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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1375931 
審判番号 不服2021-3869
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-25 
確定日 2021-07-13 
意匠に係る物品 精子採取器 
事件の表示 意願2020-9503「精子採取器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は,令和2年(2020年)5月14日の意匠登録出願であって,同年11月12日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月14日に意見書が提出されたが,令和3年2月17日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年3月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「精子採取器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1270469号
(意匠に係る物品,精子採取器)の意匠

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「精子採取器」である。

(2)本願意匠の形状
ア.本願意匠は,容器本体とキャップから成るものである。
イ.容器本体は,底面側のキャップの直径に対して,2倍強の長さを持つ,上端部分が扁平になった縦長略円筒状である。
ウ.下端より約5分の2の位置に左右くびれ部を形成している。
エ.くびれ部から上端まで左右方向に広がりつつ,くびれ部より上部分を前後方向の径を縮径し,上端部では前後面を膨出曲面としながら徐々に閉じている。
オ.容器本体下端には細い円環部があり,その円環部はキャップに接している。
カ.キャップの高さは,全体の約10分の1である。
キ.キャップの下端には小さい曲率の丸面取りが成されている。
ク.キャップの下面は,外周を少し残して,浅い段差を設けて僅かに凹んでおり,その中央には,容器本体の挿入口に達する円筒状の深い凹部を設けている。

2.引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「精子採取器」である。

(2)引用意匠の形状
ア.引用意匠は,容器本体とキャップから成るものである。
イ.容器本体は,底面側のキャップの直径に対して,2倍強の長さを持つ,上端部分が扁平になった縦長略円筒状である。
ウ.下端より約5分の2の位置に左右くびれ部を形成している。
エ.くびれ部から上端まで左右方向に広がりつつ,くびれ部より上部分を前後方向の径をほぼ維持し,上端部では前後面を平坦な傾斜面として閉じており,その傾斜面は正面視で半円形状に表れている。
オ.キャップの高さは,全体の約10分の1である。
カ.キャップの下端には小さい曲率の丸面取りが成されている。
キ.キャップの下面は,平坦面である。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品も,引用意匠に係る物品も,共に「精子採取器」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)両意匠共に,容器本体とキャップから成るものである。
(イ)容器本体は,底面側のキャップの直径に対して,2倍強の長さを持つ,上端部分が扁平になった縦長略円筒状である。
(ウ)下端より約5分の2の位置に左右くびれ部を形成している。
(エ)くびれ部から上端まで左右方向に広がっている。
(オ)キャップの高さは,全体の約10分の1である。
(カ)キャップの下端には小さい曲率の丸面取りが成されている。
イ.相違点について
(ア)容器本体のくびれ部より上部分の形状につき,本願意匠は,前後方向の径を縮径し,上端部では前後面を膨出曲面としながら徐々に閉じているのに対して,引用意匠は,前後方向の径をほぼ維持し,上端部では前後面を平坦な傾斜面として閉じており,その傾斜面は正面視で半円形状に表れている。
(イ)容器本体下端の細い円環部につき,本願意匠は,設けており,その円環部はキャップに接しているのに対して,引用意匠は,円環部を設けていない。
(ウ)キャップの下面の形状につき,本願意匠は,外周を少し残して,浅い段差を設けて僅かに凹んでおり,その中央には,容器本体の挿入口に達する円筒状の深い凹部を設けているのに対して,引用意匠は,平坦面である。

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「精子採取器」であるから,一致している。

(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点(ア)ないし(カ)の,精子採取器を構成する各構成要素が共通しているから,一定程度の共通感を生じさせているが,容器本体の具体的な各構成要素には,相違点が存在するものであるから,共通点(ア)ないし(カ)の両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
イ.相違点について
相違点(ア)によって,両意匠の容器本体における前後面の立体形状が異なり,特に,上端部での前後面を膨出曲面としながら徐々に閉じている本願意匠と,前後面を平坦な傾斜面として閉じている引用意匠とでは,両意匠に別異の印象を生じさせているといえ,両意匠の類否判断に与える影響は,大きいといえる。
相違点(イ)については,容器等において本体部とキャップ部の間に,装飾的に細い円環部を設けることも設けないことも良く行われている形状であり,当該円環部が細いこともあって,全体観察での対比によっては,この円環部の有無が両意匠に別異の印象を生じさせるほどのものとはいえないから,両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。
相違点(ウ)は,使用時,キャップを開ける際に目が行く箇所であって,本願意匠におけるキャップ中央の深い凹部は,挿入口を閉じる機能を持たせていることが視覚的に伝わる形状であるから,その深い凹部の有無によって,両意匠に別異の印象を生じさせているといえ,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度認められる。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響が,限定的であり,この共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(ア)及び相違点(ウ)によって,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると,本願意匠の形状と引用意匠の形状は,類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5.結び
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-06-23 
出願番号 意願2020-9503(D2020-9503) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2021-08-05 
登録番号 意匠登録第1693386号(D1693386) 
代理人 鈴木 均 

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