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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1375917 
審判番号 不服2020-15919
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-18 
確定日 2021-06-15 
意匠に係る物品 分析器具操作用端末 
事件の表示 意願2019- 24914「分析器具操作用端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第10条の2第1項の規定の適用により意願2019-15090(もとの意匠登録出願。原出願日:令和1年(2019年)7月4日。)から分割され、パリ条約による優先権(最初の出願:アメリカ合衆国、2019年1月4日)を主張する、令和1年(2019年)11月8日の意匠登録出願であり、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年(2020年) 3月 2日付け 拒絶理由の通知
令和2年(2020年) 6月10日 意見書の提出
令和2年(2020年) 8月 7日付け 拒絶査定
令和2年(2020年)11月18日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「分析器具操作用端末」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、「分析器具操作用端末」の表示部に表された画像について部分意匠として意匠登録を受けようとするものであり、その形態は、略横長矩形状の表示画面の中央付近に、略円形状部を表示し、当該円形状部の内部には、右に90度回転させた略三角形状部を配置し、当該略三角形状部と略円形状部の両者には明暗調子の濃度差を設け、また、当該略円形状部の外周側を、やや直径の大きな円形状の輪郭線で囲んだものと認められます。
しかしながら、本願意匠の画像に用いられたこの基本構成は、この意匠登録出願の意匠に係る物品である「分析器具操作用端末」の分野に限らず、画像を表示する機能を有する物品において、既に公知の画像(引用例1)と共通しています。また、当該略三角形状部を隅丸状とした態様も、当該略三角形状部と略円形状部との明暗調子の両者の明度差や配色を変更することも、当該分野においてありふれた手法にすぎないものです(引用例2?4)。
そうすると本願意匠は、本願出願前より公知の画像を、ありふれた手法で隅丸状三角形に置き換え、明暗調子の配色を変更したうえで、「分析器具操作用端末」に係る画像の意匠として表した程度に過ぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
(中略)

引用例1
中華人民共和国意匠公報 2015年 6月10日15-23号
携帯用情報端末機(公開番号CN303239344S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH27003870号)

引用例2
米国特許商標公報 2017年 7月18日
ディスプレイスクリーン用遷移画像(登録番号US D792444S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29318067号)

引用例3
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2017年 2月 7日
受入日 特許庁意匠課受入2017年 2月27日
掲載者 Surf City Apps
表題 富を引き寄せる催眠 - Google Play
の Android アプリ
掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details?id=
com.surfcityapps.attractwealth.jp
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの金融機関機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28154712号)

引用例4
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2007年 9月27日
受入日 特許庁意匠課受入2007年 9月28日
掲載者 Shutterstock, Inc.
表題 ベクターグラフィック Internet ico
ns. Fancy stickers(タイムス
タンプ 2007.09.26)
掲載ページのアドレス http://www.shutterstock.jp/pic-5370835-interne
t-icons-fancy-stickers.html
に掲載された「アイコン」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ19223854号)」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は、「分析器具操作用端末」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」の記載によれば、本願物品である分析器具操作用端末に設けられた表示部に、アナリティカル・コンピューティングのためのGUIが表示される。
(2)本願物品の表示部に表された画像
[正面図]に表された画像内には、略円形状アイコンが中央やや下に配されており、アイコンが操作の対象であること、及び本願物品(分析器具操作用端末)がGUIを表示する機能を有することから、本願物品の表示部(物理的画面)には、その機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像(平成18年改正意匠法第2条第2項で規定された操作画像)が表されている(以下、表示部に表示される画像を「本願画像」という。)。
本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像における実線で表された部分(以下「本願画像部分」という。)であって、「破線で表された部分」および「画面中ブラックの背景」は、本願画像部分を構成しない。
(3)本願画像部分の用途及び機能
前記(1)で摘記した願書の記載によれば、本願画像部分は、アナリティカル・コンピューティングのためのGUIとしての用途及び機能を有すると認められる。
(4)本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像部分の位置は、略板状の本願意匠の正面のほぼ全域を占める横長長方形の本願画像の中央やや下であって、実線で表された本願画像部分の大きさ及び範囲は、本願画像の縦幅の約1/4.4、横幅の約1/7.7を占めている。
なお、本願画像部分の最も外側は明調子の線で表されており、その内側に黒色部分を介して再び明調子の領域が表されているところ、当該黒色部分は、「画面中ブラックの背景」であると認められ、本願画像部分を構成しない。
(5)本願画像部分の形態
ア 全体の形態
本願画像部分は、円形の中心に右向きの三角形(以下、単に「三角形」という。)が表されて、円形と三角形の双方に縁取りが形成されており、円形の外側には、僅かに間隔を開けて円形線(以下「外側円形線」という。)が表されている。
イ 円形と三角形の構成及び色彩
円形の直径と三角形の縦幅の比は、約1.6:1である。円形は薄灰色で表されており、縁取りは白色で表されている。三角形は濃灰色で表されており、縁取りは更に濃い灰色で表されている。
ウ 三角形の態様
三角形は、右側の頂角が底角よりもやや大きい二等辺三角形であって、角丸に表されている
エ 外側円形線の態様
外側円形線は細く、白色で表されている。

2 引用例1ないし引用例4の認定
原査定における拒絶の理由で引用された引用例1ないし引用例4について、以下のとおり認定する。なお、引用例1ないし引用例4の出典や公知日などについては、前記第3に記載したとおりである。
主として、本願画像部分の形態に関係する形態について認定する。
(1)引用例1(別紙第2参照)
ア 引用例1について
引用例1に表された画像は、携帯用情報端末機の画像であり、動画共有に係る用途及び機能を有している。引用例1における本願画像部分に相当する部分(以下「引用例1部分」という。)の位置は、携帯用情報端末機の正面のほぼ全域を占める横長長方形の画像の中央やや上であって、その大きさ及び範囲は、画像全体の縦幅の約1/4.8、横幅の約1/8.3を占めている。
イ 引用例1部分の形態
(ア)全体の形態
引用例1部分は、円形の中心に右向きの三角形(以下、単に「三角形」という。)が表されて、三角形に縁取りが形成されており、円形の外側には、やや間隔を開けて円形線(以下「外側円形線」という。)が表されている。
(イ)円形と三角形の構成及び色彩
円形の直径と三角形の縦幅の比は、約2.2:1である。円形は濃灰色で表されている。三角形は白色で表されており、縁取りは薄灰色で表されている。
(ウ)三角形の態様
三角形は、正三角形である
(エ)外側円形線の態様
外側円形線は細く、濃灰色で表されている。

(2)引用例2(別紙第3参照)
ア 引用例2に表された画像の用途及び機能
引用例2に表された画像は、ディスプレイスクリーン用遷移画像であり、画面遷移に係る用途及び機能を有している。
イ 引用例2の形態
FIG.3の中央に表された略円形状部分を引用例2における本願画像部分に相当する部分(以下「画像2部分」という。)として認定する(FIG.1及びFIG.2では引用例2部分が小さく表されている。FIG.6では背景色が異なっており、FIG.9では左右の部分の位置が異なっている)。なお、一点鎖線内の形態も含めて、引用例2部分の形態を認定する。
(ア)全体の形態
引用例2部分は、中心に右向きの三角形(以下、単に「三角形」という。)が表されており、その外側に、円形状部分、幅狭の円環状部分、幅広の円環状部分が順に配されている。
(イ)円形状部分と三角形の構成及び色彩
円形状部分の直径と三角形の縦幅の比は、約1.7:1である。円形状部分は濃灰色で表されており、三角形は薄灰色で表されている。
(ウ)三角形の態様
三角形は、右側の頂角が底角よりもやや大きい二等辺三角形であって、角丸に表されている。
(エ)幅狭の円環状部分、幅広の円環状部分の態様
幅狭の円環状部分は薄灰色で表されており、幅広の円環状部分は濃灰色で表されている。

(3)引用例3(別紙第4参照)
ア 引用例3に表された画像の用途及び機能
引用例3に表された画像は、スマートフォン用ソフトウェアの金融機関機能に係る画像であり、金融に関する用途及び機能を有している。
イ 引用例3の形態
(ア)全体の形態
引用例3における本願画像部分に相当する部分(以下「引用例3部分」という。)は、中心に右向きの三角形(以下、単に「三角形」という。)が表されており、その外側に、縁取りを伴う円形状部分、幅広の円環状部分、細い円環状部分1、細い円環状部分2、円環状部分が順に配されている。
(イ)円形状部分と三角形の構成及び色彩
円形状部分の直径と三角形の縦幅の比は、約2.4:1である。円形状部分は淡青色で表されており、三角形は黒色で表されている。円形状部分の縁取りは薄青色で表されて、ごく僅かな淡青色の間隔を介して外側にもう一つの縁取り(薄青色)が表されている。
(ウ)三角形の態様
三角形は、右側の頂角が底角よりも若干大きい二等辺三角形であって、角丸に表されている
(エ)幅広の円環状部分、細い円環状部分1、細い円環状部分2、円環状部分の態様
幅広の円環状部分、細い円環状部分1、細い円環状部分2、円環状部分は、それぞれ、薄青色、濃青色、白色、濃青色で表されている。

(4)引用例4(別紙第5参照)
ア 引用例4に表された画像の用途及び機能
引用例4に表された画像は、携帯用情報端末機の画像であり、動画共有に係る用途及び機能を有している。
イ 引用例4の形態
(ア)全体の形態
引用例4における本願画像部分に相当する部分(以下「引用例4部分」という。)は、円形の中心に右向きの三角形(以下、単に「三角形」という。)が表されて、三角形に縁取りが形成されており、円形の外側には、細い円環状部分と円形線(以下「外側円形線」という。)が順に表されている。
(イ)円形と三角形の構成及び色彩
円形の直径と三角形の縦幅の比は、約2:1である。円形は赤色で表されており、上部に略三日月状部が白色で表されている(同部分が照り返されているように模しており、円形が前方に膨らんだ曲面であるように表現されている。)。三角形は白色で表されており、縁取りは濃赤色で表されている。
(ウ)三角形の態様
三角形は、右側の頂角が直角である二等辺三角形であって、角丸に表されている。
(エ)細い円環状部分、外側円形線の態様
細い円環状部分は白色で表されており、外側円形線は細く、灰色で表されている。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
まず、本願物品が分析器具操作用端末であって、本願画像部分は、アナリティカル・コンピューティングのためのGUIとしての用途及び機能を有するところ、このような用途及び機能を有する画像の形態が本願の出願前に既に見受けられるから、本願画像部分の用途及び機能に特段の創作性を認めることはできない。また、本願画像部分の大きさ及び範囲が横長長方形である本願画像の縦幅の約1/4.4、横幅の約1/7.7を占めている点も、画像を含む物品分野において本願画像部分に相当する部分の大きさ及び範囲が近似するものは、例えば引用例1に見られるようにありふれており、本願画像部分の位置が本願画像の中央やや下である点も、引用例1に見られる位置から適宜変更したまでであるから、特段の創作性を認めることはできない。
そして、本願画像部分の形態についても、円形の中心に右向きの角丸正三角形を表すことは本願の出願前に画像を含む物品分野において広く知られており(例えば引用例3)、また、円形の外側に間隔を開けて外側円形線を表すことも同様に広く知られている(例えば引用例1)。
しかしながら、本願画像部分に見られる、円形と三角形の双方に縁取りを形成し、円形の縁取りを白色で表して三角形の縁取りを更に濃い灰色で表した形態、円形を薄灰色で表して三角形を濃灰色で表した形態、円形と外側円形線との間隔を僅かなものにして外側円形線を薄灰色で表した形態、及び円形の直径と三角形の縦幅の比を約1.6:1とした形態は、引用例1ないし引用例4の形態とは異なっており、当業者が引用例1ないし引用例4の形態に基づいて、本願画像部分の当該形態を容易に創作することができたとはいえない。
特に、円形と三角形の双方に縁取りを形成している点は、本願画像部分に特有の形態特徴であって、円形の縁取り(白色)-円形(薄灰色)-三角形の縁取り(更に濃い灰色)-三角形(濃灰色)の色彩構成が独特の美感を呈しているところ、画像を含む物品分野においては本願の出願前に様々な種類の形状、模様又は色彩の円形と三角形の組合せが見受けられることを踏まえると、当業者が引用例のみの形態に基づいて本願画像部分の形態を容易に創作することができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2021-05-26 
出願番号 意願2019-24914(D2019-24914) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古賀 稔章 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
井上 和之
登録日 2021-07-12 
登録番号 意匠登録第1691362号(D1691362) 
代理人 大塚 雅晴 
代理人 山尾 憲人 

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