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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1375926 |
審判番号 | 不服2020-17586 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-23 |
確定日 | 2021-07-07 |
意匠に係る物品 | 指圧器具 |
事件の表示 | 意願2020- 12709「指圧器具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 令和2年(2020年) 6月24日 意匠登録願 令和2年(2020年) 9月18日付け 拒絶理由通知書 令和2年(2020年)10月20日 意見書 令和2年(2020年)12月 1日付け 拒絶査定 令和2年(2020年)12月23日 審判請求書 第2 本願意匠 本願は物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「指圧器具」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであり、願書の「意匠の説明」の欄には「実線で表された部分(当審注:以下「本願部分」という。)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されている(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「本願は、「指圧器具」のうち、緩やかな円弧面に略小球状凸部を規則的に並置した押圧部を、意匠登録を受けようとする部分とした出願ですが、緩やかな円弧面に略球状凸部を規則的に並置した態様は、例えば意匠1及び意匠2のように本願出願前から見られる態様であり、更に、略球状凸部が極浅い状態のものも、例えば意匠2のように本願出願前から見られる態様です。 そうすると、本願意匠は本願出願前から見られる意匠に基づいて、当該意匠が属する物品分野の通常の知識を有する者が、容易に創作できたものと認められます。 (中略) 意匠1 大韓民国意匠商標公報 2019年12月 6日 ボディマッサージ(登録番号30-1035505)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH31443799号) 意匠2 特許庁発行の意匠公報(当審注:平成22年6月14日発行)記載 意匠登録第1389829号の意匠」 第4 当審の判断 以下、本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、本願意匠が、この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。 1 本願意匠 本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「指圧器具」であり、本願の願書及び願書に添付した図面の記載によれば、本願物品は、痩身、美容、又は健康増進の目的のために、ドーム状凸部の部分を人体の各部に押し当て又は押し当てながら移動させて、指圧を行うものである。 物品の部分として意匠登録を受けようとする本願部分は、実線で表された部分であり、本願意匠における人体に押し当てる部分とその周辺であるから、本願部分の用途及び機能は、本願物品の用途及び機能のうち人体に押し当てる部分に係る用途及び機能である。 本願部分の形態は、次のとおりである。 (1)全体について 全体の形状は、短円柱の下面が球面状に下方に膨出したものであって、その下面の膨出の程度(高さ幅)は、下面の径の約1/9である。下面が表された正面図では、複数の略円形状部が略格子状に配列されている。 (2)略円形状部の配列 略円形状部は、正面から見て、5行5列に並んでおり、中央部の9個の略円形状部は格子状に互いに等間隔に並んでおり(以下、この9個の格子状配列を「9個格子状配列」という。)、左右両端の列と上下両端の行が9個格子状配列との間にやや間隔を空けてそれぞれ3個ずつ配されて、略円形状部は合計で21個表されている。略円形状部は正面のほぼ全域に配されており、正面外周に最も近い略円形状部と正面外周縁との間は、若干隙間がある程度である。 (3)略円形状部の形状 正面から見て、略円形状部は全て同形同大であって、縁部が2重線で表されている。平面から見ると、略円形状部はごく僅かに下方に膨出した略球面状に表されている。 2 意匠1及び意匠2 原査定における拒絶の理由で引用された意匠1及び意匠2について、以下のとおり認定する(本願意匠の向きに合わせて認定する)。なお、意匠1及び意匠2の出典や公知日などについては、前記第3に記載したとおりである。 (1)意匠1(別紙第2参照) 意匠1の意匠に係る物品は「ボディマッサージ」であり、本願部分に対応する意匠1の部分(以下「意匠1部分」という。)は、意匠1における人体に押し当てる部分とその周辺であり、意匠1部分の用途及び機能は、「ボディマッサージ」の用途及び機能のうち人体に押し当てる部分に係る用途及び機能である。 意匠1部分の形態は以下のとおりである。 ア 全体について 全体の形状は、側周面の径が下方にいくにつれて小さくなる略扁平逆円錐台の下面が略球面状に下方に膨出したものであって、その下面の膨出の程度(高さ幅)は、下面の径の約1/16である。下面が表された正面図では、複数の略円形状部が略同心円状に配列されている。 イ 略円形状部の配列 略円形状部は、正面から見て、中央に1個配され、その周りに6個が円状に並び(以下、この6個の並びを「6個円状配列」という。)、6個円状配列の外側に更に12個が円状に並んでいる(以下、この12個の並びを「12個円状配列」という。)。径方向の略円形状部同士の間隔は、中央の1個と6個円状配列との間隔の方が、6個円状配列と12個円状配列との間隔よりも僅かに大きい。周方向の略円形状部同士の間隔は、6個円状配列内の間隔と12個円状配列内の間隔はほぼ同じである。略円形状部は正面のほぼ全域に配されており、正面外周に最も近い略円形状部と正面外周縁との間は、若干隙間がある程度である。 ウ 略円形状部の形状 正面から見て、略円形状部は全て同形同大であり、平面から見ると、略円形状部は略半球状に表されている。 (2)意匠2(別紙第3参照) 意匠2の意匠に係る物品は「マッサージ器」であり、本願部分に対応する意匠2の部分(以下「意匠2部分」という。)は、意匠2における先端部であって、人体に押し当てる部分とその周辺であり、意匠2部分の用途及び機能は、「マッサージ器」の用途及び機能のうち人体に押し当てる部分に係る用途及び機能である。 意匠2部分の形態は以下のとおりである。 ア 全体について 全体の形状は、略円盤状の下面が略球面状に下方に膨出したものであって、その下面の膨出の程度(高さ幅)は、下面の径の約1/18である。下面が表された正面図では、複数の略円形状部が略格子状に配列されている。 イ 略円形状部の配列 略円形状部は、正面から見て、4行4列に並んでおり、中央部の4個の略円形状部は格子状に互いに等間隔に並んでおり(以下、この4個の格子状配列を「4個格子状配列」という。)、左右両端の列と上下両端の行が4個格子状配列内の間隔よりも互いにやや広い間隔でそれぞれ2個ずつ配されて、略円形状部は合計で12個表されている。略円形状部は正面のほぼ全域に配されており、正面外周に最も近い略円形状部と正面外周縁との間は、やや隙間がある程度である。 ウ 略円形状部及びその周囲の形状 正面から見て、略円形状部は全て同形同大であり、その周囲が円環状に隆起している。平面から見ると、略円形状部は略1/3球状に表されている。 3 創作非容易性の判断 「指圧器具」の意匠の物品分野において、把持部を除く部分の形態について略短円柱とすることは本願の出願前にありふれており、その下面を略球面状に下方に膨出したものも、例えば意匠1部分や意匠2部分に見られるように本願の出願前に公然知られている。 しかしながら、本願部分の短円柱下面の膨出の程度は、下面の径の約1/9であるところ、約1/16である意匠1部分や約1/18である意匠2部分に比較して、膨出の程度が大きいというべきであって、当業者がこれらの形態を採用して本願部分の形態を容易に創作することができたとはいい難い。 そして、本願部分では、略格子状ではあるものの、左右両端の列と上下両端の行に、9個格子状配列との間にやや間隔を空けて略円形状部を配した変則的な5行5列の配列であるところ、格子状配列を有する形態としては意匠2部分が最も近い形態であるといえるが、意匠2部分では左右両端の列と上下両端の行が4個格子状配列内の間隔よりも互いにやや広い間隔で略円形状部が配されている4行4列の配列であるから、意匠2部分の略円形状部の配列をそのまま採用して当業者が本願部分の形態を容易に創作することができたということはできない。 加えて、平面から見てごく僅かに下方に膨出した略球面状とした本願部分の略円形状部の形状は、略半球状や略1/3球状に表されている意匠1部分及び意匠2部分の略円形状部の形状とは異なるから、当業者がこれらの形状に基づいてその形態を容易に創作することができたということはできない。 したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-06-22 |
出願番号 | 意願2020-12709(D2020-12709) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石坂 陽子 |
特許庁審判長 |
北代 真一 |
特許庁審判官 |
井上 和之 小林 裕和 |
登録日 | 2021-07-09 |
登録番号 | 意匠登録第1691272号(D1691272) |
代理人 | 前島 大吾 |
代理人 | 宇高 克己 |