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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 C4
管理番号 1373834 
審判番号 不服2020-14856
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-26 
確定日 2021-05-11 
意匠に係る物品 芳香・消臭剤用容器 
事件の表示 意願2019- 14293「芳香・消臭剤用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,本意匠を意願2019-14288号(意匠登録第1658139号)の意匠とする関連意匠に係る,令和1年(2019年)6月27日の意匠登録出願であって,令和2年3月26日付けの拒絶の理由及び指令書に対し,同年4月27日に意見書が提出されたが,同年7月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年10月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真によれば,意匠に係る物品を「芳香・消臭剤用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由,指令及び本意匠
本願の原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,同一の出願人が同日に出願された意願2019-14294号の意匠と同一又は類似のものと認められるので,特許庁長官名による指令書に記載した届出が期間内にないときは,意匠法第9条第2項後段の規定により意匠登録を受けることができないとしたものである。
併せて,この審理の結果を踏まえて,特許庁長官は,意匠法第9条第4項の規定に基づいて,同法同条第2項に定められた協議をしてその結果を届け出るべき旨を命じる指令書を送付した。
また,当該指令書には,本願意匠は,本意匠である意願2019-14288号の意匠とは類似しない旨付記されていた。
この本意匠は,本願の出願人と同一の出願人が,本願と同日の令和1年6月27日に意匠登録出願し,令和2年4月3日に意匠権の設定の登録がなされ,同年4月20日に意匠公報が発行されたものであって,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真によれば,意匠に係る物品を「芳香・消臭剤用容器」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
本願意匠と類似する意匠として,拒絶の理由に記載された意願2019-14294号の意匠に係る意匠登録出願は,令和2年9月1日に出願が取下げられており,意匠法第9条第3項の規定により,本願の拒絶の理由である同法同条第2項の規定の適用については,初めからなかったものとみなされることから,本願意匠について同法同条第2項後段の規定によって意匠登録を受けることができないとした原査定における拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
次に,本願意匠と本意匠(以下,本願意匠と本意匠を併せて「両意匠」という。)を対比した上で,本願意匠が,本意匠に類似する意匠といえるか否かについて検討すると共に,意匠法第10条第1項の規定に該当する意匠(関連意匠)として意匠登録を受けることができるか否かについて判断する。

1 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
意匠に係る物品は,両意匠共に,芳香剤及び消臭剤を収容する「芳香・消臭剤用容器」であり,共に室内において,テーブル,棚,床等に置いて使用されるものである。
(2)形態
ア 共通点
共通点1:物品全体について,その基本的な構成は,上端に口部を有し,内部が透けて見える容器に,装花を閉じ込めるように配すると共に,棒状のスティックを上方が容器から露出するように口部に挿したものである。
共通点2:容器全高(容器下端から口部上端までの高さ)に対するスティックの露出部分の高さの比率を,約1.2対1としたものである。
共通点3:容器の形態については,容器本体の高さ(容器下端から口部直下までの高さ),正面視横幅及び側面視横幅の比率を約2対2対1とする薄型の略直方体形状の容器本体の上端中央に,容器本体の約5分の1の高さで略円筒形の口部を突出した状態に設けたものである。また,容器本体については,左右上面を口部に向けて緩やかに上がる傾斜面とし,正面及び背面を膨出面(平面視で僅かに凸弧状の膨出面)とすると共に側面から正面及び背面にかけての角部の丸みを大きくしたものであり,口部については,その直径が側面視横幅よりも少し小さく,周面にネジ山を設けたものである。
共通点4:装花の形態については,容器内の底に濃桃色の花弁を横一列に4枚敷き,その上に,白い花弁が広がった花を配したものである。
共通点5:スティックの形態については,6本の,薄茶色で,ごく細い直線状の棒を,左右に3本に分けて,全体が正面視X字状に表れるように口部内で交差させて配置したものである。

イ 相違点
装花の白色の花について,本願意匠は,1本の短い茎に,萼(がく)付きで多数の花弁が重なるようにして,全体が半球状になったものが,斜め前上方に向いているのに対して,本意匠は,3本に枝分かれした短い茎に,4枚の花弁が平面的に広がったものが,正面に向いている。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品については,どちらも「芳香・消臭剤用容器」であり,その使用目的及び使用状態が一致するから,同一である。

(2)形態について
ア 需要者の観点
この種物品は,手に持って使用するものではなく,主に室内にてテーブル,棚,床等に置いて使用されるものであり,物品全体の形態をインテリアの一部として見るものであるから,この種物品の需要者(エンド・ユーザー)は,本物品を少し離れた位置から全体観察するものと認められる。
よって,両意匠の類否判断における形態の評価に対しては,同様の観点から判断するのが相当であると考える。

イ 形態の類否
共通点1及び共通点2は,この種物品において両意匠のみの特徴といえるものではないが,物品全体の基本的な構成に係るものであるから,需要者に一定の共通感をもたらすものである。
容器については,共通点3のうち,薄型とした略直方体形状の容器本体の上端中央に略円筒形の口部を突出した状態で設けた概略の共通点は,両意匠のみの特徴とはいえないものの,共通点3の寸法比や具体的な形態において共通するものであって,両意匠の容器の形態は,需要者に強い共通感をもたらすものである。
装花については,共通点4で認定した,敷物のように配した濃桃色の花弁の上に,白色の花を配した形態は,装花の形態の基調を成し,この種物品において両意匠の出願前には見られない特徴のある形態であるところ,相違点である花の形態や数や向きの相違は,装花のみを子細に見れば軽視できるものではないが,物品全体としてみれば,一部に係る相違といえ,共通点4を凌駕するものとは認められないから,共通点4に挙げた装花の特徴ある形態は,需要者に一定の共通感をもたらすものである。
スティックについては,この種物品において,太さがほぼ均一な細い直線状とした形態はありふれているし,正面視X字状に配した形態も両意匠のみに見られる特徴とはいえないが,スティックは,視界に占める割合が大きく,芳香及び消臭効果の機能的な面から需要者が注目する部分であるから,共通点5で認定したスティックの形態は,スティックが効率よく機能を発揮する,との共通する印象を需要者にもたらすものであるから,両意匠のスティックの形態は,需要者に共通感をもたらすものである。
以上のことから,両意匠の共通点は,相違点を凌駕するものであり,需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,両意匠の形態は類似するものといえる。

(3)小括
上述の判断に基づけば,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,形態が類似するから,本願意匠は,本意匠に類似するものと認められる。

3 意匠法第10条第1項の規定の要件を満たすか否かについて
本願意匠は,本意匠に類似する意匠であり,本願の意匠登録出願人は,本意匠の意匠権者と同人であり,本願意匠の意匠登録出願の日は,本意匠の意匠登録出願の日と同日であって,本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定の要件を満たしている。
そして,本意匠の意匠権について専用実施権が設定されていないことから,意匠法第10条第1項の条件規定である同法同条第2項の要件を満たしている。
そうすると,本願意匠は,本意匠に係る関連意匠として意匠登録を受けることができるものと認められる。

4 結び
以上のとおり,本願意匠について意匠法第9条第2項後段の規定によって意匠登録を受けることができないとした原査定における拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできないことは,前述したとおりであり,また,本願意匠は,同法第10条第1項に規定する本意匠に係る関連意匠として意匠登録を受けることができる要件を満たしていることも前述したとおりである。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2021-04-19 
出願番号 意願2019-14293(D2019-14293) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高田 紗里神谷 由紀 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2021-06-03 
登録番号 意匠登録第1688212号(D1688212) 
代理人 松井 宏記 
代理人 鈴木 行大 
代理人 宗助 智左子 

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