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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H6
管理番号 1374993 
審判番号 不服2020-17793
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-25 
確定日 2021-06-08 
意匠に係る物品 データ記憶機 
事件の表示 意願2020- 887「データ記憶機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
令和2(2020年)年 1月21日 意匠登録出願
令和2(2020年)年 7月 9日付け 拒絶理由通知書
令和2(2020年)年 8月24日 意見書
令和2(2020年)年10月19日付け 拒絶査定
令和2(2020年)年12月25日 審判請求書

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「データ記憶機」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであり、願書の「意匠の説明」の欄には「実線で表した部分(当審注:以下「本願部分」という。)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す。」と記載されている(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び願書に記載した本意匠
1 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、願書に記載した本意匠(意願2020-886の意匠)に類似する意匠と認められないので、意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって、具体的には以下のとおりである。
「両意匠は、筐体平面における稜線部の位置の相違に起因する視覚効果の差異が顕著であるため、美感に訴求する支配的基調を異にするものと認めます。」

2 願書に記載した本意匠
願書に記載した本意匠(以下、単に「本意匠」という。)は、令和2年(2020年)1月21日に意匠登録出願(意願2020-886)され、同年9月3日に意匠権の設定の登録(意匠登録第1668639号)がなされ、同年9月23日に意匠公報が発行されたものであり、本意匠の意匠に係る物品は、本意匠の出願の願書の記載によれば「データ記憶機」であり、本意匠の形態は、同願書及び同願書に添付した図面に記載されたとおりであり、同願書の「意匠の説明」の欄には「実線で表した部分(当審注:以下「本意匠部分」という。)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す。」と記載されている(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
以下、本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。

1 本願意匠
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「データ記憶機」であり、願書添付図面中の「右側面図」に破線で示された端子挿入口の大きさ、及び「正面図」左端寄りに示されたストラップ孔の存在から、本願物品は、電子データを記憶する機能を有し、電子計算機や情報携帯端末機などに繋げて机上などで用いるほか、鞄などに入れて持ち運ぶ用途を有していると認められる。
(2)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、本願意匠のうち、両側面と底面部を除く正面部、平面部及び背面部の位置にあり、各部の端部から中央部にかけて約2/3の大きさ及び範囲を占めている。
(3)本願部分の用途及び機能
本願部分は、データ記憶機の筐体に係る用途及び機能を有している。
(4)本願部分の形態
ア 全体の形状
略直方体である本願意匠の正面部、平面部及び背面部から構成される一つながりの連続面体であり、平面部は左側面から見て背の低い三角屋根状に隆起している。
イ 平面部の形状
平面部(縦横比は約4:5)には直方体の長辺に平行して伸びる稜線が1本形成されて、平面部が上下2つの面に分割されている。その稜線は平面部を上下に2等分する位置にある。
ウ 正面部の形状
正面部は略横長長方形状(縦横比は約1:6.6)であり、左端は上にいくにつれて僅かに内側に傾斜している。正面部の上側には、平面部の隆起が薄く表れており、その縦幅と正面部の縦幅の比は約1:8である。
正面部の左端寄りには略縦長矩形状の孔部が形成されている(孔部は、破線で表されているため本願部分を構成しない。)。なお、正面部の下部には底面部と、底面部から回り込んだ縁部が破線で表されている(破線で表されているため本願部分を構成しない。)。
エ 背面部の形状
右端寄りに孔部が形成されていないことを除き、正面部の形状と左右対称である。
オ 左側面部の形状
左端(背面部の稜線)及び右端(正面部の稜線)が共に上にいくにつれて僅かに内側に傾斜し、左右対称状に表されている。

2 本意匠
当審では、本意匠について、以下のとおり認定する。
(1)意匠に係る物品
本意匠の意匠に係る物品(以下「本意匠物品」という。)は「データ記憶機」であり、願書添付図面中の「右側面図」に破線で示された端子挿入口の大きさ、及び「正面図」左端寄りに示されたストラップ孔の存在から、本意匠物品は、電子データを記憶する機能を有し、電子計算機や情報携帯端末機などに繋げて机上などに設置して用いるほか、鞄などに入れて持ち運ぶ用途を有していると認められる。
(2)本意匠部分の位置、大きさ及び範囲
本意匠部分は、本意匠のうち、両側面と底面部を除く正面部、平面部及び背面部の位置にあり、各部の端部から中央部にかけて約2/3の大きさ及び範囲を占めている。
(3)本意匠部分の用途及び機能
本意匠部分は、データ記憶機の筐体に係る用途及び機能を有している。
(4)本意匠部分の形態
ア 全体の形状
略直方体である本意匠の正面部、平面部及び背面部から構成される一つながりの連続面体であり、平面部は左側面から見て背の低い三角屋根状に隆起している。
イ 平面部の形状
平面部(縦横比は約4:5)には直方体の長辺に平行して伸びる稜線が1本形成されて、平面部が上下2つの面に分割されている。その稜線は平面部を上から約1:4に内分する位置にある。
ウ 正面部の形状
正面部は略横長長方形状(縦横比は約1:6.6)であり、左端は上にいくにつれて僅かに内側に傾斜している。正面部の上側には、平面部の隆起が薄く表れており、その縦幅と正面部の縦幅の比は約1:8である。
正面部の左端寄りには略縦長矩形状の孔部が形成されている(孔部は、破線で表されているため本意匠部分を構成しない。)。なお、正面部の下部には底面部と、底面部から回り込んだ縁部が破線で表されている(破線で表されているため本意匠部分を構成しない。)。
エ 背面部の形状
右端寄りに孔部が形成されていないことを除き、正面部の形状と左右対称である。
オ 左側面部の形状
左端(背面部の稜線)及び右端(正面部の稜線)が共に上にいくにつれて僅かに内側に傾斜し、左右対称状に表されている。

3 本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「データ記憶機」であるから一致する。
(2)本願部分と本意匠部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)は、いずれも両意匠のうち両側面と底面部を除く正面部、平面部及び背面部の位置にあり、各部の端部から中央部にかけて約2/3の大きさ及び範囲を占めているから、両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。
(3)両部分の用途及び機能
両部分は、いずれもデータ記憶機の筐体に係る用途及び機能を有しているから、両部分の用途及び機能は一致する。
(4)両部分の形態
両部分の形態を対比すると、以下の共通点と相違点が認められる。
ア 形態の共通点
(共通点1)全体の形状
共に略直方体である両意匠の正面部、平面部及び背面部から構成される一つながりの連続面体であり、平面部は左側面から見て背の低い三角屋根状に隆起している。
(共通点2)平面部の形状
平面部(縦横比は約4:5)には直方体の長辺に平行して伸びる稜線が1本形成されて、平面部が上下2つの面に分割されている。
(共通点3)正面部の形状
正面部は略横長長方形状(縦横比は約1:6.6)であり、左端は上にいくにつれて僅かに内側に傾斜している。正面部の上側には、平面部の隆起が薄く表れており、その縦幅と正面部の縦幅の比は約1:8である。
正面部の左端寄りには略縦長矩形状の孔部が形成されている(孔部は、破線で表されているため本意匠部分を構成しない。)。なお、正面部の下部には底面部と、底面部から回り込んだ縁部が破線で表されている(破線で表されているため本意匠部分を構成しない。)。
(共通点4)背面部の形状
右端寄りに孔部が形成されていないことを除き、正面部の形状と左右対称である。
(共通点5)左側面部の形状
左端(背面部の稜線)及び右端(正面部の稜線)が共に上にいくにつれて僅かに内側に傾斜し、左右対称状に表されている。
イ 形態の相違点
(相違点1)平面部の稜線の位置
平面部の稜線の位置は、本願部分では、平面部を上下に2等分する位置にあるのに対し、本意匠部分では、平面部を上から約1:4に内分する位置にある。

4 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。
(2)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。
(3)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。
(4)両部分の形態の類否判断
両意匠の意匠に係る物品の使用方法は机上などに設置して用いるほか、鞄などに入れて持ち運ぶから、同物品を使用する需要者は一方向のみならず、全方向から同物品を観察するということができる。したがって、需要者が全方向から同物品を観察することを踏まえて、両部分の形態の類否判断を行うこととする。
ア 形態の共通点の評価
両部分の共通点1及び共通点2、すなわち、共に略直方体である両意匠の正面部、背の低い三角屋根状に隆起している平面部、及び背面部から構成されている点、及び平面部が長辺に平行して伸びる稜線によって上下2つの面に分割されている点は、特に、アクセントラインとしての1本の稜線が背の低い三角屋根を形成することとなって独特の形状特徴を呈するから、この共通点1及び共通点2が呈する態様に対して需要者は共通する美感を抱くということができる。したがって、両部分の共通点1及び共通点2が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また、正面部及び背面部の端部が上にいくにつれて僅かに内側に傾斜している共通点(共通点3及び共通点4)と、左側面部において両端が共に上にいくにつれて僅かに内側に傾斜して左右対称状に表されている共通点(共通点5)は、机上などに設置したときに全体が上にいくにつれて窄まるようにまとまって、安定した視覚的印象を需要者に与えるというべきであるから、共通点3ないし共通点5が両部分の類否判断に及ぼす影響も一定程度認められる。
イ 形態の相違点の評価
相違点1で指摘した、平面部の稜線の位置が平面部を上下に2等分する位置にあるか(本願部分)、平面部を上から約1:4に内分する位置にあるか(本意匠部分)の相違は、特に平面方向から両部分を観察した際に需要者が稜線の位置の相違と、稜線による面分割構成の相違に着目することとなる。しかしながら、共通点3として認定したとおり、両部分を正面から観察すると正面部の上側に表れる平面部の隆起は薄く(正面部の縦幅の約1/8)、すなわち、左側側面から看取される三角屋根状の隆起は僅かであるから、その僅かな隆起の位置(三角屋根の頂部の位置)の相違が、両部分の複数の共通点を圧して、両部分の美感を大きく異にしているとまではいい難い。したがって、相違点1が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるといわざるを得ない。
ウ 両部分の形態の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分全体を総合的に観察した場合、両部分の形態の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は総じて大きい。これに対して、平面部の稜線の位置に係る相違点1が部分全体の美感に与える影響は小さく、両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるから、両部分の形態は類似する。
(5)小活
両意匠は意匠に係る物品が同一であり、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一又は共通し、両部分の形態も類似するから、本願意匠は本意匠に類似する。

5 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて
本意匠は、本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから、意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。
また、本願意匠の意匠登録出願の日は、本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから、意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
さらに、前記4(5)のとおり、本願意匠は、本意匠に類似するものと認められるので、意匠法第10条第1項に規定されている、本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たしている。
したがって、本願意匠は、意匠法第10条第1項の規定に該当する。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、意匠法第10条第1項の規定に該当するから、本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができる。そうすると、原査定における拒絶の理由は成り立たない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2021-05-18 
出願番号 意願2020-887(D2020-887) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
井上 和之
登録日 2021-06-10 
登録番号 意匠登録第1688797号(D1688797) 
代理人 松井 宏記 
代理人 宗助 智左子 
代理人 鈴木 行大 

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