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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1373825 |
審判番号 | 不服2020-17438 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-21 |
確定日 | 2021-05-06 |
意匠に係る物品 | 携帯情報端末 |
事件の表示 | 意願2019- 20958「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和1年(2019年)9月19日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年(2020年) 3月13日付け 拒絶理由の通知 令和2年(2020年) 5月15日 意見書の提出 令和2年(2020年) 9月14日付け 拒絶査定 令和2年(2020年)12月21日 拒絶査定不服審判の請求 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「携帯情報端末」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。 本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願意匠の正面部の表示部(物理的画面)に表示された画像(一点鎖線内に表された画像。以下「本願画像」という。)における破線で表された部分以外の部分(以下「本願画像部分」という。)である。 第3 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。 中華人民共和国意匠公報 2015年 2月 4日15-05号 携帯情報端末機(公開番号CN303095910S)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH27000608号。以下「引用意匠」という。別紙第2参照。) なお、類否判断において形態の対比の対象となる部分は、引用意匠の正面部の表示部(物理的画面)に表示された画像(以下「引用画像」という。)における本願画像部分に対応する部分(以下「引用画像部分」という。)である。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも携帯情報端末(機)であるから、用途及び機能が共通する。 2 本願画像部分と引用画像部分の用途及び機能の対比 本願画像部分には、ストレッチ装置の動作開始を行う用途及び機能が認められるのに対して、引用画像部分には、インターネットの情報量を監視する用途及び機能が認められるから、本願画像部分と引用画像部分(以下「両画像部分」という。)の用途及び機能は相違する。 3 両画像部分の位置、大きさ及び範囲の対比 本願画像と引用画像(以下「両画像」という。)が、共に板状の両意匠の正面に、周囲に余地部を残して配された表示部に表示された画像である点、及び、両画像部分が、両画像内の中央から上部にかけて表された円形区画部とその内部の文字表示部を除くものである点で、両画像部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。 4 両画像部分の形態の対比 (1)形態の共通点 (共通点1)全体は、外周が縦長長方形状(縦横比が約1.8:1)であり、その内側に、下端寄りに横長帯状部が配されて、その上方に略波状模様が表されて、更にその上方に略横長トラック状区画部が設けられている。 (共通点2)略波状模様の態様 略波状模様は、左端から右端にわたる模様が複数本表されている。 (2)形態の相違点 (相違点1)略波状模様 本願画像部分では、略波線模様が複数の波線又は弧状線で表されており、下側に3本の緩やかな波線が左端から右端にわたって配されている。そのうち、最も下の波線は中央やや左で最も低く、中央やや右で最も高く形成され、その上の波線は左端寄りで最も高く、右端寄りで最も低く形成されている。更にその上の波線は左端付近で最も高く、右端付近で最も高く形成されており、下2つの波線に比べて上下の振幅が小さくなっている。これら3つの波線は、左端から右端にかけて約1.5周期表されている。そして、その波線の上に被さるように、左端寄りに2つの弧状線が上下に配され、右端寄りに1つの弧状線が配されて、中央付近では左右の弧状線と、それらに重なる1つの弧状線が中央に配されており、弧状線は合計6つとなっている。 これに対して、引用画像部分では、濃さの異なる面模様の組合せによって左端から右端にわたる波状の面境界が3つ表されており、最も下の波状面境界はほぼ水平状に形成され、その上には、左端から右端にかけて緩やかに上昇する波状面境界(以下「右上昇面境界」という。)が形成され、波の最も低い部位から最も高い部位に移行するように表されている(約0.5周期)。そして、右上昇面境界と中央やや右で交差するもう1つの波状面境界が形成されており、その波状面境界は中央やや左が最も高く、中央から右端にかけて漸次下降しており(以下、この波状面境界を「右下降面境界」という。)、左端から右端にかけて最も高くなる手前から最も低くなる手前に移行するように表されている(約0.5周期)。 (相違点2)略横長トラック状区画部の形状 本願画像部分の略横長トラック状区画部の縦横比は約1:6であるが、引用画像部分のその比は約1:3である。 (相違点3)色彩及び筋状模様の有無 引用画像部分では、下端寄りに横長帯状部は黒色であり、略横長トラック状区画部は水色であって、3つの波状面境界が濃さの異なる青色で表されて、所々に濃い青色の筋状模様が配されている。これに対して、本願画像部分には色彩は表されておらず、筋状模様もない。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するから、類似する。 2 両画像部分の用途及び機能の類否判断 両画像部分の用途及び機能は、前記第4の2で認定したとおり、相違する。 3 両画像部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両画像が、共に板状の両意匠の正面に周囲に余地部を残して配された表示部に表示された画像である共通点は、携帯情報端末などの画像を利用する物品分野の意匠においてそのような画像は普通に見受けられるから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。そして、携帯情報端末などの画像を利用する物品分野の意匠において、縦長画像内の中央から上部にかけて円形区画部を設けたものは例を挙げるまでもなくありふれているから、両画像部分が両画像内の中央から上部にかけて表された円形区画部とその内部の文字表示部を除いた共通点も、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 4 両画像部分の形態の共通点及び相違点の評価 (1)形態の共通点の評価 外周が、縦横比が約1.8:1である縦長長方形状であり、下端寄りに横長帯状部が配されている共通点は、携帯情報端末などの画像を利用する物品分野の意匠において同様の画像は普通に見受けられるから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。他方、当該横長帯状部の上方に略波状模様が表されて、その上方に略横長トラック状区画部が設けられている共通点は、基本的な構成上の共通点として一定程度評価できる。 (2)形態の相違点の評価 しかしながら、前記第4の4(2)で認定したとおり、両画像部分の略波状模様は大きく異なっており、具体的には、本願画像部分の略波線模様が複数の波線又は弧状線で表されているのに対して、引用画像部分の略波線模様は濃さの異なる面模様の組合せによる波状面境界として表されている点で相違し、略波状模様の数や周期についても相違している。そして、引用画像部分に見られる右上昇面境界と右下降面境界の交差は本願画像部分には見られず、本願画像部分では、上下振幅の小さい波線の上に6つの弧状線が積み上げられているような印象を需要者に与えている。さらに、これらの相違点は、色彩及び筋状模様の有無の相違点(相違点3)とあいまって、需要者の視覚を通じて異なる美感を起こさせるというべきである。したがって、略波状模様について左端から右端にわたる模様が複数本表されているという共通点(共通点2)を考慮したとしても、両画像部分の略波状模様に係る相違点(相違点1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。 他方、略横長トラック状区画部の縦横比が約1:6であるか(本願画像部分)、約1:3であるか(引用画像部分)の相違については、携帯情報端末などの画像を利用する物品分野の意匠において、様々な縦横比の略横長トラック状区画部を有する画像が見受けられるから、相違点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 5 両意匠の類否判断 両画像部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両画像部分は、略波状模様に大きな差異があり、色彩及び筋状模様の有無の相違とあいまって、両画像部分は全体として美感に大きな差異があるといえる。そうすると、横長帯状部の上方に略波状模様が表されて、その上方に略横長トラック状区画部が設けられている共通点を考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似するが、両画像部分の用途及び機能が相違し、両画像部分の位置、大きさ及び範囲の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さく、また、形態において需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、当審における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-04-14 |
出願番号 | 意願2019-20958(D2019-20958) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小林 佑二 |
特許庁審判長 |
北代 真一 |
特許庁審判官 |
井上 和之 小林 裕和 |
登録日 | 2021-06-07 |
登録番号 | 意匠登録第1688313号(D1688313) |