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審決分類 審判 査定不服   取り消して登録 G2
管理番号 1373839 
審判番号 不服2020-15481
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-09 
確定日 2021-05-07 
意匠に係る物品 オートバイ 
事件の表示 意願2019- 23521「オートバイ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年(2019年)10月23日の意匠登録出願であって、令和2年5月27日付けの拒絶理由通知書に対し、同年7月15日に意見書が提出されたが、同年7月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「オートバイ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものと認められるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
拒絶理由通知において引用された意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成25年3月18日)に記載された、意匠登録第1464722号(意匠に係る物品、オートバイ)の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)である。

第4 当審の判断
1 意匠の認定
両意匠の認定に当たり、図面の表記に従い記載するほか、両意匠の右側面図に表れる面を前面、左側面図に表れる面を後面とし、正背面図に表れる面を車体側面ともいうものとして、以下記載する。

(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「オートバイ」である。

イ 本願意匠の形態
(ア)全体の構成態様
本願意匠は、全長:全高:シート高:軸間距離を、約100:54:40:62とし、キャスター角を約26度とし、シート、ステップ及びハンドルの配設位置並びにエンジンの大きさから小排気量のものと類推できる、オンロードタイプのオートバイであって、エンジン及びエンジン補機類をダブルクレードルのフレームにより、左右から抱えるように構成してなるものである。

(イ)フロントカウル
(イ-1)全体の形態
フロントカウルは、前面視、全高の約1/3.1の高さを有し、後面視、全幅の約1/2.2の横幅を有するものであり、ヘッドライト部、風防部及び前面視それらの両側に張り出し部並びに下部に顎部を形成してなるものである。
(イ-2)ヘッドライト部
ヘッドライト部は、前面視、やや横長の略逆等脚台形状とし、鼻先を全体の下寄り約1:2に内分する左右中央位置として全体を膨出してなるものである。
(イ-3)風防部
風防部は、ヘッドライト部の上部から連続する曲面により形成し、外形線は、車体右側面視、略右倒つ字状とするものであり、具体的には、前面視、ヘッドライト部上辺中央約3/4幅に相当する部分を風防部の下辺とし、上辺は中央部を高くなるような曲線で形成してなるものであって、左右下端部には略鮫鰭(さめひれ)状の凹段差を左右対称に設けてなるものであり、風防部の左右両側は、左右の張り出し部からの立ち上がり部を設けて形成してなるものであり、前面寄りには扁平三角形状の凹段差を左右対称に設けて形成してなるものである。
(イ-4)左右張り出し部
左右張り出し部は、前面視、ヘッドライト部及び風防部の左右両側に、上面及び下側面をなだらかな曲面として前後方向に略三角畝状にて形成してなるものであり、上面は、左右にほぼ水平に張り出し、ヘッドライト部上辺の左右端約1/8部に中央方向にクサビ状突出面を形成しており、車体左右両側面視、左右張り出し部の下端部は、ウィンカーの直上に位置するように形成している。
(イ-5)顎部
顎部は、ヘッドライト部と左右張り出し部の下部に設けてなるものであり、前方斜め下方向に突出し、前面視、略逆等脚台形状として、中央部に貫通孔を設けてなるものであり、車体両側面視、顎部上端と、左右張り出し部下端の間には、前後方向に幅広の凹溝が設けられている。
(イ-6)フロントカウル下部態様
フロントカウル後下寄り部から前下寄り部にかけての態様は、車体両側面視、左右張り出し部の下側に複雑な凹凸を有する態様として表れており、特に左右張り出し部と顎部とは別体として表してなるものである。

(ウ)車体前方態様
(ウ-1)全体の形態
車体前方部分は、左右一対の正立式フロントフォークの上端部にハンドル、その下端部に前輪のハブを装着し、左右フロントフォークの中間部付近にはフロントフェンダーを配設したものである。
(ウ-2)ハンドル部周辺態様
ハンドル部は、ノーマルタイプのバーハンドルであって、ハンドルとフロントカウルの間に計器類(スピードメータ、タコメータ)のほか、保全器具を配してなるものである。
(ウ-3)前輪周辺態様
前輪には、スポークホイール及びディスクブレーキを配し、前輪に近接してフロントフェンダーを車体右側面視、約11時から4時の位置に設けたものである。

(エ)車体側面態様
(エ-1)全体の形態
車体側面上段部には、前方からタンク部及びシート部を設け、それらの下部に当たる中段部には、ツールボックス、サイドカウル及びリアカウルを設け、それらの下部に当たる下段部には、エンジン及びエンジン補機類、キャブレター並びにエキゾーストパイプ等を配してなるものである。
(エ-2)タンク部
タンク部は、おおよそ扁平な涙滴形であり、下辺を略水平とし、上面前方に配したオイルキャップを挟んで前後方向に2本の平行なキャラクターラインを形成してなるものである。
(エ-3)シート部
シート部は、タンク部からほぼ水平後方に連接してなるものであり、車体両側面視、前後に細長い略扁平逆三角形状に、平面視、上面形態を略扁平六角形状に形成してなるものである。
(エ-4)ツールボックス部
ツールボックス部は、タンク部の直下に車体右側面視、略前傾平行四辺形状に配するものであり、後下側に略L字状の凹段差部を設け、前方寄りに3条の水平浅溝を設けてなるものである。
(エ-5)サイドカウル部及びリアカウル部
サイドカウル部とリアカウル部(以下、サイドカウル部とリアカウル部をあわせて「両カウル」ともいう。)は、タンク部及びシート部の下方に、リアサスペンション上端部を挟んで前方にサイドカウル部を、後方にリアカウル部を配し、両カウルをあわせて大略へら形として、サイドカウルとリアカウルの下辺は互いの延長線上に配し、先端部を下げる態様に配してなるものであって、両カウルは上下中央横方向には、キャラクターラインとなる稜線を有するものであり、リアサスペンション上端両側において、両カウルの前後両端辺が略二等辺三角形の等辺を形成するように斜めに切り欠いてなるものである。サイドカウル部は、前方下部に変形台形状とする凹段差を有し、キャラクターラインの上方は、前下端部からシート部の前下端部に向けて谷折りしたような面構成を形成してなるものである。

(オ)車体後方態様
(オ-1)全体の形態
車体後方部分には、フレーム後端から左右一対に設けたリアサスペンションの下端部に後輪のハブを装着し、リアカウルの下部にはリアフェンダーを配設し、リアカウルの後端にはテールライトと、シート後端にリアキャリアを配してなるものである。
(オ-2)後輪周辺態様
後輪には、スポークホイール及びディスクブレーキを配し、後輪の上斜め後方に近接してリアフェンダーを設けたものである。

(2)引用意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「オートバイ」である。

イ 引用意匠の形態
(ア)全体の構成態様
引用意匠は、全長:全高:シート高:軸間距離を、約100:53:40:63とし、キャスター角を約27度とし、シート、ステップ及びハンドルの配設位置並びにエンジンの大きさから小排気量のものと類推できるオンロードタイプのオートバイであって、エンジン及びエンジン補機類をダブルクレードルのフレームにより左右から抱えるように構成してなるものである。

(イ)フロントカウル
(イ-1)全体の形態
フロントカウルは、前面視、全高の約1/3.3の高さを有し、後面視、全幅の約1/2.2の横幅を有するものであり、ヘッドライト部、風防部及び前面視それらの両側に張り出し部並びに下部に顎部を形成してなるものである。
(イ-2)ヘッドライト部
ヘッドライト部は、前面視、やや横長の略逆等脚台形状とし、鼻先を全体の下寄り約1:2に内分する左右中央位置として全体を膨出してなるものである。
(イ-3)風防部
風防部は、ヘッドライト部の上部から連続する曲面により、外形線を車体右側面視、略右倒つ字状に形成してなるものであり、具体的には、ヘッドライトと接する下辺はヘッドライト上辺の略全幅とし、上辺をなだらかな曲線となるように形成してなるものであって、風防部の両側は、左右の張り出し部から立ち上がり部を設けて形成してなるものである。
(イ-4)左右張り出し部
左右張り出し部は、前面視、ヘッドライト部及び風防部の左右両側に、上面及び下側面をなだらかな曲面として前後方向に略三角畝状に形成してなるものであり、上面は、左右に斜め下方向に張り出し、上面中央寄りは、なだらかな曲線を形成してなるものであり、車体左右両側面視、左右張り出し部の下端部はウィンカーより下側に位置するように形成している。
(イ-5)顎部
顎部は、ヘッドライト部と左右張り出し部の下部に設けてなるものであり、前方斜め下方向に突出し、前面視、略逆等脚台形状として、中央部に貫通孔を設けてなるものであり、車体左右両側面視、顎部上端と、左右張り出し部下端は連続して略浅V字状溝部を形成している。
(イ-6)フロントカウル下部態様
フロントカウル後下寄り部から前下寄り部にかけての態様は、車体両側面視、およそ平行したキャラクターラインを形成してなるものであり、特に左右張り出し部と顎部とは、一体感を持って形成してなるものである。

(ウ)車体前方態様
(ウ-1)全体の形態
車体前方部分は、左右一対の正立式フロントフォークの上端部にハンドル、その下端部に前輪のハブを装着し、左右フロントフォークの中間部付近にはフロントフェンダーを配設したものである。
(ウ-2)ハンドル部周辺態様
ハンドルは、ノーマルタイプのバーハンドルであって、ハンドルとフロントカウルの間に計器類(スピードメータ、タコメータ)のほか、保全器具を配してなるものである。
(ウ-3)前輪周辺態様
前輪には、スポークホイール及びディスクブレーキを配し、前輪に近接してフロントフェンダーを、車体右側面視、約11時から4時の位置に設けたものである。

(エ)車体側面態様
(エー1)全体の形態
車体側面上段部には、前方からタンク部及びシート部を設け、それらの下部に当たる中段部には、ツールボックス、サイドカウル及びリアカウルを設け、それらの下部に当たる下段部には、エンジン及びエンジン補機類、キャブレター並びにエキゾーストパイプ等を配してなるものである。
(エー2)タンク部
タンク部は、おおよそ扁平な涙滴形であり、下辺を略水平とし、上面前方に配したオイルキャップを挟んで前後方向に3本の平行なキャラクターラインを形成してなるものである。
(エー3)シート部
シート部は、タンク部からほぼ水平後方に連接してなるものであり、車体両側面視、前後に細長い略扁平逆三角形状に、平面視、上面形態を略扁平六角形状に形成してなるものである。
(エー4)ツールボックス部
ツールボックス部は、タンク部の直下に車体右側面視、略前傾平行四辺形状の薄箱状に配するものであり、中央部に略フ字状の段差部を設けてなるものである。
(エー5)サイドカウル部とリアカウル部
サイドカウル部とリアカウル部は、タンク部及びシート部の下方に、リアサスペンション上端部を挟んで前方にサイドカウル部を、後方にリアカウル部を配し、両カウルをあわせて大略へら形として、サイドカウルとリアカウルの下辺は互いの延長線上に配し、先端部を下げる態様に配してなるものであって、両カウルは上下中央横方向には、キャラクターラインとなる稜線を有するものであり、リアサスペンション上端両側において、両カウルの前後両端辺が略二等辺三角形の等辺を形成するように斜めに切り欠いてなるものである。サイドカウル部は、前方下部に三角形状とする凹段差を有し、凹段差部の上部には、溝部で囲まれた略横長三角状の区画を設け、当該区画前端部はツールボックスの後端部と上下幅を等しく形成してなることから、ツールボックス部と略横長三角形状の溝部の内側区画とが一つの略横長どんぐり状の区画を形成してなるものである。

(オ)車体後方態様
(オー1)全体の形態
車体後方部分には、フレーム後端から左右一対に設けたリアサスペンションの下端部に後輪のハブを装着し、リアカウルの下部にはリアフェンダーを配設し、リアカウルの後端にはテールライトと、シート後端にリアキャリアを配してなるものである。
(オー2)後輪周辺態様
後輪には、スポークホイール及びディスクブレーキを配し、後輪の上斜め後方に近接してリアフェンダーを設けたものである。

2 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、「オートバイ」である点で一致する。

(2)形態の対比
ア 形態の共通点
(共通点1)全体の構成態様について、両意匠は、シート、ステップ及びハンドルの配設位置並びにエンジンの大きさから小排気量のものと類推できるオンロードタイプのオートバイであって、エンジン及びエンジン補機類をダブルクレードルのフレームにより左右から抱えるように構成してなるものである点で共通する。
(共通点2-1)フロントカウルの構成比率について、両意匠は、後面視、全幅の約1/2.2の横幅を有するものであって、全体の形態を、ヘッドライト部、風防部及び前面視それらの両側に張り出し部並びに下部に顎部を形成してなるものである点で共通する。
(共通点2-2)ヘッドライト部について、両意匠は、前面視、やや横長の略逆等脚台形状とし、鼻先を全体の下寄り約1:2に内分する左右中央位置として全体を膨出してなるものである点で共通する。
(共通点2-3)風防部について、両意匠は、ヘッドライト部の上部から連続する曲面により形成し、外形線は、車体右側面視、略右倒つ字状とするものである点で共通する。
(共通点2-4)フロントカウル部の左右張り出し部について、両意匠は、前面視、ヘッドライト部と風防部の左右両側に、上面及び下側面をなだらかな曲面として前後方向に略三角畝状に形成してなるものである点で共通する。
(共通点3-1)車体前方の構成態様について、車体前方部分は、左右一対の正立式フロントフォークの上端部にハンドル、その下端部に前輪のハブを装着し、左右フロントフォークの中間部付近にはフロントフェンダーを配設したものである点で共通する。
(共通点3-2)ハンドル部について、両意匠は、ノーマルタイプのバーハンドルであって、ハンドルとフロントカウルの間に計器類(スピードメータ、タコメータ)のほか、保全器具を配してなるものである点で共通する。
(共通点3-3)前輪周辺態様について、両意匠は、前輪には、スポークホイール及びディスクブレーキを配し、前輪に近接してフロントフェンダーを、右側面視、約11時から4時の位置に設けたものである点で共通する。
(共通点4-1)車体側面態様について、全体の形態を、車体側面上段部には、前方からタンク部、シート部を設け、それらの下部に当たる中段部には、ツールボックス部、サイドカウル部及びリアカウル部を設け、それらの下部に当たる下段部には、エンジン及びエンジン補機類、キャブレター並びにエキゾーストパイプ等を配してなるものである点で共通する。
(共通点4-2)タンク部について、両意匠は、おおよそ扁平な涙滴形であり、下辺を略水平とし、上面前方に配したオイルキャップを挟んで前後方向に2本の平行なキャラクターラインを形成してなるものである点で共通する。
(共通点4-3)シート部について、両意匠は、タンク部からほぼ水平後方に連接してなるものであり、側面から見た際に、を前後に細長い略扁平倒立三角形状に、平面視、上面形態を略扁平六角形状に形成してなるものである点で共通する。
(共通点4-4)ツールボックス部について、両意匠は、タンク部の直下に右側面視、略前傾平行四辺形状の薄箱状に配するものである点で共通する。
(共通点4-5)サイドカウル部及びリアカウル部について、両意匠は、タンク部及びシート部の下方に、リアサスペンション上端部を挟んで前方にサイドカウル部を、後方にリアカウル部を配し、両カウルをあわせて大略へら形として、サイドカウルとリアカウルの下辺は互いの延長線上に配し、先端部を下げる態様に配してなるものであって、両カウルは上下中央横方向には、キャラクターラインとなる稜線を有するものであり、リアサスペンション上端両側において、両カウルの前後両端辺が略二等辺三角形の等辺を形成するように斜めに切り欠いてなるものである点で共通する。
(共通点5-1)車体後方態様について、両意匠は、全体の形態を、車体後方部分には、フレーム後端から左右一対に設けたリアサスペンションの下端部に後輪のハブを装着し、リアカウルの下部にはリアフェンダーを配設し、リアカウルの後端にはテールライトと、シート後端にリアキャリアを配してなるものである点で共通する。
(共通点5-2)後輪周辺態様について、両意匠は、後輪には、スポークホイール及びディスクブレーキを配し、後輪の上斜め後方に近接してリアフェンダーを設けたものである点で共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)全体の構成態様について、本願意匠は、全長:全高:シート高:軸間距離を、約100:54:40:62とし、キャスター角を約26度とするのに対し、引用意匠は、全長:全高:シート高:軸間距離を、約100:53:40:63とし、キャスター角を約27度とする点で相違する。
(相違点2-1)フロントカウルの構成比率について、本願意匠は、前面視、全高の約1/3.1の高さを有するものであるのに対し、引用意匠は、全高の約1/3.3の高さを有するものである点で相違する。
(相違点2-2)風防部について、本願意匠は、前面視、ヘッドライト部上辺中央約3/4幅に相当する部分を風防部の下辺とし、上辺は中央部を高くなるような曲線で形成してなるものであって、左右下端部には略鮫鰭(さめひれ)状の凹段差を左右対称に設けてなるものであり、風防部の左右両側は、左右の張り出し部からの立ち上がり部を設けて形成してなるものであり、前面寄りには扁平三角形状の凹段差を左右対称に設けて形成してなるものであるのに対し、引用意匠は、ヘッドライト部と接する下辺はヘッドライト部上辺の略全幅とし、上辺をなだらかな曲線となるように形成してなるものであって、風防部の左右両側は、左右の張り出し部から立ち上がり部を設けて形成してなるものである点で相違する。
(相違点2-3)フロントカウルの左右張り出し部について、本願意匠は、前面視、左右張り出し部の上面が、左右にほぼ水平に張り出し、ヘッドライト部上辺の左右端約1/8部に中央方向にクサビ状突出面を形成しているのに対し、引用意匠は、左右張り出し部の上面は、左右に斜め下方向に張り出し、上面中央寄りは、なだらかな曲線を形成してなるものである点、左右両側面視、左右張り出し部の下端部は、本願意匠は、ウィンカーの直上に位置するように形成いるのに対し、引用意匠は、ウィンカーより下側に位置するように形成している点で相違する。
(相違点2-4)フロントカウルの顎部について、本願意匠は、車体両側面視、顎部上端と、左右張り出し部下端の間には、前後方向に幅広の凹溝が設けられているのに対し、引用意匠は、顎部上端と、左右張り出し部下端は連続して略浅V字状溝部を形成している点で相違する。
(相違点2-5)フロントカウル後下寄り部から前下寄り部にかけての態様について、本願意匠は、車体両側面視、左右張り出し部の下側に複雑な凹凸を有する態様として表れており、特に左右張り出し部と顎部とは別体として形成してなるものであるのに対し、引用意匠は、およそ平行したキャラクターラインを形成してなるものであり、特に左右張り出し部と顎部とは、一体感を持って形成してなるものである点で相違する。
(相違点3-1)ツールボックス部について、本願意匠は、車体右側面視、後下側部に略L字状の凹段差部を設け、前方よりに3条の水平浅溝を設けてなるものであるのに対し、引用意匠は、中央部に略フ字状の段差部を設けてなるものである点で相違する。
(相違点3-2)サイドカウル部について、本願意匠は、前方下部に変形台形状とする凹段差を有し、キャラクターラインとなる中央横方向の稜線の上方には、前下端部からシート部の前下端部に向けて谷折りしたような面構成を形成してなるものであるのに対し、引用意匠は、前方下部に三角形状とする凹段差を有し、凹段差部の前方上部には、溝部で囲まれた略横長三角形状の区画を設け、当該区画前端部はツールボックスの後端部と上下幅を等しく形成してなることから、ツールボックスと略横長三角形状の溝部の内側区画とが一つの略横長どんぐり状の区画を形成してなるものである点で相違する。

3 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両意匠の形態の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、主に街中で使用するオンロードタイプの「オートバイ」であるところ、この種物品分野においては、旧モデルのイメージを継承しつつ後継モデルをデザイン開発するものといえるから、この種物品分野の需要者は、オートバイの性能に注目するだけでなく、外装及び足回りに係る部分に注意して観察するものといえる。
そうすると、この種物品分野における需要者は、オートバイの製造に係る技術者及びデザイナーと、これにオートバイを購入して乗車する者が含まれるものといえるから、そのような観点から、以下、両意匠の類否判断を行う。

ア 両意匠の意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

イ 両意匠の形態の評価
(ア)両意匠の形態の共通点
(共通点1)ないし(共通点4-1)並びに(共通点5-1)及び(共通点5-2)については、この種小排気量のオンロードタイプのオートバイにおいては、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎず、いずれもこの種物品分野において既に見られる形態であるから、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、これらの共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さいといえる。
(共通点4-2)及び(共通点4-5)についても、この種物品分野において本願出願前から見受けられる態様であるので、これらの共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点4-4)及び(共通点4-5)のうち、ツールボックスを側面から見た際に、略前傾平行四辺形状の薄箱状の態様とすること、及び、サイドカウル部及びリアカウル部をあわせて大略へら形とし、両カウルの下辺は互いの延長線上に配し、リアサスペンション上端両側において、両端部を略二等辺三角形状となるように斜めに切り欠いてなる態様は、両意匠に共通する特徴であって、引用意匠の出願以前にそのような態様が見受けられなかったことを勘案すれば、これらの共通点が、両意匠の類否判断一定程度の影響を与えるものといえる。

(イ)両意匠の形態の相違点
(相違点1)及び(相違点2-1)については、全体本願意匠の態様も、引用意匠の態様も、どちらもこの種物品分野において、この出願以前から公然知られる態様といえるから、これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(相違点2-2)ないし(相違点2-5)については、いずれもフロントカウルの具体的形態に関する相違点であるが、風防部、左右張り出し部、顎部及び両側面態様において、本願意匠は引用意匠に比して、それぞれの個別形態について明らかに複雑な凹凸により表れているものと認められ、これらの態様の相違は、から見た際に、覚的印象が相違するだけでなく、パーツの構成についても大きく相違するものであって、需要者の注意を引く箇所であるから、これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
(相違点3-1)については、ツールボックス部のみの形態上の共通点が認められるものの、引用意匠においては、サイドカウルの前方に設けた溝部で囲まれた略横長三角形状の区画と相まって、略横長どんぐり状の領域を形成しているのに対し、本願意匠では、側面後端部に略L字状の凹段差部を形成していることから、サイドカウルとは明らかに別体として表れており、また、当該部分は、車体側面の一部を形成する箇所であり、需要者が最も関心を持って観察する箇所に係るものであるから、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
(相違点3-2)については、車体側面の外装に係る具体的形態に係る相違点であるが、このうち、特にサイドカウル前方の態様については、(相違点3-1)に係る態様及び前下方における凹段差態様に明らかな相違が認められ、この種物品分野において、需要者が最も関心を有する点のひとつであると認められるから、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものと認められる。

4 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、全体の形態を概括的に捉えた場合の態様に共通する態様が認められるが、この種物品分野のデザイン開発においては、旧モデルの形態を踏襲しつつ、新しい形態を提示することもあるものであって、需要者は、前記3(2)前文記載のとおり、走行性能とは別に外装に施された具体的形態に大きな関心を持って観察をするものであるといえるところ、両意匠については、前記3(2)イに係る共通点が認められ、そのうち、特に(共通点4-4)及び(共通点4-5)について、一定程度の類否判断に及ぼす影響が認められるものの、その他の共通点についてはいずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものであり、一方、(相違点1)及び(相違点2-1)については、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものの、(相違点2-2)ないし(相違点2-5)に係るフロントカウル部の具体的態様に係る点、及び、(相違点3-1)及び(相違点3-2)に係るサイドカウル部の具体的態様に係る点について明らかな差異があり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そうすると、両意匠は、全体の態様や各部の形態が共通することを考慮しても、需要者にとっては、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-04-14 
出願番号 意願2019-23521(D2019-23521) 
審決分類 D 1 8・ 131- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤澤 崇彦 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 木村 恭子
江塚 尚弘
登録日 2021-05-18 
登録番号 意匠登録第1687076号(D1687076) 
代理人 笹野 拓馬 
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