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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1374982 
審判番号 不服2020-17535
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-22 
確定日 2021-05-19 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2020-6480「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,令和2年(2020年)4月1日の意匠登録出願であって,同年7月27日付けの拒絶理由の通知に対し,同年9月24日に意見書が提出されたが,同年9月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年12月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「紫色で着色された部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁総合情報館が1991年 8月21日に受け入れた
大韓民国意匠公報 1991年 6月17日
第69頁所載
包装用瓶の意匠の本願意匠に対応する部分
(特許庁意匠課公知資料番号第HH04007320号)

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,包装用容器の口部と底部を除いた部分(以下「本体部分」という。)である。
本願部分の位置,大きさ及び範囲は,包装用容器における本体部分であり,本願部分の用途及び機能は,包装用容器の本体部分というものである。

(3)本願部分の形状
ア.図面に表れている形状
(ア)正面図
(ア-1)肩部は,やや扁平な半円形状で表れている。
(ア-2)左右側面の外形線は,鉛直であり,小さな角丸を介して底面につながっている。
(イ)側面図
(イ-1)肩部は,正面・背面方向に水平に表れている。
(イ-2)正面側面と背面側面の外形線は,鉛直であり,小さな角丸を介して底面につながっている。
(ウ)平面図
正面側と背面側は,大きな半径の円弧で,左右の側面は,小さな半径の円弧で構成している。
イ.本願部分の立体形状
上記ア.より,本願部分の立体形状は,
概略で,
〔形状A〕平面図より類推するに,水平断面形状を略楕円形とする略楕円柱状であり,
〔形状B〕正面視で,上端が円弧状とした肩部を形成したものであり,
〔形状C〕本体部分の縦:横:奥行の寸法比を約5:2:1としたものである。
そして,詳細には,
〔形状D〕上記ア.の(ア-2),(イ-2)及び(ウ)より,大きな半径の円弧による正面と背面に,小さな半径の円弧による側面を備えている鉛直線から成る柱状であり,
〔形状E〕上記ア.の(ア-1)及び(イ-1)により,肩部の形状が,正面・背面方向で水平で,正面視でやや扁平な半円形状であり,
〔形状F〕上記ア.の(ア-2)及び(イ-2)により,周面下端の底面につながる小さな角丸の曲率を変更しない形状である。

2.引用意匠
引用意匠は,上記「第3」の大韓民国意匠公報の記載の内容によると,以下のとおりである。
なお,引用部分の形状の認定に際しては,本願部分と同じ向きとして認定する。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「包装用瓶」である。

(2)引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
引用意匠中,本願部分に対応する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,包装用瓶の口部と底部を除いた部分(以下「本体部分」という。)である。
引用部分の位置,大きさ及び範囲は,包装用瓶における本体部分であり,引用部分の用途及び機能は,包装用瓶の本体部分というものである。

(3)引用部分の形状
ア.図面に表れている形状
(ア)正面図
(ア-1)肩部は,稜線においてやや扁平な半円形状であるが,外形線では(最上の形状線のこと。)角丸四角形のように表れている。
(ア-2)左右側面の外形線は,ごく僅かながら丸みを帯びて樽形状に表れており,やや大きな角丸を介して底面につながっている。
(イ)側面図
正面側面と背面側面の外形線は,上から下へ向かって僅かに広がるように表れており,ごく小さな角丸を介して底面につながっている。
(ウ)平面図
外形線は,楕円形状である。
イ.引用部分の立体形状
上記ア.より,引用部分の立体形状は,
概略で,
〔形状a〕平面図より類推するに,水平断面形状を略楕円形とする略楕円柱状であり,
〔形状b〕正面視で,上端が円弧状とした肩部を形成したものであり,
〔形状c〕本体部分の縦:横:奥行の寸法比を約5:2:1としたものである。
そして,詳細には,
〔形状d〕上記ア.の(ア-2),(イ)及び(ウ)より,下から上に向かって水平断面形状である楕円形の短径が一定で短くなっていき,長径が(正面図にて表れている樽形となるように)徐々に長くなってから徐々に短くなっているという,複雑な面変化の略楕円錘台形状であり,
〔形状e〕上記ア.の(ア-1)により,肩部の形状が,正面・背面方向で凸曲線と推認される正面視でやや扁平な半円形状であり,
〔形状f〕上記ア.の(ア-2)及び(イ)により,周面下端の底面につながる角丸の曲率が,正面・背面のごく小さな角丸から,左右両側面のやや大きな角丸にかけて曲率を徐々に変える形状である。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「包装用容器」であり,引用意匠に係る物品は「包装用瓶」である。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
本願部分は,包装用容器における本体部分の位置,大きさ及び範囲であるのに対して,引用部分は,包装用瓶における本体部分の位置,大きさ及び範囲である。
そして,本願部分は,包装用容器の本体部分という用途と機能を有するものであるのに対して,引用部分は,包装用瓶の本体部分という用途と機能を有するものである。

(3)両部分の形状の対比
両部分の立体形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)〔形状A〕及び〔形状B〕と〔形状a〕及び〔形状b〕より,両部分共に,概略で,水平断面形状を略楕円形とする略楕円柱状であって,正面視で,上端が円弧状とした肩部を形成したものである。
(イ)〔形状C〕と〔形状c〕より,両部分共に,縦:横:奥行の寸法比を約5:2:1としたものである。

イ.相違点について
(ア)形状〔D〕と形状〔d〕より,全体形状につき,本願部分は,大きな半径の円弧による正面と背面に,小さな半径の円弧による側面を備えている鉛直線から成る柱状であるのに対して,引用部分は,下から上に向かって水平断面形状である楕円形の短径が一定で短くなっていき,長径が徐々に長くなってから徐々に短くなっているという,複雑な面変化の略楕円錘台形状である。
(イ)〔形状E〕と〔形状e〕より,肩部の形状につき,本願部分は,正面・背面方向で水平で,正面視でやや扁平な半円形状であるのに対して,引用部分は,正面・背面方向で凸曲線の正面視でやや扁平な半円形状である。
(ウ)〔形状F〕と〔形状f〕より,周面下端の底面につながる角丸の曲率につき,本願部分は,小さな角丸のまま曲率を変更していないのに対して,引用部分は,正面・背面のごく小さな角丸から,左右両側面のやや大きな角丸にかけて曲率を徐々に変えるものである。

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠に係る物品は,願書の記載によると「包装用容器」であるが,その形状は,有底の,縦長の柱状であり,細い口を備えていることから,主に液体を包装する容器であって,つまりは瓶様と認められるものである。
そうすると,本願意匠に係る物品は,引用意匠に係る物品である「包装用瓶」と共通するものである。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,共通する物品の,本体部分であるから,共通している。
両部分の用途及び機能は,共通する物品の,本体部分というものであるから,共通している。

(3)両部分における形状の評価
ア.共通点について
共通点(ア)及び共通点(イ)の,包装用容器又は包装用瓶を構成する各構成要素が共通しているから,一定程度の共通感を生じさせているが,具体的には,各構成要素内に相違点(ア)ないし(ウ)の相違が存在するものであるから,共通点(ア)及び共通点(イ)の両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。

イ.相違点について
相違点(ア)によって,両部分の大部分を占める周面において,本願部分は,大きな半径の円弧による正面と背面に,小さな半径の円弧による側面を備えている鉛直線から成るシンプルな柱状との印象を得るのに対して,引用部分は,下から上に向かって水平断面形状である楕円形の短径が一定で短くなっていき,長径が徐々に長くなってから徐々に短くなっているという,複雑な面変化の略楕円錘台形状との印象を得るものであるから,両部分に別異な印象を与えると認められ,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)によって,目に付きやすい本体部分の上に位置する肩部の形状が,本願部分は,正面・背面方向で水平な形状との印象を得るのに対して,引用部分は,正面・背面方向で凸曲線という丸みを持った形状との印象を得るものであるから,両部分に別異な印象を与えると認められ,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)によって,本願部分は,周面下端の底面につながる小さな角丸の曲率を変更しないシンプルな形状との印象を得るのに対して,引用部分は,正面・背面のごく小さな角丸から,左右両側面のやや大きな角丸にかけて曲率を変える角丸であるから,複雑な面変化という印象を得るものであり,両部分に別異な印象を与えると認められ,周面下端という見えづらい箇所の相違であるといっても,両部分の形状の類否判断に与える影響は一定程度認められる。

(4)小括
そうすると,両部分の形状については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響は限定的であるのに対して,相違点によって類否判断に及ぼす影響は大きいものといえるものであり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。

(5)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能が共通している。
しかし,上記のとおり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。
よって,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。

5.結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-04-28 
出願番号 意願2020-6480(D2020-6480) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清野 貴雄 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2021-06-15 
登録番号 意匠登録第1689077号(D1689077) 
代理人 高柴 忠夫 
代理人 棚井 澄雄 

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