスナップボタン部が設けられており、正面視右側の表側には何も表れていない。

イ 具体的構成態様
(ア)首掛け部と左右前身頃の長さ比は、略1:3である。
(イ)首掛け部から、左右前身頃それぞれの約3分の1の位置まで、左右前身頃の内側に漸次拡幅した後、前裾まで略垂直に形成し、また、左右前身頃の外側は脇裾まで略垂直に形成する。広げた状態では、首掛け部は背側と前側共に、輪郭形状は略弧状である。また、打ち合わせ部の上端に明確な角部が存在する。
(ウ)左右の前身頃について、下側の約3分の2部の形態は、横幅と縦幅の比が約1:2.5のわずかに裾広がりの略長方形状に、下端部は中央から両端へ向けてわずかに上がる傾きを持った略水平状の直線状に形成されている。また、左右前身頃の打ち合わせ部の下端には切り欠き部を形成している。
(エ)打ち合わせ部における上から3分の2の範囲において、右前身頃の表側と左前身頃の裏側に上下方向に等間隔に3つのスナップボタンが設けられる。これらのスナップボタンは略正方形形状である。また、これらのスナップボタンは打ち合わせ部における上から3分の2の範囲に設けられることから、最下部のスナップボタンを留めたとしても、前身頃の下部は、本件登録意匠の着用者の座姿勢により左右に開くと推察される。

2 無効理由の要点
審判請求書において、請求人が主張する本件登録意匠の無効理由は、以下のとおりである。

(1)本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠である公知意匠1に類似するため、意匠法第3条第1項第2号又は同法同条同項第3号に規定する意匠に該当するので、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由1」という。)。

(2)本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠である公知意匠2に類似するため、意匠法第3条第1項第2号又は同法同条同項第3号に規定する意匠に該当するので、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由2」という。)。

(3)本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠である公知意匠3に類似するため、意匠法第3条第1項第2号又は同法同条同項第3号に規定する意匠に該当するので、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由3」という。)。

(4)本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠である公知意匠4に類似するため、意匠法第3条第1項第2号又は同法同条同項第3号に規定する意匠に該当するので、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由4」という。)。

(5)本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠である公知意匠1ないし公知意匠4に基づき容易に創作できるため、意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当するので、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由5」という。)。

3 無効理由についての判断
以下において、無効理由を検討する。
(1)無効理由1
ア 公知意匠1(甲第3号証の1の意匠:別紙第2参照)の認定
公知意匠1は、請求人より提出された「甲第3号証の1」であり、本件登録意匠の出願前である平成29年6月14日に発行された特許第6148417号(発明の名称、簡易ベスト服構造)の特許公報に所載の図に表された「簡易ベスト」の意匠である。
この公知意匠1には、実施例1、実施例2、及び実施例3が表れているため、以下に、実施例1(図1、図3ないし図8)の意匠を公知意匠1-1、実施例2(図9ないし図11)の意匠を公知意匠1-2、実施例3(図12)の意匠を公知意匠1-3として記載する。

(ア)公知意匠1-1
A 意匠に係る物品
公知意匠1-1の意匠に係る物品は「簡易ベスト」であり、特許公報の関連する部分の記載によると、公知意匠1-1は、着用した際に、上半部がスーツの襟元から露出してベストのような外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も有することを特徴とするものであり、裏返して背面側を食事用のナプキンとして使用することもできるものである。

B 形態
公知意匠1-1の形態は、幅と長手方向の長さの比が約1:9の略帯状体であって、左右両端を剣先状とし、長手方向略中央部を幅方向左右側縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代とし、また、打ち合わせ部の上端から下端に、略円形のボタン3つと、これらのボタン部分に対応する位置に、連結部として磁性体を設けたものである。

C 本件登録意匠と公知意匠1-1の対比
a 意匠に係る物品
本件登録意匠は「エプロン」であり、公知意匠1-1は「簡易ベスト」であるが、両意匠は、長い略帯状体の長手方向中央部を首に掛け、ベストのような外観を呈し、また、食事用のナプキンとして使用できる機能を有する点、また、裏返しても食事用のナプキンとして使用できる点で共通する。

b 形態
本件登録意匠は、前記1(2)のとおりであり、また、公知意匠1-1は、前記ア(ア)Bのとおりである。

D 本件登録意匠と公知意匠1-1の類否判断
a 意匠に係る物品
本件登録意匠と公知意匠1-1の意匠に係る物品は、前記Cのaのとおりであって、用途と機能が共通するため、類似する。

b 形態
本件登録意匠と公知意匠1-1の形態を対比すると、以下の共通点と相違点が認められる。

I 形態の共通点
(共通点1)長い略帯状体であり、長手方向の中央部を首に掛け、両脇を左右の前身頃として左右に垂らすと、左右の先端が下腹部あたりに届く長さである点。
(共通点2)首掛け部が左右の前身頃部よりも細く形成される点。
(共通点3)打ち合わせ部に3つの連結部を有する点。

II 形態の相違点
(相違点1)本件登録意匠は全体形状が、首掛け部で折れ曲がった略倒くの字形状であるが、公知意匠1-1の全体形状は略直線状の帯状である点。
(相違点2)広げた状態では、本件登録意匠の首掛け部は、背側と前側ともに輪郭形状が略弧状であるが、公知意匠1-1は背側と前側からほぼ同形状の略台形に縮幅してなる点。
(相違点3)本件登録意匠は首掛け部と左右の身頃部が同一の厚みであるが、公知意匠1-1は長手方向略中央部を幅方向左右側縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代としているため、首掛け部にひだがあり、首掛け部が左右の身頃部よりも厚くなっている点。
(相違点4)本件登録意匠の首掛け部から打ち合わせ部の上端部にかけて明確な角形状が存在するが、公知意匠1-1の首掛け部から打ち合わせ部の上端部にかけては、ゆるやかな角度の変化があるのみであり、明確な角形状は存在しない点。
(相違点5)連結部について、本件登録意匠には、打ち合わせ部における上から3分の2の範囲に、3つの略正方形のスナップボタンが等間隔に設けられるが、公知意匠1-1には、打ち合わせ部の上端から下端までの範囲に、磁性体により連結される3つの略円形のボタンが等間隔に設けられる点。
(相違点6)本件登録意匠の左右前身頃の下端は、外側に向かってわずかに角度を上げた略水平の直線状に形成されているが、公知意匠1-1は剣先状に形成されている点。

c 共通点と相違点の評価
本件登録意匠と公知意匠1-1の共通点及び相違点を比較すると、(共通点1)ないし(共通点3)は形状を大まかにとらえたものであるのに対して、(相違点1)ないし(相違点6)は具体的な形状の差異であって、首掛け部という首回りから胸元にかけての形状や、連結部のボタンの種類と形状、前身頃の下端の形状という、エプロンを着用した際に外観に大きく影響する部分におけるものであり、意匠全体として観察する場合には、相違点が共通点を凌駕するものである。
したがって、本件登録意匠と公知意匠1-1は、意匠に係る物品が類似するが、形態においては、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対し、相違点については、両意匠の類否判断に与える影響が大きいことから、相違点が共通点を凌駕し、本件登録意匠は公知意匠1-1に同一ではなく、また類似もしていない。

E 小括
以上のことから、本件登録意匠と公知意匠1-1は、ともにベストのような外見を有し、食事用のエプロンの機能を有することから、意匠に係る物品は類似するものの、形態が異なるものであるから、意匠法第3条第1項第2号又は同法同条同項第3号に掲げる意匠に該当するということはできない。

(イ)公知意匠1-2
A 意匠に係る物品
公知意匠1-2の意匠に係る物品は「簡易ベスト」であり、特許公報の関連する部分の記載によると、着用した際に、上半部がスーツの襟元から露出してベストのような外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も有することを特徴とするものであって、また、アスコットタイ風にも着用できるものである。

B 形態
公知意匠1-2の形態は、幅と長手方向の長さの比が約1:9の略帯状体であって、左右両端を剣先状とし、長手方向略中央部を、背側を前側よりもわずかに大きくひだ状にしわ寄せすることにより細めたものである。また、打ち合わせ部の上端から下端に、左身頃側に、略円形のボタン3つが等間隔に設けられている。また、左右の身頃のこれらのボタン部分に対応する位置に、連結部として磁性体を設けたものである。

C 本件登録意匠と公知意匠1-2の対比
a 意匠に係る物品
本件登録意匠は「エプロン」であって、公知意匠1-2は「簡易ベスト」であり、両意匠は、長い略帯状体の長手方向中央部を首に掛け、ベストのような外観を呈し、また、食事用のナプキンとして使用できる機能を有する点で共通する。しかし、公知意匠1-2はアスコットタイ風にも着用することを想定されている点が本件登録意匠とは相違する。

b 形態
本件登録意匠は、前記1(2)のとおりであり、また、公知意匠1-2は、前記ア(イ)Bのとおりである。

D 本件登録意匠と公知意匠1-2の類否判断
a 意匠に係る物品
本件登録意匠と公知意匠1-2の意匠に係る物品は、前記Cのaのとおりであって、公知意匠1-2にはアスコットタイ風に着用することを想定されている点が存在するものの、両意匠は、長い略帯状体の長手方向中央部を首に掛け、ベストのような外観を呈し、また、食事用のナプキンとして使用できる機能を有する点で用途と機能が共通するため、類似する。

b 形態の対比
本件登録意匠と公知意匠1-2の形態を対比すると、以下の共通点と相違点が認められる。

I 形態の共通点
(共通点1)長い略帯状体であり、長手方向の中央部を首に掛け、両脇を左右の前身頃として左右に垂らすと、左右の先端が下腹部あたりに届く長さである点。
(共通点2)首掛け部が左右の前身頃部よりも細く形成される点。
(共通点3)打ち合わせ部に3つの連結部を有する点。

II 形態の相違点
(相違点1)本件登録意匠は全体形状が、首掛け部で折れ曲がった略倒くの字形状であるが、公知意匠1-2の全体形状は略直線状の帯状である点。
(相違点2)広げた状態では、本件登録意匠の首掛け部は、背側と前側ともに輪郭形状が略弧状であるが、公知意匠1-2は背側と前側から、わずかに略台形に縮幅してなる点。
(相違点3)本件登録意匠は首掛け部と左右の身頃部が同一の厚みであるが、公知意匠1-2は長手方向略中央部を幅方向左右側縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代としているため、首掛け部にひだがあり、首掛け部が左右の身頃部よりも厚くなっている点。
(相違点4)本件登録意匠の首掛け部から打ち合わせ部の上端にかけては、明確な角形状が存在するが、公知意匠1-2の首掛け部から打ち合わせ部にかけては、ゆるやかな角度の変化があるのみであり、明確な角形状は存在しない点。
(相違点5)連結部について、本件登録意匠には、打ち合わせ部における上から3分の2の範囲に、3つの略正方形のスナップボタンが等間隔に設けられるものの、公知意匠1-2には、打ち合わせ部の上端から下端までの範囲に、磁性体により連結される3つの略円形のボタンが等間隔に設けられる点。
(相違点6)本件登録意匠の左右前身頃の下端は、外側に向かってわずかに角度を上げた略水平状の直線状に形成されているが、公知意匠1-2は剣先状に形成されている点。

c 共通点と相違点の評価
本件登録意匠と公知意匠1-2の共通点及び相違点を比較すると、(共通点1)ないし(共通点3)は形状を大まかにとらえたものであるのに対して、(相違点1)ないし(相違点6)は具体的な形状の差異であって、首掛け部という首回りから胸元にかけての形状や、連結部のボタンの種類と形状、前身頃の下端の形状という、エプロンを着用した際に外観に大きく影響する部分におけるものであり、意匠全体として観察する場合には、相違点が共通点を凌駕するものである。
したがって、本件登録意匠と公知意匠1-2は、意匠に係る物品が類似するが、形態においては、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対し、相違点については、両意匠の類否判断に与える影響が大きいことから、相違点が共通点を凌駕し、本件登録意匠は公知意匠1-2に同一ではなく、また類似もしていない。

E 小括
以上のことから、本件登録意匠と公知意匠1-2は、ともにベストのような外見を有し、食事用のエプロンの機能を有することから、意匠に係る物品は類似するものの、形態が異なるものであるから、意匠法第3条第1項第2号又は同法同条同項第3号に掲げる意匠に該当するということはできない。

(ウ)公知意匠1-3
A 意匠に係る物品
公知意匠1-3の意匠に係る物品は「簡易ベスト」であり、特許公報の関連する部分の記載によると、公知意匠1-3は、着用した際に、上半部がスーツの襟元から露出してベストのような外観を呈し、かつ、食事用のナプキン機能も有することを特徴とするものである。

B 形態
公知意匠1-3の形態は、幅と長手方向の長さの比が約1:9の略帯状体であって、左右両端を剣先状とし、長手方向の背面側は直線状であるものの、前側はゆるやかな弧状の輪郭形状である。また、長手方向略中央部を、前身頃側からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代としている。さらに、前身頃の端部に、上端から下端にかけて、略円形のボタン3つが等間隔に設けられている。これらのボタンは、ボタンの下に設けられた磁性体により連結されるものとなっている。

C 本件登録意匠と公知意匠1-3の対比
a 意匠に係る物品
本件登録意匠は「エプロン」であり、公知意匠1-3は「簡易ベスト」であるが、両意匠は、長い略帯状体の長手方向中央部を首に掛け、ベストのような外観を呈し、また、食事用のナプキンとして使用できる機能を有する点で共通する。

b 形態
本件登録意匠は、前記1(2)のとおりであり、また、公知意匠1-3は、前記ア(ウ)Bのとおりである。

D 本件登録意匠と公知意匠1-3の類否判断
a 意匠に係る物品
本件登録意匠と公知意匠1-3の意匠に係る物品は、前記Cのaのとおりであって、用途と機能が共通するため、類似する。

b 形態の対比
本件登録意匠と公知意匠1-3の形態を対比すると、以下の共通点と相違点が認められる。

I 形態の共通点
(共通点1)長い略帯状体であり、長手方向の中央部を首に掛け、両脇を左右の前身頃として左右に垂らすと、左右の先端が下腹部あたりに届く長さである点。
(共通点2)首掛け部が左右の前身頃部よりも細く形成される点。
(共通点3)打ち合わせ部に3つの連結部を有する点。

II 形態の相違点
(相違点1)本件登録意匠は全体形状が、首掛け部で折れ曲がった略倒くの字形状であるが、公知意匠1-3の全体形状は略直線状の帯状である点。
(相違点2)広げた状態では、本件登録意匠の首掛け部は、背側と前側ともに輪郭形状が略弧状であるが、公知意匠1-3の背側は略直線状であり、前側はゆるやかな弧状である点。
(相違点3)本件登録意匠は首掛け部と左右の身頃部が同一の厚みであるが、公知意匠1-3は長手方向略中央部を前側の縁からひだ状にしわ寄せして厚手の重ね代としているため、首掛け部にひだがあり、首掛け部が左右の身頃部よりも厚くなっている点。
(相違点4)本件登録意匠には、打ち合わせ部における上から3分の2の範囲に、3つの略正方形のスナップボタンが等間隔に設けられるものの、公知意匠1-3には、打ち合わせ部の上端から下端までの範囲に、磁性体により連結される3つの略円形のボタンが等間隔に設けられる点。
(相違点5)本件登録意匠の左右前身頃の下端は、外側に向かってわずかに角度を上げた略水平状の直線状に形成されているが、公知意匠1-3は剣先状に形成されている点。

c 共通点と相違点の評価
本件登録意匠と公知意匠1-3の共通点及び相違点を比較すると、(共通点1)ないし(共通点3)は形状を大まかにとらえたものであるのに対して、(相違点1)ないし(相違点5)は具体的な形状の差異であって、首掛け部という首回りから胸元にかけての形状や、連結部のボタンの種類と形状、前身頃の下端の形状という、エプロンを着用した際に外観に大きく影響する部分におけるものであり、意匠全体として観察する場合には、相違点が共通点を凌駕するものである。
したがって、本件登録意匠と公知意匠1-3は、意匠に係る物品が同一であるが、形態においては、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対し、相違点については、両意匠の類否判断に与える影響が大きいことから、相違点が共通点を凌駕し、本件登録意匠は公知意匠1-3に同一ではなく、また類似もしていない。

E 小括
以上のことから、本件登録意匠と公知意匠1-3は、ともにベストのような外見を有し、食事用のエプロンの機能を有することから、意匠に係る物品は類似するものの、形態が異なるものであるから、意匠法第3条第1項第2号又は同法同条同項第3号に掲げる意匠に該当するということはできない。

イ 無効理由1に関するまとめ
以上のように、公知意匠1-1ないし公知意匠1-3は本件登録意匠と類似しないため、公知意匠1-1ないし公知意匠1-3をもって本件登録意匠を無効とすることはできず、無効理由1には理由がない。

(2)無効理由2
請求人は、甲第4号証の1の意匠と甲第4号証の2の意匠とを公知意匠2として審判請求書を作成した。

ア 意匠に係る物品
公知意匠2は、甲第4号証の1(平成30年4月7日との日付が記載された、「Only Oneの為の便利工房 わんわん’s便・BEN」によるチラシ「ダンディースカーフ」)と、甲第4号証の2(平成30年5月21日との日付が記載された、「Only Oneの為の便利工房 わんわん’s便・BEN」によるチラシ「ダンディーベスト」)にあらわされた「簡易ベスト」である。
なお、甲第4号証の1と甲第4号証の2に表された写真は、簡易ベストの形態や色彩が異なるものであるが、いずれも撮影の際の撮影角度の違いや照明の明るさの加減等により異なるように見えるものと認められるから、当審では甲第4号証の1と甲第4号証の2の意匠は同一の形状、色彩のものと認定し、以下評価、判断を行う。

イ 形態
公知意匠2は、首掛け部と左右の前身頃からなり、首掛け部の折り曲げ角度及び畳んだ状態から、広げると略帯状であるものと推察される。首掛け部の幅が最も狭く、首掛け部から左右の前身頃にかけて幅が漸次太くなる。首掛け部から左右の前身頃にかけて、横幅を略3等分する位置に2ヶ所のひだが存在する。また、左右の前身頃のそれぞれの左右辺は略平行であって、先端部はそれぞれ剣先状に形成してなるものである。また、首掛け部の幅と、左右の前身頃の最広部の幅の比は約1:4である。さらに、全体に濃色の地模様が施されている。左前身頃の端部の上端から下端にかけて、略円形のボタンが上下方向に等間隔に3つ設けられている。

ウ 甲第4号証の1及び甲第4号証の2の公知性の判断について
(ア)甲第4号証の1の意匠の公知性
請求人より、甲第4号証の1(平成30年4月7日との日付が記載された、「Only Oneの為の便利工房 わんわん’s便・BEN」によるチラシ「ダンディースカーフ」)が本件登録意匠の出願前に頒布された証拠として、審判請求書において、甲第4号証の3及び甲第4号証の5が提出された。
まず、提出された甲第4号証の3について検討すると、甲第4号証の3が示すこととして、横田洋子氏から、「ダンディースカーフチラシ」を添付資料として、長野地域振興局しあわせ信州ほっとスタッフブログの担当者という特定の者に送付した通知状が存在するということは認めるとしても、甲第4号証の1として提出されたチラシが不特定の者に知られる状況に至ったということを示すまでのものとは認められない。したがって、これらの証拠からでは、甲第4号証の1として提出されたチラシに掲載された意匠が、本件登録意匠出願前に公然知られた意匠、また、公衆に利用可能となった意匠であるとはいえない。
次に、甲第4号証の5として提出された領収書については、2018年4月9日に第一種定型外の郵便物が送付された事実の根拠となり得るとしても、送付された郵便物の内容と甲第4号証の1との関係を、第三者が証明した証拠がなく、送付された郵便物の内容が不明であるから、甲第4号証の5は、請求人の主張を補強する資料としては採用できない。
したがって、甲第4号証の1を無効理由2の証拠として採用することはできない。

(イ)甲第4号証の2の意匠の公知性
請求人より、甲第4号証の2(平成30年5月21日との日付が記載された、「Only Oneの為の便利工房 わんわん’s便・BEN」によるチラシ「ダンディーベスト」)が本件登録意匠の出願前に頒布された証拠として、審判請求書において、甲第4号証の4が提出された。
提出された甲第4号証の4について検討すると、甲第4号証の4が示すこととして、横田洋子氏から、「ダンディーベストチラシ」を添付資料として、山崎織物株式会社という特定の者に送付した通知状が存在することは認められるとしても、このチラシが不特定の者に知られる状況に至ったものまでのものとは認められない。したがって、甲第4号証の2として提出されたチラシが、本件登録意匠出願前に公然知られた意匠、また、公衆に利用可能となった意匠とはいえない。
したがって、甲第4号証の2を無効理由2の証拠として採用することはできない。

エ 小括
以上のとおり、甲第4号証の1と甲第4号証の2を無効理由2の証拠として採用することはできないため、無効理由2については、検討しない。

(3)無効理由3
ア 公知意匠3(甲第5号証の1の意匠:別紙第3参照)
公知意匠3は、請求人より提出された甲第5号証の1である、ウェブサイト「わんわん’s便・BEN」のプリントアウトにあらわされた、「作品名:受賞作品ワンモアベスト(旧ダンディーベスト)」として示された「簡易ベスト」の意匠である。
なお、上段左側の人物が着用したものと、上段右側の楕円形枠内に表れたものとは色彩が異なるものであるが、写真撮影の際の照明の明るさの加減等により異なるように見えていると認められるから、当審では、上段左側の人物が着用したものと、上段右側の楕円形枠内にあらわされたものとは、同一の形状、色彩のものと判断する。

(ア)意匠に係る物品
公知資料3の意匠に係る物品は、「簡易ベスト」であり、シャツとスーツの間に、首に掛けて左右を前に垂らし、ベストの外観を呈するように着用するものであって、ベストの役割と食事用のナプキンの役割とを果たすものである。

(イ)形態
公知意匠3は、首掛け部と左右の前身頃からなり、肩部の折り曲げ角度及び畳んだ状態から、広げると略帯状体であると推察される。この「簡易ベスト」は、首掛け部の幅が最も狭く、首掛け部から左右の前身頃にかけて幅が漸次太くなる。首掛け部から左右の前身頃にかけて、横幅を略3等分する位置に2ヶ所のひだが存在する。また、左右の前身頃のそれぞれの左右辺は略平行であって、先端部はそれぞれ剣先状に形成してなるものである。また、首掛け部の幅と、左右の前身頃の幅の比は約1:4である。さらに、全体に濃色による地模様が施されている。左前身頃の打ち合わせ部の上端から下端にかけて、略円形のボタンが上下方向に等間隔に3つ設けられている。

(ウ)甲第5号証の1の公知性について
請求人は、公知意匠3が本件登録意匠の出願前に公開された証拠として、審判請求書において、甲第5号証の2、甲第5号証の3、甲第5号証の4、甲第5号証の5、及び甲第5号証の6を提出し、弁駁書において、審判請求書で提出した公知意匠3が本件登録意匠の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことを示す補強証拠として甲第9号証を提出した。

まず、甲第5号証の1のウェブサイトの写しと、ベストやベストの着用状態の図をウェブサイトにアップロードしたことを示すサーバの履歴画面として提出された甲第5号証の2ないし甲第5号証の6の関係について検討すると、甲第5号証の1のウェブサイトが、甲第5号証の2ないし甲第5号証の6にあらわされた画像と、画像の背後にあらわされている多数のファイルデータとから構成されていたことについて、第三者による客観的な証拠が存在せず、甲第5号証の1のウェブサイトが甲第5号証の2ないし甲第5号証の6にあらわされた画像及びファイルデータから構成されていたことの証明はなされていない。
したがって、甲第5号証の1のウェブサイトが、甲第5号証の2ないし甲第5号証の6の多数のファイルデータの右側に表された更新日時に存在していたと判断することはできない。
次に、甲第5号証の2ないし甲第5号証の6について検討すると、以下の点も、第三者による客観的な証拠とともに証明されていない。

a 甲5号証の2について、手前側に表示された「image2.jpg」とのファイル名のベストの画像が、背後側の、水色の欄に表示された同名のファイルを開いたものであるとの点が証明されていない。

b 甲5号証の3について、手前側に表示された「image3.jpg」とのファイル名の畳んだ状態のベストとネクタイの画像が、背後側の、水色の欄に表示された同名のファイルを開いたものであるとの点が証明されていない。

c 甲5号証の4について、手前側に表示された「image1111.jpg」とのファイル名のベストを着用した人物の画像が、背後側の、水色の欄に表示された同名のファイルを開いたものであるとの点が証明されていない。

d 甲5号証の5について、手前側に表示された「image21.jpg」とのファイル名のベストの画像が、背後側の、水色の欄に表示された同名のファイルを開いたものであるとの点が証明されていない。

e 甲5号証の6について、手前側に表示された「image111.jpg」とのファイル名のベストを着用した人物の画像が、背後側の、水色の欄に表示された同名のファイルを開いたものとの点が証明されていない。

それから、甲第9号証によれば、ウェブサイトの管理会社からは、サーバにアクセスする時のコントロールパネルに表示される日付(当審注:更新日時のことと考えられる。)は、改変ができない旨の回答が行われたことが示されているものの、甲第5号証の1として提出されたウェブサイトが、甲第5号証の2ないし甲第5号証の6として提出された多数のファイルデータから構成されることについて、第三者による客観的な証拠が存在せず、証明されていないことから、甲第9号証は、甲第5号証の1が本件登録意匠の出願前に公開されていたことについての補強証拠となるものではない。
以上のことから、公知意匠3が、本件登録意匠の出願前である2018年5月9日に請求人のウェブサイトに掲載されて不特定の者に公開されていたことを証明するものはない。
したがって、公知意匠3を証拠として採用することはできない。

イ 本件登録意匠と公知意匠3の対比
前記ア(ウ)に記載のように、公知意匠3は証拠として採用できないものであるが、以下に予備的に、本件登録意匠と公知意匠3を対比する。

(ア)意匠に係る物品
本件登録意匠は「エプロン」であり、公知意匠3は「簡易ベスト」であるが、両意匠は、長い略帯状体の長手方向中央部を首に掛け、ベストのような外観を持つエプロンとして使用される用途が共通し、また、食事用のナプキンとして使用できる機能も共通する。

(イ)形態
本件登録意匠は、前記1(2)のとおりであり、また、公知意匠3は、前記ア(イ)のとおりである。

ウ 本件登録意匠と公知意匠3の類否判断
(ア)意匠に係る物品
本件登録意匠と公知意匠3の意匠に係る物品は、前記イ(ア)のとおりであって、用途と機能が共通するため、類似する。

(イ)形態の対比
本件登録意匠と公知意匠3とを比較すると、以下の共通点と相違点とが存在する。

I 形態の共通点
(共通点1)長い略帯状体である。
(共通点2)首掛け部が左右の前身頃部よりも細く形成されている。
(共通点3)対向する左右の端部に等間隔に3つの連結部としてボタン部を有する。

II 形態の相違点
(相違点1)本件登録意匠は略倒くの字形状であり、公知意匠3は肩部の折り曲げ角度や畳んだ状態から、伸ばした状態では真っ直ぐな略帯状体である。
(相違点2)連結部について、本件登録意匠は、右前身頃の打ち合わせ部の上から3分の2の範囲に、略正方形のスナップボタンが設けられ、左前身頃の打ち合わせ部の正面側にはボタン部があらわれていないが、公知意匠3は左前身頃の打ち合わせ部の上端から下端にかけて、略円形のボタンが設けられている。
(相違点3)本件登録意匠の前身頃の下端は、外側に向かってわずかに角度を上げた略水平状の直線状に形成されているが、公知意匠3の前身頃の下端は剣先状に形成されている。
(相違点4)本件登録意匠の首掛け部には折り目やひだがないが、公知意匠3の首掛け部には短手方向の中央部にひだが設けられている。

エ 形態の評価
そこで、本件登録意匠と公知意匠3の共通点及び相違点を比較すると、(共通点1)ないし(共通点3)は形状を大まかにとらえたものであるのに対して、(相違点1)ないし(相違点4)は具体的な形状の差異であって、首掛け部という首回りの形状、左右の前身頃を連結するボタン部、前身頃の下端という、エプロンを着用した際の外観に大きく影響する部分におけるものであり、意匠全体として観察する場合には、相違点が共通点を凌駕するものである。
したがって、本件登録意匠と公知意匠3は、意匠に係る物品が同一であるが、形態においては、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対し、相違点については、両意匠の類否判断に与える影響が大きいことから、相違点が共通点を凌駕し、本件登録意匠は公知意匠3に同一ではなく、また、類似しているともいえない。
以上のことから、本件登録意匠と公知意匠3は、ともにベストのような外見を有し、食事用のエプロンの機能を有することから、意匠に係る物品は類似するものの、形態が異なるものであるから、意匠法第3条第1項第2号又は同法同条同項第3号に掲げる意匠に該当するということはできない。

オ 小括
したがって、本件登録意匠は公知意匠3に類似しないので、無効理由3は理由がない。

(4)無効理由4
ア 公知意匠4
公知意匠4は、請求人より甲第6号証の1として提出された意匠である。

(ア)意匠に係る物品
公知意匠4の意匠に係る物品は「ベスト」であり、シャツとスーツの間に、首に掛けて左右を前に垂らし、ベストの外観を呈するように着用するものである。

(イ)形態
公知意匠4は、首掛け部と左右の前身頃からなり、肩部の折り曲げ角度や畳んだ状態から、広げると略帯状体であると推察される。首掛け部の幅が最も狭く、首掛け部から左右の前身頃にかけて幅が漸次太くなる。首掛け部から左右の前身頃にかけて、横幅を略3等分する位置に2ヶ所、外側に向けて山折りにしたひだが存在する。また、左右の前身頃のそれぞれの左右辺は略平行であって、先端部は剣先状にあらわれている。また、首掛け部の幅と、左右の前身頃の幅の比は約1:4である。さらに、全体に濃色の地模様が施されている。左前身頃の打ち合わせ部の上端から下端にかけて、略円形のボタンが上下方向に等間隔に3つ設けられている。

(ウ)公知意匠4の公知性
請求人より、公知意匠4が、本件登録意匠の出願前に公開されていた証拠として、甲第6号証の2(196textaに宛てた、2018年3月29日のメールの送信履歴画面の上半分の写し)と甲第6号証の3(甲第6号証の2の送信履歴画面の下半分と主張されているもの。画面の左側のリストのうち、上から3番目の黄色に反転した「196texta」の欄には、2018年3月29日との日付があらわされている。)が提出され、また、弁駁書において、本件登録意匠の出願前に、宣伝周知活動の一環として守秘義務のない196テキスタ宛てに請求人からダイレクトメールを送付したことが主張され、その補強証拠として、甲第10号証としてメールサーバの管理会社への問合せ履歴(送信済みメールに表示されている送信日時が送信者に改変できないことを確認したもの)の写しが提出された。
しかし、甲第6号証の2及び甲第6号証の3として提出されたメールの添付ファイルが甲第6号証の1の画像データであることについて、第三者による客観的な証拠が提出されていないため、甲第6号証の1の画像データが当該メールにて送信されたとの証明はされていない。また、甲第6号証の1が、甲第6号証の2及び甲第6号証の3に添付された画像データであるとしても、画像データをメールに添付をして送付をしたことによっては、メールの受信者が添付された画像を知り得る状態になったことを示すのみであり、メールに添付をされた画像が公然知られたことの証明にはならない。更に、甲第10号証によっても、メール送信者の送信済みメールに表示されている送信日時を、利用者側が改変できないことが示されているのみであり、甲第6号証の1として提出された画像が、本件登録意匠の出願前に公開されていたことを証明するものとはいえない。
以上のことから、公知資料4に関する主張は採用することができず、公知意匠4を根拠として無効の理由とすることはできない。

イ 小括
前記ア(ウ)のとおり、公知意匠4を証拠として採用することはできないため、公知意匠4を証拠とする無効理由4については、根拠とされた証拠が存在しない。

(5)無効理由5
無効理由5は、本件登録意匠は公知意匠1ないし公知意匠4に基づき容易に創作できるというものである。しかしながら、公知意匠2ないし公知意匠4は、無効とする根拠とされた証拠を採用することができないため、以下に、公知意匠1、すなわち、公知意匠1-1、公知意匠1-2、及び公知意匠1-3に基づき、本件登録意匠が容易に創作できたかどうかについて以下検討を行う。

本件登録意匠に係る「エプロン」の物品分野において、略帯状体の長手方向中央部分を首掛け部とし、首掛け部の両側を着用者の前側に垂下させ、垂下させた部位の垂直辺を打ち合わせ部とするものは、特許第6148417号の特許公報に所載の図にあらわされた「簡易ベスト服」に見られるように、本件登録意匠の出願前に公然知られている。
しかし、本件登録意匠のように、全体が略倒くの字形状の略帯状体であって、略帯状体の長手方向中央部に幅狭の首掛け部を形成するとともに、首掛け部の両下端を漸次拡幅させて首掛け部の約4倍の幅の左右前身頃とし、首掛け部から打ち合わせ部にかけて明確な角部を有し、また、打ち合わせ部に略正方形のスナップボタンを設け、下端に切り欠き部を形成する形状は、公知意匠1-1ないし公知意匠1-3のいずれにも見られない形態であり、また、公知意匠1-1、公知意匠1-2又は公知意匠1-3に、公然知られた態様に見られるようなありふれた改変を加えた程度のものということもできないため、本件登録意匠に特有のものであるから、当業者が公知意匠1-1、公知意匠1-2又は公知意匠1-3のいずれか、もしくは公知意匠1-1ないし公知意匠1-3を基に容易に創作できたということはできない。
したがって、本件登録意匠は、公知意匠1に基づいて当業者が容易に本件登録意匠の創作をすることができたということはできない。

以上のことから、無効理由5は理由がない。

なお、請求人は、弁駁書において、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠である甲第12号証の1ないし甲第14号証の13に基づき容易に創作できるため、意匠法第3条第2項に該当するので、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきであると主張をした。
しかし、甲第12号証の1ないし甲第14号証の13に基づく主張及び証拠の提出については、審判請求書において請求された無効事実とは別の事実であって、無効理由の新規追加に該当し、請求の要旨を変更するものと認められるため、当審における審理の対象とはしない。

4 小括
以上のとおり、無効理由1については理由がなく、また、無効理由2、無効理由3、無効理由4については無効とする根拠とされた公知意匠を証拠として採用することができないため、無効理由が成立しない。また、無効理由5については、公知意匠1-1ないし公知意匠1-3に基づく創作容易について理由がないため、無効理由が成立しない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、上記無効理由には理由がなく、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号、同法第3条第1項第3号、及び同法第3条第2項の規定に反して登録されたものということはできないから、同法第48条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

別掲


審理終結日 2020-12-18 
結審通知日 2020-12-23 
審決日 2021-02-17 
出願番号 意願2018-12685(D2018-12685) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (B1)
D 1 113・ 121- Y (B1)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 江塚 尚弘
濱本 文子
登録日 2019-03-22 
登録番号 意匠登録第1629505号(D1629505) 
代理人 柿本 邦夫 
代理人 市川 泰央 
代理人 松尾 憲一郎 
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